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第1部 第2章 第2節(3)災害に関連した消費者意識や消費生活相談

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動

第2節 消費者意識・行動の状況

(3)災害に関連した消費者意識や消費生活相談

●東日本大震災被災地産品に対する消費者意識の変化

2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故の後、科学的知見に基づいた食品中の放射性物質に関する基準値が設定され、合理的な検査体制の下で食品の安全が確保されているにもかかわらず、被災県産の農作物を中心に買い控える等の消費行動がみられました。そこで、被災県の農林水産物等についての消費者の意識等を調査し、風評被害対策及び消費者理解の増進に関する取組に役立てることを目的として、2013年2月から半年ごとに被災地域及び被災地産品の主要仕向け先の都市圏の消費者約5,000人を対象として、インターネットを通じた消費者意識の実態調査を行っています。

その結果をみていくと、まず「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人に対して、「食品を買うことをためらう産地」について聞いたところ、「福島県産」と回答した人の割合は、2017年2月調査では調査対象者全体に対して15.0%でした(図表I-2-2-13)。福島県産の食品の購入をためらう消費者は一定割合存在していますが、推移をみると、年々減少傾向にあります。居住地別にみると、福島県在住者は、2013年2月調査の31.9%から2017年2月調査の9.7%へと大幅に減少しました。

食品中の放射性物質の検査の情報について「基準値超過の食品が確認された市町村では、他の同一品目の食品が、出荷・流通・消費されないようにしている」ことについて知っていると回答した人の割合は、2017年2月調査で43.1%でした。他方で、「検査が行われていることを知らない」とする回答は35.2%となっており、この数回の調査で増加傾向にあります。一定程度の理解がある反面、放射性物質に関する情報量の減少に伴い、食品中の放射性物質の検査を始めとする各種の取組についての理解度が低下傾向にあることがうかがわれます(図表I-2-2-14)。

「普段の買い物で食品を購入する際に、その食品がどこで生産されたか」を気にするか聞いたところ、「気にする」との回答割合は26.6%、「どちらかといえば気にする」との回答割合は38.7%となりました(2013年2月調査では「気にする」との回答は28.2%、「どちらかといえば気にする」との回答は40.0%。)。食品の産地を気にする理由を聞いたところ、調査対象者全体では、2017年2月調査では「産地によって品質(味)が異なるから」は32.6%(2013年2月調査より5.2ポイント増加)、「放射性物資の含まれていない食品を買いたいから」は18.6%(2013年2月調査より9.3ポイント減少)でした。

消費者庁では、2011年3月に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故を踏まえ、食の安全・安心を確保し、食品と放射能に関する理解を広げることを目的として、2011年度から「食品中の放射性物質」に関する情報提供とリスクコミュニケーションの推進に取り組んでおり、関係府省や地方公共団体及び各種団体と連携して、消費者と専門家、生産者、行政担当者等が共に参加する意見交換会を2016年度末までに618回開催しています。また、2013年度に養成したコミュニケーターに対し、ウェブサイトやメールマガジンで最新情報を提供するなど、各種支援を実施しています。

消費者庁としては、引き続き、関係府省と連携し、今回の意識調査の結果も踏まえつつ、今後とも、消費者に対して食品中の放射性物質に関する正確な情報提供を行い、消費者理解の増進に努めていく予定です。

●東日本大震災に関連する相談は減少

2011年3月の東日本大震災に関連する消費生活相談は、震災発生後の3月11日から12月31日までで、全国で31,365件の相談が寄せられました(図表I-2-2-15)。その後は減少傾向にあり、2016年は935件でした。

また岩手県、宮城県、福島県及び茨城県の被災4県では、震災直後の2011年は1万件を越える相談が寄せられましたが、2016年は450件まで減少しています。震災関連の相談のうち、宮城県と福島県での相談が被災4県全体の86.4%を占めている状況です。

また、各県で相談の主な商品・サービスは異なり、宮城県では「不動産貸借」、「工事・建築」が多く、これらを合わせると相談の半数を占めています。福島県では放射能に関する不安等の「野菜」の相談が2割を占め、その他には、「不動産貸借」、「工事・建築」など住宅に関わる相談も目立ちます。

被災4県以外の地域では、「復興への支援や、除染作業を請け負っている企業や施設への支援を名目として投資勧誘を受けたが、信用できるか」等の相談がみられました。

●熊本地震に関連した消費者対応

2016年4月に発生した平成28年(2016年)熊本地震(注54)については、消費者庁は注意喚起や、熊本県や国民生活センターと連携した消費者問題に係る相談体制の整備等を行いました。

具体的には、過去の震災時や熊本地震で寄せられた相談事例を踏まえて注意喚起を行ったほか、消費者ホットライン「188(いやや!)」及び「熊本地震消費者トラブル110番」(国民生活センターが開設したフリーダイヤル)における相談の受付、被災地への弁護士等専門家の派遣等を行いました。

●熊本地震に関する相談件数は住宅関連が中心

熊本地震に関する消費生活相談は、地震発生後の4月14日から30日までで、全国で627件の相談があり、翌5月には1,287件の相談がありましたが、その後は減少し、12月は126件になっています(図表I-2-2-16)。2016年全体では、熊本県での相談が83.0%を占めています。

また、相談の主な商品・サービスは熊本県では住宅関連の「不動産貸借」や「工事・建築」、「修理サービス」が多く、室外給湯器の設置不備に関する「給湯システム」の相談もみられました。これらを合わせると7割近くを占め、月別相談件数の推移をみても、発生当初から大きな変動はありません。これらの他には「火災保険」の相談もみられました。

熊本県以外の地域では、地震が発生した2016年4月は「国内パックツアー」、「手配旅行」、「航空サービス」、「ホテル・旅館」など、旅行に関する相談が目立ちました。5月以降は修繕工事等に係る「不動産貸借」、「工事・建築」等の相談が多くみられましたが、4月から6月に限れば、修繕工事等に係る相談と共に「募金」の相談が多く寄せられました。

東日本大震災では、放射性物質や津波等の様々な要素が絡んでいたため、相談内容が多岐にわたった一方、熊本地震ではそれらの要素がなかったため、住宅関連に相談が集中しました。また、東日本大震災では幅広い地域から相談が寄せられましたが、熊本地震では熊本県とその周囲の福岡県、大分県、佐賀県からの相談で約9割を占めました。


  • (注54)「平成28年(2016年)熊本地震」は4月14日21時26分以降に発生した熊本県を中心とする一連の地震活動を指す。

担当:参事官(調査研究・国際担当)