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第1部 第4章 第3節(1)不当表示の防止のための対策(課徴金制度の導入)

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第4章 消費者政策の展開

第3節 表示の充実と信頼の確保

(1)不当表示の防止のための対策(課徴金制度の導入)

●課徴金制度導入までの経緯や導入に伴い期待されること

2013年度に、ホテル・レストラン等で、メニュー表示とは異なる食材を使用した料理を提供していた問題が相次いで発覚しました。これは、いわゆる「食品偽装」や「食品表示等問題」等として、食に対する消費者の安心を根底から揺るがす社会問題となりました。

このような一連の表示問題を受けて、食品表示等の適正化に向けた体制の強化や違反行為の抑止を目的として、2014年6月と11月に景品表示法の改正が行われました。不当表示を行った事業者に対して経済的不利益を課す課徴金制度は、11月改正により導入されました。この2014年11月改正法(不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する法律)は、2016年4月1日に施行されています(図表4-3-1)。

課徴金制度を導入する前は、不当表示を行った事業者に対しては、行政がその表示をやめさせる等の措置を命ずる措置命令(景品表示法第7条第1項)をその都度出すことにより対応してきました。しかし、この場合は、事業者の側に不当表示によって得た利益が残ったままであり、また、消費者がその被害を事後的に回復することは困難となっていました。

これに対し、課徴金制度は、国が違反事業者に金銭的な不利益を課すものであり、この制度の導入により、事業者に不当表示を行う動機を失わせ、不当表示という違反行為が事前に抑止されることが期待されます。また、2014年11月改正法は、所定の手続に沿った返金措置(自主返金)を行った事業者についての課徴金額の減額等を定めています。このため、不当表示を行った事業者が自ら進んで返金措置を行うことにより、消費者の被害回復が促進されることも期待されます。

以下では、2014年11月改正法により導入された課徴金制度の概要を説明します。また、その改正法の施行に当たり、消費者庁は、政令を改正するとともに内閣府令を制定し、ガイドラインを策定・公表しましたので、これらについても主な内容を紹介します。

●課徴金納付命令

事業者が、課徴金の対象となる行為(課徴金対象行為)をしたときは、消費者庁長官は、その事業者に対して、課徴金を納付するよう命じなければなりません。この命令を課徴金納付命令といいます。

●課徴金の対象となる行為

課徴金対象行為は、食品に限らずあらゆる商品やサービスについて、実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認表示)をする行為と、実際より著しく有利であると誤認される表示(有利誤認表示)をする行為です。

また、既に措置命令との関係で導入されている、いわゆる不実証広告規制が課徴金納付命令との関係でも導入されています。消費者庁長官は、優良誤認表示である疑いがある場合には、その表示を行った事業者に対して、一定の期間内に、表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めることができます。そして、その資料の提出がない場合には、その表示が優良誤認表示と推定されて課徴金の対象となります。

●課徴金額の算定方法

課徴金額は、事業者が不当表示をした商品・サービスの「売上額」に3%を乗じた金額です。この「売上額」は、原則として、課徴金の対象となる期間に引き渡された(提供された)、不当表示の対象とされた商品(サービス)の対価を合計する方法(引渡基準)によって算定されます(不当景品類及び不当表示防止法施行令(平成21年政令第218号))。

●課徴金を課せない場合(主観的要素、規模基準)

事業者が課徴金対象行為をした場合であっても、その事業者が表示の根拠となる情報を確認するなど、正常な商慣習に照らし必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠つた者でない」と認められるときは、消費者庁長官は、課徴金の納付を命ずることができません。

また、課徴金額が150万円未満(不当表示をした商品・サービスの「売上額」が5000万円未満)である場合も、課徴金の納付を命ずることができません。

●課徴金対象行為に該当する事実の報告による課徴金額の減額

課徴金対象行為に該当する事実を消費者庁長官に報告(自主申告)した事業者について、所定の要件を満たす場合には、課徴金額の2分の1が減額されます。

この報告の方法や様式等は、不当景品類及び不当表示防止法施行規則(平成28年内閣府令第6号)で規定されています。

●返金措置の実施による課徴金額の減額等

事業者が、返金措置の実施に関する計画を作成し、消費者庁長官の認定を受ける等、所定の手続に従って消費者に対して返金措置を行った場合は、消費者庁長官は、返金相当額を課徴金額から減額するか、返金相当額が課徴金額以上の場合にはその納付を命じません。

この「返金措置」とは、課徴金の対象となる期間に事業者が不当表示をした商品・サービスの取引をした一般消費者であって「政令で定めるところにより特定されているもの」から申出があった場合に、その申出をした一般消費者が取引をした対象商品・サービスの購入額に3%を乗じた額以上の金銭を交付する措置のことをいいます。そして、返金措置の対象となる一般消費者は、①「売上額」を引渡基準により算定する場合には、課徴金の対象となる期間内に事業者が不当表示をした商品の引渡しやサービスの提供を受けたことが、②その商品の購入やサービスの提供の対価の支払についての領収書(レシート等)、その商品の購入やサービスの提供についての契約書その他の上記①の事実を証する資料により特定された者であることが、前記施行令で規定されています。

なお、返金措置に関する計画の認定申請等を行う際の様式等は、前記施行規則で規定されています(図表4-3-2)。

●課徴金制度に関するガイドラインの策定や説明会の開催

消費者庁は、景品表示法の課徴金制度の運用の透明性や事業者の予見可能性を確保するために、2016年1月29日に「不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方」を公表しました。これは、景品表示法に基づく課徴金納付命令に関して、①課徴金額の算定方法、②「相当の注意を怠つた者でないと認められる」か否かという基本的な要件についての考え方を、具体例を挙げながら説明するものです。

また、消費者庁は、2016年2月から3月にかけて、事業者及び事業者団体の方を対象として、課徴金制度の内容を中心とした改正景品表示法に関する説明会を、国内13か所で開催しました。

消費者庁としては、今後も、引き続き課徴金制度を含む景品表示法の普及・啓発を行うなどして、一般消費者による自主的かつ合理的な選択の確保に努めていきます。

COLUMN10
衣類等の「洗濯表示」が変わります

図表4-3-1 課徴金制度の導入(景品表示法の改正)(2016年4 月施行)

図表4-3-2 返金措置の実施による課徴金額の減額

担当:消費者調査課