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第1部 第2章 第1節(4)シェアリングエコノミー型サービス

第1部 消費者意識・行動と消費者問題の動向

第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動

第1節 消費者を取り巻く社会経済情勢

(4)シェアリングエコノミー型サービス

●シェアリングエコノミーとは

近年、スマートフォンの普及等により、個人がいつどこにいてもインターネットにアクセスできる環境が整いました。これにより、これまでみえなかった個人等の所有物(自宅の空き部屋や車等)や能力(スキル、知識等)に関する情報を、インターネットを通じて、リアルタイムに、不特定多数の個人の間で共有することが可能になったことなどから、「シェアリングエコノミー」の普及が進んでいます(注48)

シェアリングエコノミーとは、「個人等が保有する活用可能な資産等(スキルや時間等の無形のものを含む。)を、インターネット上のマッチングプラットフォーム(注49)を介して他の個人等も利用可能とする経済活性化活動」であるとされています(注50)。具体的な取引の流れとしては、提供したい(貸したい、売りたい)人、利用したい(借りたい、買いたい)人がマッチングプラットフォームに登録し、不特定多数の提供者の中から、利用者がニーズに応じて選択し、お互いが合意すれば、提供者はモノ・サービスを提供し、利用者がそれを利用できるサービスです。また、多くのプラットフォームでは、取引終了後にお互いを評価し合う仕組みになっており、それがプラットフォーム上に公開されます。これにより、信頼のおける相手を選択する際の手がかりの見える化が図られています(図表Ⅰ-2-1-34)。

シェアリングエコノミーの最大の特徴は、消費者が事業者からモノ・サービスの提供を受けるという「B to C」(注51)の形態ではなく、マッチングプラットフォームを提供する事業者(以下「シェア事業者」といいます。)を介して、不特定多数の個人がモノ・サービスを提供し、それを利用するという「C to C」(注52)の形態が基本となっているという点にあります。シェア事業者自体は、直接利用者に対してモノ・サービスを提供するわけではなく、提供者と利用者の橋渡しをする場の提供者という位置付けです。ここでは、シェアリングエコノミーの特徴のうち、この「C to C」の形態であるという点を中心にみていきます。

●シェアリングエコノミーの例

現在、国内外で利用されているシェアリングエコノミーには、様々な種類が存在します(図表Ⅰ-2-1-35)。

① 空間のシェア

空間のシェアには、自宅の空き部屋の有効活用等をしたい提供者側と、ホテルよりも安価な宿泊場所を求める等の意欲を持つ利用者側とがシェアをする、「ホームシェア」(民泊を含む。)があります。また、営業時間外のオフィス・店舗の有効活用等をしたい提供者側と、日頃借りられないスペースを借りたい等の意欲を持つ利用者側とがスペースのシェアをする「遊休施設のシェア」なども挙げられます。

典型的なサービスとして、ホームシェアは、提供者側が保有する住宅の空き部屋等を宿泊施設として貸し借りできるもので、遊休施設のシェアは、提供者側が保有する使用時間外の会議室やパーティ会場等を、時間単位で貸し借りできるものです。提供者側は、使用していない空き部屋や施設を活用して収入を得ることができ、利用者側は、ホテル等の宿泊施設より安価に宿泊ができたり、普段は利用できない珍しい施設等を利用できたりするなどのメリットが考えられます。

また、このうち民泊サービスについては、訪日外国人の増加に伴う宿泊施設不足に対する解決策としても期待されます。

② モノのシェア

モノのシェアは、例えば、不要なモノを捨てるにはもったいないと感じる提供者側と、欲しいモノを安価に手に入れたい利用者側とが、スマートフォンのアプリ等を用いてモノのシェアをする、「フリマアプリ」が挙げられます。

フリーマーケットは、これまでは対面での取引が基本でしたが、スマートフォンのアプリなどを活用することによって、場所を問わず不特定多数の個人間で取引ができるようになりました。提供者側は資源の再利用をしつつ、収入も得ることができ、利用者側は、通常より安価にモノを手に入れたり、一般では流通されていないモノを手に入れたりできるなどのメリットが考えられます。

