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第1部 第3章 第1節(4)若者の情報の活用や向き合い方

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 【特集】若者の消費

第1節 若者の消費行動

(4)若者の情報の活用や向き合い方

情報化は若者の間で一層進展しています。若者のインターネット利用率は100%に近く、第1部第2章第1節でみたように、スマートフォンの保有率も他の年齢層に比べ高くなっています。若者の行動は、生活時間、情報の入手先、購入方法、自らの情報発信等で情報化の影響を大きく受けています。

ここでは、スマートフォン等の情報通信機器の利用や、SNSを含むインターネットのアクセス先やその目的など、情報の活用の仕方や意識について若者を中心にみていきます。

●スマートフォン等を生活の必需品と考える若者は8割

第1部第2章第1節の図表I-2-1-21でみたとおり、2015年末時点で20歳代の97.9%がスマートフォンを含む携帯電話を保有し、92.9%はスマートフォンです。ほとんどの若者が携帯電話やスマートフォンを利用している状況にありますが、携帯電話やスマートフォンを生活の中でどのように位置付けているかという意識面をみていきます。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によれば、「携帯電話やスマートフォンは自分の生活になくてはならない」と考えている割合は、10歳代後半では82.4%、20歳代前半は83.2%、20歳代後半は85.6%に上ります(図表I-3-1-15)。

●情報通信機器の用途

携帯電話やスマートフォン等の情報通信機器を、生活においてどのような用途に利用しているかをみていきます。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)で情報通信機器の利用について尋ねたところ、スマートフォン以外の携帯電話は若い年齢層ほど保有しておらず、保有している場合は通話やメールが主な用途であることが分かりました(図表I-3-1-16)。一方で、60歳代以上は通話を主な用途として利用しています。

スマートフォンについては、スマートフォン以外の携帯電話の状況とは逆に、高齢層になるほど持っておらず、利用者は年齢層を問わず、インターネットサイトでの検索や通話、メールを主な用途としています(図表I-3-1-17)。特に若い年齢層では、インターネットサイトでの検索が8割を超え、最も利用されています。

また、年齢層で違いがみられるのは、SNSやインターネットでニュースを見るといった用途で利用されていることです。スマートフォンによるSNS利用は10歳代後半で69.1%、20歳代で70.7%である一方、30歳代では48.9%と差がみられ、それより上の年齢層では更に少ない割合となっています。スマートフォンによりインターネットでニュースを見ることは、20歳代、30歳代では約7割が行っていますが、50歳代以上では4割を下回ります。

さらに、10歳代後半と20歳代は、40歳代以上と比べどの用途項目でも高い割合を示しており、若者はスマートフォンを様々な用途に利用していることが分かります。

●商品やサービスの購入・予約等を若者はスマートフォンで行う

同じく、消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)において、スマートフォンとパソコンそれぞれを利用して「ゲーム」、「商品やサービスの購入・予約」、「ネットバンキング」といった消費生活上の行動をしているか聞いたところ、「ゲーム」は10歳代後半で62.1%がスマートフォンを利用して行っていることが分かりました。また、20歳代の割合も58.7%と高くなっています(図表I-3-1-18)。パソコンでも10歳代後半、20歳代は他の年齢層よりもゲーム利用の割合が高いものの、10%台にとどまっています。

スマートフォンを使って、「商品やサービスの購入・予約」という、いわゆるインターネット通販を行っているとの回答は、20歳代で58.9%となっており、最も高くなっています(図表I-3-1-19)。また、50歳代以上は、パソコンを利用している割合が高いことが分かります。

スマートフォンを使い、「ネットバンキング」で資金決済を行うとの回答は20歳代が11.4%と年齢層別には最も高い結果でした。一方、パソコンを使う用途の中では、40歳代が13.3%と最も高くなっています。

以上の消費行動から、若者のスマートフォン利用が浸透していることが分かります。

●若者はスマートフォンを長時間利用、テレビや新聞を見なくなっている

多くの若者がスマートフォンを生活の中で必要とし、実際に様々な用途に利用し、消費行動にも活用しています。では、スマートフォン利用にどの程度の時間を割いているのでしょうか。

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)によると、15歳から25歳までの1日当たりスマートフォン利用時間は、3時間以上が73.0%を占めました(図表I-3-1-20)。本調査はLINEを通じて実施した調査であり、回答者の中には積極的にスマートフォンを利用している若者が多いことを考慮しても、スマートフォン利用に生活時間の多くを費やす若者が多いことがみて取れます。

さらに1日当たりの利用時間が11時間以上という回答も1割を超えているなど、生活に支障を生じかねないほどの長時間を費やしている若者が少なくないことが分かります。なお、回答の分布から平均利用時間を算出すると、5.5時間という結果でした。

