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第1部 第2章 第2節(4)食品ロスの現状と削減に向けた取組

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動

第2節 消費者意識・行動の状況

(4)食品ロスの現状と削減に向けた取組

●国内の状況

「食品ロス」とは、本来はまだ食べられるにもかかわらず捨てられる食品のことを指します。

農林水産省及び環境省では国内の事業系及び家庭系の食品ロス発生状況(2014年度)の調査に基づき、2017年4月に食品ロスに関する推計結果を公表しました。推計によれば、日本国内の年間の食品廃棄物量は約2,775万トン、そのうち食品ロスの量は約621万トンです。この量は、世界全体の食料援助量約320万トン(2015年WFP(注55))の約2倍に相当します。その内訳は、事業系の発生量が約339万トン、家庭系の発生量が約282万トンと、それぞれほぼ同程度の量が排出されています(図表I-2-2-17)。

●国際的な動向

食品ロスは国際的な課題でもあります。貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために、2015年9月に「持続可能な開発目標:SDGs」が国連で採択されました。SDGsには、17のゴール(目標)と169のターゲットが設定されていますが、ゴールの一つとして、「持続可能な生産消費形態を確保する」(つくる責任 つかう責任)(目標12)ことが位置付けられています。また、この目標12のターゲットの一つとして、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる。」が設定されています。

●食品ロスに対する消費者の意識・行動に関するアンケート結果

消費者庁では、2017年2月に、全国約3,000人を対象に食品ロスに関するアンケート調査を実施しました。

1 食品ロスの認知度

「「食品ロス」の問題を知っていますか。」の問に対して、「知っている」(「よく知っている」+「ある程度知っている」。以下同じ。)と回答した人の割合は、65.5%でした。

また、「食材の購入及び調理を行う」人が、「知っている」と回答した割合は、71.5%と全体に比べて高い割合であるのに対し、「食材の購入・調理ともにしない」人が「知っている」と回答した割合は、48.4%でした。食品に接する機会が多い「食材の購入及び調理を行う」人の方が「食品ロス」の認知度が高いという結果でした。

さらに、「食品ロス」の問題を「知っている」人に対する、「どこで食品ロス問題を知りましたか。」の問に対しては、ニュース(テレビ、ラジオ、インターネット、新聞)と回答した人が78.6%を占めました。

最近、ニュース等でも食品ロスについて取り上げられることが多くなっており、これらの情報に消費者が触れる機会が増えていることが、このような結果につながったと思われます。後述のとおり、消費者庁、農林水産省及び環境省は、2016年度には政府広報を活用し、テレビやラジオ等を通じた広報を行いました。今後も、消費者の関心が高まるよう普及・啓発を行っていきます。

2 家庭での食品ロスの心当たり

家庭での食品ロスの原因として自らの生活の中で最も思い当たるものを聞いた結果、「直接廃棄」(注56)が26.7%、「食べ残し」(注57)が23.7%、「過剰除去」(注58)が12.8%、「思い当たるものはない」が36.8%という結果でした(図表I-2-2-18)。

また、「食材の購入・調理ともにしない」方のうち50.1%の方が、「思い当たるものはない」と回答したのに対して、「食材の購入及び調理を行う」方の中では、33.0%という結果でした。

3 「賞味期限」「消費期限」の認知度

家庭での食品ロスの原因として思い当たるとの回答が最も多かった「直接廃棄」に関連して、「賞味期限」、「消費期限」について質問をしました。「『賞味期限』と『消費期限』の意味を知っていますか。」との問に対して、「知っている」と回答した人の割合は、64.9%でした(図表I-2-2-19)。また、「知っている」と回答した人の占める割合は、「食材の購入及び調理を行う」人では71.1%と全体に比べて高い割合であるのに対し、「食材の購入・調理ともにしない」人では52.4%でした。「食品ロス」の認知度と同様に、食品に接する機会が多い「食材の購入及び調理を行う」人の方が「賞味期限」、「消費期限」の認知度が高いという結果でした。

さらに、スーパー等で買物をする時に、「賞味期限」、「消費期限」をどの程度考慮して食品を購入するか聞いた結果、「少しでも期限までの期間が長いものを買う」が38.2%、「食品の種類によっては期限までの期間が長いものを買う」が23.0%という結果でした。一方、「食べる日時を考えて買う」と回答した人の割合は、27.3%でした。

「直接廃棄」を削減するためには、家庭での利用予定に照らして期限を確認し、購入することが重要ですが、「賞味期限」、「消費期限」の意味を「知っている」人のうち、42.6%の人が「少しでも期限までの期間が長いものを買う」と回答しており、全体より高い割合でした(図表I-2-2-20)。

「賞味期限(注59)」とは、定められた方法により保存した場合において、期待される全ての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日のことです。一方、「消費期限(注60)」とは、定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質(状態)の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日のことです。「必要な量だけ購入」して「食べきる」ことが食品ロス削減のポイントとなります。こうした家庭での取組についても、普及・啓発の必要があると考えています。

