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民間事業者向けQ&A集(平成29年2月版)

質問

総論

仕組みの整備関係

通報主体関係

通報対象事実関係

通報先関係

通報の目的関係

保護要件関係

通報対応関係

通報者の保護関係

その他

回答

Q1 本法と民間事業者向けガイドラインはどのような関係にあるのでしょうか。
A

公益通報者保護法(以下「本法」といいます。)は、公益通報者の保護や事業者による法令遵守の確保等を目的として、「公益通報」をしたことを理由とする公益通報者の解雇の無効や不利益な取扱いの禁止、公益通報に関し事業者や行政機関がとるべき措置などを定めたものです。

これに対し、「公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン」(以下「民間事業者向けガイドライン」といいます。)は、本法を踏まえて、コンプライアンス経営の推進等を図ることを目的として、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を具体化・明確化し、従業員等からの法令違反等に関する通報を事業者内において適切に取り扱うための指針を示したものです。

このように本法と民間事業者向けガイドラインは相互補完関係にあり、両者を一体として運用していくことが有効と考えられます。

Q2 民間事業者向けガイドラインに記載されていることは全て守らなくてはいけないのでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインは、コンプライアンス経営の推進等を図ることを目的として、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を具体化・明確化し、従業員等からの法令違反等に関する通報を事業者内において適切に取り扱うための指針を示したものです。このため、各事業者において一層充実した通報対応の仕組みを整備・運用することや、各事業者の規模や業種・業態等の実情に応じた適切な取組を行うことを妨げるものではありません。

Q3 零細企業など、企業規模等によって、本法の規定の対象外となる場合があるのでしょうか。
A

本法は、「事業者」の範囲について規模による限定を設けてはおらず、企業規模等によって対象外となることはありません。

ただし、本法を踏まえた内部通報制度の整備・運用の在り方について、民間事業者向けガイドラインでは、各事業者において一層充実した通報対応の仕組みを整備・運用することや、各事業者の規模や業種・業態等の実情に応じた適切な取組を行うことを妨げるものではないとしております。

Q4 社長と従業員が1名しかいないような小さな会社は本法の規定の対象となる「事業者」に該当するのでしょうか。また、その従業員が通報した場合、本法の規定により保護されるのでしょうか。
A

本法は、「事業者」の範囲について規模による限定を設けてはおらず、企業規模等によって対象外となることはありません。したがって、御質問の会社も本法で定める「事業者」になります。また、その従業員が公益通報した場合、その従業員は本法の規定による保護を受けることができます。

Q5 本法の規定の対象となる「事業者」は、営利目的の法人のみを対象としているのでしょうか。
A

本法の「事業者」には、株式会社などの営利目的の法人だけでなく、公益法人、協同組合、特定非営利活動法人(NPO)、個人事業主なども含まれます。

Q6 民間事業者向けガイドラインは、派遣労働者や取引先の従業員からの通報についても対象としているのでしょうか。
A

本法は、派遣労働者や取引先の従業員についても公益通報者として明示しています(本法第2条第1項第2号及び第3号)。

民間事業者向けガイドラインは、このような本法の規定を踏まえて作成したものであり、派遣労働者や取引先の従業員からの通報も対象になります。

Q7 なぜ、事業者内部で通報対応の仕組みを整備する必要があるのでしょうか。
A

事業者の不祥事の多くが、事業者内部の従業員等からの通報を契機として明らかになったことから、公益のために通報した事業者内部の従業員等を保護し、事業者のコンプライアンス経営を促進するために本法が成立しました。

本法の成立に当たっては、国会による附帯決議等により、事業者内部で通報対応の仕組みを整備することが求められており、そのための指針として民間事業者向けガイドラインが策定されました。

通報対応の仕組みを整備することにより、事業者内部の問題がいきなり事業者外部に通報されることを防ぎ、問題を事業者内部で早期に把握できるようにすることによって、リスクを適切に管理し、問題が大きくならないうちに解決することが可能となります。また、コンプライアンス経営を促進していることを客観的に示すことによって、社会的な信頼も高まることとなります。さらに、労働者の業務におけるコンプライアンス(法令遵守等)意識を高めることができるなどの効果も考えられ、事業者にとって極めて有益であると考えられます。

Q8 会社法では、いわゆる内部統制システムの整備について、取締役会の決議事項としていますが、内部統制システムの整備に当たっては、内部通報窓口の整備を必ず行わなければならないのでしょうか。
A

会社法(平成17年法律第86号)第362条等は、いわゆる内部統制システムについて規定し、「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備」を大会社(資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の株式会社)の取締役会の決議事項としていますが、会社法及び同法施行規則は、内部通報窓口の整備について特定の体制を設けることを義務付けているわけではありません。

もっとも、民間事業者向けガイドラインでは、事業者のコンプライアンス経営を強化するために通報対応の仕組みの整備を規定しているほか、コーポレートガバナンス・コード(平成27年6月1日東京証券取引所)補充原則2-5①でも、「上場会社は、内部通報に係る体制整備の一環として、経営陣から独立した窓口の整備(例えば、社外取締役と監査役による合議体を窓口とする等)を行うべきであり、また情報提供者の秘匿と不利益取扱いの禁止に関する規律を整備すべきである。」としていることなどから、内部統制システムの整備に当たっては、通報窓口の設置を含む通報対応の仕組みを整備し、これを適切に運用することが必要であると考えられます。

