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第1部 第1章 第4節(1)インターネットや情報通信に関連するトラブル

消費者意識・行動と消費者問題の動向

第1章 消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果等

第4節 最近注目される消費者問題

第3節の2016年の消費生活相談の概況でみたように、情報通信に関する相談は消費生活相談全体で大きな割合を占めています。その内容は多岐にわたりますが、ここでは、スマートフォンを利用してアクセスするウェブサイトを利用した「デジタルコンテンツ」に関するもの、中でも最も相談件数が多い「アダルト情報サイト」に関するもの、また、ソーシャルメディアを通じた個人情報発信・コミュニケーションツールに関するもの、インターネット上の「お試し価格」、「初回無料」などの表示をきっかけに健康食品等を注文して起きるトラブル等について、取り上げます。

(1)インターネットや情報通信に関連するトラブル

●スマートフォン利用でのインターネット関連のトラブルは増加傾向

スマートフォンを利用してインターネットにアクセスする機会が増加することにより、スマートフォンから「アダルト情報サイト」や「出会い系サイト」等のデジタルコンテンツを利用した「スマートフォン関連サービス」に関する相談も増加傾向にあり、2016年は前年からやや減少しているものの約8.2万件寄せられています(図表I-1-4-1)。

また、「デジタルコンテンツ」に関する相談のうち、スマートフォンを利用してトラブルに巻き込まれた割合をみると、2012年は11.3%と約1割でしたが、2016年には48.0%と半数を占める状況となっています。このことから、最近のインターネット関連のトラブルの増加は、スマートフォンの普及が大きな要因であるといえます。

●「アダルト情報サイト」の相談は世代で違い

「デジタルコンテンツ」の中でも、「アダルト情報サイトを見ようとしたら、突然『登録完了』等の画面が表示され、高額な料金を請求された」などの「アダルト情報サイト」に関するトラブルは特に多く、性別年齢問わず、全国の消費生活センター等に寄せられる最も多い相談内容です。

しかし、最近の相談件数の推移を性別年齢層別でみていくと、一律の動きではないことが確認できます(図表I-1-4-2)。

2010年、2013年、2016年の3年ごとの相談件数をみると、男性は60歳以上で増加傾向にある一方、40歳代までは減少傾向にあります。女性も同様で、40歳以上が増加しているのに対し、30歳代までは減少傾向にあります。

その背景にはスマートフォンの普及があると考えられます。つまり、中高年のスマートフォン保有率は2013年末から2015年末まででみても年々上昇し続けている一方、若年層には既に行き渡っている状況がみられます(第2章第1節参照。)。このことから、スマートフォン操作の習熟度に年齢層で違いがあり、まだスマートフォンに不慣れな中高年層が画面を操作しているうちに、アダルト情報サイトに関するトラブルに巻き込まれていることなどが原因として考えられます。

●「アダルト情報サイト」に関するトラブル解決のつもりが、二次被害に

こうしたトラブルを解決しようと、消費者がインターネットで相談先や解決方法を検索し、「無料相談」、「返金可能」をうたう窓口に慌てて相談したところ、実際には探偵業者等に「アダルト情報サイト業者の調査」を数万円で依頼したこととなっており、結局、アダルト情報サイト業者からの返金を受けることもできなかった、といった相談が最近急増しています(注31)(図表I-1-4-3)。

探偵業者等が実際に行う業務は、アダルト情報サイト業者の所在地やIPアドレスなどウェブサイトに関する情報の調査です。しかし、探偵業者等はそのことを消費者に説明せず、「トラブルを解決する」、「請求が来ないようにする」、「十分に返金が可能」など、あたかもアダルト情報サイト業者からの請求を止めたり、返金させたりすることができるような説明をし、消費者を誤解させ調査の契約をさせている場合が見受けられます。また、調査結果は消費者が期待していた内容ではないことも多く、返金交渉などアダルト情報サイトのトラブルに関する解決に必ずしも役立つものではありません。なお、弁護士等の法的な資格がなければ、報酬を得る目的での返金交渉は行えません。

