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第1部 第1章 第3節(3)消費者安全法改正による地方消費者行政の強化

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】地方消費者行政の充実・強化に向けて

第3節 地方消費者行政強化に向けた取組

(3)消費者安全法改正による地方消費者行政の強化

●地方消費者行政の基盤強化に向けた消費者安全法改正

消費生活相談体制の更なる充実・強化を図るとともに、地域社会において高齢者等の消費者被害に遭いやすい消費者を消費者被害から守るための見守りネットワークの整備を図ることを内容とする消費者安全法の改正法が2014年6月に成立し、一部の規定を除いて2016年4月1日に施行されました(図表1-3-28)。

消費生活相談体制の充実・強化のための施策として、市区町村支援のための都道府県の役割の明確化や、広域連携等の活用による消費生活相談体制の整備について規定するとともに、消費生活相談等の事務を民間委託する際には、委託をすることにより消費生活相談等の事務の質が低下することのないよう、内閣府令で定める要件を満たす者に委託することや、消費生活センターを設置する地方公共団体が消費生活センターの組織及び運営についての条例を整備すること等を定め、消費者が「どこに住んでいても、質の高い相談・救済が受けられる体制」を構築するために必要な改正を行っています。

また、高齢者等の消費者被害を防止するためには、消費者行政担当部局のみならず、福祉部局等の他部局や地域で活動する団体等との連携をより一層強化し、地域のネットワークによる見守り体制の構築を図ることが重要です。このため、改正消費者安全法では、地方公共団体が「消費者安全確保地域協議会」を設置できることや、消費者安全の確保のための活動等を行っていただくために、地域で活動する民間の団体・個人の方を、「消費生活協力団体」又は「消費生活協力員」として委嘱できること等を定めています。

●消費生活相談員資格試験制度の創設

地方消費者行政の核となる消費生活センター等は消費生活相談員によって支えられていますが、消費生活相談員の法的位置付けは明確ではありませんでした。

改正消費者安全法では、地方公共団体における消費生活相談員の人材確保や質の向上のため、消費生活相談員の職を法律に位置付けるとともに、内閣総理大臣の登録を受けた機関により実施される消費生活相談員に関する資格試験制度を創設し、新しい資格試験に合格することや、これと同等以上の専門的な知識及び技術を有すると都道府県知事又は市町村長に認められることを、消費生活相談員の要件としています。

新たな資格試験制度の具体的な内容を検討するため、2014年7月から10月にかけて、消費者庁において、「消費生活相談員資格試験制度等に関する検討会」を開催し、同年11月に報告書が取りまとめられました。

消費者庁では、報告書の内容を受け、関係内閣府令及びガイドラインを策定し、資格試験制度の具体的内容を定めました。例えば、登録試験機関により行われる試験の科目については、改正消費者安全法及び消費者安全法施行規則で定められた5科目から出題することとなりました(図表1-3-29)。さらに、現職の消費生活相談員や既に消費生活相談員として働くことが決まっている方に対する試験の一部免除措置の具体的な内容を定め、登録試験機関ごとの判断により行えることとしています。

また、現行の3資格(消費生活専門相談員、消費生活アドバイザー、消費生活コンサルタント)の保有者に対する経過措置の要件について、例えば2016年4月1日の消費者安全法の改正法の施行の際、現に地方公共団体における消費生活相談の事務等に1年以上従事した経験を有する方については、新たな資格試験の合格者とみなされること等も定めました。

2016年度中に登録試験機関による消費生活相談員資格試験が実施される予定です。

●高齢者等の見守り

近年、とりわけ高齢者の消費者被害が深刻化しています。

高齢者は、「お金」、「健康」、「孤独」に関する大きな不安を抱えていることが多いと言われています。話し相手等がいない「孤独」の中で、自身の「お金」や「健康」への不安を背景に、訪問勧誘や電話勧誘を受ける等がきっかけとなり消費者被害に遭う例がよく見られます。中には利殖商法等の「損を取り戻してあげる」等といった被害の救済を装った勧誘に騙され、更なる消費者被害に遭ってしまう例(いわゆる二次被害)もあります。高齢者の消費者被害は、背景に、生活困窮や社会的孤立、認知力の低下などが潜んでいることも多く、また、高齢者本人からの相談が少なく、対応が遅れることで被害が拡大している面があることから、地域社会で取り組むことが求められる課題です。