(参考)会社法(平成17年法律第86号)

(取締役会の権限等)

  • 第三百六十二条取締役会は、すべての取締役で組織する。

2・3 (略)

  • 4取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

一~五 (略)

  • 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

七 (略)

5 (略)

(参考)会社法施行規則(平成18年法務省令第12号)(抄)

(業務の適正を確保するための体制)

  • 第百条法第三百六十二条第四項第六号に規定する法務省令で定める体制は、次に掲げる体制とする。

一~三 (略)

  • 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

五 (略)

2・3 (略)

Q9 会社法では、いわゆる内部統制システムの整備について、取締役会の決議事項としていますが、通報窓口の運用規則など細則も全て取締役会の決議事項になるのでしょうか。
A

会社法及び会社法施行規則の規定は、取締役会で決議する範囲についての詳細は規定していないため、取締役会で全ての事項を定める必要はなく、重要な事項(要綱・大綱)を決定すれば足りると考えられます。したがって、通報窓口の運用規則等の細部に至るまで全ての事項を取締役会での決議事項とすることは要求されていません。

Q10 通報窓口を設置することは事業者の義務なのでしょうか。
A

通報窓口の設置は法律上の義務ではありません。しかし、民間事業者向けガイドラインでは、事業者が本法の趣旨を踏まえてコンプライアンス経営を促進させるためには、通報窓口を設置し、自主的に通報対応の仕組みを整備することが必要であるとしています。

通報対応の仕組みを整備することにより、事業者内部の問題がいきなり事業者外部に通報されることを防ぎ、問題を事業者内部で早期に把握できるようにすることによって、リスクを適切に管理し、問題が大きくなる前に解決することが可能になるとともに、コンプライアンス経営を促進していることを客観的に示すことによって、社会的な信頼も高まることとなります。

実際に、消費者庁が平成28年度に実施した「公益通報者保護制度に関する労働者向けインターネット調査」によれば、労務提供先で法令違反行為等がなされていることを知った場合に、「通報する」又は「原則として通報する」と回答した者のうち、「まず労務提供先に通報する」と回答した者の割合は、全体では53.3%であったのに対し、内部通報・相談窓口が設置されている事業者に勤務する従業員では70.5%と高くなっています。

Q11 事業者内部に通報窓口を設置することでどのような効果があるのでしょうか。
A

事業者内部に通報窓口を設置することにより、

  • 事業者内部の法令違反行為等がいきなり事業者外部に通報されることを防ぐとともに、問題を事業者内部で早期に把握できるようになり、事業者内部のリスクを適切に管理することができるようになる
  • 通報が適切に取り扱われ、法令違反行為等の是正が図られることによって、業務における法令遵守が確保される

などの効果が考えられるほか、通報対応の仕組みを整備することによって、

  • 労働者の業務におけるコンプライアンス(法令遵守等)意識を高めることができる
  • コンプライアンス経営を促進していることを客観的に示すことができ、社会的な信頼が高まる

などの効果も考えられ、極めて有益であると考えられます。

Q12 相談窓口は何のために設置するのでしょうか。
A

相談窓口においては、通報窓口の利用者の疑問や不安を解消するため、通報に先立って、事業者内部における通報の取扱い(その事実が通報の対象となる事実に該当するのかどうか、通報対応の手続はどのようなものかなど)や通報者保護の仕組みに関する質問や相談に対応することが想定されます。

Q13 事業者が通報窓口を新たに設置するときはどのようにしたらよいのでしょうか。
A

事業者の内部に窓口を設置したり、事業者が指定した外部の法律事務所に委託したりするなど、事業者の実情に応じて設置してください。

なお、民間事業者向けガイドラインでは、リスク情報を把握する機会を拡充するため、可能な限り事業者の外部に通報窓口を整備することが適当であるとしています。

このほか、同ガイドラインにおいては、通報窓口を適切かつ実効的に運営するための方策について具体的に示していますので、窓口の設置・運営に際し参考にしてください。

Q14 通報対応の仕組みの責任者は、なぜ、経営幹部なのでしょうか。また、担当部署は、なぜ、部署間横断的に通報を取り扱うことが可能な部署にする必要があるのでしょうか。
A

事業者に対して従業員から通報が寄せられ、法令違反が明らかになった場合、事業者は、是正措置及び再発防止策を講じる必要があります。是正措置及び再発防止策を適切に講じ、経営に反映させるためには、通報対応の責任者を経営幹部とすることが必要であり、その役割を内部規程等において明文化することが適当であると考えられます。

また、通報の内容は多岐に渡る可能性があり、調査や再発防止策が特定の部署にとどまらないこともあり得ることから、部署間横断的に通報を取り扱うことが可能な仕組みを整備することが必要と考えられます。

Q15 どのようなところに通報窓口を設置すればよいのでしょうか。
A

窓口を設置するに当たっては、総務部門やコンプライアンス部門など、部署間横断的に対応することが可能な部署が望ましいと考えられます。社長直轄の窓口としても差し支えありません。

もっとも、窓口は人事評定部門との間で明確に事務の分掌・配置等を分けることが望ましいと考えられます。また、近時、経営トップの意向によって不適切な業務処理が行われ、内部通報制度が機能しなかった事案がみられたことなどを踏まえると、経営幹部からも独立性を有する通報ルート(例えば、社外取締役や監査役等への通報ルート等)を整備することも適当と考えられます。

