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第1部 第2章 第1節(1)家計消費、物価の動向

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者行動・意識

第1節 消費者を取り巻く社会経済情勢

(1)家計消費、物価の動向

●社会経済活動の中で大きなウェイトを占める消費活動

社会経済活動の中で、消費活動は大きなウェイトを占めています。家計が支出する消費額の総額は、2015年に約285兆円で、経済全体(国内総生産(GDP)=約499兆円)の約6割を占めています(図表2-1-1)。諸外国を見ると、先進国は概して消費者が支出する総額が経済全体の5割を超えています。また、米国のように消費支出が経済の7割近いウェイトを占めている国もあります(図表2-1-2)。

消費者の消費活動は、我が国の経済社会全体に大きな影響を及ぼしており、経済の持続的な発展のためには、消費者が安心して消費活動を行える市場を構築することが重要です。

●家計の支出の4割超がサービスへの支出

総務省「家計調査」により、2015年における「二人以上の世帯(農林漁家世帯を除く)」1世帯当たりの財・サービスへの支出を見ると、教養娯楽や住居、外食等のサービスへの支出が占める割合は42.4%、食料や光熱・水道等、財(商品)への支出は57.6%です(図表2-1-3①)。経済のサービス化が進む中で、家計に占めるサービスへの支出割合は、上昇傾向にあります(図表2-1-3②)。

●賃金水準は改善するも、消費支出は手控える傾向

厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2015年の名目賃金はおおむね前年同月を上回って推移しています。また、物価の動向を加味した実質賃金も、2015年は7月以降、おおむね前年同月を上回って推移しました(図表2-1-4)。これら賃金水準の改善は、企業業績の改善や人手不足による賃上げによるものと思われます。

次に、家計の消費支出の動向を、総務省「家計調査」により見ると、2015年は前年を上回る月があるものの、9月以降総じて前年同月を下回って推移しています(図表2-1-5)。実質賃金が改善傾向にあっても消費支出を手控える傾向にあることがうかがわれます。

●消費者の支出に対する姿勢は慎重な状態が継続

消費者の支出の意識について、「物価モニター調査」(【解説】参照)から見ていきます。物価モニターの方々に、「あなたの世帯の消費への支出額を、今後3か月の間について、去年と比べて、どのようにしていこうと思っていますか。」と聞いたところ、2015年4月以降「減らそうと思っている」と回答した人の割合が11か月連続して50%を超えています(図表2-1-6)。一方、「増やそうと思っている」と回答した人の割合は、4〜6%台と低い状況となっています。「減らそうと思っている」と回答した人にその理由を聞いたところ、調査を始めた2013年10月以降、「所得が減ると思うから」と回答した人が常に最も多く、次いで「支出に回す額を減らして、貯蓄に回す額を増やそうと思うから」と回答した人が多くなっています。特に、前者は2015年以降も50%台で推移しており、所得に対する不安から、消費者の支出に対する姿勢は慎重な状態が継続していると考えられます(図表2-1-7)。また、消費を減らそうと思っている品目グループを聞いたところ、「食料品」と回答した人の割合が2015年4月以降、最も多くなっています(図表2-1-8)。

【解説】物価モニター調査の実施

「物価モニター調査」とは、原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響、物価動向についての意識等を正確・迅速に把握し、消費者等へのタイムリーな情報提供を行うことを目的として消費者庁が行っている調査です。

広く一般から募集した全国2,000名の物価モニターによる調査です。その内容は、価格調査と意識調査があり、価格調査は、消費者庁が指定した調査対象25品目(図表2-1-9)の価格の見取調査で、毎回の調査において同一店舗で同一商品の店頭表示価格を継続して調査するものです。特売品も含め、消費者に身近な品目、日頃よく購入する品目の価格を把握します。また、意識調査は、物価モニターに対し、消費や物価動向についての意識の変化を調査するものです。

2013年10月から調査を行い、2013年度は3回、2014年度は6回、2015年度は12回の調査を行いました。また、2015年4月以降は調査回数を毎月の12回に増やし、調査結果をタイムリーに公表しています(注15)

●2015年に消費者物価は緩やかに上昇

消費者が購入する財・サービスの価格の動きについては、総務省「消費者物価指数」によると、2014年4月の消費税率引上げ後、横ばいとなっていましたが、2015年に入り、上昇する動きも見られます(図表2-1-10)。

