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第2部 第5章 第1節 被害救済、苦情処理及び紛争解決の促進

第2部 消費者政策の実施の状況

第5章 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備

第1節 被害救済、苦情処理及び紛争解決の促進

1.消費者裁判手続特例法の円滑な施行

多くの消費者事件では、消費者と事業者の間の情報の質・量や交渉力の格差、訴訟に関する費用や労力のため、消費者が自ら被害回復を図ることが困難な場合が多いものと考えられます。

このような消費者被害の回復を図りやすくするための消費者裁判手続特例法が2013年12月11日に公布されました。この法律では、二段階型の訴訟手続を新設することとしています。

具体的には、まず、①一段階目の手続で、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体が原告となり、消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害について、事業者がこれらの消費者に対し、共通する原因に基づき金銭を支払う義務(共通義務)を負うべきことの確認を求める訴えを提起し、②一段階目で特定適格消費者団体が勝訴した場合、個々の消費者が二段階目の手続に加入し、簡易な手続によって、それぞれの請求権の有無や金額を迅速に決定する、というものです。

また、消費者の債権の実現を保全するため、特定適格消費者団体による仮差押命令の申立ての仕組みが設けられています。

消費者庁では、この法律の円滑かつ実効的な運用を図り、制度を適切に運用し、特定適格消費者団体の業務の適正を確保するため、2014年5月から2015年3月まで「特定適格消費者団体の認定・監督に関する指針等検討会」を開催しました。同検討会では、関係者からのヒアリング等を行いながら、認定基準、報酬・費用に関する規律、通知・公告、濫訴防止、財産管理等の事項について検討し、取りまとめを行い、2015年4月に「特定適格消費者団体の認定、監督に関する指針等について」を公表しました。それに基づき、消費者裁判手続特例法の施行に必要な施行令、施行規則、「特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」等を制定・策定して2015年11月11日に公布・公表し、消費者裁判手続特例法の施行日を2016年10月1日と決定しました。

また、制度について分かりやすく詳細に解説した動画及びパンフレット等のコンテンツを用いて、消費者団体訴訟制度の周知・広報に取り組んでいるところです。

さらに、消費者裁判手続特例法附則第4条の趣旨を踏まえ、被害回復関係業務等の適正な遂行に必要な資金の確保等、適格消費者団体や特定適格消費者団体に対する支援の在り方について検討を行うため、「消費者団体訴訟制度の実効的な運用に資する支援の在り方に関する検討会」を2015年10月から開催しています。

2.製造物責任法に関する裁判例の収集・分析

製造物責任法は、製品の欠陥によって生命、身体又は財産に損害を被ったことを証明した場合に、被害者は製品の製造業者等に対して損害賠償を求めることができる、円滑かつ適切な被害救済に役立つ法律です。

具体的には、製造業者等が、自ら製造、加工、輸入又は一定の表示をし、引き渡した製造物の欠陥により他人の生命、身体又は財産を侵害したときは、製造業者等の過失の有無にかかわらず、これによって生じた損害を賠償する責任があることを定めています。同法は、1994年7月1日に公布され、1995年7月1日から施行されています。

消費者庁では、製造物責任法に関する裁判例を収集・分析した上で、論点別に裁判例を抽出・整理・公表するとともに、製造物に起因する事故の被害救済に関する取組を推進します。

3.消費者に関する法的トラブルの解決

法務省では、消費者に関する法的トラブルを取り扱う関係機関・団体との協議会を開催するなど、より緊密な連携・協力関係を構築しています。

日本司法支援センター(法テラス)では、多重債務問題その他の消費者に関する法的トラブル等について、民事裁判等の手続において弁護士・司法書士の費用を支払う経済的に余裕がない人々を対象に、無料法律相談や、その費用を立て替える民事法律扶助による援助を行っています。

2015年度も引き続き、民事法律扶助業務の周知徹底を図るとともに、法的トラブルの紛争解決に向けた支援の提供に努めており、民事法律扶助における多重債務問題等に関し、無料法律相談、代理援助、書類作成援助を実施しています。さらに、地方事務所等の相談場所へアクセスすることが困難な方を対象に、出張・巡回法律相談を実施し、高齢者を始めとした消費者トラブルの解決のための支援の提供に努めています。