さらに、相談者・通報者にとって、社内に比べて社外の方が心理的に相談・通報しやすい場合もあることなどから、事業者が指定した外部の弁護士事務所に通報窓口を設置することなども考えられます。

Q16 「相談」の窓口と、「通報」の窓口を完全に一元化してもよいのでしょうか。
A

相談窓口と通報窓口を区別しているのは、相談者又は通報者と窓口担当者との間で混乱が生じないように、その相談又は通報が「相談」と「通報」のいずれに該当するかという区別を担当者が明確に認識し、相談者又は通報者との間で見解を共有しておく必要があるという趣旨であり、必ずしも相談窓口と通報窓口を別個に設けなければならないという趣旨ではありません。したがって、相談窓口と通報窓口の運用上の一元化は、差し支えありません。

Q17 内部通報窓口を整備中です。今まであるセクシャル・ハラスメント窓口、パワ-・ハラスメント窓口を使ってもよいのでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインにおいては、対象としている通報内容や通報者の範囲、個人情報の保護の程度等を確認の上、必要に応じ、既存の通報窓口を充実させて活用することも可能としています。こうした趣旨に従って通報対応が行われる限りにおいては、セクシャル・ハラスメント相談等の既存の窓口を活用して一体的に運用することも差し支えありません。

Q18 グループ企業では、親会社にグループ共通の通報窓口を設置してもよいのでしょうか。
A

本法では、事業者内部への通報先を、「労務提供先」又は「労務提供先があらかじめ定めた者」としています。したがって、グループ各社が、親会社の通報窓口等(親会社が指定した法律事務所等の外部通報窓口を含みます。)を、あらかじめ事業者内部の通報先として指定することにより、グループ共通の通報窓口とすることが可能です。

なお、民間事業者向けガイドラインでは、親子会社関係にとどまらず、企業グループ全体やサプライチェーン等におけるコンプライアンス経営を推進するため、例えば、関係会社・取引先を含めた内部通報制度を整備すること等が適当であるとしています。

Q19 通報窓口をこれから設置しようと思っていますが、小さい会社ですので、外部に設置するのは難しいと思われます。外部に通報窓口を設置することが必要でしょうか。また、通報窓口と相談窓口を別々に設置するのは難しいと考えていますが、両方設置しなければいけないのでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインでは、通報者の匿名性を確保するとともに、経営上のリスクに係る情報を把握する機会を拡充するため、可能な限り事業者の外部にも通報窓口を整備することが適当であるとしていますが、各事業者の規模や業種・業態等の実情に応じた適切な取組を妨げるものではありませんので、事業者の実情に応じた通報窓口を整備してください。

また、設置部署や配置する人員の問題もありますので、事業者の実情に応じて、通報窓口と相談窓口を一元化して設置することも可能です。

Q20 通報窓口を整備中です。社内に通報窓口を設けず、法律事務所のみを通報窓口としてもよいのでしょうか。
A

差し支えありません。法律事務所に通報窓口を設けることは、通報者の匿名性を確保できることから、職場内で通報するより心理的負担が少なくなり、通報しやすくなる場合もあります。

ただし、中立性・公正性に疑いが生じるおそれ又は利益相反が生じるおそれがある法律事務所や民間の専門機関等の起用は避けることが必要であると考えられます。

Q21 通報対応の仕組みについての内部規程は必ず策定しなければならないのでしょうか。また、内部規程にはどのような内容を記載すればいいのでしょうか。
A

内部規程の策定は本法において義務付けられているものではありませんが、コンプライアンス経営を促進する観点から、民間事業者向けガイドラインにおいて内部規程の整備が求められており、これを参考に、各事業者の事業規模、事業内容等に応じて記載する内容を定めることが望まれます。

Q22 内部規程には、民間事業者向けガイドラインに記載されている事項を全て盛り込む必要があるのでしょうか。
A

必ずしも全てを盛り込む必要はありませんが、民間事業者向けガイドラインの趣旨を十分踏まえ、通報者に対する不利益な取扱いが行われないように十分留意した上で、事業者の事業規模、事業内容等に応じて盛り込む内容を定めてください。

Q23 通報窓口では、どのような通報を受け付ければよいのでしょうか。
A

本法は、国民の生命、身体、財産等に関わる法令違反行為を通報対象としています。しかし、コンプライアンス(法令遵守等)やリスク管理の観点から、本法で定める法令違反以外の通報についても、受け付け、調査を行い、問題があれば是正をするなど、適切に対応することが重要です。

なお、既に通報窓口を設けている事業者をみると、事業者内の自浄作用を十分に発揮させる、コンプライアンス経営を確保する、事業者への被害の拡大を防止する等の観点から、本法で定める法令違反行為に限定せず、法令違反一般、社内規程違反、倫理綱領違反等も含む広い範囲を対象に通報を受け付けている例が多いようです。

Q24 事業者において、本法の規定の対象とならないような通報も受け付けるべきでしょうか。
A

本法の目的の一つは、事業者における法令遵守を図ることにあります。

事業者が通報対応の仕組みを整備し、法令遵守等のコンプライアンス経営への取組を強化するために、通報窓口で受け付ける通報を本法の範囲に限定せず、その範囲を拡大することは望ましいことと考えられます。