性別では、全体としては僅かながら女性の方が利用時間は長く、20歳以上ではその傾向がよりはっきりとみて取れます。

若者がスマートフォン利用に多くの時間を使っていることを確認しましたが、従来のマスメディアを見る時間はどのように変化しているでしょうか。テレビや新聞等を見る時間についてみていきます。

総務省「社会生活基本調査」における「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」にかける1日当たりの時間の推移をみると、年齢層により変化の動向が異なります(図表I-3-1-21)。50歳以上は横ばいあるいは増加傾向にあるのに対し、40歳未満は、1996年以降2000年代は一貫して減少してきています。中でも、10歳代後半及び20歳代前半の、2006年から2011年までの間の減少は際立っており、スマートフォン普及の影響がここでも確認できます。

ここまで、若者を中心として、スマートフォン等の情報通信機器の利用について、その内容や時間、消費行動との関連等をみてきました。それにより、若者はインターネットにより多くの情報を収集していることや、中でもSNSの利用が他の年齢層と比べ顕著であることが分かりました。

そこで、若者がインターネットからの情報をどのように活用しているか、またSNSをどのように使っているのか、消費者への意識調査結果等を紹介しながら、概観していきます。

●若者は商品やサービス情報をインターネットから入手

商品やサービスを選ぶときの情報入手先については、「家族、友人、知人からの情報」以外では、年齢層で違いがみられます(図表I-3-1-22)年。

20歳代を中心に、若者のほとんどがインターネットを情報入手先として利用しています。また、10歳代後半、20歳代ではSNSの割合も、他の年齢層と比べ多くなっています。一方、10歳代後半ではテレビ・ラジオ番組、新聞・雑誌の記事や広告の割合が低く、先にみたテレビ・ラジオ・新聞・雑誌にかける総時間の短さとの間で整合性がみられます。

他に、消費者トラブルに遭わないように参考にする情報については、図表I-2-2-10で紹介していますが、30歳代まではインターネットを最も利用しているとみられます。

●インターネット上のレビュー情報も参考に

総務省「GDPに現れないICTの社会的厚生への貢献に関する調査研究報告」によると、インターネット上のレビューを参考にする人のうち、商品の購入に踏み切ったことがあるという人が20歳代から50歳代まででは約9割でした。レビューを参考にする人にとってレビューの内容は購入の意思決定に大きな影響を及ぼしていることが分かります(図表I-3-1-23)。

また、影響を及ぼす頻度については、20歳代から30歳代までの若い世代では、5回以上経験があると回答した人が約5割に及び、より頻繁に意思決定に影響を及ぼしていることがみて取れます。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)でも、「商品やサービスを検討するときにクチコミを参考にする」とした回答の割合は、20歳代で71.4%となっており(図表I-3-1-24)、特に20歳代女性は82.7%と高くなっています。

●情報が多すぎて、選択ができなくなることも

インターネット等からの様々な情報を、商品やサービスの選択の参考にする一方で、情報が大量にあり、その収集手段も多様になったために選択が困難になったと感じている消費者もいます。第一生命経済研究所「若者の価値観と消費行動に関する調査」(注70)によると、「モノや情報が多すぎて、何が『いい』のかわからず買えないことが多い」とする人は、特に20歳代の女性で多く、20歳代前半の女性(学生を除く。)で62.6%、20歳代後半の女性で61.9%を占めており、男性においても20歳代前半の学生と、20歳代後半から30歳代前半までは他の年齢層に比べて高く、若者において「選べなくて買えない」という状況が発生しやすいことがうかがえます。さらに、「買いたいと思って調べたり選んだりしているうちに、面倒になって買うのをやめてしまうことがある」とする割合も20歳代、30歳代の女性では7割近くに及び、同年代の男性でも過半数を占め、他の年齢層より高くなっています。

若者はインターネット等から多くの情報を収集しているがゆえに、逆にその情報を活用することが負担になっているという面もあることがうかがえます。

●若者はSNSをきっかけに商品購入

若者を中心として、スマートフォンでの主な用途にSNSが挙げられたことを紹介しましたが、SNSはどのくらいの頻度で使われているのでしょうか。

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)で、利用頻度について尋ねたところ、「毎日利用している」と回答した割合が10歳代後半で72.7%、20歳代前半で69.4%と高いことが分かります(図表I-3-1-25)。また、性別では30歳代までは女性が男性を上回っていて、10歳代後半の女性は約8割が毎日利用しています。

また、同調査で、「SNSで情報を見たことがきっかけで商品購入・サービス利用をした」経験について尋ねたところ、10歳代後半の女性を中心に、20歳代までの若者において、経験があるという回答の割合が高くなっています(図表I-3-1-26)。

「友達がアップやシェアをした情報」や「芸能人や有名人がアップやシェアをした情報」がきっかけで商品購入・サービス利用をしたという回答については、10歳代後半と、20歳代で「友達」が3割、「芸能人や有名人」が2割となり、それぞれの全体平均(「友達」14.3%、「芸能人や有名人」8.9%)を大きく上回りました。また、年齢層を問わず、「友達がアップやシェアをした情報」がきっかけで購入・利用をしたという女性の割合は、おおむね男性における割合を上回っています。