2015年度の実績として、コールセンターへの問合せ件数31万8520件のうち多重債務問題を含む金銭の借り入れについては、4万1067件、民事法律扶助業務(※2016年4月22日現在速報値)については、多重債務問題援助開始決定件数5万5119件、多重債務問題法律相談援助件数9万7952件となりました。

4.消費者紛争に係る裁判外紛争解決手続の実施

2008年の国民生活センター法の改正により、国民生活センターでは、2009年4月から、独立して職権を行う紛争解決委員会を設置し、消費者紛争のうち、その解決が全国的に重要である紛争(重要消費者紛争)について公正・中立に解決を図る裁判外紛争解決手続(以下「ADR」(注58)といいます。)を実施しています。

紛争解決委員会では、2016年3月末時点において、158件の和解の仲介手続が終了し、このうち94件について和解が成立しました。さらに、手続が終了した123件の結果概要を公表しました。また、2015年度に新たに154件の和解仲介手続、1件の仲裁の申請を受け付けました。

ほかにも、国民生活センター法第34条の規定に基づき、地方公共団体との適切な役割分担及び連携の確保を図るため、都道府県・政令市の苦情処理委員会等の実施状況等に関する情報共有を行いました。

国民生活センターでは、ADR制度の普及啓発を図るため、各地の消費生活センターの行政職員及び消費生活相談員向けにADR出前研修会を開催するとともに、地方公共団体及び他のADR機関と意見交換を実施しています。

他のADR機関との連携に関しては「生命保険協会ADRとの情報交換会」(2015年8月3日)、「国土交通省中央建設工事紛争審査会との意見交換会」(2015年9月10日)、「東京簡易裁判所等との意見交換会」(2015年9月24日)、「公益財団法人交通事故紛争処理センターとの意見交換会」(2015年10月6日)、「日本司法支援センター(法テラス)との意見交換会」(2015年10月16日)、「横浜弁護士会との意見交換会」(2015年10月20日)、「一般社団法人日本損害保険協会との意見交換会」(2015年11月2日)、「特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)との意見交換会」(2016年1月20日)を開催し、国民生活センター法第34条の趣旨を踏まえ、情報交換を実施しました。

5.金融ADR制度の円滑な運営

金融分野における苦情・紛争解決については、業界団体により自主的な取組が進められてきましたが、利用者の信頼感・納得感が十分に得られていないなどの指摘が見られました。

これらを受けて、2009年6月に成立した金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成21年法律第58号)において、紛争解決機関の指定制を導入することにより苦情・紛争解決の中立性・公正性等を確保した、金融分野における裁判外紛争解決制度(以下「金融ADR制度」といいます。)が創設され、2010年4月に施行されました。同年10月から指定紛争解決機関(以下「機関」といいます。)が紛争解決等業務を開始し、現在、銀行・保険・証券等、業態別に8つの機関が当該業務に従事しています。

その後、金融ADR制度を、より一層、利用者利便の向上に資するものとするため開催された「金融ADR制度のフォローアップに関する有識者会議」の報告書(2013年3月公表)を踏まえて策定した「指定紛争解決機関向けの総合的な監督指針」(2013年8月)に基づき、機関に対する利用者の信頼性向上や各機関の特性を踏まえた運用の整合性確保を図るなど、同制度の適切な運営に取り組んでいます。

2015年度には、金融トラブル連絡調整協議会(機関に加え、消費者行政機関・業界団体・弁護士会等も参加。)を2回(6月、12月)開催し、各機関の業務実施状況や利用者利便の向上に向けた取組状況等について継続的に議論を行いました。金融トラブル連絡調整協議会に提示した機関の業務実施状況等に関する資料を金融庁ウェブサイトに速やかに掲載するなど、金融ADR制度の確実な浸透に向けて積極的な広報に取り組んでいます。

6.商品先物ADR制度の円滑な運営

経済産業省及び農林水産省では、商品先物取引法の規定に基づき紛争解決等業務を行っている日本商品先物取引協会において、紛争仲介手続の標準処理期間の短縮(6か月から4か月)が確実に実施され、全ての新規顧客に対して当該制度の周知が徹底されるよう、同協会への指導・監督を行うとともに、紛争仲介を含めた苦情・相談を同協会へ連絡するようパンフレットを作成し、各消費者センター等へ送付するなどの周知を行いました。