ウェブサイトの広告で「被害解決」等と表示し、地方公共団体が設置している消費生活センター等の消費生活相談窓口に類似した名称(「消費者○×センター」「消費者○×相談窓口」等)を名のっているため、消費者が消費生活センター等と勘違いし、探偵業者等のウェブサイトへアクセスしたり、電話をかけたりしているケースもあります。また、探偵業者等がウェブサイトで「無料相談」と表示していることから、消費者が「全て無料」と思い、探偵業者等に連絡したというケースもあります。契約時に社名を伝えられたり、有料と説明されたりして初めて、地方公共団体の消費生活センター等ではなく民間事業者に連絡をしたことに気付く場合もありますが、不安をあおられ、被害を早く回復したいという思いで結局そのまま依頼してしまうケースもみられます。

相談件数を年齢層別に見ると、「アダルト情報サイト」の相談が多い40歳代が最も多いものの、最近減少傾向がみられる20歳代や30歳代でも目立っています。なお、増加傾向にある高齢層では、20歳代、30歳代に比べ相談件数は少ない状況です(図表I-1-4-4)。これは、「アダルト情報サイト」の架空請求トラブルへの対応方法が若者に浸透してきている一方で、第2章第2節でも触れているとおり、若者ほどトラブルの際にインターネット検索をして解決方法を探すことに慣れ親しんでいることから、このようなトラブルに遭遇した際も、慌ててインターネット検索し、探偵業者等へ連絡してしまうケースが多いことを表わしていると考えられます。

アダルト情報サイトのトラブルでは、慌ててアダルト情報サイト業者に「連絡しない」、「お金を支払わない」が基本です。どうしても不安な場合には、焦らず消費生活センター等に相談しましょう。その際、相談先が地方公共団体の消費生活センター等かどうか、しっかり確認してから連絡しましょう。

地方公共団体の消費生活センター等へ相談する際には、全国共通の電話番号「188(いやや!)」でお住まいの市区町村や都道府県の消費生活センター等を案内する消費者ホットラインが便利ですので、御利用ください。

●SNSをきっかけとしたトラブルは女性を中心にますます増加

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は人と人とをつなぎ、コミュニケーションを楽しむためのサービスです。基本的には知り合いや友達とインターネット上でつながり、会話に近いコミュニケーションができるのが特徴です。また、「シェア」、「リツイート」といったSNS特有の機能によって、友達の友達へ、フォロワーのフォロワーへと、拡散力が強いことも特徴であり、最近では特に不特定多数への発信にもよく利用されるようになっています。

SNSが何らかの形で関連している消費生活相談は増加傾向にあり、2016年は前年を大きく上回り約1.2万件が寄せられています(図表I-1-4-5)。2012年から2016年にかけては約2.5倍となっており、年齢層別にみると、50歳代や60歳代は約5倍、70歳以上は約7倍と、特に中高年層で大きく増加しています。

さらに2016年の相談を性別年齢層別でみると、年齢層では20歳代が最も多く、20歳代女性の相談が2,000件を超えています(図表I-1-4-6)。30歳代から50歳代までにおいても、女性が同世代の男性の約2倍となっており、全体に占める女性の相談は男性の約1.5倍です。

相談内容は、「SNSから誘導され、女性を紹介してくれるという出会い系サイトに登録したが、不審」、「SNSの広告を見て化粧品を購入。お試し価格だと思っていたら、定期購入だった」、「SNSで副業の広告を見てサイトに登録した。その後ポイントを繰り返し購入、だまされたと気付いた」等、多種多様なものとなっています。

●インターネット通販等で「お試し」のつもりが定期購入に

2016年に目立ったトラブルとして挙げられるのが、主にダイエットサプリメント等の健康食品を「お試し」で購入するつもりが定期購入となってしまうというものです(注32)。これは、先に紹介したSNSがきっかけとなるケースもみられ、2016年には全国の消費生活センター等へ寄せられる相談が急増しました(図表I-1-4-7)。商品の内訳としては、青汁等の「飲料」、酵素やダイエットサプリメント等の「健康食品」、美容クリームやニキビケアクリーム等の「化粧品」の3つに分類できます。

