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第1部 第1章 第3節(2)地方消費者行政の現況

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】地方消費者行政の充実・強化に向けて

第3節 地方消費者行政強化に向けた取組

(2)地方消費者行政の現況

これまで述べてきたような国の支援も活用しながら、地方消費者行政は着実に強化されています。ここでは、地方消費者行政の現状について、これまで述べてきた国の支援によりどのように充実・強化が図られたかを含めて、紹介していきます。

●地方消費者行政予算及び体制について

地方消費者行政予算の状況を2000年度から見ると、長期的に減少傾向にありましたが、2009年度から2011年度にかけて予算額が増加し、2012年度以降はまた減少しています(図表1-3-3)。地方公共団体別に見ると、市区町村等(注4)では2010年度以降増加傾向となっています。

2015年度の都道府県別の消費者行政予算額を見ると、自主財源の割合は全国平均では69.3%ですが、都道府県別には差が見られます。また、2010年度と比較すると全国平均では自主財源の比率は上昇しています(付表2[EXCEL:19KB])。地方消費者行政の強化のためには、国による支援とともに、地方公共団体の自主的・主体的な取組の充実が不可欠です。今後とも、地方公共団体の一層の取組が期待されます。

また、消費者行政を専ら担当する専管部署がある地方公共団体の割合は、2010年度は15.9%でしたが、2015年度には28.2%となっています(付表3[EXCEL:14KB])。2015年度の地方公共団体別では都道府県で97.9%、政令市で95.0%ですが、市区町村(政令市を除く。)は25.4%と大きく差が見られます。都道府県別での設置率は2010年度と2015年度を比べると、ほとんどの都道府県で上昇しています。

地方公共団体での消費者行政担当事務職員数は、2010年度が5,226人で2015年度は5,183人と、この数年ではほぼ横ばいの状況です(付表4[EXCEL:12KB])。

事務職員が消費者行政専任で業務を行っているのか、他の行政分野との兼務なのかで見ると、2015年度は1,497人で専任の事務職員数は減少傾向にあり、専任率もおおむね3割ですが、2015年度は28.9%と若干減少傾向にあります。

●地方消費者行政強化作戦の進捗状況

2014年1月から進められている「地方消費者行政強化作戦」の進捗状況を見ると、着実に、地方消費者行政の体制が充実していることが分かります(図表1-3-4)。

地方公共団体における消費生活相談窓口未設置の解消、窓口数の増加、消費生活センター設置数の増加といった、相談受付の量的拡大は顕著です。また、相談体制の質的側面である消費生活相談員の数の増加、資格保有率の上昇も見られ、相談体制の整備は着実に進展し、消費者庁設置後の新しい消費者行政において、一定の成果が表れています。

一方、例えば消費生活センターの設立促進目標について、人口5万人以上の地方公共団体(全市町に消費生活センターを設置する目標)については20都道府県、人口5万人未満の小規模市区町村(半数以上の市町村に消費生活センターを設置する目標)については12都道府県が達成しているにとどまっています。

このほか、市区町村の50%以上に消費生活相談員を配置すること、消費生活相談員の資格保有率や研修参加率を向上させること、適格消費者団体の空白地域を解消すること等、「地方消費者行政強化作戦」に掲げられた目標の達成に向けて、引き続き地方公共団体の取組を促進する必要があります。

以下では、政策目標に沿って、特に相談体制の整備を中心に、現状を見ていきます。

●相談体制の整備:受付窓口の増設

市区町村(政令市を除く。)における消費生活センター等の設置状況の推移を、市区町村数で見ると、消費者庁設置直後の2010年度時点では未設置の市区町村数は241(未設置率13.9%)ありましたが、その後徐々に減少し2015年度には0となり、政策目標の一つである、相談体制の空白地域の解消を達成しました。

2013年度初めに消費生活センター等が未設置であった市区町村は95団体でしたが、2014年度初めには4団体となり、この間に大きく設置状況が変化しています。

また都道府県別に、2010年度、2013年度、2015年度における未設置率の状況を見ると、この数年での具体的な地域の状況を含めた変化が分かります(図表1-3-5)。2010年度に未設置地方公共団体が20%以上であった都道府県は14都道府県あり、県域内の全ての地方公共団体に設置されている都道府県は7都道府県でした。2013年度には未設置地方公共団体が20%以上の都道府県は2都道府県となり、県域内の全ての地方公共団体で設置されている都道府県は27都道府県と大幅に設置が進んでいます。そして、2015年度には前述のように全地方公共団体で設置されています。特に2013年度から2014年度にかけての設置の進展には、2014年1月に「地方消費者行政強化作戦」を定め、都道府県ごとに相談体制の空白地域の解消等の目標を設定して取組を進めたことが効果を発揮したと考えられます。