高齢者本人が消費生活センター等に相談することを待っているだけでは、被害救済の体制として万全とは言えません。周囲の人達が、高齢者の消費生活上の安全に常に気を配り、何らかの異変を察知した場合には、消費生活センター等の機関と連携する等、地域で見守る体制を構築することが高齢者の消費者被害の拡大防止や未然防止に極めて有効です。

安倍内閣総理大臣は、2015年5月26日に行われた消費者支援功労者表彰の表彰式において、高齢者の消費者被害が深刻化していることを踏まえ、「地域でのつながりを強化し、高齢者を見守る仕組みを作ることが必要です。政府としても、こうした地域の連携ネットワークを今後5年間で全国に整備してまいります。」と述べました。

改正消費者安全法では、地域社会における高齢者等を消費者被害から守ることを目的として、地方公共団体の関係機関を始めとする地域で活動する様々な団体や個人を構成員とした消費者安全確保地域協議会を設置できることを定めるとともに、地域で活動する「消費生活協力団体」、「消費生活協力員」を育成確保すること等も規定し、地域の見守りネットワークの構築を進めていくこととしています(図表1-3-30)。

消費者庁としては、2015年3月に公表した「改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン」において、地域における見守り活動を一層促進するための指針を示しています。同ガイドラインでは、消費者安全確保地域協議会を地方公共団体が設置する際に想定される構成員として、地域包括支援センター等の福祉関係機関、警察等を示しています。また、消費者安全確保地域協議会の組織や運営の在り方について、ひな形を示しているほか、構成員の間で情報をやり取りする際の具体的な方法についても示しています。

2016年1月には、各地方公共団体における高齢者等の見守りネットワーク構築に向けた取組を促進するため、「地域における見守りネットワーク構築に向けた取組事例」を公表し、福祉、防災、防犯等の既存の地域ネットワークと連携した様々な取組や、民間事業者や地域で活動する方々と幅広く連携した取組について紹介しています。

法施行以前から既に見守りネットワークが構築され、高齢者や障害者の消費者被害防止に向けた取組が各地域で行われています。そのいくつかの例を紹介します。

「地域における見守りネットワーク構築に向けた取組事例」(抜粋)

【事例1】道と市町村の協働による地域の見守りネットワークの設立(北海道)

2003年に全国に先駆けて「北海道消費者被害防止ネットワーク」を設立。消費者行政担当課、消費生活センター、警察のほか、中学・高校・大学等の教育関係、社会福祉協議会や障害者団体等の福祉関係、弁護士会・司法書士会、地域団体・消費者団体の幅広い機関が参画。

さらに市町村レベルでのネットワーク設置促進のため、北海道が委託事業として一般社団法人北海道消費者協会に「設置促進員」を配置し、未設置市町村を訪問して地域ネットワークの設置の働きかけを実施。

2016年4月から、改正消費者安全法に基づく消費者安全確保地域協議会として位置付けた。

【事例2】事業者や地域団体が中心となっている水戸市安心・安全見守り隊(茨城県水戸市)

高齢者、障害者及び子供が安心して暮らせる地域作りを目的として「水戸市要援護者等見守りネットワーク(「水戸市安心・安全見守り隊」)を2013年に発足。公的機関と民間団体(事業者や地域団体等)によって構成。

住民の生活に身近な事業者がネットワークに参加することで、日常的な見守り、情報収集が可能となっている。

【事例3】地域包括支援センターとの連携強化による高齢者被害の防止(東京都西東京市)

2014年度から地域包括支援センターと消費生活センターの連携を強化し、高齢者の消費者被害防止に取り組む。消費生活センターの職員と消費生活相談員が地域包括支援センターを訪問し、顔の見える関係を構築するとともに、情報交換を実施。

双方で受けた相談を取り次ぐ事例が増加するなど、高齢者の抱える問題の根本解決につなげられるようになった。

【事例4】消費生活相談窓口と高齢者見守りネットワークとの連携(愛媛県東温市・松前町・砥部町)

東温市、松前町、砥部町では消費生活相談において相互協力体制を取っている。また、消費生活相談窓口が地域包括支援センター、社会福祉協議会、行政支援員(警察OB)などの関係機関と連携し、高齢者の悪質商法被害未然防止に積極的に取り組む。

相談したい高齢者が役場に来るのが難しい場合等は、地域包括支援センターや社会福祉協議会の社会福祉士やケアマネージャー等の担当職員に消費生活相談員が同行して「訪問相談」を行うなど、状況に応じた見守り活動を実施。

図表1-3-28 改正消費者安全法

図表1-3-29 登録試験機関により行われる試験科目( 5 科目)

図表1-3-30 消費者安全確保地域協議会について

担当:消費者調査課