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第2部 第2章 第4節 2.消費者教育の推進

第2部 消費者政策の実施の状況

第2章 消費者庁における主な消費者政策

第4節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

2.消費者教育の推進

(1)消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進

2012年12月に消費者教育推進法が施行され、この法律に基づき、消費者教育推進会議(以下「推進会議」といいます。)が設置されました(第19条)。推進会議の任務は、1消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うこと、2「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」といいます。)に関し、意見を述べることです。

推進会議は、いわゆる「8条機関」の審議会(注65)であり、委員は消費者、事業者、教育関係者、消費者団体、事業者団体及び学識経験者などから20名を任命しており、任期を2年としています。

2013年3月、推進会議の第1回会議を開催し、2013年6月まで、基本方針に関して議論をしました。推進会議や消費者委員会等の意見を踏まえ、基本方針は2013年6月28日に閣議決定されました。

基本方針は、消費者教育の意義及び基本的な方向、内容等を記したものです。また、推進会議を活用し、基本方針別紙の19の「今後検討すべき課題」について検討することも明記されました。

これを受け、2013年8月、3つの小委員会(消費者市民育成小委員会、情報利用促進小委員会、地域連携推進小委員会)を設置して議論を重ねてきました。2015年3月には、3つの小委員会の議論を基に、今後の消費者教育の推進についての考えや提案、消費者教育の担い手への期待等を会議として取りまとめたほか、3つの小委員会それぞれの取りまとめについても公表しました。

消費者庁では、2015年7月に始動した第2期推進会議(注66)がこれまで8回実施され、1「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(2013年6月閣議決定)の見直しに向けた論点整理、2若年者に対する消費者教育の機会の充実など社会情勢等の変化への対応について議論を深めました。1については、「学校・社会教育における消費者教育」、「食育」、「金融経済教育」、「法教育」及び「環境教育」の実施状況について、文部科学省、内閣府、金融庁、法務省及び環境省からそれぞれヒアリングを実施するとともに、地方公共団体、消費者団体及び事業者団体からもヒアリングを実施しました。これらのヒアリングを基に、現行の基本方針の実施状況を確認するとともに、中間的な見直しの検討を行いました。

2については、学校における消費者教育の一層の充実を図っていくことが必要であることから、2016年4月に推進会議において「学校における消費者教育の充実に向けて」を取りまとめ、公表しました。また、消費者庁において推進会議の意見を聴きながら、関係省庁と連携しつつ、高等学校の授業用教材を2017年3月までに作成し、4月以降に配布を開始しました。

また、2015年9月に実施した「消費者行政の推進に関する世論調査」において「消費者市民社会」(注67)という言葉の認知度を調査したところ、「知っていた」と回答した者は21.5%でした。認知度を一層向上させるために、「消費者市民社会ワーキングチーム」を開催し、消費者市民社会普及のための啓発に向けた資料の作成を検討しています。

なお、消費者委員会からの「若年層を中心とした消費者教育の効果的な推進に関する提言」(2016年6月)を踏まえ、若年層を中心とした消費者教育の実態を把握するため、「LINE調査」を実施しました。

(2)地域における消費者教育推進のための体制の整備

文部科学省では、2010年度、大学等における消費者教育の基本的な方向性をまとめた「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」を取りまとめました。また、地域における消費者教育が連携・協働により一層推進されるよう、2016年度は「消費者教育アドバイザー」(注68)の派遣を実施するとともに、「連携・協働による消費者教育推進事業」における消費者教育推進のための実証的共同研究において、地域の産業や課題をテーマとして多様な主体との連携による消費者教育の実践及びその成果について検証を行いました。さらに、消費者教育フェスタを主催し、多様な関係者との交流を図るとともに、学校や地域における消費者教育の実践事例について報告を行いました。