●相談体制の整備:消費生活センターの増設

消費生活相談を受け付ける窓口のうち、消費生活センターは第1節で紹介したとおり、消費者安全法に基づく位置付けで、その基準に満たない相談窓口もあります。2010年度には消費生活センター等は全国で1,613か所設置されており、そのうち消費生活センターは611か所(図表1-3-6)、それ以外の相談窓口(以下、消費生活センター以外の相談窓口を「相談窓口」といいます。)は1,002か所でした。2015年度は全国では1,804か所で、消費生活センターは786か所、相談窓口は1,018か所と、いずれも増加しています。

都道府県には消費者安全法で消費生活センター設置が義務付けられています。市区町村は設置に努めるよう定められていますが、政令市では全てに消費生活センターが設置されています。そこで、都道府県や政令市を除いた市区町村で、消費生活センター設置の状況を図表1-3-7で見ると、徐々に設置が進んでいることが分かります。消費者庁発足前の2009年度は379団体と、市区町村のうち21.4%の設置率でしたが、2015年度は862団体と50.1%で、全体の半数で設置されています。

また2015年度の市区町村(政令市を除く。)における消費生活センターの設置状況を人口規模別に見ると、20万人以上の市区町村では全ての団体で設置されています(図表1-3-8)。一方、人口3万人未満の市区町村では設置率は5割に達しておらず、2万人以上3万人未満の市区町村では44.7%、1万人以上2万人未満では32.4%、1万人未満では23.1%と人口規模が小さいほど設置率は低い状況にあります。

消費生活センター等設置の変化を都道府県別に見ると、おおむね2010年度に比べると2015年度には設置数は増加しています(図表1-3-9)。また、設置数に変化はなくても、消費生活センターと相談窓口に分けて見ると、消費生活センターが増えている都道府県が多く見られます。相談窓口が増加している都道府県、相談窓口から消費生活センターへ移行が進んでいる都道府県等、その地域の状況で異なる動きとなっています。

COLUMN1
消費生活相談窓口設置の認知度

●相談体制の整備:消費生活相談員の配置状況

全国の消費生活相談員数は2009年度の2,800人から2015年度は3,367人へと567人増加しました(図表1-3-12)。

市区町村(政令市を除く。)の消費生活センター等では、2009年度の40.3%から2015年度の59.0%へと、消費生活相談員の配置が進んでいます(図表1-3-13)。

しかし、人口規模別に見ると5万人以上の地方公共団体では2015年度の配置率は9割を超えているものの、1万人以上2万人未満の地方公共団体は36.2%、1万人未満は15.9%と、小規模な地方公共団体では、消費生活相談員の配置が進んでいない状況にあります。

また、市区町村(政令市を除く。)の窓口当たりの相談員数は、2012年度から2015年度まで2.4人と変わらず、相談窓口の設置が進む中、消費生活相談員の配備が十分であるかが問われる状況となっています。

●消費生活相談員は多くが非常勤職員

消費生活相談員の採用形態を見ると、2010年度は、常勤職員はわずか2.7%で、2013年度には4.0%になりましたが、直近の2015年度も2.7%となっています。非常勤職員は77.4%、法人委託が13.4%、個人委託が6.5%となっています。

常勤職員でない相談員の報酬を見ると、2015年度の報酬形態は「月額払い」が51.9%と最も多く、次いで「日額払い」が38.4%となっています。また、1時間当たり平均報酬単価は、1,520円(前年比6円減)となっています。

●一部の地方公共団体で消費生活相談員に雇止め

消費生活相談員に求められる関係法令や制度を含めた消費者問題に関する専門的な知識とヒアリング力、コミュニケーションスキルといった技術等は、消費生活相談の現場において消費者や事業者と向き合う中で獲得されるものです。したがって、各地方公共団体において、いわゆる「雇止め」(注5)を行うことは、地方公共団体にとっても損失であると考えられます。

消費者庁では、消費生活相談員の専門性やその果たしている役割の重要性を踏まえ、各地方公共団体において、再度任用する回数に関して一律に制限を設けることなく、消費生活相談員の専門性に配慮した任用を行うよう、総務省とも認識の共有を図りながら、内閣府特命担当大臣及び消費者庁長官から地方公共団体の長宛ての通知等により、消費生活相談員のいわゆる「雇止め」の見直しを求める通知を発出しています。

