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第1部 第2章 第1節(1)家計消費、物価の動向

第1部 消費者意識・行動と消費者問題の動向

第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者意識・行動

第1節 消費者を取り巻く社会経済情勢

(1)家計消費、物価の動向

●社会経済活動の中で大きなウェイトを占める消費活動

社会経済活動の中で、消費活動は大きなウェイトを占めています。家計が支出する消費額の総額は、2016年に約293兆円で、経済全体(名目国内総生産(GDP)=約537兆円)の50%以上を占めています(図表Ⅰ-2-1-1)。

諸外国をみると、先進国は概して消費者が支出する総額が経済全体の5割を超えています。また、米国のように消費支出が経済の7割近いウェイトを占めている国もあります(図表Ⅰ-2-1-2)。

消費者の消費活動は、我が国の経済社会全体に大きな影響を及ぼしており、経済の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要です。

●家計の支出の4割超がサービスへの支出

総務省「家計調査」により、2016年における「二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)」1世帯当たりの財・サービスへの支出をみると、教養娯楽や外食、住居等の「サービスへの支出」が占める割合は42.6%、食料や光熱・水道等の「財(商品)への支出」は57.4%です(図表Ⅰ-2-1-3)。

国内総生産に占めるサービス業の比率が相対的に高くなっていく経済のサービス化が進む中で、家計に占めるサービスへの支出割合は、上昇傾向にあります(図表Ⅰ-2-1-4)。

●賃金水準は改善するも、消費支出は手控える傾向

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2016年の名目賃金はおおむね前年同月を上回って推移しています。また、物価の動向を加味した実質賃金も、2016年はおおむね前年同月を上回って推移し、2016年の実質賃金指数は、5年ぶりに増加に転じました(図表Ⅰ-2-1-5)。企業の賃上げによる雇用所得環境の改善で名目賃金の上昇基調が続いています(注42)

次に、家計の消費支出の動向を、総務省「家計調査」によりみると、2016年は2月に前年同月を上回りましたが、3月以降総じて前年同月を下回って推移しています(注43)図表Ⅰ-2-1-6)。実質賃金の改善傾向が続く一方で、消費者は消費支出を手控えている傾向がみられます。

●消費者の支出に対する姿勢は慎重な状態が継続

消費者の支出への意識について、「物価モニター調査」(【解説】参照。)からみていきます。物価モニターの方々に、「あなたの世帯の消費への支出額を、今後3か月の間について、去年の同期間と比べて、どのようにしていこうと思っていますか。」と聞いたところ、2015年4月以降「減らそうと思っている」と回答した人の割合が24か月連続して50%を超えています(図表Ⅰ-2-1-7)。一方、「増やそうと思っている」と回答した人の割合は、4~7%台と低い状況となっています。「減らそうと思っている」と回答した人にその理由を聞いたところ、調査を始めた2013年10月以降、「所得が減ると思うから」と回答した人が常に最も多くなっています。賃金に改善傾向がみられた2015年以降も継続して50%台で推移しており、将来の所得に対する不安から、消費者の支出に対する姿勢は慎重な状態が継続していると考えられます(図表Ⅰ-2-1-8)。

【解説】物価モニター調査の実施

「物価モニター調査」とは、原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響、物価動向についての意識等を正確・迅速に把握し、消費者等へのタイムリーな情報提供を行うことを目的として消費者庁が行っている調査です。

広く一般から募集した全国2,000名の物価モニターにより調査は行われています。調査内容には、価格調査と意識調査があり、価格調査は、消費者庁が指定した調査対象25品目(図表Ⅰ-2-1-9)の価格の見取調査で、毎回の調査において同一店舗で同一商品の店頭表示価格を継続して調査するものです。特売品も含め、消費者に身近な品目、日頃よく購入する品目の価格を把握します。また、意識調査は、物価モニターに対し、消費や物価動向についての意識の変化を調査するものです。

2013年10月から調査を行い、2013年度は3回、2014年度は6回調査を行い、2015年度以降は調査回数を毎月の12回に増やし、調査結果をタイムリーに公表しています(注44)

●熊本地震による生活必需品の価格への影響

消費者庁では、災害時の生活必需品等の価格について、物価モニター調査などを通じ、把握に努めています。2016年5月、6月、7月物価モニター調査では、同年4月に発生した熊本地震による生活必需品の価格への影響を調査しました。