2016年の相談では女性が約8割と多く、女性の中では40歳代が約3割で最も多いものの、10歳代、20歳代の若年層も約2割を占めています。

相談事例からみるこのトラブルの内容は主に図表I-1-4-8のようなケースです。スマートフォンで「ダイエット効果や美容効果がある」、「初回お試し価格○円」、「送料のみ」等の広告をSNS等で見て消費者が注文することが多く、例えば「5ヶ月以上の購入が条件」等の定期購入が条件であることが、他の情報より小さい文字で表示されていたり、注文画面とは別のページに表示されていたりする場合があります。

そのため、消費者は商品を無料や数百円程度の低価格で購入できると考え、定期購入とは認識しておらず、1回限りの購入だと思って申し込みをしており、翌月以降(2回目以降)も商品が届いて初めて定期購入であると気付くケースが多くみられます。

また、解約を申し出ようとしたところ、「事業者へ電話がつながらない」、「初回価格だけ支払えばよいと思っていたのに事業者から通常価格を請求された」という相談もみられます。

●「格安スマホ」のトラブルが増加

いわゆる「格安スマホ」(注33)等の携帯電話の利用に伴い、関連するトラブルが増えており、2016年には前年の約2.8倍の相談が寄せられています(注34)(図表I-1-4-9)。格安スマホ事業者(注35)の料金設定は比較的安価であり、消費者にとっては、自分の利用実態に合わせより多くの契約先から選べるようになりましたが、今までどおりのサービスを安く受けられると思っていたのに、実際はサービス内容等が思っていたものと違っていたというトラブルが目立っています。

主な相談内容は、今までの携帯電話事業者とサービスが異なることによるトラブルと、端末とSIMカードを別々に購入することで発生するトラブル、利用開始日に関するトラブルに分けられます。

今までの携帯電話事業者とサービスが異なることによるトラブルでは、消費者がこれまでと同じサービスが受けられると思っていたものの、これまで契約していた携帯電話事業者では無料で提供されていたサービス(フィルタリングサービス(注36)等)が有料のオプションになっている場合や、そもそも提供されていないこと等から発生する場合がみられます。また、故障時の対応や問い合わせ窓口が電話やウェブサイト等に限られていたり、修理時に代替機の提供がないなどのサポート体制に関するものも挙げられます。

端末とSIMカードを別々に購入することで発生するトラブルは、端末によっては、購入したSIMカードが利用できない場合があったり、販売されている中古端末の中には、その後の利用を制限されるものもある等のケースもみられます。

利用開始日に関するトラブルは、SIMカードが届いてから一定期間が過ぎると、何も設定をしなくても自動的に通信料金が発生することから、相談になる場合がみられます。今までの携帯電話事業者で利用していた電話番号を変えずに格安スマホ事業者へ契約先を変更する場合は、利用開始日によっては、以前の携帯電話事業者の解約料等が発生するものもみられます。

「格安スマホ」への変更を検討する場合、まずは自分の現在の利用状況を把握した上で、ウェブサイトやパンフレット等で格安スマホ事業者が提供しているサービスを確認しましょう。また、今まで使っていたスマートフォン等の端末を引き続き使えるかどうか確認することや、中古の端末を購入する場合は、「ネットワーク利用制限」の対象端末ではないかを確認することも重要です。さらに契約に当たっては格安スマホ事業者の回線を利用するための手続きと、利用開始日も確認しましょう。契約について不安に思うことやトラブルが生じた場合には、最寄りの消費生活センター等へ相談しましょう。


  • (注31)国民生活センター「「アダルトサイトとのトラブル解決」をうたう探偵業者にご注意!」(2016年12月15日公表)
  • (注32)国民生活センター「相談急増!「お試し」のつもりが定期購入に!?―低価格等をうたう広告をうのみにせず、契約の内容をきちんと確認しましょう―」(2016年6月16日公表)
  • (注33)ここでは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator、仮想移動体通信事業者)が提供する音声通話付きの携帯電話サービスのことを指す。SIMカード単体の契約も含み、無線インターネットサービス等は含まない。
  • (注34)国民生活センター「こんなはずじゃなかったのに!"格安スマホ"のトラブル―料金だけではなく、サービス内容や手続き方法も確認しましょう―」(2017年4月13日公表)
  • (注35)格安スマホを提供する事業者(MVNO)のこと。
  • (注36)出会い系サイトやアダルトサイト等、青少年に有害なサイトや違法なサイトへのアクセスを遮断する機能のこと。

担当:参事官(調査研究・国際担当)