●食品ロス削減に向けた取組

食品ロス削減に向けて、消費者庁では様々な取組を行っています。以下、その一例を紹介します。

食品ロス削減に向けて、消費者庁を始め関係府省(消費者庁、文部科学省、農林水産省、経済産業省及び環境省)は、2012年度から毎年1回「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を開催し、各府省の取組の実施状況について情報共有を行っています。また、2013年から「ろすのん」(図表I-2-2-21)をロゴマークとして、食品ロス削減に向けた国民運動「NO-FOODLOSS PROJECT」を展開しています。

2016年6月には、食育推進全国大会において、消費者庁ブースを設け、パンフレットを配布するなどして食品ロス削減に向けた取組を紹介しました(図表I-2-2-22)。

2016年10月には、関係府省が連携して、「もったいないを見直そう~食品ロス削減シンポジウム~」(主催:消費者庁・農林水産省・環境省、後援:文部科学省)を開催しました。シンポジウムでは、地方公共団体や民間企業等からの事例発表と、「地域で見直す"もったいない"」というテーマでパネルディスカッションを行いました(詳細はコラム参照。)。

また、政府広報を活用し、農林水産省及び環境省と共同で、テレビやラジオ等を通じた広報も行っています(注61)。消費者に食品ロスの現状や課題等の情報を分かりやすく伝え、消費者の理解を深めることを目的に、消費者庁ウェブサイト上の専用ページ「食べもののムダをなくそうプロジェクト」等を通じ、情報発信を行っています。

加えて、啓発用のパンフレット(図表I-2-2-23)を作成し、消費者団体や地方公共団体等に配布して、消費者への普及・啓発に活用していただいています。

料理レシピサイト「クックパッド」に消費者庁のページ「消費者庁のキッチン」を設け、地方公共団体や消費者団体から寄せられた「食材を無駄にしないレシピ」や「他の料理に作り替えるレシピ(リメイクレシピ)」を紹介しています(図表I-2-2-24)。

前述のアンケート調査で、「消費者庁のキッチン」を知っているかを聞いた結果、「知っている」と回答した人は、17.7%でした。さらに、「知っている」と回答した人に、消費者庁のキッチンのレシピを使ったことがあるか聞いたところ、48.5%が使ったことがあると回答しました。

●食品ロスの削減には消費者の取組が必要

前述のとおり、2016年10月に関係府省が連携して「もったいないを見直そう」をテーマにシンポジウムを開催しました。「もったいない」という言葉は、古くから使われてきた言葉であり、日常生活の中でもよく耳にする言葉です。しかしながら、国内では年間約621万トンの食品ロスが発生しており、非常に「もったいない」状況が生じています。

消費者は、食品ロスの現状を知り、更なる食品ロス削減につながる「もったいない」を見直し、その意義について考えていくことが必要ではないでしょうか。

現在、食品ロスを削減する取組は、中高大学生、地方公共団体、各種団体等の幅広い主体によって行われています(コラム参照)。「もったいない」状況を改善していくためには、消費者がこうした取組を行う方々のことを理解し、応援していくことが必要ではないかと考えられます。さらに、消費者自らが、食品ロスに対して問題意識を持ち、主体的に取り組んでいくことが不可欠です。

また、消費者が主体的に食品ロス削減に取り組むことは、「消費者市民社会」や、「倫理的消費」の実践事例にもなり得ます。

食品ロスの削減に向けて、今後も取組が広がり、大きな成果に結び付けるために、消費者庁としても、関係府省と連携しながら、食品ロス削減の国民運動を展開していきます。

COLUMN1
食品ロス削減シンポジウムの開催

COLUMN2
中学生によるチーム「foodmoVingon!!」の活動

COLUMN3
学校での学びをきっかけに意識改革と個々の生徒の活動の広がり

COLUMN4
大学生が『もったいない』をテーマに食の大切さを発信

COLUMN5
「もったいない」を「ありがとう」へ

COLUMN6
食品ロス削減全国運動を展開

COLUMN7
気象情報を活用した食品ロス削減の取組

COLUMN8
食品ロスをテーマとした環境教育

COLUMN9
「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」の設立


  • (注55)国際連合世界食糧計画
  • (注56)「直接廃棄」とは、賞味期限切れ等により、料理の食材又は食品として使用・提供されずにそのまま廃棄したもの。
  • (注57)「食べ残し」とは、使用・提供された食品のうち、食べ残して廃棄したもの。
  • (注58)「過剰除去」とは、調理時にだいこんの皮の厚むきなど、不可食部分を除去する際に、過剰に除去した可食部分が廃棄されたもの。
  • (注59)当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあります。このため、「賞味期限」を過ぎた食品であっても、必ずしもすぐに食べられなくなるわけではありませんので、それぞれの食品が食べられるかどうかについては、消費者が個別に判断する必要があります。
  • (注60)開封前の状態で定められた方法により保存すれば食品衛生上の問題が生じないと認められるものです。このため、「消費期限」を過ぎた食品は食べないようにしてください。
  • (注61)政府広報オンライン「世界の合言葉「もったいない」食品ロスを減らすために ひと工夫!」(https://www.gov-online.go.jp/prg/prg14288.html)

担当:参事官(調査研究・国際担当)