結果を全国でみると、生活必需品の中で値上がりした、又は入手困難になったと思う品目は「特になし」と回答した割合が5月~7月を通じて最も多く、各品目の影響があったと答えた品目割合も、7月には、一部を除き5月よりも減少しました(図表Ⅰ-2-1-10)。

一方、熊本県のモニターの回答をみると、値上がりした、又は入手困難になったと思う品目として、「ミネラルウォーター」、「パン」と回答した割合が、5月調査時にはそれぞれ50%を超えました。しかし、これらも含め、7月調査時にはほとんどの品目で5月よりも回答した割合が減少し、熊本県でも「特になし」と回答した割合が最も多くなりました。

●2016年の消費者物価は横ばい

消費者が購入する財・サービスの価格の動きについては、総務省「消費者物価指数」によると、2014年4月の消費税率引上げ後、横ばいとなっていましたが、2016年後半には、「総合」、「生鮮食品を除く総合」に上昇する動きがみられます(図表Ⅰ-2-1-11)。

消費者が購入する財・サービス全体の価格の動きを示す「総合」指数は、2016年に入ってからは、前年比マイナスで推移することが多くなっていましたが、10月以降は前年比プラスとなっています(図表Ⅰ-2-1-12)。

また、「総合」から、天候等による価格変動が大きい生鮮食品を除いた価格の動きを示す「生鮮食品を除く総合」指数(いわゆる「コア」指数)は、2016年3月以降、10か月連続前年比マイナスで推移しました。これは、2015年半ば以降の円高方向の動きや、エネルギー価格の低下などが原因と考えられます。その後、原油価格の上昇などを背景に、2017年1月に前年比はプラスとなりました。一方、「総合」から生鮮食品及びエネルギーを除いた価格の動きを示す指数は、2016年は前年比プラスで推移し、生鮮食品やエネルギー以外の財・サービスの価格は足下で横ばいと考えられます。

一方で、総合指数の前年比の動きについて項目別の寄与度(各要因が全体の動きにどれだけ影響しているかの度合い)をみてみると、エネルギーの寄与度は、2015年1月にマイナスに転じて以降、2017年1月にかけてマイナスに寄与していますが、2016年半ば以降、マイナス幅は縮小しています。産油国間における原油生産高安定化への努力や2016年末にかけての円安傾向などによる原油調達価格の上昇などが原因と考えられます。

エネルギーが物価にマイナスに寄与している一方、食料品や、その他の財・サービスは、物価の上昇に寄与しており、特に2016年10月以降、天候不順の影響により生鮮食品が値上がりしたことで、食料のプラスの寄与度が大きくなっています(図表Ⅰ-2-1-13)。

●灯油及びガソリンの店頭価格は2016年以降上昇傾向

一般的に灯油やガソリンの店頭価格は、原油コストを踏まえつつ需給状況や地域における競争環境等も反映した形で市場の中で決定されていくため、灯油・ガソリンの店頭価格の推移は、原油価格の動向に影響を受けています。

2016年4月以降、灯油及びガソリンの店頭価格は上昇傾向で推移しています(図表Ⅰ-2-1-14)。これは、原油価格が2016年2月以降上昇に転じ、2016年10月の石油輸出国機構(OPEC)の生産調整などもあり、上昇傾向で推移しているためです。

原油価格とガソリン価格の関係については、原油価格の動きをおおむね1か月遅れてガソリン価格が反映するような形で動いています(図表Ⅰ-2-1-15)。これは、国内の石油元売事業者が、中東などの産油国から原油を輸入し、ガソリンを生産、その後小売業者に販売(配送)されるといった生産・流通過程に一定の時間が掛かることから、国内の小売業者が原油価格の変動を反映して売値を変更するまでに時間が掛かっているためと考えられます。

●物価モニターの1年後の物価上昇期待は縮小傾向

物価モニターに、1年後の物価について聞いたところ、調査を始めた2014年12月から2015年7月までは、「上昇すると思う」と回答した人の割合は、80%を超えていましたが、2015年8月以降は減少傾向となり、2016年9月には54.5%にまで減少、その後は横ばい傾向となっています(図表Ⅰ-2-1-16)。

