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第1部 第3章 第1節(4)消費者被害・トラブル額の推計

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 消費者問題の動向

第1節 消費生活相談の概況

(4)消費者被害・トラブル額の推計

●消費者被害・トラブル額の推計の考え方

消費者被害・トラブルの状況を把握するための一つの指標として、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談情報があります。これは、消費者被害・トラブルの端緒やトレンドを把握するためには極めて有効な情報ですが、あくまで消費者やその家族等から相談があったものだけに限られており、相談情報に表れない消費者被害の実態やその規模はこれだけでは明らかにすることはできません。

そこで消費者庁では、消費者被害・トラブル全体のおおまかな規模を明らかにするため、2013年度に「消費者被害に関連する数値指標の整備に関する検討会」を開催し、消費者被害・トラブル額の推計を試みました。

推計は、消費者被害・トラブルの推計件数に消費者被害・トラブル1件当たりの平均金額を乗じる手法により実施しました。具体的には、まず全国の満15歳以上から無作為抽出して意識調査(注31)を行い消費者被害・トラブルの「発生確率」を求めた上で消費者被害・トラブルの総数を推計し、これに消費生活相談情報から計算される平均金額を乗じ、所要の補正を行って推計値を算出するという手法を採っています。

「消費者被害・トラブル1件当たりの平均金額」は、消費生活相談情報の「契約購入金額」、「既支払額」といった項目により算出しています。実際には、消費者は小さな消費者被害・トラブルではわざわざ消費生活センター等に相談をすることはせず、より深刻な場合ほど相談率は高いものと考えられることから、消費生活相談情報から得られる平均金額は実態より相当高い水準にあるものと推測されます。そこでこうした相談情報の特性を考慮し、トラブル金額が少額のものと高額のものとを分けて推計することで推計値の補正を行っています。

また、近年、高齢者の消費者被害・トラブルが大幅に増加していますが、高齢者の特性として、本人が被害に気付かず相談しないということがあり、特に認知症等の高齢者に顕著に見られる傾向があります。このため、本人が自ら回答することが前提の意識調査では、本人が認識していない消費者被害・トラブルを十分に把握できない可能性があります。そこで高齢者の潜在被害が一定数存在するものと仮定し、その分を推計値に上乗せする形で補正を行っています。

なお、「消費者意識基本調査」では被害相当額、派生的な被害額、問題対応費用等についても尋ねていますが、サンプルが少ないことと回答の正確性の問題から、推計に用いるには精度が不十分なものと判断し、推計には含めていません。したがって、本推計は、厳密には「消費者被害・トラブルに関する商品・サービスへの支出総額」と称すべきものですが、便宜上「消費者被害・トラブル額」と表現しています。

●2015年の消費者被害・トラブル額

以上の手法により推計した2015年1年間の消費者被害・トラブルで支出した件数は約1223万件となり、消費者被害・トラブル額は、約6.1兆円(5.7〜6.5兆円(注32)・「既支払額(信用供与を含む。)」ベース)となりました(図表3-1-29)。

なお、推計結果としては「契約購入金額」、「既支払額(信用供与を含む。)」、「既支払額」の3つの推計値を示しています。このうち、「既支払額」(実際に消費者が事業者に支払った金額)に「信用供与」(クレジットカード等で決済しており、まだ支払は発生していないもののいずれ引き落とされる金額)を加えた「既支払額(信用供与を含む。)」を、消費者が負担した金額の実態に近いものとして取り扱っています。

本推計に使用している意識調査はあくまで消費者の意識に基づくものであり、消費者被害・トラブルの捉え方が回答者により異なること、意識調査の性格上一定の誤差を含むものであることに注意が必要です。

2014年の消費者被害・トラブル推計件数に比べ2015年は増加していますが、第2章第2節で見たように、消費者被害・トラブルに遭ったと認識している消費者の割合が高まっていることが影響しています。

一方、2014年の消費者被害・トラブル額の推計結果は6.7兆円(「既支払額(信用供与を含む。)」)だったのに対して、件数が増えているにもかかわらず、金額総額が減少した要因としては、前述したように、商品・サービスのうち情報通信に関するトラブルの増加、高額な金融商品に関するトラブルの減少等により、平均金額が下がっていることが影響していると思われます。

今後、継続的に推計を実施していくことにより、消費者行政の成果を測定する上で効果的な指標となると考えられます。

図表3-1-29 消費者被害・トラブル額


  • (注31)「2015年度消費者意識基本調査」(消費者庁)において、層化2段無作為抽出法により抽出した全国の満15歳以上1万人(全国400地点)を対象に訪問留置・訪問回収法により調査を実施。調査時期は2015年11月5日から11月29日まで、回収率は65.1%。
  • (注32)既支払額(信用供与を含む。)ベースでの消費者被害・トラブル額の推定額は6.1兆円であるが、この数字には誤差が含まれており、同基準の消費者被害・トラブル額は95%の確率で5.7〜6.5兆円の幅の中にあると推定される。

担当:消費者調査課