消費者が購入する財・サービス全体の価格の動きを示す「総合」指数は、2015年9月に前年比0.0%となりましたが、その後は小幅ながら前年比を上回って推移しています(図表2-1-11)。また、「総合」から、天候等による価格変動が大きい生鮮食品を除いた価格の動きを示す「生鮮食品を除く総合」指数(いわゆる「コア」指数)は、2015年8月に前年比でマイナスに転じた後、2015年11月には再度前年比プラスとなりました。ただし、2014年4月の消費税率引上げの影響の一巡や、原油安による電気代やガソリン価格といったエネルギー価格の下落の影響を受けて、総合指数、コア指数とも上昇率は2014年を下回っています。一方、「総合」から食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いた価格の動きを示す指数は、2015年上昇傾向で推移し、食料品やエネルギー以外の財・サービスの価格は上昇傾向にあると考えられます。

総合指数の前年比の動きについて項目別の寄与度(各要因が全体の動きにどれだけ影響しているかの度合い)を見てみると、エネルギーの寄与度は、2015年1月にマイナスに転じ、2015年9月にかけてそのマイナス幅は拡大しています。世界的に需給が緩んでいることを背景とした原油安の影響等により、エネルギーが物価にマイナスに寄与している一方、原料費の高騰などにより価格が上昇している食料品や、その他の財・サービスは、物価の上昇に寄与しています(図表2-1-12)。

●灯油及びガソリンの店頭価格は2015年半ば以降再び下落傾向

一般的に灯油やガソリンの店頭価格は、原油コストを踏まえつつ需給状況や地域における競争環境等も反映した形で市場の中で決定されていくため、灯油・ガソリン店頭価格の推移を見ると原油価格の動向に影響を受けていることが分かります。2000年代末以降の長期的な推移を見ると、2008年9月のアメリカ大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻を契機として世界経済が落ち込む中、原油価格の大幅な下落を受けて、灯油とガソリンの店頭価格も大幅に下落しました。2009年以降は上昇傾向が続きましたが、2014年の半ば以降は、シェール革命による米国の原油生産が増えたことなどにより、供給過剰感による原油安の影響を受けて下落傾向に転じました。2015年前半は一旦上昇に転じたものの、米国の生産が底堅く推移したことや石油輸出国機構(OPEC)の減産見送りなどによる原油安の影響を受けて2015年後半以降再び下落傾向に転じました。(図表2-1-13)。

原油価格とガソリン価格の関係については、原油価格の動きをおおむね1か月遅れてガゾリン価格が反映するような形で動いています(図表2-1-14)。これは、国内の石油元売事業者が、中東などの産油国から原油を輸入し、ガソリンを生産、その後小売業者に販売(配送)されるといった生産・流通過程に一定の時間が掛かることから、国内の小売業者が原油価格の変動を反映して売値を変更するまでに時間が掛かっているためと考えられます。

●2015年は値上がりした品目が多かった生活関連物資

食料品、日用・家事用品、サービスといったカテゴリー別に物価モニター調査対象品目のうち前月比で値上げした品目数と値下げした品目数を見ると、2015年4月以降10か月連続で値上げした品目数が値下げした品目数を上回りました(図表2-1-15)。

前月比の平均価格変化率の推移を見ると、全品目(25品目)の平均値は2015年5月以降拡大・縮小を繰り返しながらも上昇率は縮小傾向となっています。この動きは、品目数の多い食料品(18品目)を反映しており、日用・家事用品(4品目)についてもおおむね同様の傾向です。また、サービス(3品目)については、わずかながら前年を上回る動きが続いています。生活関連物資の値上げは継続しているものの、全体として値上げ幅は縮小傾向にあることが分かります(図表2-1-16)。

●物価の優等生である卵の価格は2015年上昇傾向

卵は長年、価格が上昇しなかったことから、物価の優等生と呼ばれていましたが、2015年は一年を通じて価格が上昇傾向にありました。卵の価格は季節によって変動します。春は、行楽シーズンのお弁当のおかずなどとして需要が増えるため、価格は上昇し、夏は、食中毒などに対する懸念から需要が減るため、下落します。秋には、行楽用等の需要といった春と同様の理由により価格が上昇し始め、12月まではおでんやケーキの材料としての需要が増えるため上昇し、1月以降は下落します。