また、毎年度、全国(2016年度は12会場)で社会教育主事講習(注69)を実施し、消費者教育の講義を行うなど、地域における消費者教育の促進に取り組んでいます。

都道府県及び市町村は、基本方針を踏まえ、その区域における消費者教育の推進に関する施策についての計画(消費者教育推進計画)を定めるよう努めることとなっています。また、その区域における消費者教育を推進するため、消費者、消費者団体、事業者、事業者団体、教育関係者、消費生活センターその他の関係機関等をもって構成する消費者教育推進地域協議会を組織するよう努めることにもなっています。

消費者教育推進計画及び消費者教育推進地域協議会は、地方消費者行政強化作戦に位置付けられており、消費者行政ブロック会議(全国を6つのブロックに分け、都道府県・政令市の担当課長と意見交換や情報共有を行う場)等において策定・設置を促しています。消費者教育推進計画は42都道府県で策定し、消費者教育推進地域協議会は44都道府県で設置しています(2016年度は、11県で計画策定、3県で協議会設置。)。また、2016年度は国民生活センターにおいて消費者教育推進のための研修を18コース(受講者数610人)実施しました。

消費者庁では、2016年度に多様な主体間の連携・協働や体系立った消費者教育の展開等を促進し、地方の消費者教育を推進するための先駆的プログラムを27事業実施しました。

(3)「消費者教育の推進に関する基本的な方針(基本方針)」の検討等

基本方針とは、消費者教育の意義及び基本的な方向、内容等を記したものです。

消費者庁では、第2期推進会議をこれまで2016年度に7回実施しており、基本方針の見直しに向けた論点整理を当面の検討事項としています。

これまでに、「学校等における消費者教育」、「食育」、「金融経済教育」、「法教育」及び「環境教育」の実施状況について、文部科学省、内閣府、金融庁、法務省及び環境省からそれぞれヒアリングを実施しました。また、地方公共団体、消費者団体及び事業者団体からもヒアリングを実施しました。これらのヒアリングを基に、現行の基本方針の実施状況を確認するとともに、中間的な見直しの検討を行いました。

文部科学省では、基本方針の見直しに向け、教育委員会及び大学等を対象に「消費者教育に関する取組状況調査」を実施し、消費者教育推進委員会による分析を行うとともに、消費者教育推進委員会に大学・専門学校等における消費者教育推進部会を設置し、検討を行いました。

(4)消費者教育に使用される教材等の整備

消費者庁では、年齢、障害の有無、情報の入手方法、読み解く能力の差異等の消費者の特性に応じた適切なものとすることに配慮した消費者教育教材の作成及び収集を行っています。

また、消費者庁では、特に学校・社会の様々な場面で消費者教育を実施している方々の支援を主な目的に、消費者教育に関する様々な情報を提供する場として、消費者庁のウェブサイト上において消費者教育ポータルサイト(注70)を運営しています。同ポータルサイトには、関係機関で作成された教材や実践事例に関する情報が一元的に集約されています。

同ポータルサイトには、2017年3月末時点で、教材が795件、各地域での実践事例に関する情報が282件、講座等に関する情報が532件、合計1,609件の情報が掲載されています。また、2017年3月末時点で、ポータルサイトのアクセス数は700万1798件となっています。

同ポータルサイトにおいて、最新教材等の積極的な収集・掲載を行い、教材等の選択に役立つ評価等を示すなど、消費者教育の推進のための総合的な情報提供・発信を行っています。また、消費者行政ブロック会議等において、同ポータルサイトに関する説明を行い、掲載を促しています。

さらに、2016年度は、前年度の評価をポータルサイトへ反映させるために、ポータルサイトの改修に向けて予算措置を講じました。

(5)教育行政(学校教育・社会教育)と消費者行政の連携・協働(基盤的な情報の整備と体制作り)

文部科学省では、消費者教育の一層の推進を図るため、多様な関係者が情報を共有し、相互に連携するための場として、「社会的責任に関する円卓会議」の協力を得て、2010年度から消費者教育フェスタを開催しています。2016年度に徳島で開催したフェスタにおいては、地元の教育委員会等の協力の下、消費者教育に関する取組事例を紹介したほか、実践交流会において教材・資料の展示を実施しました。