③ 移動のシェア

移動のシェアには、例えば、自分が所有する車を有効活用したい提供者側と、所有することなく(維持費をかけずに)車を使用したい利用者側とがシェア(車の貸し借り)をする「カーシェア」があります。また、余裕のある時間帯の有効活用等をしたい提供者側と、移動手段として車を利用する際に、できるだけ安価に済ませたい等と考える利用者側とがシェア(移動サービスの提供・利用)をする「ライドシェア」などが挙げられます。

特にライドシェアは、米国を中心に海外では拡大が著しい一方で、日本での利用は、現行の道路運送法(昭和26年法律第183号)による規制もあり、まだ広がっていない状況ですが、公共交通機関が利用できない地域や、自らの運転が難しい高齢者等の移動手段になり得る等の大きなメリットがあります。

また、このほかにも、自転車のシェア(サイクルシェア)などもあります。

④ スキルのシェア

スキルのシェアとしては、例えば、余裕のある時間を有効活用したい提供者側と、多忙な日常を送っている等の利用者側とが、家事、育児を始めとした「日常の用事」をシェアすることや、自分のスキルを幅広く有効活用したい提供者側と、知らない(できない)ことを手軽に教えて欲しい等の利用者側とが「知識」をシェアすることなどが挙げられます。

日常の用事のシェアの典型的なサービスは、提供者・利用者が近所同士又は顔見知り同士であることが前提条件となっており、具体例としては、専業主婦で時間に余裕のある提供者が、近所に住む利用者の家事をサポートしたり、顔見知り同士でマッチングプラットフォームに登録して、託児や子供の送迎をサポートしあったりするものです。

知識のシェアの典型的なサービスは、文章の翻訳や校正、ロゴの作成・デザインなどの、知識やスキルが必要とされるサービスを、それを本業としない個人から享受することができるもので、実際に会ったり、物品を送付したりすることをせず、インターネット上で完結するサービスのみを対象としています。

これらのスキルのシェアは、提供者側は自分の空き時間に知識・スキルを活用して収入を得ることができ、利用者側は、安価かつ手軽にサービスを受けることができるなどのメリットがあります。

●シェアリングエコノミーに関する消費者意識

消費者庁「消費生活に関する意識調査」(2016年度)では、シェアリングエコノミーに関する意識・行動等について聞いています。

シェアリングエコノミーの認知度について聞いたところ、シェアリングエコノミーを「知っていた」との回答が11.6%、「知らなかった」との回答が88.4%でした。国内においては、シェアリングエコノミーそのものについて、まだあまり知られていないことが分かります。

また、同調査では、シェアリングエコノミーへの関心について、個人が提供する側となる場合(以下「提供側」といいます。)、個人が利用する側となる場合(以下「利用側」といいます。)の両方の視点から聞いています。

シェアリングエコノミーの提供側では、「場所のシェア(ホームシェア等)」に関心がある(「既に提供したことがある(海外を含む。)」+「今後提供してみたい(今後も提供したい。)」。以下同じ。)との回答は9.4%、「モノのシェア(フリマアプリ等)」に関心があるとの回答は20.7%、「移動のシェア(カーシェア・ライドシェア等)」に関心があるとの回答は11.1%、「スキルのシェア(家事代行等)」に関心があるとの回答は15.7%でした。

シェアリングエコノミーの利用側では、「場所のシェア(ホームシェア等)」に関心がある(「既に利用したことがある(海外を含む。)」+「今後利用してみたい(今後も利用したい。)」。以下同じ。)との回答は13.6%、「モノのシェア(フリマアプリ等)」に関心があるとの回答は24.2%、「移動のシェア(カーシェア・ライドシェア等)」に関心があるとの回答は16.6%、「スキルのシェア(家事代行等)」に関心があるとの回答は17.8%でした(図表Ⅰ-2-1-36)。