また、2014年6月に成立した消費者安全法の改正法(注6)により、消費生活相談員の職及び任用要件等が法律上に位置付けられました。同法の公布に合わせ、改めて内閣府特命担当大臣からメッセージを発出し、「雇止め」の見直しを含め消費生活相談員の処遇改善に関する働きかけを行いました。

さらに、2015年3月に公布した改正消費者安全法に係る内閣府令において、地方公共団体が消費生活センターに関する条例の策定に当たって参酌すべき基準として、いわゆる「雇止め」の見直しを含めた適切な人材及び処遇の確保に必要な措置を定めることを規定するとともに、「改正消費者安全法の実施に係る地方消費者行政ガイドライン」において消費生活センター以外の相談窓口に勤務される消費生活相談員に対しても同様の対応がなされるよう求めています。

こうした取組により、「雇止め」を行う地方公共団体は、2014年度初めの78団体から2015年度初めの42団体へと減少しました。

●相談体制の整備:消費生活相談員の質の向上

①資格保有率

前述したとおり、消費生活相談員数は徐々に増えていますが、消費者からの相談に的確に対応するには数の増加のみならず、質を向上させていくことが重要です。その一つの指標として、消費生活専門相談員、消費生活アドバイザー、消費生活コンサルタントの資格を保有している消費生活相談員の割合の状況を見ていくと、全国では2010年度の74.0%から2015年度は79.0%へと5ポイント上昇しています(図表1-3-14)。

政令市は2010年度から2011年度に92.7%から96.9%へと上昇し、その後はほぼ横ばいの状況ですが2015年度は97.7%と、ほとんどの消費生活相談員が資格保有者であることが分かります。

都道府県は、政令市と同様に2010年度から2011年度に75.7%から81.0%と5.3ポイント上昇しています。更に2014年度から2015年度に4.2ポイント上昇し、89.5%となっています。

市区町村は、2013年度までは71%程度で推移していましたが、2014年度は74.0%となり、2015年度も74.3%とやや上昇しています。

全体として、資格保有率は上昇していますが、地方公共団体の規模により差が見られます。

②研修の機会

消費者トラブルの内容は社会経済状況の影響を受け変化していることから、消費者からの相談内容も多様化・複雑化しています。そのため、相談業務で新たな、又は難しい消費者問題に対応するには日頃から行政内部でも教育・研修の充実を図ることが重要です。

消費生活相談員の研修参加率は、2014年度は平均参加率が86.8%でしたが、2015年度には89.9%へ上がっています。

「地方消費者行政強化作戦」では、研修参加率を100%に引き上げることを目標に掲げています。都道府県別に見ると2015年度は青森県、香川県、愛媛県、宮崎県の4都道府県が100%を達成しています(図表1-3-15)。

80%以上の参加率は38都道府県で、2014年度から6都道府県増加しています。80%未満の県は、埼玉県、愛知県、和歌山県、徳島県、沖縄県の5都道府県です。

消費生活相談員の資質の向上等を図るため、地方公共団体は国民生活センターや民間団体により実施される研修・講座を活用するとともに、地方公共団体自ら研修を実施する場合には、その充実等を図ることにより、消費生活相談員が研修に参加しやすい環境作りを含め、研修等の機会を十分に確保することが求められます。

●質の高い相談対応の重要性

消費生活相談の現場で、その内容等に応じて様々な相談対応を行っています。図表1-3-16に2015年度の消費生活相談の対応を示していますが、そのうち最も多いのが助言(自主交渉)で、消費者が事業者に自主交渉することで解決する可能性がある相談に対し、自主解決の方法をアドバイスすることです。クーリング・オフによる解約の仕方を助言することが代表的な例です。また、相談内容が消費生活センター等で対応する範囲内ではないため、本来の相談機関を紹介するケースもあります。さらに、まだ具体的なトラブルは発生しておらず事業者の信頼性を問うような相談に対し、一般的なアドバイスをするケース等もあります。

このような相談対応の中でも、トラブルを解決するために最も対応に時間を要するのが、消費者と事業者の間に立って行うあっせんです。あっせんは、相談してきた消費者が置かれている状況や希望などを把握し、よい解決方法は何かを考えることに加え、事業者から話を聞いたり、解決に向けて事業者を説得したりする技術も必要になります。

