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第1部 第1章 第4節(2)福岡県かすや中南部広域消費生活センターの取組

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】地方消費者行政の充実・強化に向けて

第4節 地方公共団体の様々な取組

(2)福岡県かすや中南部広域消費生活センターの取組

●かすや中南部広域消費生活センターの所在地

「かすや中南部広域消費生活センター」は、福岡市の東側に位置する志免町で開設されています。志免町は南北に細長い総面積8.69平方キロメートルの小さな町です。福岡市の中心部まで約8キロメートルという地の利に恵まれています。福岡市のベッドタウンとして宅地開発されており、2010年国勢調査における町の人口は43,564人で、5,007人/平方キロメートルと全国の町村では第1位の人口密度となっています。

●相談窓口の開設と広域連携

かすや中南部広域消費生活センター開設前の志免町の相談体制は未整備で、決して消費者行政に関する取組に積極的であるとは言えない状況でした。住民は福岡市に近接しているため、県の消費生活センターを利用していました。

町の組織機構改革により消費者行政に積極的に取り組むこととなり、県とも協力し、2012年6月に「志免町消費生活相談窓口」を開設しました。

当初、相談窓口は週2回の開設でしたが、相談件数があまり伸びませんでした。志免町が窓口開設した時期には、近隣町でも消費者行政への取組が活発になっており、2013年4月には隣接する宇美町が相談窓口を開設し、志免町と宇美町で広域連携を図りました。これにより両町の住民は、どちらの町の相談窓口でも相談を受けることができるようになり、実質週4日の相談体制を確保されました。さらに2014年4月には、やはり隣接する須恵町とも広域連携を行い、当地域には週5日の相談体制が整いました。

●消費生活センター化に向けて

地域の相談窓口が整っていく中、志免町の施策として、地域防犯の拠点となる施設として「志免町地域安全安心センター」を建設することになり、その2階に消費生活センターを設置し、防犯の複合施設として機能させるという方針が立てられ、消費生活センター化に向けて取り組むことになりました。

消費生活センターとすることにより、相談機関としての機能は拡充されますが、大きな事業予算が必要となります。町の負担する経費を極力抑え、充実した体制の構築を進めていくためにはどうしたら良いかを検討した結果、開設後の相談業務について、「中心市集約方式での広域連携」を近隣町に提案することになりました。

志免町が位置する福岡県の糟屋中南部(志免町、宇美町、須恵町、粕屋町、篠栗町)は、5町を合わせた面積もさほど広くなく、生活圏もほぼ同じであることが特徴です。そのため、消費者トラブルでも同様の被害が発生することが多く、広域連携を図ることは大きなメリットです。講演会や出前講座などの啓発活動についても連携を図ることで、効率化にもつながります。そこで、既に広域連携を行っていた3町に加え、粕屋町・篠栗町へも連携の提案を行い、賛同を得ることができました。

既に設置されている消費生活センターに近隣地方公共団体が参加する形ではなく、開設当初から連携を図る方向で協議していたため、施設名称や相談体制、相談時間及び負担金等について、連携町それぞれの意見も十分に考慮し、調整を行いました。

かすや中南部広域消費生活センター

かすや中南部広域消費生活センター

●開設当初の運営状況

かすや中南部広域消費生活センターは、地域防犯の拠点として建設された「志免町地域安全安心センター」の2階に開設しています。この施設の1階には粕屋警察署志免交番があり、町民の生活を守る複合的な施設としての機能を有しています。

センターでは、行政職のセンター長1名、消費生活専門相談員3名、非常勤の事務職員1名の常時5名で業務に当たっています。

2015年4月の開設当初から1日平均4件ほどの相談が寄せられており、2016年1月までの10か月間で約780件の相談実績となっています。

●今後の取組

消費生活センターの運営については、連携町の財政事情等を考慮し、今後も広域での実施が続く見込みです。

2015年度の相談実績については、5町合わせた人口約19万人に対する相談件数から見ると決して多いとは言えず、直接県のセンターへ行く相談者もまだまだ多い状況です。糟屋中南部地域の住民に利用してもらえるよう、センターの存在や機能について連携町担当者とともに、周知・啓発活動に力を入れていく必要があります。

また、地域への啓発活動の一環として行っている出前講座は、非常に好評であり、こういった活動を進めながら、利用しやすく信頼されるセンターとなっていくことが求められます。

【解説】広域連携による相談窓口の設置

小規模な町村や中小規模市では、単独で専門相談員を配置し、消費生活センターや相談窓口を設置することは、財政負担等の理由から必ずしも容易ではありません。消費者安全法は、市町村に消費生活センターの設置の努力義務を定めていますが、相談窓口が設置されていない、又は設置されていても常設化されていないなどの小規模な市町村にとっての現実的な取組として、広域連携が全国的に実施されており、2015年4月時点で105か所となっています。

連携は様々な方式で行われていますが、最も多いのが「中心市集約方式」という事務協定により、中心地方公共団体が協定参加地方公共団体住民全体の相談に対応する方式です。他にもそれぞれの住民がお互いの相談窓口ができるようにする「相互乗り入れ方式」や、広域連合や一部事務組合を設立・活用して消費者行政を協働実施する「組合方式」等によるものがあります(図表1-4-1)。広域連携の規模は、構成地方公共団体数が2〜10か所、構成自治体の人口の合計が少ないところで約1万2000人から、多いところでは約54万9000人となっており、この人口の大小は、地方公共団体数ではなく、規模の大きい自治体が含まれるかどうかの影響が大きく、その実態は様々となっています。

広域連携により、これまで消費生活センターや相談窓口がなく埋もれていた相談事案の掘り起こしが可能となった、専門的な知識・経験等を有する消費生活相談員の対応が受けられるようになった等、連携前には窓口がなかったり、専門の相談員がいなかったりした地域でも、一定水準の消費生活相談ができるようになるなどの効果がありました。

また、小規模な地方公共団体では居住地域の相談窓口への相談を躊躇する人もいますが、広域連携により隣の地方公共団体の相談窓口へ相談できるようになったため、相談しやすいといった住民の声も聞かれます。

図表1-4-1 広域連携の類型

担当:消費者調査課