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第2部 第1章 第2節(4)食品安全に関するリスクコミュニケーション(意見交換会)

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者庁における主な消費者政策

第2節 消費者の安全の確保

(4)食品安全に関するリスクコミュニケーション(意見交換会)

食品は、これに含まれる有害な微生物や化学物質などの危害要因を摂取することによって人の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。2003年には、その発生を防止し、又はそのリスクを適切なレベルに低減するための枠組み(リスクアナリシス)が日本の食品安全行政に導入されました(食品安全基本法(平成15年法律第48号))。

この枠組みは、食べても安全かどうかを科学的に調べて決める「リスク評価」、食べても安全なようにルールを決めて監視する「リスク管理」及び消費者、事業者、行政機関など関係者間で相互に情報や意見を交換する「リスクコミュニケーション」の三つの要素からなっています。この枠組みに基づき、リスク評価機関である食品安全委員会と、リスク管理機関である厚生労働省、農林水産省、環境省、消費者庁等が連携・協力して、食品安全行政を展開しています。

このうち、「リスクコミュニケーション」については、食品の安全性の確保に関する施策の策定に当たっては、消費者・生産者・事業者・行政などの関係者間での意見交換を行うこととされています。また、消費者政策においては、消費者に対し必要な情報が提供され、消費者の意見が消費者政策に反映されることが重要です。このため、消費者庁は「食品安全基本法第21条第1項に規定する基本的事項」(平成24年6月29日閣議決定)に基づいて、食品に関するリスクコミュニケーション全体に係る総合的マネージメントに取り組んでいます(図表II-1-2-7)。

●食品に関するリスクコミュニケーション研究会

消費者庁は、2016年度に、これまで実施したリスクコミュニケーションの取組を検証し、課題を整理した上で、消費者庁が今後行うべき食品に関するリスクコミュニケーションの取組方向を検討するために、食品に関するリスクコミュニケーション研究会(座長:関崎勉 東京大学食の安全研究センター長)を設置し、全5回の議論を行い、2017年2月に報告書(注4)を取りまとめました。

本報告書では、1リスクコミュニケーション全体に係る事務の調整、2リスクコミュニケーションの実施、3リスクコミュニケーションの促進の3点について、今後の消費者庁の取組方向を示しています。消費者庁は、今回取りまとめられた報告書を基に、食品に関するリスクコミュニケーションの取組を推進します。

【食品に関するリスクコミュニケーション研究会で示された取組方向】

1リスクコミュニケーション全体に係る事務の調整

・今後も継続して、定期的に消費者庁、食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省及び環境省でリスクコミュニケーション担当者会議を開催する。
・リスクコミュニケーション担当者会議では、関係府省等が実施した意見交換会等の実績を把握し、共有する。
・「食品と放射能Q&A」を、最新の知見に基づき改訂する。
・「食品と放射能Q&A」を教育関係者等へ幅広く周知を図る。
・食品中の放射性物質以外の分野についても、基本的な内容を網羅した、分かりやすいQ&Aを作成する。

2リスクコミュニケーションの実施

・消費者庁が関わる食品に関するリスクコミュニケーションのテーマを以下の点から選定するのが適当である。なお、消費者庁が関わる全ての食品に関するリスクコミュニケーションにおいて、主要テーマに加えて、リスクを評価し、適切な範囲で管理するという基本的な考え方を消費者と共有することを目標とする。
i.食品の安全性の確保に関する施策の策定や変更等
ii.食品や食品に含まれる物質等により健康被害が生じる可能性があるもの(健康食品等)
iii.その他、消費者の関心が高いもの(残留農薬や食品添加物、遺伝子組換え食品等、リスクが適切に管理され、明確な健康被害は生じていないが消費者の関心が高いもの)
・食品中の放射性物質に関する意見交換会等は今後も継続して実施する。
・ただし、風評被害の意識調査結果において、消費地ではより消費者の関心の低下や有する知識や理解の度合いが固定化している傾向がみられるため、今後は意見交換会等の開催地について、重心を福島県外の消費地へと移す。
・また、消費地で意見交換会等を実施する際には、食品には様々なハザード(危害要因)があり、そのうちの一つとして放射性物質があるということも消費者に伝えるよう配慮する。

3リスクコミュニケーションの促進

地方公共団体が積極的にリスクコミュニケーションに取り組むことを支援するため、これまで行ってきた、消費者庁職員の派遣、会場賃借料等の協力支援に加え、消費者庁がこれまでに実施・支援した意見交換会のテーマ一覧、運営マニュアル等を提供する。

COLUMN14
子供と保護者への食品安全に関する情報提供の取組について

図表II-1-2-7食品の安全を守る仕組み(リスクアナリシス)


担当:参事官(調査研究・国際担当)