なお、民間事業者向けガイドラインにおいても、通報対象となる事項の範囲について、法令違反のほかにも内部規程違反等を含めるなど、幅広く設定することが適当であるとしています。

Q25 内部規程において、匿名の通報や本法の通報対象事実以外についても受け付けることとしてもよいのでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインは、本法の趣旨を踏まえて、事業者が自主的に取り組むことが推奨される事項を具体化・明確化したものですが、各事業者において一層充実した通報対応の仕組みを積極的に整備、運用し、コンプライアンス経営を推進することは、むしろ望ましいことであると考えられます。

Q26 事業者外部へ通報する前に、必ず、事業者内部の窓口に通報しなければならないとする規定を内部規程に定めてもよいのでしょうか。
A

本法は、通報先に応じて、それぞれ本法の規定に基づく保護を受けるための要件(保護要件)を定めており、保護要件を満たしていれば、通報先又は通報の順序を問わず公益通報者は保護されます。このような本法の考え方からすると、通報先に順序を付けるような規定を内部規程に定めるのは適切ではありません。

また、このような通報先に順序を付けるような規定は、その他外部通報先への通報の際の保護要件である「労務提供先から権限を有する行政機関に対して公益通報しないことを正当な理由なく求められた場合」に該当すると考えられます。したがって、このような規定を定めるのは適切ではありません。

Q27 通報受付の方法としては、どのような方法をとる必要があるのでしょうか。
A

本法では、通報受付の方法を定めていません。通報受付の方法については、書面、電話、FAX、メール、ウェブサイト、面会等、様々な手段が考えられ、具体的な方法は事業者の判断に委ねられています。ただし、通報を受け付ける際には、専用回線を設ける、勤務時間外に個室や事業所外で面談するなど、通報者の秘密を守るための措置を適切に講じることが必要と考えられます。

Q28 民間事業者向けガイドラインにおいて、「自らが関係する通報事案の調査・是正措置等に関与してはならない。」とされていますが、「関係する」とは具体的にどのような場合のことでしょうか。
A

具体的には、例えば、通報受付担当者、調査担当者その他の通報対応に従事する者が、

 
  • 法令違反行為を行った当事者である
  • 法令違反行為の意思決定に関与した
  • 以前法令違反行為が行われた部署に勤務していた
  • 法令違反行為を行った者の親族である

場合などが想定されます。

Q29 匿名の通報にはどのように対応すればよいのでしょうか。
A

本法は対象となる通報を実名の通報に限定しておらず、匿名の通報であっても、本法に定める要件を満たせば「公益通報」に該当します。また、匿名の通報であっても法令遵守のために有益な通報が寄せられると考えられること、また、通報者が特定されることを恐れて通報しないことにより、重大なリスク情報の把握が遅れることを避ける必要があることなどから、民間事業者向けガイドラインにおいても、匿名の通報も受け付けることが必要であるとしています。

他方、匿名の通報については、通報者に連絡がつかないために十分な調査ができないなど、実名に基づく通報と同様の対応を行うことが難しい場合も考えられます。このため、民間事業者向けガイドラインにおいては、匿名の通報であっても、通報者と通報窓口担当者が双方向で情報伝達を行い得る仕組み(例えば、メールやウェブフォーム等を通報者の氏名等を特定しない形で運用することや、通報の受付は第三者による外部窓口で行い、事業者内の通報窓口担当者は通報者に関する個人情報を受け取らないこととすることなどが考えられます。)を導入することが望ましいとしています。

なお、民間事業者向けガイドラインは、実名での通報を前提に、通報者に対しての是正結果等の通知やフォローアップを行うことを原則としていますが、匿名の通報については、通報者がフィードバックを望まない場合やそれを行うことが困難な場合もあることから、実名での通報とは異なる取扱いとすることも考えられます。

また、匿名の通報に対応することとした場合、匿名であっても、調査等の際の対応によって通報者が特定されてしまうおそれがあることから、調査の実施に当たっては、当該調査が通報をきっかけとしたものであることを秘匿する等、十分に配慮をすることが必要です。

Q30 派遣労働者から、派遣先の事業者の法令違反行為について、派遣元の事業者に相談が寄せられた場合、派遣元の事業者はどのように対応すればよいのでしょうか。
A

本法においては、派遣労働者である労働者の通報先を労務提供先である派遣先の事業者と定めており、原則として派遣元の事業者は通報先ではありません(本法第2条第1項第2号)。

派遣元に通報が行われた場合、本法及び民間事業者向けガイドラインには特段の定めはありませんが、派遣元の事業者は、派遣先の事業者において信頼できる通報窓口が整備されていれば、その通報窓口に通報できることを、又は法令違反行為について処分等する権限を有する行政機関やその他外部通報先への通報の保護要件を満たしている場合には、これらの通報先に通報できることを、派遣労働者に助言するなどの対応をすることが考えられます。

Q31 退職者からの通報にはどのように対応すればよいのでしょうか。
A

事業者においては、コンプライアンス(法令遵守等)やリスク管理の観点から、どのような者からの通報であっても、法令遵守等に資する通報を受け付け、調査を行い、問題があれば是正をするなど、適切に対応することが重要です。このような観点から、民間事業者向けガイドラインにおいても、通報窓口の利用者の範囲については、退職者等を含め幅広く設定することが適当であるとしています。