このことから、あっせんを行うには相談対応の質の高さが求められることになります。そして、これには消費生活相談業務に必要な基礎知識はもちろんのこと、経験の積み重ねが重要となります。

なお、2009〜2011年度に、経験の浅い相談担当者が1人で相談に応じている、又は専任の相談員がおらず行政職員が他の業務と兼務しつつ相談に応じている等、比較的小規模な市区町村の相談窓口に対して、実務経験豊富な消費生活相談員の専門家が定期的に巡回訪問して、現場で助言、指導を行いました。その際、相談現場から「相談員は資格取得者で知識は豊富だが、一人体制ということもあり不安」、「出勤日数が限られるため、1人で処理しているとあっせんに時間を要してしまい、なかなか解決に至らない」、「あっせんの経験が少ないため、自信を持って対応できない」等の声が寄せられています。

●あっせんが必要な相談が増加

受け付けた相談のうち、消費者自身では対応困難な相談の解決に向けて、相談窓口が直接事業者と消費者の間に入るあっせんについては、相談対応の中で最近徐々に割合が高くなってきています(図表1-3-17)。そして、解決率もおおむね9割となっています。

あっせん率が高まる傾向にある要因の一つとしては、人口の高齢化とそれ以上に増加している高齢者の消費者トラブルが挙げられます(詳細は第3章第1節参照)。高齢者のトラブルでは、本人が解決することが難しく、2015年度の相談では70歳代で11.5%、80歳以上の相談では16.6%と、あっせん率が他の世代より高まります(図表1-3-18)。

もう一つの要因としては、電気通信サービスの契約に関するトラブルの増加が挙げられます(詳細は第3章第3節)。たとえば、スマートフォンを中心とした携帯電話の契約では利用料金に端末自体の割賦料金、通信サービスの料金や映像配信サービス等のオプション契約の料金等が合算されていることがあり、さらにそれらをまたいだ割引システムの存在等、消費者にとって理解しにくい内容である場合が見られます。また、インターネット接続回線の契約勧誘に関する相談も多く見られますが、電話や訪問で勧誘が行われることが多く、別々の事業者とのセット販売での契約であるにもかかわらず、消費者の理解が不十分なまま契約に至り、トラブルになるケースがあります。こういった相談は、消費者にとっては契約内容が複雑かつ契約の相手先が誰か分からない場合が多いため、消費者自身で解決することが難しく、消費生活センター等があっせんに入る割合が高くなります。2015年度の消費生活相談全体でのあっせん率は8.7%ですが、「携帯電話サービス」に関する相談で17.0%、「インターネット接続回線」に関する相談では26.0%となっています。

以上のように、消費生活センター等の相談対応での支援がますます求められる状況にあり、質の高い相談体制が重要となっています。

●相談のしやすさへの工夫:土日における受付対応

多くの消費生活センター等は平日に相談対応を行っていますが、平日にはなかなか相談する時間がない消費者もいます。このため、土日や祝日に相談受付を行うことが相談しやすさにつながるものと考えられます。

都道府県が設置している消費生活センターにおいて、土日両日に相談を受け付けているのは2015年度では13都道府県でした(図表1-3-19)。土日のいずれかで受け付けているのは17都道府県、両日とも受付を行っていないのは17都道府県という状況です。ただし、都道府県設置の消費生活センターで受付を行っていない17都道府県のうち、北海道、山形県、富山県、大阪府、広島県、長崎県の6都道府県では都道府県内の市で土日のいずれかで受け付けている消費生活センターがあります。

●相談のしやすさへの工夫:消費者ホットラインの3桁化

消費者がトラブルに見舞われたとしても、消費生活相談窓口の存在に気付かなかったり、窓口があることは知っていたとしてもその連絡先が分からなかったりすることがあります。このため、消費者庁では、全国どこからでも身近な消費生活相談窓口につながる共通の電話番号である「消費者ホットライン」(0570-064-370)の事業を2010年1月から実施しました。さらに、より覚えやすいものとなるよう2015年7月1日から番号を「188」とする3桁化を行いました(詳細はコラム「消費者ホットライン「188(いやや!)」スタート」参照。)。

その結果、10桁での運用時と比べ、2015年7月以降、架電件数が2倍程度で推移しており、一定の成果を挙げていると考えられます。一方で、消費者ホットラインや3桁の電話番号の認知度は未だ高いと言えず、活用の拡大に向けた周知が課題です(詳細はコラム「消費者ホットラインの認知度」参照。)。

