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第1部 第4章 第6節(1)消費者裁判手続特例法の施行

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第4章 消費者政策の展開

第6節 消費者の被害救済、利益保護の枠組みの整備

(1)消費者裁判手続特例法の施行

●消費者裁判手続特例法の概要

多くの消費者事件では、消費者と事業者の間の情報の質・量や交渉力の格差、訴訟に関する費用や労力のため、消費者が自ら被害回復を図ることが困難な場合が多いものと考えられます。

このような消費者被害を回復しやすくするための消費者裁判手続特例法が2013年12月11日に公布されました。この法律では、我が国に類例のない二段階型の訴訟手続を新設することとされています。

具体的には、まず、①一段階目の手続で、内閣総理大臣の認定を受けた特定適格消費者団体(注73)が原告となり、事業者を被告として、消費者契約(消費者と事業者の間で締結される契約(労働契約を除く。))に関して相当多数の消費者に生じた財産的被害に対し、共通する原因に基づき金銭を支払う義務を負うべきことの確認を求める訴えを提起します。この一段階目の訴訟のことを、共通義務確認訴訟といいます。

②共通義務確認訴訟で特定適格消費者団体が勝訴した場合、二段階目の手続に移行します。二段階目の手続は、事業者が誰にいくら支払わなければならないかを迅速に確定する手続です。個々の消費者は、特定適格消費者団体に授権することにより手続に参加します。授権を受けた特定適格消費者団体が、個々の消費者の債権を裁判所に届け出ます。届け出られた債権について事業者が認めるか認めないかを回答します。事業者が債権を全額認めれば、その債権は確定します。事業者が債権の全部又は一部を認めなかった場合は、特定適格消費者団体は、事業者の対応を争うことができます。事業者の対応を争わない場合は、事業者が認めた限度で債権が確定します。事業者の対応を争った場合は、裁判所の判断により債権が確定します。これを簡易確定決定と言います。

③この簡易確定決定に対して不服がある特定適格消費者団体、個々の消費者、事業者は異議を申し立てることができます。異議の申立てがあると、通常の訴訟により債権の有無・額が判断されることになります(図表4-6-1)。

消費者裁判手続特例法によれば、消費者は事業者に共通義務があることが確定してから手続に参加することになります。また、たくさんの消費者の被害回復を一つの手続で行うため、費用が低減されます。さらに、消費者団体の専門的知識・交渉力を活用できることになります。これらの結果、これまで回復されにくかった消費者被害が回復されやすくなると考えられます。この制度の実効性を確保するために、二段階目の手続に消費者の参加を促す仕組みが整えられています(図表4-6-2)。

消費者裁判手続特例法は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされており、2016年10月1日から施行することになりました。2016年10月1日以降に締結された消費者契約(不法行為に基づく損害賠償請求の場合は2016年10月1日以降の加害行為。)について消費者裁判手続特例法に基づく被害回復が可能になります。

消費者裁判手続特例法を施行するためには、政令、内閣府令、ガイドラインを制定・策定する必要があります。これらについては、2014年5月から2015年3月にかけて開催した「特定適格消費者団体の認定・監督に関する指針等検討会」の取りまとめに基づき、それぞれ施行令、施行規則、「特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドライン」として制定・策定され、2015年11月に公布・公表されています(注74)図表4-6-3)。

消費者が消費者裁判手続特例法に基づく被害回復のための訴訟制度を活用し、消費者被害が適切に回復されることが期待されます。

●適格消費者団体・特定適格消費者団体に対する支援

消費者団体訴訟制度は、消費者契約法に、2007年に施行された改正法によって導入されました。当初は消費者契約法に規定する不当な勧誘行為、不当な契約条項について適格消費者団体が差止請求できるとするものでしたが、その後、適用範囲が拡大され、2009年には景品表示法と特定商取引法に、2015年には食品表示法に、適格消費者団体の差止請求権が盛り込まれました。そして、2016年4月時点では、全国に14団体の適格消費者団体が認定されています。また、前記のとおり、2016年10月1日から消費者裁判手続特例法が施行され、特定適格消費者団体による被害回復の制度が運用されることになります。

このような消費者団体訴訟制度のより実効的な運用を実現するため、消費者庁では、2015年10月から「消費者団体訴訟制度の実効的な運用に資する支援の在り方に関する検討会」を開催しています。この検討会では、適格消費者団体と特定適格消費者団体における資金の確保、これらの団体に対する情報の提供などの在り方を検討しています。

図表4-6-1 二段階型の訴訟制度

図表4-6-2 二段階目の手続

図表4-6-3 特定適格消費者団体の認定、監督等に関するガイドラインの概要


  • (注73)適格消費者団体(2016年4月時点、14団体)のうち、消費者被害回復裁判手続を適正に遂行できる消費者団体を内閣総理大臣が認定。
  • (注74)施行令、施行規則、ガイドラインのほか、被害回復裁判手続に関して最高裁判所規則が定められることになっており、これについては2015年6月に最高裁判所が制定しています。

担当:消費者調査課