「上昇(下落)すると思う」と答えた人に1年後どれくらい上昇(下落)するか聞いた結果を加重平均したところ、調査を始めた2014年12月は2.3%でしたが、直近の調査では1.2%となっており、縮小傾向となっています。また、内閣府が行っている消費動向調査でも同様に物価の上昇期待が縮小傾向となっています(図表Ⅰ-2-1-17)。

●消費者が一番物価の変動を感じるのは生鮮食料

物価モニターに、どのような品目で一番物価の変動を感じるか聞いたところ、「生鮮食品」と回答した割合が半数以上を占め、次いで「ガソリン・灯油」が2割超となりました(図表Ⅰ-2-1-18)。この背景として、生鮮食品については2016年秋に野菜が高騰したこと、ガソリン・灯油については原油価格の変動により大きく価格が変動すること、また、2品目とも購入回数が多いため消費者が価格の変動に気付きやすいことがあると考えられます。

●公共料金は電気代、ガス代を中心に下落後上昇

家計の消費支出の約20%を占める公共料金は、電気代、ガス代を中心に2015年半ば以降、下落傾向となっています。この主な要因としては、原油価格の下落により電気やガスの燃料費が下落したことが、原燃料費調整制度(注45)により、電気料金、ガス料金のそれぞれに反映されたことが挙げられます(図表Ⅰ-2-1-19)。また、電気料金については、2016年4月、電力小売全面自由化が開始し、2016年末の時点で、低圧需要家(一般家庭等)の約3.6%(注46)が電力の供給元を切り替えています(第2部第1章第5節(5)参照。)。また、2017年4月からは都市ガスの小売全面自由化も開始するため、電気とガスのセットプランなど、多くの選択肢が提供されることが予想され、今後、電力やガスの自由化の影響を受けることも考えられます。

図表Ⅰ-2-1-1名目国内総生産に占める家計消費等の割合(2016年)

図表Ⅰ-2-1-2GDPにおける消費支出割合の国際比較(2015年)

図表Ⅰ-2-1-3財・サービス支出の内訳(2016年)

図表Ⅰ-2-1-4財・サービス支出の内訳の推移

図表Ⅰ-2-1-5実質賃金の動向(前年同月比)

図表Ⅰ-2-1-6消費支出の動向(前年同月比)

図表Ⅰ-2-1-7支出に関する消費者の意識の動向

図表Ⅰ-2-1-8支出を減らそうと思う理由

図表Ⅰ-2-1-9物価モニター調査対象品目(2015年度以降)

図表Ⅰ-2-1-10熊本地震の物価への影響

図表Ⅰ-2-1-11消費者物価指数の動向

図表Ⅰ-2-1-12消費者物価指数(前年同月比)の動向

図表Ⅰ-2-1-13消費者物価指数(総合)の項目別寄与度(前年同月比)

図表Ⅰ-2-1-14灯油・ガソリン店頭価格の動向

図表Ⅰ-2-1-15ドバイ原油価格(円建て)と店頭ガソリン価格との比較

図表Ⅰ-2-1-161年後の生活関連物資全般の物価動向について

図表Ⅰ-2-1-17消費者が予想する1年後の期待インフレ率

図表Ⅰ-2-1-18物価の変動を感じる品目

図表Ⅰ-2-1-19主な公共料金の動向(消費者物価指数)


  • (注42)雇用所得環境の総合的な判断については、雇用者報酬や総雇用者所得といったマクロの出指の動向を勘案して判断を行う必要があることに留意。
  • (注43)世帯数が増加し、世帯人員が減少傾向にあることに留意が必要。
  • (注44)消費者庁「物価モニター調査」結果URL:http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/price_measures/index.html#price_monitor
  • (注45)発電にかかる燃料費やガス製造にかかる原料費の変動に応じて料金が変化する制度で、原燃料の貿易統計価格の3か月平均値に基づき、料金を毎月調整します。原燃料価格の大幅な上昇時の需要家に対する影響を緩和するために、自動的に調整される幅に一定の上限を設定し、原燃料費が高騰しても、需要家料金への反映には一定の抑制をします。
  • (注46)電力・ガス取引監視等委員会の電力取引報によると、2016年4月から12月までの新電力への契約先の切替え実績(累積)は、約225万件で、低圧需要家(一般家庭等)の約3.6%が電力の供給元を切り替えています。

担当:消費者調査課