COLUMN2
消費者ホットライン「188(いやや!)」スタート

COLUMN3
消費者ホットラインの認知度

●相談体制整備の効果

全ての地方公共団体における相談体制の整備に伴い、消費者は身近な窓口へ相談する選択肢が広がっています。ここでは、その効果を見てみます。図表1-3-22に、地方公共団体別の2009年度を100として相談件数の推移を示したところ、都道府県消費生活センターが受け付けた相談は減少傾向にある一方、市区町村における受付件数は増加傾向にあり、2015年度は2009年度から22.9%増加しています。

特に65歳以上の高齢者からの相談は71.7%と大きく増加し、高齢者は、市区町村の身近な相談窓口を利用する傾向が見られます。

さらに、近年高齢者の相談件数自体が増加傾向にあることから、地方公共団体別に相談者が65歳以上の高齢者である割合を見ると、市区町村で受け付けている相談は都道府県や政令市と比べ高齢者から寄せられる割合が高いことが確認できます(図表1-3-23)。また、近年は高齢者からの相談の割合がますます高まってきており、市区町村では、2013年度以降3割近くとなっています。

2015年度の相談を地方公共団体別に見ると、都道府県ではあっせん率が6.6%、政令市が7.1%、市区町村が10.7%と、市区町村が最も高くなっています(図表1-3-24)。相談者が高齢者の場合、市区町村は13.9%と、更に高い割合であっせん処理の対応を行っており、そのうち94.4%を解決に導いています。ここから、市区町村の消費生活相談窓口が整備されたことによって、全国でのあっせん率が上昇している結果となっていることが分かります。

また、前節において紹介しましたが(図表1-2-13)、購入した商品、利用したサービスにより経済的被害に遭った際、消費生活センター等へ相談するとした回答者に対し、どこへ相談したいか尋ねた結果、「自宅から近いセンター又は窓口」が68.5%と最も高い回答割合となりました。65歳以上に限ると78.7%、80歳以上では86.0%という結果でした。よって、身近な窓口の設置は高齢者が相談するきっかけを後押しする可能性があります。

以上から、近年の高齢者の消費者被害が深刻な状況において、相談窓口の整備が進み、市区町村の身近な窓口を設置することは、これまで行政に届かなかった潜在的な消費生活相談を捕らえる機会となり、特に高齢者の被害の未然防止、拡大防止、早い段階での被害救済につながると考えられます。そして、あっせん率からも分かるように、消費者と事業者との間のトラブルを行政が解決する機会が、身近な相談窓口への相談に多いことから、身近な窓口の設置は高齢者の被害救済にとってはより効果があることと考えられます。

●市区町村における消費生活センター設置の効果事例

消費生活センター等は全ての地方公共団体で設置されているものの、市区町村、特に町村における消費生活センター設置は、なかなか進んでいません。しかし、中には設置後、以下のように相談の掘り起こしにつながるとともに、消費生活センターが他部局との連携の拠点になるなど、変化が確認できる事例もあります。

【事例1】

町役場に消費生活センターを設置したことで、県や近隣地方公共団体の消費生活センターを利用していた町民が相談に来られるようになった。また、庁舎内に消費生活センターを設置したことで、福祉部局等の他部局と連携した取組が可能となった。(栃木県那須町)

【事例2】

専門的な相談員1名を配置して消費生活センターを開設したところ、開設前は年間数件程度だった相談が、開設後の半年間では100件程度となった。消費生活センターが住民にとってより身近な存在となったことや、相談員が電話を受けた際に相談者に対して「相談先の身近さ」をアピールするなど来所による相談を促していることにより、来庁による相談件数が電話による件数の倍以上となり、その結果、消費者問題の早期解決にもつながっている。(茨城県茨城町)

●消費者教育・啓発の強化

消費者教育を推進する上で、消費者教育推進計画を策定することは重要です。2016年3月現在、30都道府県、9政令市で策定されています。また、未策定の都道府県も17都道府県あります(図表1-3-25)。

また、消費者教育推進地域協議会は、2016年3月時点で42都道府県、12政令市で設置されています(図表1-3-26)。

2014年度の消費者に向けた講習等については、全ての都道府県、政令市で実施されています。市区町村等(政令市を除く。)においては56.0%が実施しています。中でも出前講座は都道府県で93.6%、政令市で95.0%、市区町村等(政令市を除く。)で48.4%の地方公共団体が行っています。

