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第2部 第1章 第5節(1)消費者教育

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第5節 消費者が主役となって選択・行動できる社会の形成

(1)消費者教育

●消費者教育推進法と消費者教育の推進に関する基本的な方針

第3期消費者基本計画では、消費者一人一人が、個々の消費者の特性や消費生活の多様性を相互に尊重しつつ、自らの消費行動が将来の社会経済情勢や地球環境に影響を及ぼすことを自覚し、公正で持続可能な社会の形成に積極的に参画する社会を目指すことが求められています。

このような社会において消費者は、自らも消費生活に関する知識の取得・情報収集等に努め、自身で合理的な意思決定を行い、被害を認識し、危害を回避し、被害に遭った場合には適切に対処する能力を身に付けることが重要であり、更には、社会の発展と改善に積極的に参加することが期待されています。

消費者教育推進法は、消費者教育について、「消費者の自立を支援するために行われる消費生活に関する教育(消費者が主体的に消費者市民社会の形成に参画することの重要性について理解及び関心を深めるための教育を含む。)及びこれに準ずる啓発活動をいう。」と定義するとともに、基本理念や国、地方公共団体の責務、基本方針の策定、各種施策、消費者教育推進会議の設置等について定めています。

消費者教育推進法の規定に基づき、2013年6月には、「消費者教育の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」といいます。)が閣議決定されました。基本方針に基づき、国、地方公共団体は消費者教育の施策を推進しています。消費者団体や事業者団体においても、消費者教育について自主的な活動を行っています。

●消費者教育推進会議での議論

消費者教育推進法の規定に基づき、2013年3月に消費者教育推進会議(以下「推進会議」といいます。)が設置されました。推進会議は、1消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報交換及び調整を行うこと、2基本方針に関し、意見を述べることが役割とされています。

第1期推進会議では、2013年3月から基本方針に関する議論を行い、基本方針が同年6月に閣議決定された後は、基本方針に掲げられた「今後検討すべき課題」を推進会議に置かれた3つの小委員会(消費者市民育成小委員会、情報利用促進小委員会、地域連携推進小委員会)で検討し、2015年3月に取りまとめを公表しました。

2015年7月から始動した第2期推進会議では、基本方針の見直しに向けた論点整理に当たって、国における消費者教育及び消費生活に関連する教育の施策の実施状況の把握のため、関係省庁からヒアリングを行うとともに、消費者行政と教育行政(学校教育・社会教育)との連携に関して、先進的な取組を行っている地方公共団体、消費者団体及び事業者団体からのヒアリングを実施しました。また、都道府県等における消費者教育施策の状況を把握するため、都道府県等の消費者教育推進計画等の調査を行いました(消費者教育推進計画は44都道府県14政令市が策定済み、消費者教育推進地域協議会は45都道府県17政令市が設置済み。)。

また、社会情勢等の変化に対応した課題として、学校における消費者教育の充実方策や若年者への消費者教育の充実、消費者市民社会の形成への参画の重要性の理解促進等について具体的には次のように議論を深めました。

第一に、学校における消費教育の一層の充実を図っていくことが必要であることから、推進会議で検討を重ね、2016年4月に「学校における消費者教育の充実に向けて」という提案がされました(図表II-1-5-1)。提案のポイントは3つあります。1つ目は消費者教育の機会(時間)の確保です。実践的な内容を扱う時間の確保のため、家庭科や社会科のみでなく、様々な教科・科目を活用したり、教科横断的に関連付けたりして実施すること、また、校内で情報共有して学校全体として取り組んだり、消費生活センターや教育委員会が授業展開方法を収集・提供したりすることなどが提案されました。2つ目は教員の教育・研修の重要性です。教科横断的な取組や実践的な指導には教員の指導力の向上が不可欠です。大学の教養課程や教職課程を活用したり、教員研修に消費者教育の内容を取り入れたりすることで、教員自身も学校教育における消費者教育の重要性を認識することになります。3つ目は外部人材の活用です。変化する消費者問題等へ対応するためには、教員の指導力の向上のみでは限界があり、消費生活相談員等の外部人材の活用が有効です。さらに、外部人材を活用して学校のニーズに応じた授業を展開するためには、学校・教員との調整、消費者行政担当部局、教育委員会との連携・調整の必要性が提案されました。消費者庁としては、この提案を踏まえ、文部科学省を始めとした関係機関等に積極的に働き掛け、学校における消費者教育の一層の充実を図っていきます。

第二に、若年者への消費者教育(成年年齢引下げに向けた環境整備)の充実のため、「若年者の消費者教育に関するワーキングチーム」、「消費者市民社会普及ワーキングチーム」をそれぞれ立ち上げ、活動を開始しました。

特に、2016年6月に公職選挙法の一部改正により選挙権年齢が18歳に引き下げられたこと、民法の成年年齢引下げの議論もされていることを踏まえ、契約に関する基本的な考え方や契約に伴う責任、消費者市民社会の形成に参画することの重要性等について18歳までに理解できるようにするため、2017年3月に高校生若年者向けの消費者教育用教材を、「若年者の消費者教育に関するワーキングチーム」及び関係府省とも連携しつつ作成しました(図表II-1-5-2)。また、「消費者市民社会普及ワーキングチーム」では、消費者教育推進法が施行されてから4年が経つ現況を踏まえ、消費者市民社会の概念や用語を一層普及させるための啓発資料の作成について検討をしました。

●若者を対象にした消費者教育・啓発に関する調査の結果

消費者庁では、2017年3月に、15歳から25歳までの3,000人を対象に、消費者教育等に関する調査を実施しました。消費者教育・啓発の経験の有無を聞いたところ、学校・地域、職場等の様々な場での消費者教育・啓発を受けたことが「ある」との回答が36.0%、年齢別にみると、15歳から20歳までは、「ある」との回答率が全体平均を上回っており、低い年齢のほうが「消費者教育・啓発」を受けた経験のある割合がより高いといえます(図表II-1-5-3)。また、消費者教育・啓発を受けたことが「ある」と回答した人に、どのような機会に受けたかを聞いたところ、「小中学校、高等学校の授業」との回答が79.2%、「小中学校、高等学校の課外授業・特別授業・見学等」との回答が37.0%となっており、小中学校、高等学校段階に行われる消費者教育における認識度が高いといえます(図表II-1-5-4)。

COLUMN17
マスコットキャラクターへの消費者教育推進大使への委嘱


担当:参事官(調査研究・国際担当)