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第1部 第1章 第5節 地方消費者行政の基盤強化に向けて

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】地方消費者行政の充実・強化に向けて

第5節 地方消費者行政の基盤強化に向けて

ここまで見てきたとおり、地方消費者行政は、消費生活の「現場」である地域において、消費者からの相談対応、消費者教育の提供、悪質事業者に対する法執行等、様々な役割を担っています。

消費者庁設置後、「地方消費者行政強化作戦」として目標を掲げての取組の推進や、国からの財政面での支援もあり、地方消費者行政は着実に進展してきました。その一方で、課題も残されており、今後も一層の強化が必要とされています。

消費者が、どこに住んでいても質の高い相談・救済が受けられ、安全に、安心して消費生活を送るためには、今後も国と地方の行政機関が連携して、地方消費者行政の強化を進めていく必要があります。更に消費者一人一人の状況に応じて的確な対応をしていくためには、地域における関係部局や関係団体の連携が進むことが期待されます。

●消費生活センターの設置を更に推進

消費生活相談体制の整備については顕著に進展しています。全ての地方公共団体に相談窓口が設置され、相談体制の空白地帯の解消という目標が達成されました。消費生活センター設置数も増加し、消費者からの相談に対応する消費生活相談員数の増加や資格保有率の上昇も見られます。

相談体制の整備は、窓口の設置や専門職員の配置により、相談件数が増加した地域もあり、相談の掘り起しにつながっていると見られます。地方公共団体別に見ると、消費者にとってより身近な市区町村での相談受付件数が増加傾向にあり、中でも、高齢者の受付件数が増加しています。また、あっせんについても、市区町村のほうが都道府県・政令市の窓口よりあっせん率が高く、かつ、高齢者の場合は更に高くなっています。身近な市区町村の消費生活相談窓口に相談したいという傾向は高齢者でより強く、相談体制の整備は、消費者被害の中でも深刻である高齢者の消費者被害の未然防止や早期救済につながっているものと考えられます。

しかしながら、小規模な地方公共団体での消費生活センターの設置は、目標に比べ進展しているとはいえず、特に市区町村の人口規模が小さいほど設置率は低い状況にあります。消費者がどこに住んでいても、質の高い相談が受けられるよう、今後、市区町村における消費生活センターの設置を一層促進していく必要があります。小規模な地方公共団体において、単独での設置が困難な場合は、広域連携での設置や、都道府県からの協力、支援等も期待されます。

●相談体制の質を高める

近年、商品・サービスの多様化が進み、契約内容も複雑化する中、消費者が一旦トラブルに巻き込まれた場合、自ら解決するには困難な状況も増えています。トラブルに巻き込まれた消費者が消費生活センター等へ相談することによって、トラブルの解消につなげていくためには、相談体制の量的な整備とともに、質を向上していくことが、とても重要です。その鍵を握るのは、消費者からの相談を受け付ける消費生活相談員の人材確保と相談技術の向上です。

改正消費者安全法において、消費生活相談員の職が法律に位置付けられ、内閣総理大臣の登録を受けた機関による消費生活相談員の資格試験制度が創設されました。法的な位置付けが明確になることにより、今後、専門知識を持つ、能力の高い消費生活相談員の更なる増加が期待されます。

また、消費生活相談員が幅広い消費者問題に対応するためには、個々の相談技術を高めていく必要があります。それには、研修への参加、相談現場における経験の蓄積や周囲からの的確な指導・助言を受ける機会が有用です。しかしながら、窓口の増設が進む中、例えば相談員が一人といった、相談員の配置が十分でない小規模、新設の窓口の場合では、研修に参加することや、周囲からの助言・指導を仰ぐことが難しい状況も見受けられ、こうした課題の解決も望まれます。

さらに改正消費者安全法では、都道府県は、市区町村に対する必要な助言、協力、情報の提供その他の援助を行うことが定められており、都道府県と市区町村が適切に連携し、相談体制を強化していくことが期待されます。

●消費者行政職員の確保や質の向上

改正消費者安全法では行政職員の確保や資質向上も定められています。地方公共団体における相談体制、法執行、消費者教育、他部局や関係団体との連携等、消費者行政全体における行政職員に求められる業務は多岐にわたっています。しかし、地方公共団体における消費者行政職員数は増えておらず専任率も高まっていない状況です。専任の職員の配置及び養成も、消費者行政を推進する上での大きな課題です。

●地域に根差した見守りの体制の構築

高齢化、単身世帯化などの社会経済状況の変化や、悪質商法の巧妙化・深刻化等を踏まえ、消費者被害に遭いやすい高齢者・障害者等を地域で見守る体制の充実も課題です。このためには、消費者担当部局だけでなく、福祉部局や関係団体を始めとした地域社会の連携の促進が重要です。既に関係者と幅広く連携した見守りのネットワークを構築している地域もあります。改正消費者安全法においては、地方公共団体及び地域の関係者が連携した消費者安全確保地域協議会を設置できることや、地域でこのような活動に参加する者を育成することを定めており、幅広い担い手による連携強化によって、今後、全国的に地域の見守りネットワークの構築が進むことが望まれます。

●地域における消費者教育の一層の推進

消費者は生涯にわたり、様々な場で消費者教育を受けられる必要があります。また、消費者教育によって消費者の自立を促すことも重要です。地方公共団体による消費者教育の一層の推進が求められますが、消費者教育推進計画については、まだ未策定の都道府県もある状況です。一方、地域によっては、市民を幅広く巻き込んで消費者教育を推進したり、学校において広告や表示について授業が行われたりするなど、様々な取組が実践されています。消費者教育の拠点としても、消費生活センター等が地域の多様な担い手を支援し、関係機関との連携を強化していくことが期待されています。

●消費者ホットライン「188」や消費生活センター等の役割についての周知や情報の活用

消費者自らの意識・行動も、相談対応にとって、実は重要な要素となります。消費生活センター等については、他の機関や窓口より、知られている割合が高く、信頼度も上昇していますが、未だ多くの消費者にとって、地域の消費者行政サービスが自らの消費生活にとってどのように役立つものかについて十分認識、活用されているとは言えない状況です。また、消費者ホットライン「188(いやや!)」についても、名前や番号も知らない消費者が大勢います。

消費者行政が発信している情報提供や啓発資料等は充実してきていることから、様々な情報に消費者自らも日常的にアンテナを張り、上手に活用していくことが重要です。社会でどのような消費者トラブルが起きているのか、どこへ相談すればよいのか等を知っていることが消費者被害の未然防止につながり、被害に巻き込まれたとしても、解決の手段や早めの相談へとつながっていきます。そして、消費者が身近な専門窓口へ早めに相談することは、自身にとっての問題解決へのきっかけとなるだけでなく、消費生活センター等における消費者トラブル等の情報蓄積にもつながります。その情報は、類似のトラブルにおける相談対応や注意喚起に活用できる等、被害救済や拡大防止に役立ち、さらに相談現場の専門性を高める結果にもなっていきます。

こういったことが消費者の意識や行動に反映されるには、まず、消費生活センターや相談窓口、消費者ホットラインの存在や役割について、より多くの消費者に知ってもらうことが必要です。消費者行政はその役割の周知や、収集される情報の活用についても、一層取組を促進していくことが求められます。

図表1-5-1地方消費者行政強化への取組

担当:消費者調査課