また、前年度に消費者教育推進委員会で検討を行った調査の方針等を基に、「消費者教育に関する取組状況調査」を実施しました。

消費者庁では、第2期推進会議において、国における消費者教育の実施状況把握の一環として、学校・社会教育における消費者教育について、文部科学省からのヒアリングを実施しました。

また、2016年11月に金沢市で消費者庁主催の地方消費者フォーラムと文部科学省主催の消費者教育フェスタを共同開催しました。

ほかにも、消費者行政ブロック会議等において、教育委員会と消費者行政部局が連携している地方公共団体の取組を聴取しています。

(6)学校における消費者教育の推進

推進会議の小委員会の一つである消費者市民育成小委員会では、消費者教育の担い手が消費者市民社会を目指すために参考となる消費者教育実践事例を「消費者教育の担い手向けナビゲーション」(以下「ナビゲーション」といいます。)として整理しました。ナビゲーションは、消費者教育の担い手である教育関係者等が対象者に対してどのようなことを教えるかといった観点から事例を示しています。学校関係については、学習指導要領との関連を示しました。

なお、事例については、「消費者市民育成プログラム(実践事例集)」として、実施内容、工夫、成果及び課題について別途取りまとめています。

総務省では、子供達のICTメディアをより主体的・能動的に扱う能力(ICTメディアリテラシー)を育成するため、2009年度から引き続き、小学校高学年を対象とした教材「伸ばそうICTメディアリテラシーつながる!わかる!これがネットだ」をウェブサイト上に公開するとともに、2009年度と2010年度に開発した中・高校生を対象とした新たな教材についても2011年4月から公開しています(注71)

なお、2011年度から公開した新たな教材については、指導資料中にインターネットやメールなどを利用する際の留意点等を記載し、学校や家庭等における話合いのきっかけ作りに使えるようにしました。

ほかにも、通信関係団体等と連携しながら、子供たちの安心・安全なインターネット利用のための啓発講座であるe-ネットキャラバンを、保護者、教職員及び児童生徒を対象として全国で実施しています。2016年度は、更なるフィルタリングの理解の向上を図るため、保護者・教職員を対象にスマートフォンのフィルタリングの内容及び設定に特化した内容の講座を新設するなど、1,674件の講座を開催するとともに、低年齢層への需要に対応するため、講座の対象学年を小学3年生まで引き下げました。

文部科学省では、学校教育においては、児童生徒の「生きる力」を育むことを目指し、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等の能力を育み、主体的に学習に取り組む態度を養うことを理念としています。

また、2006年に改正された教育基本法(平成18年法律第120号)において、教育の目標として、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視することや、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うことが規定されました。

これらを踏まえ、小・中・高等学校の現行の学習指導要領においては、社会科、公民科、家庭科及び技術・家庭科などを中心に消費者教育に関する教育内容を充実しています。

また、2016年12月の中央教育審議会答申を踏まえ、2017年3月に告示された小・中学校の新しい学習指導要領では関連する教科等において消費者教育に関する教育内容の更なる充実が図られました。これらの新しい学習指導要領は小学校では2020年度、中学校では2021年度から全面実施される予定です。

加えて、小・中・高等学校等における教職員の指導力の向上を図るため、消費者教育等に関する各教科等横断的プログラムの開発に係る実践研究を実施するとともに、優れた取組の普及を図りました。

2010年度、大学等における消費者教育の在り方について検討を行い、その成果を「大学等及び社会教育における消費者教育の指針」としてまとめました。2016年度には消費者教育フェスタを開催し、各地域における特色ある消費者教育の実践事例の発表や、文部科学省の委託事業である実証的共同研究の成果の発表等を実施しました。また、消費者教育フェスタにおいて、前年度に消費者教育推進委員会で作成した「消費者教育の指導者用啓発資料」を題材に、消費者教育を通じて育むべき力と指導者の役割、指導者が消費者教育を行う上でのヒントや関係者が相互に連携して取り組む手法等について意見を交わしました。