都道府県別での市区町村等(政令市を除く。)における講習等の実施率は、9割以上の都道府県が4都道府県あります。一方、3割に満たない都道府県も6都道府県あります。

行政のみならず、消費者を地域サポーター(注7)として、消費者問題に関わってもらうことも安心・安全な消費生活を営める地域作りには有効な取組です。活動例としては、消費生活センター等の紹介、地域イベントでの啓発活動の実施のほかに、身近な消費者トラブルの早期発見や高齢者の見守り活動などがあります。この取組については、2014年度は28の都道府県で制度を持っている状況です。2014年度は市区町村等で制度があるのは5.9%でした。都道府県別に市区町村等に制度がある割合を見ると、滋賀県21.1%、福岡県18.3%、東京都17.7%、福井県17.6%の順で4都道府県が上位となっています。一方、市区町村等で全く地域サポーター制度がない都道府県は10都道府県あります。

コーディネーター(注8)制度は、2014年度は都道府県では11都道府県が有しており、市区町村等で有しているのは4.5%でした。

誰もが、どこに住んでいても、生涯を通じて、様々な場で消費者教育を受けることができる機会を提供し、多様な担い手を育成、活用しながら、消費者教育や啓発を効果的に推進していくための取組が一層期待されます。

●適格消費者団体への支援

適格消費者団体とは、消費者被害の未然防止・拡大防止のため、事業者の不当行為に対して差止請求権を適切に行使することができる適格性を備えた消費者団体で、一定の要件を満たしているとして内閣総理大臣の認可を受けたものです。2015年度は新たに2団体が認定され、2016年4月現在、全国で14団体あります(図表1-3-27)。適格消費者団体が存在しない地域ブロックは、東北、北陸、四国の3ブロックですが、今後設立を推進していく必要があります。

「地方消費者行政強化作戦」の都道府県別進捗状況は付表5[EXCEL:21KB]の通りです。

図表1-3-3 地方消費者行政予算の推移

図表1-3-4 「地方消費者行政強化作戦」の進捗状況

図表1-3-5 消費生活相談窓口未設置の地方公共団体の状況

図表1-3-6 消費生活センター数の推移

図表1-3-7 市区町村数と消費生活センター設置市区町村数の推移

図表1-3-8 人口規模別消費生活センター設置状況(2015年度)

図表1-3-9 都道府県別消費生活相談窓口数の変化

図表1-3-12 地方公共団体の消費生活相談員数の推移

図表1-3-13 市区町村(政令市を除く。)における消費生活相談員配置率

図表1-3-14 消費生活相談員の資格保有率

図表1-3-15 消費生活相談員の研修参加率

図表1-3-16 消費生活センター等の相談対応結果(2015年度)

図表1-3-17 あっせん件数及びあっせん率と解決件数

図表1-3-18 2015年度 相談のあっせん率(契約者年代別及び通信サービス)

図表1-3-19 2015年度 都道府県消費生活センターの土日相談について

図表1-3-22 地方公共団体別相談件数の推移

図表1-3-23 地方公共団体別受付相談における高齢者からの相談割合

図表1-3-24 地方公共団体別のあっせん率及び解決率(2015年度)

図表1-3-25 消費者教育推進計画の策定状況

図表1-3-26 消費者教育地域協議会の設置状況

図表1-3-27 適格消費者団体の設立状況


  • (注4)「市区町村等」は、市(政令市を除く。)、区、町、村、広域連合及び一部事務組合を指す。
  • (注5)雇止めとは、条例、規程等(人事等の内部規程を含む。)において、非常勤職員として任用する消費者行政担当者について任用回数に上限を設け、上限を超えた場合には同一者を任用しないという規定、若しくは同様の効果を持つ規定を置いている場合、又は一定の任用回数を超えた者を再度任用しない人事慣行が確認される場合をいう。
  • (注6)不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律(平成26年法律第71号)
  • (注7)地域サポーターは、消費者教育に関して、地域の多様な組織・個人のつなぎ役であり、①学校と学校に協力可能な地域人材や団体等とのつなぎ役、②地域で活動する主体相互のつなぎ役、③見守り活動を行う主体と消費者教育・啓発活動を行う主体相互のつなぎ役などを担っている。
  • (注8)コーディネーターは、担当地域における日々の消費者教育を実務面・実践面において全般的に企画・調整し推進する者であり、消費者教育の拠点等で、地域全体の消費者教育の実践を支援する専門職として、地域サポーターが活躍しやすい環境の整備などを担っている。

担当:消費者調査課