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第2部 第2章 第5節 3.消費生活のグローバル化の進展に対応した消費者利益の擁護・増進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者庁における主な消費者政策

第5節 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備

3.消費生活のグローバル化の進展に対応した消費者利益の擁護・増進

(1)越境消費者トラブルへの対応の強化

情報化やグローバル化の進展に伴い、消費者がインターネットを通じて気軽に海外事業者と取引できるようになった反面、こうした国境を越えた取引(越境取引)に関連する消費者問題も増加し、さらに多様化・複雑化しています。

消費者庁は、2011年11月、越境取引に関する消費者相談窓口である「消費者庁越境消費者センター」を開設しました。同センターはこれまでに、海外事業者との取引でのトラブル等に関する消費者からの相談の受付や海外の消費者相談機関との連携強化・拡大など、越境消費者トラブルの解決支援に大きな役割を果たしました。こうした実績を踏まえ、更なる相談体制の整備や事業の恒常化の必要性等に鑑み、2015年4月に国民生活センターへ事業を移管し、「国民生活センター越境消費者センター(CCJ)」と名称変更しました。

国民生活センター越境消費者センターでは、2015年6月から越境消費者相談の受付を開始しました。2017年3月末時点で8,772件の相談を受け付け、消費者に対して内容に応じた助言や情報提供を行うとともに、そのうち2015年7月に相談が急増した案件(SNSの広告を通じて広がったトラブル)について、消費者への注意喚起情報を2015年8月からウェブサイトに掲載しています。

また、海外の消費者相談機関との更なる連携強化・拡大に向けて調整を進めた結果、2016年度には新たに4機関(タイ(注93)、フィリピン(注94)、英国(注95)及びマレーシア(注96))と正式提携し、この結果、CCJと連携する海外消費者相談機関は計12機関、これらの機関が担当する国・地域は22に拡大しました。さらに、2016年10月にはニュージーランド、11月には英国、2017年1月にはインドの消費者相談機関等と連携の在り方等に関する意見交換を実施しました。

(2)在留外国人の相談に対する体制の強化

消費者庁では、在留外国人の対応を含む消費生活相談体制の強化に向けた地方公共団体の取組を支援するために「地方消費者行政推進交付金」を交付するとともに、2016年12月に都道府県に調査を行った結果、35都道府県において通訳の活用等の体制整備が図られていました。

また、国民生活センターにおける在留外国人からの相談体制を整備するために、必要な調査等について検討を行い、電話通訳サービス会社等にヒアリングを行いました。さらに、経由相談(注97)において、情報通信関係での在留外国人の消費者トラブルが複数寄せられたため、問題点を整理し、事業者等にもヒアリングを行い、解決方法等を各地消費生活センターにフィードバックしました。

(3)二国間・地域間・多国間における消費者問題に関する政策対話等の実施

消費者庁では、2016年7月に日中韓消費者政策協議会(注98)に参加し、各国の消費者法制の整備や、越境取引における消費者の救済に関する協力などの最近の消費者政策の進展について、各国と意見交換等を行いました。

(4)東南アジア諸国の消費者法制の整備・運用の支援

外務省では、対ベトナム技術協力「消費者保護行政強化プロジェクト」において、ベトナム競争庁(VCA)と共に、ベトナム消費者権利保護法に関するQ&A及び電話相談に関するFAQの作成に取り組みました。2016年8月には、これらの普及と活用に関する本邦研修を実施しています。また、2017年3月にベトナムで企業責任の啓発に関するワークショップをVCAと共に開催しました。

消費者庁では、2014年9月から、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する対ベトナム技術協力「消費者保護行政強化プロジェクト」への協力を行っています。プロジェクトにおける作業に関するアドバイスや2017年まで予定されている作業方針の確認等のため、JICAを通じてVCAとの意見交換を行い、2015年4月及び5月並びに2016年3月には、VCAを訪問して協議を行いました。2016年8月には、VCAの職員が来日し、消費者庁及び国民生活センターから日本の消費者政策の紹介等の研修を行いました。

(5)経済協力開発機構(OECD)消費者政策委員会等の国際会議への積極的な参画

外務省及び消費者庁は、2016年4月にOECD消費者政策委員会(CCP(注99))第91回本会合、11月に第92回本会合に参画しました。両会合の主なテーマは、電子商取引における消費者保護に関する理事会勧告の実施についてでした。

また、2016年4月にOECD製品安全作業部会第12回本会合、11月に第13回本会合に参画しました。

日本は、CCP、製品安全作業部会のビューロー(幹事役)の一端を担ってきており、製品安全作業部会については、2016年1月1日から議長を務めています。2016年6月には、同議長がメキシコで開催されたOECDデジタル経済に関する閣僚級会合に参加しました。

(6)消費者保護及び執行のための国際ネットワーク(ICPEN)等を通じた消費者保護関係機関との国際的な連携

消費者庁は、2016年4月及び9月に、ICPEN(注100)本会合に出席しました。

4月の本会合のテーマは、各国消費者行政機関の国際的協力体制の在り方等、9月の本会合のテーマは、デジタル化時代における消費者問題等でした。

2016年5月にはICPENが推奨する「詐欺防止月間」を実施しました。「詐欺防止月間」では、不正な取引行為に伴う消費者被害を防止するため、関係府省の取組を紹介し、消費者への啓発を実施しました。2016年9月には、ICPENが実施する、インターネットを監視する「インターネット・スウィープ」(注101)(テーマは、オンライン上のレビュー及び推奨広告の調査)に参加しました。


  • (注93)タイ王国消費者保護委員会事務局(Office of the Consumer Protection Board)
  • (注94)フィリピン共和国貿易産業省(Department of Trade and Industry)
  • (注95)CTSI(Chartered Trading Standards Institute)
  • (注96)NCCC(National Consumer Complaints Centre)
  • (注97)全国の消費生活センター等から国民生活センターへ寄せられる、解決困難な案件に関する相談。
  • (注98)2004年9月に韓国で第1回会合が開催されて以降、2年ごとに各国持ち回りで開催。2016年7月の第7回会合は、韓国・仁川で開催。
  • (注99)Committee on Consumer Policy(消費者政策委員会)の略。
  • (注100)International Consumer Protection and Enforcement Network(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)の略。
  • (注101)ICPENに加盟している各国の消費者保護関係機関によるインターネット上の不適切な表示等を監視する取組。

担当:参事官(調査研究・国際担当)