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第1部 第3章 第1節(2)若者の消費支出について

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 【特集】若者の消費

第1節 若者の消費行動

(2)若者の消費支出について

●若者の低下幅が大きい平均消費性向

若者は消費に「消極的」なのでしょうか。また、他の年齢層と比べてどのような状況にあるのでしょうか。ここでは、所得に占める消費の割合の推移をみることにより、年齢層別に消費に対する意欲をみていきます。

総務省「全国消費実態調査」により、可処分所得に占める消費支出の割合である「平均消費性向」の1984年から2014年までの推移について、二人以上の世帯のうち勤労者世帯(注62)を世帯主の年齢別にみると、全体が長期的に低下傾向になる中、20歳代、30歳代前半は全体より低下幅が大きいことが分かります(図表Ⅰ-3-1-3)。

2016年度政府経済財政報告では、総務省が実施している「家計調査」によれば、世帯人数が2人以上の勤労者世帯のうち、世帯主が39歳以下の世帯では、可処分所得が緩やかに増加する中でも消費支出はほとんど伸びておらず、節約志向が強まっているとされています。全体的に消費意欲が低下しているなかで、特に若者が消費に慎重であることがうかがえます。

●総世帯と若者総世帯の消費支出

若者が消費に対して以前より慎重になっていることは確認できました。では、若者はどのような費目で消費を減らしているのでしょうか。

総務省「全国消費実態調査」により、全年齢(平均)の総世帯(注63)全体と世帯主が30歳未満の総世帯の消費支出の推移をみると、1999年から2014年までの1か月当たりの消費支出は、共に減少傾向がみられます(注64)図表Ⅰ-3-1-4)。

世帯主が30歳未満の総世帯の消費支出について、1999年から2014年までの費目別の推移をみると、住居費以外の費目では、総じて減少しています。特に減少幅が大きい費目は、食料費です。消費支出の減少のうち、食料費の減少が占める割合は全年齢(平均)では約2割であるのに対し、世帯主が30歳未満の世帯では約4割に上ります。

一方で、世帯主が30歳未満の世帯では住居費が増加していますが、全年齢(平均)では、交通・通信費が増加しています。被服及び履物への支出は、世帯主が30歳未満及び全年齢(平均)の双方で4,000円以上減少しており、全年齢平均においては、その他の消費支出を除くと、食料費に次いで大きな減少幅となっています。

●若者単身世帯の男女別消費支出の推移

ここまでは、総世帯の消費の動向をみてきましたが、世帯の消費支出は家族構成等に影響されるため、若者個人の消費動向を把握することには限界があります。そこで、若者の単身者の消費支出の推移をみることにより、若者の消費にどのような変化が生じているかをみてみましょう。

総務省「全国消費実態調査」における30歳未満の単身世帯のデータを用いて、1999年から2014年までの若者個人の消費支出の推移を性別にみると、男性では14.4%、女性は4.2%減少しており、男性の消費支出の減少がより顕著です。

費目別の推移についてみると、男性は、「交通・通信費」(-14,239円)、「食料費」(-12,075円)が減少しているほか、「教養娯楽費」(-6,996円)、「被服及び履物費」(-3,763円)等が減少しています。また、女性については、「被服及び履物費」(-7,576円)及び「食料費」(-7,372円)が減少しています(図表Ⅰ-3-1-5)。

以上から分かる若者の消費動向のうち、各費目に含まれる携帯電話通信料や自動車等関係費、酒類、洋服代、食料費といった、増加や減少が目立つ個別の費用について、詳しくみていきます。

●携帯電話通信料の割合が増加している通信費

2004年から2014年の通信費の推移については、30歳未満の単身世帯でみると、ほぼ横ばいの状況にあります(図表Ⅰ-3-1-6)。ただし内訳をみると、携帯電話通信料(移動電話通信料)の割合が80.4%から93.2%へと大幅に増加しています。他方で、固定電話通信料は減少傾向にあり、2014年では約300円となっています。情報化の進展により、コミュニケーションの手段は固定電話から携帯電話に代替し、コミュニケーションの在り方にも影響しているとみられますが、若者ではその加速が一層進んでいることがうかがえます。

一方で、第1部第2章第2節で紹介した「今後節約したい/今後も節約したいもの」の中で、通信費は若者では上位を占めており、通信費が負担になっている若者は多いとみられます。

●若者の「車離れ」「アルコール離れ」

若者の消費については、「車離れ」、「アルコール離れ」等がいわれています。そこで、いくつかの個別品目について、30歳未満単身世帯の推移を男女別にみてみます。

自動車等関係費は、男性では大きく減少傾向にあり、2014年には1999年の半分以下の支出にとどまります(図表Ⅰ-3-1-7)。一方で、女性の自動車等関係費は一貫して増加傾向にあり、2014年には、1999年の2倍以上の支出となっています。