若者や女性は、商品購入やサービス利用について、友達や芸能人、有名人のSNSから得る情報やつながりをきっかけにしたり、多用したりしていることが分かります。

●若者は自ら情報発信

SNS等から得られる情報が消費行動につながるというだけではなく、自ら情報を発信している若者もかなりみられます。消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)によれば、ウェブサイトやブログ、SNS等を使って、身の回りの出来事や日頃考えていること等を情報発信しているかを尋ねたところ、当てはまる(「かなり当てはまる」+「当てはまる」)と回答した割合は、年齢層が低いほど高い傾向で、10歳代後半、20歳代の女性では4割に上ります(図表I-3-1-27)。若年層の女性を中心に、自ら情報を発信する行動が浸透していることが分かります。

さらに、消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)でSNSに投稿する写真や動画を撮影することを目的にとる行動について尋ねたところ、SNSで投稿した経験がある人のうち、全体では「旅行(日帰りを含む)」が45.6%、「外食」が38.7%と、いわゆる「コト消費」を行う人が多くみられます。

年齢層別にみると、20歳後半を中心に、何らかの行動をしている人が多いことが分かります(図表I-3-1-28)。また、全体と比べ、10歳代後半、20歳代とも「友達と集まる」との回答の割合が大きくなっています。10歳代後半は、「イベントに参加する」との回答が3割を超えています。

性別にみると、女性のほうが情報発信のための行動をしている面がみられます。

これらの、自分自身の身の回りの出来事を投稿する行動には、スマートフォンが大きな役割を果たしていると思われます。多くの若者がスマートフォンを保有していることは前述したとおりですが、写真や動画を簡単に撮影でき、すぐに投稿も可能となる、スマートフォンの機能を使って発信していることが改めてうかがえます。

以上、インターネットやSNSについて、消費生活に関係する様々な利用についてみてきました。若者はスマートフォンの多様な機能を使いこなし、日々活用していることが確認できました。そして、受け身として情報を収集するのみならず、発信する側にもなっており、そのために出掛けたり買物をしたりするなど、消費行動にも大きく影響していることが推測されます。

●情報化の進展がもたらす消費社会の将来

第1部第2章第1節で、インターネットを介した新たなサービスの形態であるシェアリングエコノミーについて、その仕組みや認知度、関心や不安を紹介しました。ここでは、年齢層に分けて、その内容別のサービス利用についての関心や、シェアリングエコノミーというサービスに消費者が期待すること等をみていきます。

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)で、「場所」、「モノ」、「移動」、「スキル」の4項目について、シェアリングエコノミー利用への関心を聞いたところ、既に利用したことがあるという回答と利用していないが、今後利用したいという回答を合わせてみると、「モノ」が、年齢層を問わず最も高い関心を集めていることが分かりました(図表I-3-1-29)。これは、インターネットオークションやレンタルサービス等の従来から存在するサービスに関係するものであることから、内容についてイメージしやすく、他のサービスに比べなじみがあることが推測されます。そして、この「モノ」については、特に若者における関心が高くなっています。

全体的な傾向として、若者は、項目を問わず、シェアリングエコノミーに対する関心が他の年齢層より高く、新しいサービスを取り入れたいという柔軟性が見受けられます。

シェアリングエコノミーで「場所」、「モノ」、「移動」、「スキル」等を利用することへの期待は、「安価なこと」や「自分のニーズに合っていること」との回答の割合が年齢を問わず高くなっています(図表I-3-1-30)。

特に10歳代後半、20歳代の若者は、「安価なこと」との回答の割合がそれぞれ56.7%、64.8%と回答項目の中で最も高くなっています。また、20歳代では「高価で手が届かないものを使えること」との回答の割合も、全年齢層の中で最も高く、29.6%でした。

他方で、「購入するよりも楽しかったり、面白かったりすること」や「提供者とのコミュニケーション」との回答は、年齢が上がるほどその割合が増加しています。

これらのことから現状として、若者はシェアリングエコノミーによる場所、モノ、移動等の利用に対して関心が高い一方、貴重な体験や娯楽といった側面での利点よりも、実利的な側面により期待していることがうかがえます。

以上のように、シェアリングエコノミーを例に挙げましたが、情報化の進展がもたらす新たな消費形態等については、将来を担う若者が中高年層より一歩先に自身の消費形態に取り入れてリードしていくことで、今後、消費社会の更なる発展へとつながっていく可能性があります。

COLUMN10
今後、現れると想定される3つの消費行動タイプ


  • (注70)全国の20歳から49歳までの男女(サンプル数12,466人)を対象に、2017年2月15日~21日に実施したインターネット調査。

担当:参事官(調査研究・国際担当)