金融庁では、金融庁や関係団体から構成される金融経済教育推進会議において、「最低限身に付けるべき金融リテラシー」の内容を項目別・年齢層別に具体化・体系化した「金融リテラシー・マップ」を2014年6月に作成(2015年6月に改訂)しました。

これらの関係団体と連携した取組として、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を2016年度に8大学で実施しました。

消費者庁では、第2期推進会議において、学校における消費者教育の充実方策について検討を重ね、2016年4月に「学校における消費者教育の充実に向けて」を取りまとめ、公表しました。また、「若年者の消費者教育に関するワーキングチーム」において、成年年齢の引下げに向けた環境整備の充実のための教材等について検討し、これに関連した若年者向け教材の作成に取り組みました。

(7)地域における消費者教育の推進

総務省では、青少年のインターネットの安心・安全な利用のため、地方公共団体と連携して、児童生徒、保護者及び地域の指導者等を対象とした啓発講座をe-ネットキャラバンとして全国で実施するとともに、実際に発生したインターネット上のトラブルの事例をインターネットトラブル事例集として公開しています(注72)

文部科学省では、地域における消費者教育が連携・協働により一層推進されるよう、2016年度は「消費者教育アドバイザー」の派遣を実施するとともに「連携・協働による消費者教育推進事業」における消費者教育推進のための実証的共同研究において、地域の産業や課題をテーマとして多様な主体との連携による消費者教育の実践及びその成果について検証を行いました。

また、消費者教育フェスタを徳島、石川、栃木の3か所で開催しました。

徳島会場では、学校や大学における消費者教育の実践事例の報告や、すごろくを用いたグループ討議を実施しました。石川会場では、学校や行政、消費者団体等の多様な主体が協働して消費者教育に取り組んでいくことをテーマに、地元における事例報告や、分科会を実施しました。栃木会場では、文部科学省から委託を受けた、宇都宮大学による「衣」生活に関する研究の発表のほか、中学校の技術・家庭科の授業を公開し、授業の振り返りや総括を行いました。また、全会場において、消費者教育の資料・教材等の展示企業・団体等と参加者との交流が図れるよう実践交流会を実施しました。

また、消費者教育フェスタにおいて、前年度に消費者教育推進委員会で作成した「消費者教育の指導者用啓発資料」(注73)を題材に、消費者教育を通じて育むべき力と指導者の役割、指導者が消費者教育を行う上でのヒントや関係者が相互に連携して取り組む手法等について意見を交わしました。

消費者教育推進計画及び消費者教育推進地域協議会は、地方消費者行政強化作戦に位置付けられており、消費者行政ブロック会議等において策定・設置を促しています。現在、消費者教育推進計画は42都道府県で策定、消費者教育推進地域協議会は44都道府県で設置しています(2016年度は、11県で計画策定、3県で協議会設置)。

金融庁では、地域で開催される講座等への講師派遣を2016年度に744回実施しました。

また、「基礎から学べる金融ガイド」や「「未公開株」等被害にあわないためのガイドブック」等を、全国の地方公共団体に配布しました。

ほかにも、一般の方々が金融トラブルに巻き込まれないよう注意を促すことを目的として、「金融トラブルから身を守るためのシンポジウム」を各財務局と共催しました(2016年度は、全国6か所で開催。)。

公正取引委員会では、2016年度には、「消費者セミナー」(注74)を77回、「独占禁止法教室」(注75)を196回、「一日公正取引委員会」(注76)を8回開催しました。また、消費者の暮らしと私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」といいます。)の関わりについて説明した資料を、「消費者セミナー」や「独占禁止法教室」の出席者に配布しました。これらの参加者からのアンケート結果では、「満足」、「おおむね満足」との回答が、「消費者セミナー」については71%、「独占禁止法教室」については87%と良好な結果が得られており、地域における消費者教育の推進に寄与しています。

(8)家庭における消費者教育

消費者庁では、消費者教育ポータルサイトにおいて、家庭でできる消費者教育教材や地方における親子向けの講座の案内について消費者が積極的に情報収集できるようにするため、消費者行政ブロック会議等において同ポータルサイトに関する説明を行い、掲載を促しています。