消費者物価指数や物価モニター調査結果を見ると2014年は季節による価格変動を確認することができますが、2015年は夏場に価格がほとんど下落しないまま、年末にかけて価格が上昇しました。その主な理由として、円安方向への推移による飼料価格の上昇が挙げられます。

また、物価モニターに「今後3か月で上昇すると思う品目」を聞いたところ、卵と回答した人の割合は、価格が上昇するに従って増加しました。卵は購入頻度が高く、スーパーなどの目玉商品となりやすいため、消費者は価格の変化を敏感に感じ取っていると考えられます(図表2-1-17)。

●物価モニターの1年後の物価上昇期待は縮小傾向

物価モニターに、1年後の物価について聞いたところ、調査を始めた2014年12月から2015年7月までは、「上昇すると思う」と回答した人の割合は、80%を超えていましたが、2015年8月以降は減少傾向となっています(図表2-1-18)。

「上昇(下落)すると思う」と答えた人に1年後どれくらい上昇(下落)するか聞いた結果を加重平均したところ、調査を始めた2014年12月は2.5%でしたが、直近の調査では1.5%となっており、縮小傾向となっています。また、内閣府が行っている消費動向調査でも同様に物価の上昇期待が縮小傾向となっています(図表2-1-19)。

消費者は、生活関連物資の値上げの一服感や物価上昇率の予想に関する報道情報などから、1年後の物価の上昇幅は小さくなると予想しているのではないかと考えられます。

●公共料金は電気代、ガス代を中心に下落

家計の消費支出の約20%を占める公共料金は、電気代、ガス代を中心に2015年4月頃から下落傾向となっています。この要因としては、原油価格の下落により、電気やガスの燃料費が下落したことが、原燃料費調整制度(注16)により、それぞれ電気料金ガス料金に反映されたことが挙げられます。原油価格の下落は、当面は電気代、ガス代を押し下げる要因になることが考えられます(図表2-1-20)。また、電気料金については、2016年4月以降、電力小売全面自由化の影響を受けることも考えられます(第4章第5節(6)参照。)。

図表2-1-1 名目国内総生産に占める家計消費等の割合(2015年)

図表2-1-2 GDPにおける消費支出割合の国際比較(2014年)

図表2-1-3① 財・サービス支出の内訳(2015年)

図表2-1-3② 財・サービス支出の内訳の推移

図表2-1-4 実質賃金の動向(前年同月比)

図表2-1-5 消費支出の動向(前年同月比)

図表2-1-6 支出に関する消費者の意識の動向

図表2-1-7 支出を減らそうと思う理由

図表2-1-8 支出を減らそうと思う品目グループ

図表2-1-9 物価モニター調査対象品目(2015年4 月以降)

図表2-1-10 消費者物価指数の動向

図表2-1-11 消費者物価指数(前年同月比)の動向

図表2-1-12 消費者物価指数(総合)の項目別寄与度(前年同月比)

図表2-1-13 灯油・ガソリン店頭価格の動向

図表2-1-14 ドバイ原油価格(円建て)と店頭ガソリン価格との比較

図表2-1-15 上昇した品目数と下落した品目数(前回調査比及び前月比)

図表2-1-16 物価モニター価格調査結果におけるカテゴリー別平均変化率の推移

図表2-1-17 卵の消費者物価指数及び価格調査結果の推移と今後3か月で上昇(下落)すると思う人の割合

図表2-1-18 1年後の生活関連物資全般の物価動向について

図表2-1-19 消費者が予想する1年後の期待インフレ率

図表2-1-20 主な公共料金の動向


  • (注15)消費者庁「物価モニター調査」結果URL:
    http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/price_measures/index.html#price_monitor
  • (注16)発電に掛かる燃料費やガス製造に掛かる原料費の変動に応じて料金が変化する制度で、原燃料の貿易統計価格の3か月平均値に基づき、料金を毎月調整します。原燃料価格の大幅な上昇時の需要家に対する影響を緩和するために、自動的に調整される幅に一定の上限を設定し、原燃料費が高騰しても、需要家料金への反映には一定の抑制をします。

担当:消費者調査課