なお、本法は、公益通報の主体を労働者としています。通報時点で退職している者は、労働契約関係が既になく、労働者ではないので、本法の規定の対象にはなりません。

一方、通報時点では労働者であり、その後何らかの理由で退職した者は、本法の規定の対象になり得ます。

Q32 辞表が受理され、退職間近の労働者からの通報がありました。まもなく退職してしまうので、事業者から不利益な取扱いを受けることがないと思われます。公益通報として扱わなくてよいのでしょうか。
A

事業者においては、コンプライアンス(法令遵守等)やリスク管理の観点から、通報時点で退職している者からの通報であっても、法令遵守等に資する通報を受け付け、調査を行い、問題があれば是正をするなど、適切に対応することが重要です。

なお、辞表が受理されても、通報時点でまだ退職をしていないのであれば、本法の規定する「労働者」に該当し、本法による保護の対象となり得ます。通報者が退職した場合でも、通報をしたことを理由として退職金を減額・没収するなどの不利益な取扱いが想定されるため、本法第5条では、「使用していた公益通報者」についても、「不利益な取扱いをしてはならない」と規定しています。

Q33 労働者の家族が通報した場合、その労働者は本法の規定による保護の対象となりますか。
A

本法の規定による保護を受けるための「公益通報」の主体は労働者自身に限定されており、労働者の家族による通報により、当該労働者が不利益を受けた場合は本法の規定による保護の対象ではありません。

ただし、家族が労働者本人の承諾の下、代筆を行い、通報文書を郵送した場合など、労働者本人の意思に基づいて通報を代行しているにすぎない場合は、その労働者自身が通報したといえるため、本法の規定による保護の対象となり得ます。

また、事業者において、コンプライアンス(法令遵守等)やリスク管理の観点から、どのような者からの通報であっても、法令遵守等に資する通報を受け付け、調査を行い、問題があれば是正をするなど、適切に対応することが重要です。

Q34 労働者が他人を通じて通報を行った場合、その労働者は、本法の規定による保護の対象となりますか。
A

本法の規定による保護を受けるための「公益通報」の主体は労働者自身に限定されており、労働者の家族による通報により、当該労働者が不利益を受けた場合は本法の規定による保護の対象ではありません。

ただし、通報を行った他人が、労働者本人の意思に基づいて通報を代行したと認められる場合には、その労働者自身が通報したものとして、本法の規定による保護の対象となり得ます。

Q35 通報者が本当に労働者本人であるかについて疑義が生じた場合、どのような確認方法があるのでしょうか。
A

例えば、なりすましのように通報者が労働者本人であるかについて疑義が生じた場合には、社員名簿で確認する、改めて折り返しの連絡を行う、社員証の写し等を提出させるなどの方法が考えられます。

なお、どの程度本人確認を徹底するかについては、各事業者において判断していただくことになりますが、各事業者において、コンプライアンス(法令遵守等)やリスク管理の観点から、労働者以外からの通報であっても、法令遵守等に資する通報を受け付け、調査を行い、問題があれば是正をするなど、適切に対応することが重要です。

Q36 従業員の私生活上の法令違反行為に関する通報は、本法の「公益通報」に当たりますか。
A

本法では、従業員が労務提供先の事業に従事する場合における一定の法令違反行為について通報することを「公益通報」と規定していることから、事業と全く無関係な従業員の私生活上の法令違反行為については、本法の「公益通報」の対象となりません。

Q37 まず事業者内部に通報してからでないと、事業者外部には通報できないのでしょうか。
A

本法では、労務提供先等(労務提供先及び労務提供先があらかじめ定めた者)、権限を有する行政機関(通報対象事実について処分・勧告等をする権限を有する行政機関)、その他外部通報先(その者に対し通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者)の3つの通報先が定められています。

定められた通報先に応じて、それぞれ保護要件が設定されていますが、通報に当たっては、それぞれの保護要件を満たしていれば保護され、通報先又は通報の順序は問いません。

Q38 通報者が、内部の通報窓口ではなく、職場の上司に通報した場合は、どのように取り扱われるのでしょうか。
A

通報者の上司(直接の上司でない場合も含まれます。)への通報も、本法の規定する「労務提供先」に該当します。したがって、職場の上司に通報した場合も、本法の定める要件を満たしていれば、本法の適用対象になります。

このように、職場の上司に通報がある場合に備え、事業者としては、通報を受けた上司による調査や通報窓口への通報、通報に係る秘密保持や個人情報の保護など、通報を受けた従業員がとるべき措置をあらかじめ定め、周知しておくことが望まれます。

Q39 事業者内部に通報窓口を設置しているにもかかわらず、職場の上司に通報が寄せられた場合、上司はどのように対応すればよいのでしょうか。
A

職場の上司としては、必要に応じて自らの行うことのできる範囲で調査を行った上で、是正措置をとったり、通報窓口を紹介したりするなどの措置をとることが考えられます。

なお、本法では、事業者内部への通報先を「労務提供先等」としており、具体的な通報先については特に定めていません。

職場の上司は、本法上は「労務提供先」に該当しますので、寄せられた通報に対し、適切に対応をすることが求められます。そのため書面による通報を受けた上司が20日を越えてこれを放置した場合、その他外部通報先への通報の保護要件である本法第3条第3号ニの要件を満たす場合があります。

