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第2部 第1章 第5節(5)電力・ガスの小売全面自由化

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第5節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

(5)電力・ガスの小売全面自由化

●電力の小売全面自由化で消費者の選択肢が増加

2016年4月に始まった電力の小売全面自由化では、原則として各地域の電力会社(旧一般電気事業者)だけが販売していた低圧分野(家庭向け等)における電気の小売が全面的に自由化されました。小売全面自由化に伴い、電力会社(旧一般電気事業者)以外に、ガス会社、石油会社、鉄道会社や通信会社など、様々な分野の事業者が低圧分野(家庭向け等)の電力市場へ参入し、2017年3月31日時点で389事業者が小売電気事業者として登録されています。

電力・ガス取引監視等委員会の電力取引報によると、2016年4月から12月までの新電力への契約先の切替え実績(累積)は、約225万件で、低圧需要家(一般家庭等)の約3.6%が電力の供給先を切り替えています。

料金プランも様々なタイプのものが新しく出ています(図表II-1-5-17)。既存の規制料金(三段階料金制)と類似の料金体系である二部料金制や最低料金制に加えて、定額料金制や、基本料金がなく使用電力量に応じて電気料金が請求される完全従量料金制などがあります。また、割引には、ガスや通信等とセットで契約することで割引になるものや、時間帯ごとに料金、単価が異なるもの、節電すると割引になるものなどがあります。他に、地元の発電所で発電した電気を使用するメニューや地域のスポーツチームの応援メニューといった地域に根ざしたもの、再生可能エネルギーの電源割合が高いものなど、自分のライフスタイルや価値観に合わせたメニューを選択することが可能となってきています。

料金メニューなどと併せ、火力や水力、太陽光など、どのような電源で発電しているかという電源構成や、二酸化炭素をどのくらい排出しているかの目安となるCO2排出係数などの情報開示も進んできています。

●電力の小売全面自由化に関連する相談

電力の小売全面自由化に当たっての相談は、事業者の小売営業が本格的に開始した2016年1月以降急増しました。消費者庁では、2016年2月及び3月に、消費者に向けて、自由化に当たっての注意点やよくある誤解などについての情報提供及び注意喚起を実施しました。自由化が開始した2016年4月以降は、1,222件の相談が寄せられています(図表II-1-5-18)。

相談内容としては、「電力自由化の制度について知りたい」、「スマートメーターへの切替えが進まない」といった相談や、「契約した内容が思っていたものと違う」、「解約金があるとは聞いていない」といった契約や解約に伴うもの、「電力自由化で機器の交換が必要」などと言って来訪し、電気温水器や太陽光発電システムなどの勧誘を行う、電力自由化に便乗した勧誘などがありました。また、東京電力パワーグリッド株式会社のシステムトラブルにより、「電気料金の請求が来ない」、「何か月分もまとめて請求されるのは困る」といった契約切替えに伴う相談などがありました(図表II-1-5-19)。

また、「電気料金が安くなると勧誘があったが信用できる話か」といった相談も寄せられています。小売電気事業者は登録制(注8)になっていますので、勧誘のあった事業者が登録されているか、又はその代理店かを確認しましょう。電力の小売全面自由化では、少なくとも2020年3月までは規制料金メニューでの供給義務が各地域の旧一般電気事業者の小売部門に課されており、2020年4月以降は、各地域の電力会社(旧一般電気事業者)の供給エリアごとに競争状態を見極め、経過措置が解除されていくこととなっています。電気の契約先の変更を検討する場合は、慌てて契約する必要はありませんので、家庭の電気の使用状況や、支払い方法や契約内容をよく確認しましょう。

●都市ガスの自由化も開始

2016年4月の電力の小売全面自由化に続き、2017年4月からは都市ガスの小売全面自由化も始まりました。日本の家庭に供給されるガスには、都市ガス、簡易ガス、LPガス(プロパンガス)があり、LPガスは既に自由化されています(図表II-1-5-20)。

これまで、家庭向けの都市ガス及び簡易ガスは原則、地域の都市ガス及び簡易ガス事業者が独占的に供給し、料金も規制されていましたが、自由化によって、自由にガスの供給元を選べるようになりました。例えば、都市ガス間で契約先を切り替える場合は、工事などは必要なく、ガスコンロやガス給湯器などの機器も変える必要はなく、ガスの品質も変わりません(ただし、オール電化やLPガスから都市ガスへの切替えの場合は、都市ガス用の配管やガス器具(ガスコンロ、ガス給湯器等の消費機器)の調整、取替えなどが必要になる場合があります。)。

2017年4月までに契約先を切り替えない場合には、今まで契約していたガス事業者から引き続きガスが供給されます。

ガスメーターは今までどおり一般ガス事業者(小売全面自由化後は一般ガス導管事業者)が検針に来ます。契約先の切替えに当たっては、電力の小売全面自由化の時のようにメーターの交換は必要ありません(ただし、LPガス販売事業者・簡易ガス事業者からLPガスの供給を受けている場合やオール電化の場合、都市ガスに切り替えるためには、ガスメーターの設置が必要となります。)。

また、電気の場合は自由化前の事業者に経過措置として規制料金が残されていましたが、ガスでは規制料金が残されるのは、指定の12事業者(旧簡易ガス事業者については、432事業者)のみとなります(図表II-1-5-21)。

消費者庁では、都市ガスの小売全面自由化に向け、2017年3月に、注意喚起を実施しました(図表II-1-5-22)。ガスの小売全面自由化に伴い消費者が注意すべきこととして、設備費や消費機器のリースなどが挙げられます。ガス機器の点検などは小売事業者が実施することになります。商品などを勧められた際には、必要性や御自身のライフスタイルに合っているかなど、冷静に検討してください。小売契約の締結等に関するトラブルがありましたら、最寄りの消費生活センター等(消費者ホットライン:188(いやや!))に電話で御相談ください。消費者庁では、消費者が安心して電気やガスの事業者や料金メニューを選択できるよう、国民生活センターや経済産業省とも連携し、消費者トラブルの状況を注視するとともに、情報提供を実施していきます。


担当:参事官(調査研究・国際担当)