7.住宅トラブルに関する紛争処理

住宅品確法及び特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号)に基づき、建設住宅性能評価書が交付された住宅及び住宅瑕疵担保責任保険を付した新築住宅についての請負契約又は売買契約に関する紛争については全国52の住宅紛争審査会(弁護士会)においてADRを実施しています。また、建設工事の請負契約に関する紛争については、建設業法(昭和24年法律第100号)に基づく全国48の建設工事紛争審査会(国土交通省及び各都道府県)においてADRを実施しています。国土交通省では、既存住宅流通やリフォーム工事に係る悪質事案の被害防止の観点から、以下のような取組を行っています。

「住まいるダイヤル」(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)において、リフォーム工事の内容や価格、事業者に確認すべき点等に関する相談を含めた住宅に関する電話相談業務、リフォーム工事の見積書についての相談を行う「リフォーム見積チェックサービス」を実施しています。また、全国の弁護士会における「専門家相談制度」等の取組を進めています。さらに、住まいるダイヤルのウェブサイトにおいて、住まいるダイヤルや専門家相談で受け付けた住宅に関する悪質事案を含む代表的な相談内容と相談結果を公表しています。

他方、消費者が安心して中古住宅を取得し、リフォームができるよう、検査と欠陥への保証がセットになった既存住宅売買瑕疵保険やリフォーム瑕疵保険、大規模修繕工事瑕疵保険等を引き続き実施しています。また、これらの保険を利用する事業者を登録し、一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会のウェブサイトで公開しており、消費者は事業者選びの参考とすることができます。

また、リフォーム支援制度を紹介したガイドブックや住まいるダイヤルが作成する各種パンフレット等で、住まいるダイヤルや、リフォーム瑕疵保険の有用性等について消費者に周知しました。

2016年1月から3月にかけて国土交通省の補助事業「重層的住宅セーフティネット構築支援事業」として、(株)社会空間研究所が補助金を受けて、札幌市、仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、福岡市、金沢市で計8回(うち東京都では2回)研修会を開催しました。

8.振り込め詐欺救済法に基づく被害者の救済支援等

振り込め詐欺等の被害者に対する返金率の向上については、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(平成19年法律第133号。以下「振り込め詐欺救済法」といいます。)に基づき、被害者への返金制度等の周知徹底を図ることとされています。

2015年度においては、振り込め詐欺救済法の規定に基づく被害者への返金制度等について引き続き金融庁ウェブサイトに掲載を行う等、広く一般国民に向けて周知を行いました。また、業界団体を通じて、被害が疑われる者に対して金融機関から積極的に連絡する等の取組を促しました。

9.多重債務問題改善プログラムの実施

消費者金融市場が拡大する中で、社会問題としての多重債務問題が深刻化したことを背景に、「貸し手」に対する所要の規制強化を図るため、いわゆる「総量規制」と「上限金利引下げ」をポイントとする改正貸金業法が2006年12月に成立し、2010年6月18日に完全施行されました。同改正法の成立を機に、「借り手」に対する総合的な対策を講ずるため、政府は、関係大臣からなる「多重債務者対策本部」を設置しました。同本部の下で、2007年に「多重債務問題改善プログラム」(注59)を取りまとめ、関係府省が一体となって、多重債務者向け相談体制の整備・強化を始めとする関連施策に取り組んでいます。

なお、改正貸金業法の施行状況については、同法の完全施行(2010年6月)に際し、金融庁、消費者庁及び法務省において、施行後の状況をフォローするため、関係者ヒアリング等を実施した結果、特定の制度の見直しが必要となるような実態は把握されないとの結論を得ました。

近年では、貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数が大きく減少していることや、多重債務を理由とする自殺者数も減少していること、金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する1日当たりの相談・苦情件数が減少してきていること等を踏まえれば、改正貸金業法が多重債務者対策の上で相応の効果があったものと認識しています。

2015年には、有識者と関係府省(注60)から構成される「多重債務問題及び消費者向け金融等に関する懇談会」を2回開催(5月、12月)しました。また、「多重債務者相談強化キャンペーン2015」において、各都道府県における消費者及び事業者向けの無料相談会等の開催、ヤミ金融の利用防止等に係る周知・広報を実施するとともに、潜在的な多重債務者の掘り起こし等を図るため、相談窓口周知のためのリーフレット(82万部)を作成し、関係先に配布しました。