Q40 不正の目的での通報にはどのように対処すべきでしょうか。
A

通報制度を悪用して、専ら不正の利益を得る目的や他人に不正の損害を加えるような目的を持った通報は、本法第2条第1項に規定する「不正の目的」による通報であり、本法で保護される「公益通報」には該当しません。そのような場合には、本法及び民間事業者向けガイドラインに基づく通知等を行う必要はなく、また、悪質な場合には、そのような通報者に対しては、就業規則に従って懲戒処分を行うなどの対応も考えられます。

ただし、「不正の目的」による通報に該当するかどうかは、最終的には裁判所の判断に委ねられることになるので、慎重な判断が求められます。

Q41 通報者が、同一事案について繰り返し通報を行って業務を妨害する場合や、通報において関係者の誹謗中傷を繰り返す場合などには、どのように対処すればよいのでしょうか。
A

通報制度を濫用して、専ら不正の利益を得る目的や他人に不正の損害を加えるような目的を持った通報は、本法第2条第1項に規定する「不正の目的」による通報であり、本法で保護される「公益通報」とは認められません。不正の目的による通報に対しては、本法及び民間事業者向けガイドラインに基づく通知等を行う必要はなく、また、他人に損害を加えること自体が通報の目的であると認められる悪質な場合には、そのような通報者に対しては、就業規則に従って懲戒処分を行うなどの対応も考えられます。

もっとも、御質問のような事案においては、通報者は通報内容が真実であると信じている場合も多いと考えられることから、通報対応における事実認定の仕組みについて丁寧に説明し、その根拠となる資料の提出を求めることによって、理解を得られることもあると考えられます。

Q42 通報に対する通知の制度を悪用して、通報内容と無関係な企業秘密や個人情報等を不当に収集しようとする者に対しては、どのように対処すればよいのでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインにおいて、通知に当たっては、被通報者や調査に協力した者等の信用、名誉及びプライバシー等に配慮することとされていることから、事業者としては、調査結果の詳細については企業秘密や個人情報の保護等の観点から明らかにできない旨を説明すれば足りると考えられます。

なお、通報制度を悪用して、専ら不正の利益を得る目的や他人に不正の損害を加えるような目的を持った通報は、本法第2条第1項に規定する「不正の目的」による通報であり、公益通報とは認められません。そのような場合には、本法及び民間事業者向けガイドラインに基づく通知等を行う必要はなく、また、悪質な場合には、そのような通報者に対しては、就業規則に従って懲戒処分を行うなどの対応も考えられます。

Q43 通報の背景に会社や被通報者に対する不満や怨恨があると認められる場合、「不正の目的」の通報として取り扱ってよいのでしょうか。
A

通報の動機としては複数の動機が併存していることが通常であることから、本法第2条第1項に規定する「不正の目的」による通報であるというためには、単に、交渉を有利に進めようとする目的や事業者に対する反感などの公益を図る目的以外の目的が併存しているというだけでは足りず、通報が不正の利益を得る目的や他人に不正の損害を加える目的によるものであると認められる場合でなければなりません。

そのため、通報の背景に会社や被通報者に対する不満や怨恨があると認められる場合であっても、「不正の目的」による通報と認められるかどうかは慎重に判断する必要があります。

Q44 その他外部通報先への通報の保護要件の一つである本法第3条第3号ニの「二十日」は、どの時点から計算するのでしょうか。
A

本法は、意思表示の効力が生じる時点や期間の計算方法について、特段の規定を設けていませんので、民法(明治29年法律第89号)の原則によることとなります。

このため、書面による公益通報は、事業者に到達した時に効力が生じます(民法第97条)が、「二十日」の期間の計算方法については、民法の初日不算入の原則(民法第140条)に従って、「書面による公益通報が事業者に到達した日の翌日」から起算されることとなります。

(参考)民法(明治29年法律第89号)

(隔地者に対する意思表示)

  • 第九十七条隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

(略)

(期間の起算)

  • 第百四十条日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
Q45 通報者には、どのような通知を行う必要があるのでしょうか。
A

通報への対応状況を通報者に伝えることは、通報者の通報窓口への信頼を確保するために必要と考えられます。そのため、本法第9条は、事業者が、是正措置をとった旨又はその公益通報に係る通報対象事実がない旨を通知するよう努めることとするとともに、民間事業者向けガイドラインでは、通報への対応状況に応じて、例えば、調査を行うか否かに加え、調査結果、是正結果などを通知するよう努めることが必要としています。

Q46 通報したときの受領の通知は文書で行うべきでしょうか。口頭でもよいのでしょうか。
A

本法や民間事業者向けガイドラインでは、通報の受領の通知の方法は特に定めていません。

通知について、民間事業者向けガイドラインにおいては、書面や電子メール等、通報者が通報の到達を確認できない方法によって通報がなされた場合には、速やかに通報者に対し、受領した旨を通知することが望ましいとしています。

Q47 通報受付当時は公益通報ではないと判断していた通報について、後に公益通報の要件を当初から満たしていたことが判明した場合には、どのようにしたらよいのでしょうか。
A

このような場合には、当初の判断が誤りであったことになり、調査を行う旨の通知や調査を行っていなければ、その他外部通報先への通報が本法の規定による保護の対象となる可能性があります(本法第3条第3号ニ)。

このような事態を回避するためには、あらかじめ、本法に定める「公益通報」に該当するか否かにかかわらず、必要に応じて通知や調査を行うこととしておくことが考えられます。

