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第2部 第2章 第4節 3.消費者団体、事業者・事業者団体等による自主的な取組の支援・促進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者庁における主な消費者政策

第4節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

3.消費者団体、事業者・事業者団体等による自主的な取組の支援・促進

(1)消費者団体等との連携及び支援等

消費者行政の推進に当たっては、幅広い関係者に消費者庁の「サポーター」や「提案者」になってもらうことが重要です。特に、消費者団体は、消費生活の実態に即し、消費者の埋もれがちな声を集約し、具体的な意見にまとめて表明する団体であり、その継続的・持続的な活動は消費者行政の推進に当たり極めて重要です。

このため、消費者庁では、全国の消費者団体等と定期的に意見交換の場を設けており、2016年度は、在京12団体と5回の意見交換会を開催しました。あわせて、電子メールを用いた消費者団体等との意見交換システムを運用し(注80)、全国の消費者団体等との情報・意見交換を行っています。さらに、消費者団体等が開催するシンポジウム等に消費者庁幹部等を派遣し講演等を行ったり、消費者団体の広報誌等への寄稿やインタビュー取材に対応したりするなど、消費者団体等とコミュニケーションを図るとともに、消費者団体等の活動を支援しています。あわせて、高齢者及び障害者の消費者被害の防止を図るため、消費者団体に高齢福祉関係団体、障害者団体、関係府省を加えた構成員による、「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催し、消費者トラブルについての情報共有をするとともに、見守り活動の積極的な取組に向けた申合せを公表する等の取組を行っています。

また、地域における消費者問題解決力の向上を図る上で、行政と消費者団体を含む地域の多様な主体との連携が不可欠です。このため、地域の消費者団体等が交流する場として、全国8ブロックごとに「地方消費者フォーラム」を開催し、地域における消費者団体等の連携強化と活動の活性化を支援しています。

消費者庁の主催による2016年度消費者月間シンポジウム(2016年5月)では、「みんなの強みを活かせ~安全・安心な社会に一億総活躍~」をテーマにパネルディスカッションが行われ、消費者・事業者・行政が連携を図ることの重要性について、実践事例を踏まえた報告がありました。

(2)消費者志向経営の推進に向けた方策の検討・実施と情報提供、消費者団体と事業者団体との連携促進等

消費者庁は、第3期消費者基本計画を踏まえ、事業者団体や消費者団体と連携して、事業者の消費者志向経営を推進しています。

2015年度は、有識者による「消費者志向経営の取組促進に関する検討会」を開催し、消費者志向経営の意義や、推進方策等について、報告書を取りまとめました。

また、2016年10月に開催した「消費者志向経営推進キックオフシンポジウム」において、事業者団体、消費者団体、消費者庁を始めとする行政機関で構成される消費者志向経営推進組織(プラットフォーム)を設けました。その後、同推進組織では、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」(注81)等の推進活動を進めています。2017年2月に開催した「2017年消費者志向経営トップセミナー」(共催:日本経済団体連合会、消費者関連専門家会議、消費者庁)では、消費者志向自主宣言を届け出た企業名の公表を行い、「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」を呼び掛ける等、消費者志向経営の幅広い普及を図っています。

経済産業省では、2016年度、学識経験者、有識者、事業者、消費者団体、マスコミなど、幅広い関係者を構成員とし、2030年頃の消費経済市場を見据えつつ、消費者意識の変化、より一層の消費者理解やそれに伴う企業経営の在り方、消費者起点のイノベーション等について検討を行う「消費インテリジェンス研究会」を年度内に5回開催し、2017年3月に報告書をとりまとめました。

また、一般財団法人日本産業協会を中心として、消費者目線に立った企業経営の推進等に向けた検討が2016年度に行われ、経済産業省においても、上記検討会等の、消費者・事業者・行政が連携して健全な消費市場を目指すための取組を支援しています。

(3)公益通報者保護制度の推進

消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことができる社会を実現していく上で、これを損なうような企業の不祥事を防止するという観点は重要です。企業の不祥事は、企業内部の労働者からの通報をきっかけに明らかになることは少なくありませんが、労働者がこうした通報を行うことは、正当な行為として解雇等の不利益な取扱いから保護されるべきものです。

こうしたことから、公益通報者保護法が2004年に成立し、2006年に施行されており、同法では、労働者が、どこへどのような内容の通報を行えば保護されるのかという制度的なルールや公益通報に関して事業者・行政機関がとるべき措置等が定められています。

なお、公益通報の対象は、国民生活の安心や安全を脅かす法令違反の発生と被害の防止を図る観点から、「国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律」に違反する一定の行為となっており、2016年度末時点で、459の法律が対象法律として定められています。

消費者庁では、事業者のコンプライアンス経営を促進するため、民間事業者向け説明会の開催等を通じて、公益通報者保護制度の意義・重要性について周知を行っているほか、行政機関職員向けの公益通報者保護制度に関する研修会を全国各地で開催(2016年度は9回開催。)しています。また、公益通報者保護制度について分かりやすく解説した動画DVD、ハンドブック等を、労働者や民間事業者、行政機関等に広く配布するなど、周知啓発に取り組むとともに、制度の運用状況等を把握するための調査等も行っています。

さらに、各界の有識者からなる「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」を2015年6月から開催し、2016年12月に最終報告書が取りまとめられました。

検討会報告書の提言等を踏まえ、消費者庁は、制度の運用改善を図るため、民間事業者向けガイドラインや国の行政機関向けガイドラインの改正を行い、その推進に努めているほか、事業者に対するインセンティブの導入(認証制度の創設等)や地方公共団体向けガイドラインの策定等を実施する予定としています。また、法改正が必要なものについては、検討会報告書の内容を広く周知するとともに、パブリック・コメントの実施等を通じて各関係団体や国民からの意見の集約を図り、法改正の内容を具体化するための検討を進めることとしています。


  • (注80)「だんたい通信」の名称でVol.109まで配信済み。同通信では配信登録団体からの意見を随時受け付けている。
  • (注81)事業者が自主的に消費者志向経営を行うことを自主宣言・公表し、宣言内容に基づいて取組を実施し、その結果をフォローアップして、公表する活動。推進組織では、各企業の自主宣言や取組を推進組織のウェブページ(消費者庁ウェブサイト内)へ掲載し、消費者・社会へ広く発信している。

担当:参事官(調査研究・国際担当)