同ポータルサイトには、2017年3月末時点で、教材が795件、各地域での実践事例に関する情報が282件、講座等に関する情報が532件、合計1,609件の情報が掲載されています。また、2016年4月から2017年3月末までのポータルサイトのアクセス数は700万1798件となっています。

(9)事業者・事業者団体による消費者教育

消費者庁では、事業者・事業者団体等による取組事例を積極的に収集し、消費者教育ポータルサイトに掲載するよう努めています。事業者によるポータルサイトの掲載数は、2017年3月末時点で128件となっています。

(10)倫理的消費の普及啓発

より良い社会に向けて、地域の活性化や雇用等を含む人や社会・環境に配慮した消費行動である「倫理的消費」への関心が高まっています。

こうした消費行動の変化は、消費者市民社会の形成に向けたものとして位置付けられるものであり、日本の経済社会の高品質化をもたらす大きな可能性を秘めています。しかしながら、こうした動きは緒に就いたばかりであり、社会的な仕組みも整備されていません。消費行動の進化と事業者サイドの取組が相乗的に加速していくことが重要です。

以上を踏まえ、消費者庁では倫理的消費の内容やその必要性等について検討し、国民の理解を広め、日常生活での浸透を深めるためにどのような取組が必要なのかについて調査研究を行う、「倫理的消費」調査研究会を実施しています。この研究会は、2015年度に6回、2016年度に4回開催し、2016年6月には研究会の中間取りまとめ、2017年4月には取りまとめを公表しました。

2016年5月には消費者月間シンポジウムにおいて、倫理的消費に関する分科会を開催し、事業者の取組等を取り上げました。また、同年7月には倫理的消費シンポジウム「エシカル・ラボ」を、東京都と鳥取県の会場を中継で結び、徳島県内で開催しました。

(11)金融経済教育の推進

消費者庁では、推進会議において、金融経済教育を含む消費者教育の推進について議論しています。

金融庁では、大学生に対し、「金融リテラシー・マップ」に基づいた授業を関係団体と連携して2016年度に8大学で実施しました。

また、学校や地域等で開催される講座等への講師派遣を2016年度に1,048回実施しました。

さらに、「基礎から学べる金融ガイド」や「「未公開株」等被害にあわないためのガイドブック」等を、全国の高校等や地方公共団体に配布しました。

ほかにも、一般の方々が金融トラブルに巻き込まれないよう注意を促すことを目的として、「金融トラブルから身を守るためのシンポジウム」を各財務局と共催しました(2016年度は、全国6か所で開催。)。

また、金融サービス利用に伴うトラブルの発生の未然防止などに向けた事前相談の提供の充実を図るため、「事前相談(予防的なガイド)」を2014年から開設し、相談への対応を行っているほか、2016年度に各財務局と共催する前記シンポジウムや総務省東京総合行政相談所において相談会を開催しました。

(12)法教育の推進

法務省では、法教育の更なる普及・推進のため、法務省関係機関において、学校等の法教育を受ける側の要望等を踏まえた法教育授業を多数回実施するなど、広報活動や法教育に関する支援活動・助言等を行い、法教育の意義についての理解を広めています。

また、法曹関係者、学者、教育関係者等の有識者で構成する法教育推進協議会を開催し(2016年度は8回開催。うち教材作成部会を7回開催。)、検討・報告された法教育に関する最新の情報、協議の状況等を情報提供することにより、法教育の普及・推進を図っています。

(13)各種リサイクル法の普及啓発

環境省では、2013年4月に施行された使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(平成24年法律第57号)を始めとした各種リサイクル法の認知、理解から実際に活動してもらうための普及啓発、そして活動の拠点形成のため、子供向けモデル授業を実施しています。具体的には、リサイクルの重要性を教育現場から伝えるために、小学校の授業で活用できる「小型家電リサイクル学習授業支援パッケージ」を作成し、各校で実施を推奨するとともに、社会や家庭科の各全国教育研究会長を委員とした、リサイクルに関する教育検討会を開催しました。