Q48 匿名の通報について調査中に通報者の身元が判明した場合、通知を行うべきでしょうか。
A

通報時点で匿名である場合、通常は通報先からのその後の連絡を希望しない趣旨であると考えられることから、通知は原則として必要ないと考えられますが、通知するかどうかは個別の事案ごとの判断となります。その際、通報者の身元を誤った場合には、通知することによって通報の秘密を漏えいしてしまうことも考えられますので、それらの事情を総合的に考慮して判断していただくことになります。

なお、民間事業者向けガイドラインでは、通報者が通知を望まない場合、匿名による通報であるため通報者への通知が困難である場合その他やむを得ない場合がある場合には、必ずしも通知することを要しないとしています。

Q49 匿名の通報のため通報先が調査内容等を通報者に通知できない場合であっても、通報者は通報先から通知がないことを理由に、その他外部通報先への通報について本法の規定による保護を受けることができるのでしょうか。
A

本法第3条第3号ニにおいて「調査を行う旨の通知」が要件とされた趣旨は、通報者に対して事業者外部へ通報するかどうかの判断の機会を与えるためです。よって、匿名通報のため通知ができない場合や通報者があらかじめ通知を不要としていたような場合など、通報者の側が通知を受けることを拒絶したような場合には、調査を行う旨の通知がなかったことを理由に、その他外部通報先に公益通報をしたとしても、本法の規定による保護を受けることはできないと考えられます。

Q50 法令違反が著しいものであっても、事業者内部に通報が寄せられ、適切に通報を取り扱った(是正措置及び再発防止策をとった)場合には、行政機関へ報告しなくてもよいでしょうか。
A

本法には、事業者内部で発生した法令違反行為について行政機関に報告しなければならないという規定はありませんが、民間事業者向けガイドラインでは、必要であれば、関係行政機関への報告等を行うことが必要であるとしています。

なお、個別の法律に報告義務があるものや監督行政機関から報告を求められている事案については、関係行政機関に報告する必要があります。

Q51 なぜ、通報に係る秘密の保持や個人情報の保護について何度も言及されているのでしょうか。
A

通報者の所属・氏名等の個人情報が職場内に漏えいすると、それ自体が通報者に対する重大な不利益になり、ひいては通報を理由とする更なる不利益な取扱いにもつながるおそれがあります。また、通報窓口への信頼が揺らぐなど、内部通報制度の機能不全につながり、経営上のリスクに係る情報の把握が遅延する等の事態を招くおそれがあります。

このため、民間事業者向けガイドラインでは、通報対応の仕組みの整備時、通報の受付時、調査の実施時など、各段階において通報に係る秘密保持や個人情報の保護を徹底することを求めるなど、通報者の特定につながり得る情報を守秘すべきことを求めています。

Q52 どのような行為が不利益な取扱いに当たるのでしょうか。
A

本法が定める要件を満たす「公益通報」を行ったことを理由として事業者が行った解雇は無効とされるほか、降格、減給その他不利益な取扱いを行うことも禁止されています。

また、民間事業者向けガイドラインでは、公益通報のほか、各事業者が定めた内部規程の要件を満たす通報や、それらを端緒とする調査に協力したことを理由として、通報者等に対し解雇その他不利益な取扱いをしてはならないとした上で、このようなその他不利益な取扱いの内容としては、具体的には以下のようなものが考えられるとしています。

  • 従業員たる地位の得喪に関すること(退職願の提出の強要、労働契約の更新拒否、本採用・再採用の拒否、休職等)
  • 人事上の取扱いに関すること(降格、不利益な配転・出向・転籍・長期出張等の命令、昇進・昇格における不利益な取扱い、懲戒処分等)
  • 経済待遇上の取扱いに関すること(減給その他給与・一時金・退職金等における不利益な取扱い、損害賠償請求等)
  • 精神上生活上の取扱いに関すること(事実上の嫌がらせ等)

なお、民間事業者向けガイドラインでは、このようなことが判明した場合、通報者に対して適切な救済・回復の措置を講じるとともに、不利益な取扱いを行った者に対して懲戒処分その他適切な措置を講じることが必要であるとしています。

Q53 外部に「公益通報」がなされた結果、事業者の社会的信用が損なわれた場合は、通報者に対して解雇等の処分を行うことや損害賠償を請求することは可能でしょうか。
A

通報者による通報が、本法が定める要件を満たす「公益通報」に当たる場合には、公益通報したことを理由とする不利益な取扱いは禁止され、通常、通報者が、刑事責任、民事責任、服務上の責任等を負うこともないと考えられます。

なお、本法の要件を満たさない通報の場合であっても、通報者に対する解雇や損害賠償が直ちに可能となるわけではなく、他の法理(労働契約法第16条、判例法理等)により制限される場合があります。

Q54 「公益通報」がなされた場合、その通報者に以前から問題があった場合であっても、その通報者に対して解雇や降格などの不利益な取扱いをすることはできないのでしょうか。
A

本法では、公益通報をしたことを理由とした解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています。公益通報をしたこと以外の理由に基づいて解雇その他の不利益な取扱いをすることは本法に抵触しませんが(他の法理に抵触する場合はあります)、後の紛争を防止するために、不利益な取扱いが公益通報をしたことを理由とするものではないことについて、できる限り客観的で合理的な根拠を示すことができるようにしておくことが望ましいと考えられます。