全体的にみると、利用側への関心が提供側への関心よりも高くなっています。これは、提供側には、そもそも提供できる資源が必要なため、ハードルが高いと感じる人が多いためだと考えられます。

また、提供側・利用側ともに、他のシェアに比べて「モノのシェア」への関心が高く、国内で既にインターネットオークション等を利用している人には馴染みやすいサービスであるからだと考えられます。

また、どのシェアについても、「今後提供・利用したくない」との回答は、提供側・利用側問わず3割~4割と高く、シェアリングエコノミーに対して不安を抱く人や、従来のサービスの利用で満足している人が多いと考えられます。一方で、「分からない」との回答は、おおむね「今後提供・利用したくない」との回答を超えており、この結果からも、そもそもシェアリングエコノミーの認知度が低いことがうかがえます。

さらに、同調査では、シェアリングエコノミーについて不安に思ったことや、使ってみて困ったことがあるかについて、提供側、利用側それぞれの視点から聞いています。「安全性」と回答した人は、提供側が41.8%、利用側が44.8%で、「品質」については、提供側が22.6%、利用側が32.5%、「お金のやり取り」については、提供側が38.2%、利用側が36.0%、「相手とのコミュニケーション(評価を付けたりすること)が面倒」については、提供側が24.5%、利用側が23.3%、「相手とトラブルになった際の対処」については、提供側が38.7%、利用側が36.1%、「不安に思ったことや使ってみて困ったことは特にない」については、提供側が3.6%、利用側が3.3%でした(図表Ⅰ-2-1-37)。

提供側と利用側を比べると、「安全性」、「お金のやり取り」、「相手とトラブルになった際の対処」への不安については共通して高い結果となっており、また、「品質」への不安については提供側よりも利用側が高くなっています。

また、「不安に思ったことや使ってみて困ったことは特にない」と回答した人は、提供側が3.6%、利用側が3.3%とごくわずかであり、一方で「分からない」と回答した人がいずれも30%を越えています。多くの人がシェアリングエコノミーに対していずれかの不安を抱いているか、そもそも認知していないためにイメージが湧いていないことが分かります。

●国内においてシェアリングエコノミーが進展するために

これらの結果を踏まえると、国内におけるシェアリングエコノミーの普及は、まだ始まったばかりだと考えられます。要因としては、シェアリングエコノミー以外にも便利なサービスがあふれていることや、消費者が抱く不安が払拭されていないことが考えられます。

シェアリングエコノミーが国内において広く利用されるためには、従来のサービスと異なる特性を消費者が理解すること、シェア事業者による取組、行政によるサポートが不可欠です。

① 求められる消費者の行動

シェアリングエコノミーにおいては、実際のサービスを提供する主体は、シェア事業者ではなく、主に個人である「提供者」です。このため、サービスの品質について責任を負うべきはシェア事業者ではなく提供者であり(注53)、サービスに関して生じたトラブルや損害については、提供者と利用者の当事者間で解決することが基本となります。

また、全国の消費生活センター等に寄せられたシェアリングエコノミーに関する相談事例では、「フリマアプリで購入して届いたものが、既に壊れていた」、「スキルのシェアの出品者から情報を購入したが、その後高額の情報商材の購入を強要された」、「トラブルが起きたため、仲介事業者に相談したが、『個人間で話し合い、解決するしかない』といわれた」等の相談が寄せられています。

利用側の消費者は、相手が必ずしもプロではないことを十分理解した上で、サービスを利用する必要があります。シェア事業者が定めるルールや、両者の間で決まったルール等をよく遵守した上で、シェアリングエコノミーならではのメリット・デメリットやリスクをよく理解することで不安の低減につながり、注意深く賢く選択すれば、利便性を享受することができます。これにより、シェアリングエコノミーが充実したサービスに発展していくことも考えられます。