厚生労働省では、各都道府県社会福祉協議会を実施主体として、低所得世帯などを対象に必要な相談支援に合わせて資金の貸付を行い、その経済的自立の促進を図るためのものとして、生活福祉資金貸付制度を実施しています。また、2015年度には、生活困窮者自立支援法の施行に伴い、自立相談支援事業や家計相談支援事業との連携を図るとともに、生活福祉資金貸付制度の必要な見直しを図ったところであり、より効果的な支援を推進しています。

警察庁では、2015年の生活安全警察の運営重点として、「広域にわたるヤミ金融(注61)事犯の取締りの推進」等を掲げ、都道府県警察に対して、ヤミ金融事犯の徹底した取締りのほか、金融機関に対する口座凍結の要請、携帯音声通信事業者に対する契約者確認の求め、プロバイダ等に対する違法な広告の削除要請等の推進を指示しています。

【上記取組の実績】

  • 2016年3月末時点の貸金業者から5件以上の無担保無保証借入れの残高がある人数:12万人(2007年3月末:171万人)(注62)
  • 地方公共団体等の多重債務相談窓口の設置状況:財務局、都道府県では全て設置済み、市区町村では1,723市区町村(全体の約99%)で設置済み。
  • 2015年中の多重債務を理由とする自殺者数:667人(全自殺者数2万4025人)(注63)
  • 2015年12月の金融庁・財務局等・日本貸金業協会における貸金に関する1日当たりの相談・苦情件数:150件(2010年6月:304件)
  • 2015年中におけるヤミ金融事犯の検挙事件数及び検挙人員:442事件、608人(前年比+20事件、+50人)
  • 2015年中におけるヤミ金融事犯利用口座凍結のための金融機関への情報提供件数:2万8445件(前年比−6,260件、−18.0%)
  • 2015年中における携帯音声通信事業者への契約者確認の求めを行う旨の報告を受けた件数:8,425件(出資法又は貸金業法に基づくもので、警察庁が都道府県警察(生活経済事犯担当課)から報告を受けた件数)
  • 2015年中のインターネット上のヤミ金融事犯広告の削除要請件数:4,443件(前年比+1,087件)

10.自殺対策基本法に基づく総合的な自殺対策の強化

政府は、自殺対策基本法(平成18年法律第85号)及び同法の規定に基づく「自殺総合対策大綱」(2012年8月28日閣議決定)の下、自殺対策を総合的に推進しており、同大綱に基づき、国、地方公共団体、関係団体、民間団体で連携して、総合的な対策の強化を図っています。

内閣府では、2015年6月に自殺対策白書を作成しました。また、9月には全国自殺対策主管課長等会議及び自殺対策官民連携協働会議を開催し、11月には自殺対策官民連携協働ブロック会議を開催しました。自殺予防週間(2015年9月10日から16日まで)及び自殺対策強化月間(3月)においては、各種の啓発活動を行うとともに、関係府省、地方公共団体、関係団体及び民間団体等と連携して、心の健康、多重債務及び法律に関する相談などの支援策を重点的に行いました。

さらに、地域における自殺対策の更なる強化を図るため、若年層向け自殺対策や経済情勢の変化に対応した自殺対策など、特に必要性の高い自殺対策等に関し、地方公共団体への支援を行いました。

なお、2015年の年間自殺者数は、2万4025人となり、2014年と比べて1,402人減少しました。


  • (注58)Alternative Dispute Resolutionの略。消費者トラブルが生じた場合、紛争解決の方法として裁判があるが、一般的には時間と費用が掛かる。このため、厳格な裁判によらずに当事者の合意に基づいて迅速かつ簡便に紛争解決する方法としてADRがある。
  • (注59)同プログラムでは、「相談窓口の整備・強化」、「セーフティネット貸付の提供」、「金融経済教育の強化」、「ヤミ金の取締り強化」の4つの柱に沿って、取り組むべき施策等がまとめられている。
  • (注60)内閣府、警察庁、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省。
  • (注61)出資法違反(高金利等)、貸金業法違反及び貸金業に関連した詐欺、恐喝、暴行等に係る事犯。
  • (注62)出典:株式会社日本信用情報機構
  • (注63)出典:内閣府・警察庁「平成27年中における自殺の状況」

担当:消費者調査課