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第1部 第3章 第3節(2)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 消費者問題の動向

第3節 最近の消費者問題の傾向

(2)高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル

●詐欺的な手口に関する高齢者の相談は依然として多い

高齢者に関する消費生活相談において、詐欺的な手口に関する相談(注52)が特に最近増加傾向にあります。「詐欺的な手口」とは、事業者側の「だます」という意思を有することを心証として消費者や消費生活センター等が強く持った場合を言います。

この数年間を見ると、詐欺的な手口に関する相談は2011年度までは高齢者の相談全体の1割に満たない程度であったものの、2014年度は16.8%を占め、2015年度も16.0%となっています(図表3-3-7)。高齢者が悪質事業者のターゲットになっていることの証左と捉えることができ、見守り活動の重要性を改めて認識すべき実態がうかがえます。

販売購入形態別に相談割合を示すと、2011〜2013年度は主に金融商品への投資を勧誘する「電話勧誘販売」が最も大きな割合を占めていましたが、2014年度に「通信販売」の割合が「電話勧誘販売」を上回り、2015年度は5割を超えるようになっています(図表3-3-8)。これは、スマートフォンの普及により、「アダルト情報サイト」等のデジタルコンテンツに関する架空請求等が多いことによるものです。詐欺的な手口は時期により変化していることが見てとれます。

このように詐欺的な手口に関する相談が増えている中で、高齢者本人が消費生活センター等へ相談を寄せる割合が2013年度の78.4%から2014年度は82.8%、2015年度は86.3%と、最近増えています(図表3-3-9)。また相談を寄せた際に、既に金銭の支払をしているケースは2010年度の35.7%から年々減少し、2015年度は7.3%となるなど(図表3-3-10)、怪しいと感じた場合などに、早めに消費生活センター等へ相談する消費者が増えていることが分かります。

高齢者が巻き込まれる詐欺的な手口について、行政及び様々な機関が行っている注意喚起や啓発活動の取組の効果が徐々に現れ、こうした消費者自身の行動の変化につながっている可能性があります。

前述したように、詐欺的な手口に関する相談のうち高齢者に関するものは、相談時点で事業者に既に支払ってしまったという割合が減少しており、1件当たりの支払済み平均金額も減少傾向にあります(図表3-3-11)。しかし、2015年度の高齢者の平均396万円は、全体の平均131万円と比べると約3倍と高額であり、依然として、被害に遭った際は深刻です。

●「劇場型勧誘」は減少しているものの、引き続き注意が必要

詐欺的な手口として高齢者が巻き込まれるトラブルの典型例である、複数の事業者が役回りを分担して消費者をだまそうとする「劇場型勧誘」に関する相談は、この数年数多く寄せられていましたが、2015年度は前年度に比べ大きく減少しました(図表3-3-12)。しかし、その中で高齢者の占める割合は年々増加傾向にあり、手口や対象となる商品にも変化が見られるため、引き続き注意が必要です。

これまでは、未公開株や社債等、金融商品への投資勧誘が中心でしたが、最近は社会貢献にもつながるような名目をうたい、「名義を貸してほしい」、「代わりに買ってほしい」といった内容も見られるようになりました。2015年度に消費者庁は、介護付老人ホームの特別会員権の購入を勧誘する事業者や、風力発電システムの開発などの事業を営んでいると偽って社債購入を勧誘する事業者等、劇場型勧誘の手口に関する注意喚起を行っています(注53)

また、一見消費者には商品の価値が分かりにくい、仏像やダイヤモンドなども、その手口の対象商品として見られるようになってきています。2015年度はそのような類型の一つである古銭についてのトラブルが目立っています(注54)

具体的には、まず事業者から消費者に古銭の販売に関するパンフレットが送られてきます。その前後に別の事業者を名のる者などから消費者へ電話があり、「古銭が買えるのはパンフレットが送られた人だけ」などと持ち掛け、名義貸しや代わりに購入することを求めてきます。そして、消費者が名義貸しを承諾すると、その後「名義を貸した行為が違法になる」などと言って、違法行為を免れるためなどという理由で、お金を宅配便等で送るように指示します。指示どおりにお金を送った後、事業者と連絡が取れなくなるなどのトラブルが典型例です。

また、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会開催に関連した投資トラブルについても、東京が開催地に決定した時期より最近は相談が少なくなっていますが、チケットに関連した詐欺的な勧誘が見られるなどするため、今後も注意が必要です。

宅配便等でお金を送付するよう指示することは全て詐欺に共通する手口です。事業者から宅配便等でお金を送付するよう指示されても応じてはいけません。

●個人情報削除を持ち掛ける詐欺的なトラブルは引き続き多く、年金機構問題やマイナンバー制度に便乗したものも

2014年度に顕著となった、高齢者に多い「個人情報の削除」を持ち掛ける詐欺に関するトラブルは、2015年度も目立っています(図表3-3-13)。公的機関等をかたり、「個人情報が漏れているので、削除してあげる」などと勧誘し、お金をだまし取ろうとする詐欺的なものですが、特に2015年度は、社会的に話題となった事件や新しい制度に便乗した手口が見られます。

例えば、2015年5月、日本年金機構において、職員の端末に外部からウイルスメールによる不正アクセスが行われ、当該機関が保有する個人情報約125万件が流出する事件が発生しました。この個人情報流出問題で、自分の年金情報が流出したのではないかと消費者に不安が拡がる中、「あなたの年金情報が流出している」、「流出した年金情報を削除できる」などといった、不審な電話に関する相談が寄せられた影響もあり、6月、7月は個人情報削除を持ち掛ける詐欺に関する相談の件数がそれぞれ408件、381件と他の月を上回っています。電話の相手は、日本年金機構を名のるケースが目立ち、この他に消費者庁、国民生活センターや消費生活センター、郵便局等の職員を名のるケースもありました。

その他、マイナンバー制度に便乗して、個人情報削除を持ち掛ける詐欺的な手口に関する相談も2015年10月、11月を中心に目立っていました。

図表3-3-7 高齢者の相談のうち、詐欺的な手口に関する相談割合

図表3-3-8 高齢者の詐欺的な手口に関する相談の販売購入形態別割合

図表3-3-9 詐欺的な手口の相談における高齢者本人からの相談割合

図表3-3-10 高齢者の詐欺的な手口の相談における支払済みの割合

図表3-3-11 詐欺的な手口の支払済平均金額

図表3-3-12 劇場型勧誘に関する相談

図表3-3-13 個人情報削除を持ち掛ける詐欺的な手口に関する相談


  • (注52)事業者側の「だます」という意思を心証として消費者や消費生活センター等が強く持った場合に選択する「詐欺」や「架空請求」、「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」の項目がP10-NETに入力された相談。
  • (注53)消費者庁「会員制介護付老人ホームの特別会員権の購入を勧誘する「株式会社ミサワケアホーム」に関する注意喚起」(2015年10月30日公表)、「風力発電システムの開発などの事業を営んでいると偽って社債購入を勧誘する「株式会社エコロジーライフ」に関する注意喚起」(2016年2月9日公表)
  • (注54)国民生活センター「「名義を貸して…」「代わりに買って…」などと持ちかける不審な電話は詐欺です!—古銭の購入に関連した詐欺的トラブルにご注意!—」(2015年9月3日公表)

担当:消費者調査課