なお、同調査の30歳未満の単身の全世帯の耐久消費財普及率のうち、「自動車」については、男性において2004年の61.4%から2014年は45.7%へと減少しており、自動車を持たなくなっていることが分かります。これは自動車等関係費の減少と整合的です。一方で、女性は2004年の38.4%から2014年には41.0%へと増加しています。いわゆる「車離れ」は、若者の単身男性における傾向として確認することができます。

酒類の消費は男女とも減少を続けており、1999年と比べると、2014年には男性の支出は3割減少、女性の支出は半減しています(図表Ⅰ-3-1-8)。酒類の内訳では、特にビールの消費は減少しています。一方で、チューハイやカクテル等への支出は全体的に増加しており、酒類の嗜好が変化していることがうかがえます。

他には、洋服への支出が、男女とも長期的にみて減少傾向にあります(図表Ⅰ-3-1-9)。特に男性の支出は2009年から2014年にかけて半減しています。女性の支出は、1999年以降減少を続け、2014年には約5,000円と1999年の54.4%の支出にとどまります。

消費者庁「消費者意識基本調査」(2016年度)で、現在お金を掛けている項目として、若者では「ファッション」が上位に挙がっていますが、支出額としては明らかに減少傾向にあります。

必ずしも消費者が洋服に対し消費意欲を失っているわけではなく、ファストファッション(注65)の台頭などで、過去に比べ安価で品質の良いものが手に入るようになったことなども影響して、支出額が減少しているとみられます。

●単身世帯男性の外食費は減少

図表Ⅰ-3-1-4でみたように、総務省「全国消費実態調査」では、全世帯平均の食料費は1999年から2014年で減少しています(注66)が、その内訳をみると、調理食品は増加し、外食費は微減にとどまっています。食料費の減少の大きな要因は、素材となる食料への支出の減少にあります。

単身世帯の食料費を男女別にみると、30歳未満の男性は1999年と比べて2014年には外食への支出を大きく減らしています(-8,751円)(図表Ⅰ-3-1-10)。他方で、30歳未満の女性は、素材となる食料を食料費の中で一番多く減らしています(-4,212円)。単身世帯の平均や二人以上の世帯の平均と比べても、30歳未満の男性の外食費の減少が目立ちます。

これは、男性において調理食品の普及等による食の簡便化や、料理をしてみたいという意識が進み、自宅で食事をとるようになっていることの表れとも考えられます。

図表Ⅰ-3-1-1実質GDP成長率、消費者物価指数(CPI・前年比)、非正規雇用比率の推移

図表Ⅰ-3-1-2将来への希望

図表Ⅰ-3-1-3年齢層別の平均消費性向の推移

図表Ⅰ-3-1-4世帯主の年齢階級別1か月当たり消費支出の推移

図表Ⅰ-3-1-5単身世帯の1か月当たり消費支出の推移

図表Ⅰ-3-1-61か月当たり品目別平均支出額(通信費)

図表Ⅰ-3-1-71か月当たり品目別平均支出額(自動車等関係費)

図表Ⅰ-3-1-81か月当たり品目別平均支出額(酒類)

図表Ⅰ-3-1-91か月当たり品目別平均支出額(洋服)

図表Ⅰ-3-1-10食料費(調理食品、外食、素材となる食料)の推移


  • (注62)勤労者世帯とは、世帯主が会社、官公庁、学校、工場、商店などに雇用されている世帯をいう。ただし、世帯主が社長、取締役、理事など会社・団体の役員である世帯は、勤労者以外の世帯とする。なお、全世帯とは、勤労者世帯と勤労者以外の世帯を合わせたものをいう。
  • (注63)総世帯とは、世帯人員が二人以上の一般世帯と単身世帯とを合わせたものをいう。一般世帯とは、次のものをいう。(1)住居と生計を共にしている人々の集まり又は一戸を構えて済んでいる単身者、(2)(1)の世帯と住居を共にし、別に生計を維持している間借りの単身者又は下宿屋などに下宿している単身者、(3)会社・団体・商店・官公庁などの寄宿舎、独身寮などに居住している単身者
  • (注64)世帯人員の減少による世帯構成の変化が消費支出の減少に寄与していることに留意が必要。
  • (注65)世界的なファッション業界の流行を素早く採り入れた新商品を低価格で大量に販売するブランド。ファストフードになぞらえた造語。
  • (注66)総務省「家計調査」によると2014年から2016年までのエンゲル係数の上昇幅が1.8%ポイントであり、同省の分析では、その半分の0.9%ポイントが食品価格の上昇、0.2%ポイントがライフスタイルの変化、0.7%ポイントが将来不安や節約志向による支出の減少が要因とされている。

担当:消費者調査課