② シェア事業者の自主的な取組

シェア事業者は、トラブルの未然防止や、トラブル後の対処が適切に図られるような仕組みを設ける必要があります。

具体的には、まず、消費者の安全・安心を確保することです。生命・身体についての重篤な事故につながらないような仕組みや、詐欺等の財産的な被害に発展しない仕組みなどが求められ、必要な取組を実施することが重要です。そのためには、例えば、シェア事業者が、提供者・利用者に対し、公的身分証による本人確認を行うなどが考えられます。

次に、サービスの品質に関する信頼性や、提供者・利用者の信用性について、見える化を図ることが必要です。そのためには、相互で評価を付けあう仕組みを設けることや、違法・権利侵害となるサービスの提供を禁止することなど、利用者が正しい情報を基に選択できる仕組みとなっていることが重要です。

また、責任分担を明確化することも必要です。シェアリングエコノミーでは、当事者間のみならず、第三者も絡んだトラブルの発生が懸念されます。トラブルが起きてしまった時に備えて、当事者や第三者からの相談を受け付ける窓口の設置や、安全確保が求められるサービスについては賠償責任保険等の措置を備えるなど、提供者、利用者、シェア事業者の責任を明確化し、トラブルの解決を図ることができる仕組みにすることが重要です。

③ 行政のサポート

政府では、2016年度に「シェアリングエコノミー検討会議」を開催し、民間団体等による自主的なルール整備を始めとした必要な措置等を取りまとめるなど、シェアリングエコノミーの健全な発展に向けた取組を実施しており、2017年1月には、シェアリングエコノミーの促進に関する必要な情報提供・相談窓口機能を持つ「シェアリングエコノミー促進室」が設置されました。

行政がこうした取組を推進し、シェア事業者の自主的な取組の促進や消費者への情報提供などについて、積極的にサポートを行い、シェアリングエコノミーの健全な発展を促進していくことが求められています。

一方で、今後シェアリングエコノミーが広がっていく中で、既存の行政規制の及ばない新たなサービスが生まれ、それを利用する消費者が消費者被害に遭う可能性もあります。行政は、こうした新たなサービス形態の広がりに対しても、消費者が安心・安全な消費生活を営めるよう、必要に応じて適切に対処することが必要です。

シェアリングエコノミーは、消費者にとって経済活動の新たな選択肢となり、消費生活を更に豊かにするだけでなく、一億総活躍社会の実現や、地域社会における課題の解決、資源の効率的な活用等にもつながると考えられています。シェアリングエコノミーはC to Cの取引が基本であることを消費者がよく理解した上で、利用が広がることが期待されます。

図表Ⅰ-2-1-34シェアリングエコノミーの構図

図表Ⅰ-2-1-35シェアリングエコノミーの種類

図表Ⅰ-2-1-36シェアリングエコノミーへの興味

図表Ⅰ-2-1-37シェアリングエコノミーへの不安


  • (注48)シェアリングエコノミーは、米国のシリコンバレーを中心に発展を続け、現在ではグローバルに拡大。米国ではシェアリングエコノミーの代表例である「民泊」、「ライドシェア」の普及、オランダではモノの貸し借りができるサービスの普及、韓国では行政主導でソウル市がシェアリングエコノミーの推進に取り組み、積極的に公共施設を活用するなど、現在、各国におけるシェアリングエコノミーはそれぞれ特色が表れている。
  • (注49)個人(又は法人)と個人(又は法人)とを仲介するために、事業者が運営しているインターネット上のサービスのこと。
  • (注50)シェアリングエコノミー検討会議中間報告書(2016年11月)
  • (注51)Business to Consumerの略。事業者対消費者の取引のこと。
  • (注52)Consumer to Consumerの略。消費者対消費者の取引のこと。
  • (注53)ただし、提供されるサービスが個別事業法(旅館業法等)の適用対象となっている場合には、当該個別事業法の規定によって、サービスの品質が担保される。

担当:消費者調査課