また、インターネットを利用する若い世代を中心に、ごみの減量・資源の有効活用について恒常的に周知徹底を図るため、ウェブサイト「Re-Style」(PC版、携帯版)を運営し、循環型社会の形成に関する最新データやレポート等の掲載、循環型社会形成推進基本計画の周知及び循環型社会に向けた多様な活動等の情報を更新し、国民、民間団体及び事業者等による活動の促進を図っています。

経済産業省では、「資源循環ハンドブック2016」を4,500部作成し、関係機関に配布したほか、3R(注77)に関する環境教育に活用するなどの一般の求めに応じて配布を行っています。

(14)食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)の推進

「食品ロス」とは、本来はまだ食べられるのに捨てられる食品のことを指します。

日本における2014年度の食品ロスの発生量は、年間621万トンと試算されており、これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食糧援助量(2015年で年間約320万トン)(注78)の約2倍に相当します。また、食品ロスを国民1人当たりに換算すると、"お茶碗約1杯分(約134g)の食べ物"が毎日捨てられていることになります。

食品ロスを削減するには、事業者・消費者双方の意識改革等が必要です。このため、2012年7月に「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設置し、関係府省(内閣府、消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省)が連携して取り組んでおり、2013年10月以降は「食品ロス削減国民運動(NO-FOODLOSS PROJECT)」という名称で展開しています。2016年9月には、「第5回食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を開催し、各府省の食品ロス削減に関する取組状況及び今後の普及啓発方策の情報共有を行いました。

消費者庁では、消費者に食品ロスの現状や課題などの情報を分かりやすく伝え、理解を深めていただくため、2016年6月に開催された「第11回食育推進全国大会inふくしま」では、消費者庁のブースを活用し、来場者へチラシの配布を行いました。

また、2016年10月には政府広報の様々な媒体を通じて、幅広い対象に向けた周知・啓発活動を行ったほか、地方公共団体、食品関連事業者及び消費者を対象とした、「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」を東京都千代田区で開催しました。

さらに、同年12月には啓発パンフレットを作成し、消費者庁ウェブサイトへの掲載及び地方公共団体や消費者団体等への配布を実施しました。こうした取組を始め、食品ロス削減に関連するイベント及び講習会等については、消費者庁のウェブサイトで年間を通して紹介しています。

農林水産省では、食品関連事業者を始めとする関係者にロゴマーク「ろすのん」の普及を実施しています(2017年3月末現在の利用者数は275件)。また、食品関連事業者による食品ロス削減のための商慣習見直しに向けた取組について、その効果や要点等を整理し、研修会(全国4か所)での普及に向けた取組を支援しました。

さらに、生産、流通、消費などの過程で発生する未利用食品を、食品関連事業者や生産現場などからの提供を受けて、必要としている施設や人に提供する、「フードバンク」と呼ばれる活動において、食品の取扱いを促進するため、2016年11月に「フードバンク活動における食品の取扱いに関する手引き」を作成・公表したほか、2016年度は食品関連事業者とフードバンク活動団体等を対象とした情報交換会を全国8か所で開催しました。

また、 「第3次食育推進基本計画」(2016年3月食育推進会議決定)に基づき、「食育月間」を6月に定め、「食育月間」実施要綱において食の循環や環境への意識等を重点事項として位置付けており、関係府省庁、地方公共団体等様々な主体において全国的に各種広報媒体や行事等を通じた広報啓発活動を実施し、食育推進運動の一層の充実と定着を図ることとしています。加えて、「食育白書」において、各府省庁における食品リサイクルと食品ロスの削減に関する取組を記載しています。

環境省では、学校給食からの食品ロスの削減及び食品リサイクルのモデルとなる取組を行う市町村を支援するため、2015度から「学校給食の実施に伴い発生する廃棄物の3R促進モデル事業」を実施しました。加えて、2016年10月に、全国で食べ切り運動等を推進する自治体間ネットワーク「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」の設立支援を行いました。

また、消費者等が行う3R行動による環境負荷の低減効果を便宜的に数値化する「3R行動見える化ツール」(注79)に、新たに食品ロス削減に関する項目を追加し、2015年11月に公表しました。

(15)食育の推進

食育基本法(平成17年法律第63号)及び「第3次食育推進基本計画」(2016年3月食育推進会議決定)に基づき、関係府省等が連携しつつ、家庭、学校、地域等において国民運動として食育を推進しています。同計画では、国民が健全な食生活を実践するために必要な食品の安全性や栄養等に関する様々な情報について、国民が十分に理解し活用できるよう考慮しつつ、国民にとって分かりやすく入手しやすい形で情報提供することとしています。

厚生労働省では、関係団体等を通じた普及啓発を行うとともに、ウェブサイト等での情報提供を行いました。

第3次食育推進基本計画では、毎年6月を「食育月間」と定め、関係府省庁、地方公共団体等様々な主体において全国的に各種広報媒体や行事等を通じた広報啓発活動を重点的に実施し、食育推進運動の一層の充実と定着を図ることとしています。また、全国規模の中核的な行事として、「第11回食育推進全国大会」を福島県と共催し(2016年6月11日及び12日)、2日間で約3万人の来場がありました。

農林水産省では、地域の実情に応じた食育活動や消費者のニーズに対応したモデル的な食育活動に対する支援を通じて、「日本型食生活」の実践を促す取組のほか、農林漁業体験を通じて食や農林水産業への理解を深める教育ファームの活動についての情報提供等を行っています。

文部科学省では、2016年度から使用するための小学生用食育教材「たのしい食事つながる食育」を作成し、全国の小学校等へ配布しました。


  • (注65)審議会は、国家行政組織法第8条並びに内閣府設置法第37条及び第54条の「法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる」との規定を根拠に行政機関に設置される。
  • (注66)第10回推進会議(2015年7月開催)から第2期。
  • (注67)消費者一人一人が、自分だけでなく周りの人々や、将来生まれる人々の状況、内外の社会経済情勢や地球環境にまで思いをはせて生活し、社会の発展と改善に積極的に参画する社会のこと。
  • (注68)文部科学省では2013年度から地域における消費者教育が、連携・協働により一層推進されるよう、全国の社会教育等における消費者教育の先駆的実践者を消費者教育アドバイザーに委嘱し、地方公共団体からの求めに応じて派遣している。
  • (注69)社会教育主事となり得る資格を付与することを目的として、全国の大学及び国立教育政策研究所社会教育実践研究センターで実施される講習(約40日間)。社会教育主事は、都道府県及び市町村の教育委員会の事務局に置かれる専門的職員で、社会教育を行う者に対する専門的技術的な助言・指導に当たる役割。
  • (注70)https://www.kportal.caa.go.jp/index.php
  • (注71)http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/media_literacy.html
  • (注72)http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/kyouiku_joho-ka/jireishu.html
  • (注73)http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/syouhisha/detail/1368878.htm
  • (注74)消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層の理解を深めてもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を消費者団体等の勉強会に派遣するもの。
  • (注75)中・高・大学生に経済活動の基本ルールである独占禁止法の役割について学んでもらうため、公正取引委員会事務総局の職員を学校の授業に講師として派遣するもの。
  • (注76)公正取引委員会の本局及び地方事務所等の所在地以外の都市において、「消費者セミナー」及び「独占禁止法教室」を独占禁止法講演会などとともに1か所で同時に開催するもの。
  • (注77)環境問題への対応としては、廃棄物等の発生抑制、再利用、再生利用が重要となるが、これらの英語の頭文字を採って、3R(Reduce, Re-use, Recycle)と呼んでいる。
  • (注78)国連WFP支援実績を参照。
  • (注79)3Rを推進する行動の行動量を入力することで便宜的に環境負荷の削減効果を数字で表すことが出来る計算用ツール。
  • のコミュニケーション)」と呼んでいる。

担当:参事官(調査研究・国際担当)