Q55 労働者自らが法令違反行為等に関わっていることを事業者内部へ通報した場合の取扱いはどのようにすればよいのでしょうか。
A

公益通報したことを理由とした解雇その他の不利益な取扱いは禁止されます。しかし、通報者が行った通報行為以外の法令違反行為等を理由とした解雇その他の不利益な取扱いについては、本法において規定はないため、各事業者の内部規程に即して事例ごとに判断していただくことになります。

なお、民間事業者向けガイドラインでは、法令違反等に係る情報を可及的速やかに把握し、コンプライアンス経営の推進を図るため、法令違反等に関与した者が、自主的な通報や調査協力をする等、問題の早期発見・解決に協力した場合には、その状況に応じて、当該者に対する懲戒処分等を減免することができる仕組みを整備することも考えられるとしています。

Q56 請負契約先に労務を提供している労働者が、そこでの法令違反行為を請負契約先に通報したことによって、請負契約が解除されてしまいました。本法の規定による保護を受けることはできないのでしょうか。
A

本法は、公益通報をしたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いからの保護及び労働者派遣契約の解除からの保護を定めるものであり、請負契約等の契約解除一般からの保護については定められていませんので、本法の規定による保護を受けることはできません。

もっとも、本法の適用の対象外である請負契約等の契約解除については、民法等の適用があるため、公益通報をしたことを理由とした契約解除に対しては、損害賠償等を請求できる場合もあると考えられます。

Q57 本法に定める要件を満たさない通報は保護されないのでしょうか。
A

本法は、保護要件等を明確化して、公益通報を理由とした解雇の無効及び公益通報を理由とした不利益な取扱いの禁止を定め、公益通報者の保護を図ろうとするものです。

本法に定める要件を満たさない通報については、解雇について客観的に合理的な理由等がない場合に無効とする労働契約法(平成19年法律第128号)第16条など、従来の法体系の中で通報者の保護が判断されます。

こうした趣旨を明確に示すために、本法(第6条第2項及び第3項)では、通報を理由とした解雇、出向、懲戒について、労働契約法(平成19年法律第128号)の規定(第14条、第15条、第16条)の適用を妨げるものではない旨を定めています。

(参考)労働契約法(平成19年法律第128号)

(出向)

  • 第十四条使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

(懲戒)

  • 第十五条使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)

  • 第十六条解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
Q58 通報対応の仕組みの周知については具体的にどのような方法があるのでしょうか。特に、請負先等の労働者への周知はどのようにすればよいでしょうか。
A

民間事業者向けガイドラインでは、研修・説明会の実施、社内通達、社内報、電子メール、社内電子掲示板、携帯用カード等での広報の実施を周知の方法として例示してあり、さらに、通報に関する事項を記載したリーフレット等を作成し、配布することなども考えられます。各事業者においては、これらの方法を含め、各事業者の実情に応じた方法により、経営幹部や請負先等の労働者を含めた全ての従業員に対して、十分に周知を行っていただくことになります。

なお、経営幹部や従業員への周知は繰り返し行うことが重要です。

Q59 事業者内部の通報窓口に有益な通報を行った労働者に対し、事業者が表彰を行ったり、報奨金を出したりすることは、本法の趣旨に反することになるでしょうか。また、そのような表彰や報奨金目的の通報は、「不正の目的」になるのでしょうか。
A

本法は公益通報者の保護と事業者の法令遵守を目的としており、このような趣旨に反するようなものでなければ、通報を行った労働者に対して、表彰を行ったり、報奨金を出したりする制度が本法の趣旨に反することはありません。むしろ、組織のためにあえてリスクを犯してまで警鐘を鳴らした従業員の貢献を、経営トップ等が正当に評価することは適切なことであることから、民間事業者向けガイドラインでは、匿名性の確保に十分留意した上で、通報者等に対して経営トップ等からの感謝を伝えるなど、組織への貢献を正当に評価することが適当であるとしています。

なお、本法で保護の対象とならない「不正の目的」とは、「公序良俗に反する形で自己又は他人の利益を図る目的」であり、通報制度を悪用して、専ら不正の利益を得る目的や他人に不正の損害を加えるような目的を持った通報がこれに該当します。こうした通報に該当せず、かつ、本当に定める要件を満たす場合には、たとえ、社内規程に基づく表彰や報奨金を得る目的があったとしても、本法の保護を受けることができます。

Q60 通報対応の仕組みの評価・改善を行うに当たり、なぜ、「中立・公正な第三者」を活用する必要があるのでしょうか。また、中立・公正な第三者による評価・点検については、具体的にどのように行えばよいのでしょうか。
A

本近時の企業不祥事において、経営トップの意向により法令違反行為が行われ、それが隠蔽されるなど、内部通報制度が機能しなかった事案が発生したことから、民間事業者向けガイドラインでは、内部通報制度の実効性を向上させるため、制度の整備・運用状況や実績等について、内部監査や中立・公正な第三者等を活用した客観的な評価・点検を定期的に実施し、その結果を踏まえ、経営幹部の責任の下で、制度を継続的に改善していくことが必要であるとしています。

中立・公正な第三者による評価・点検については、内部通報制度の整備・運用等に知見を有する専門家や外部の評価機関等に依頼して行うことなどが考えられますが、中立性・公正性が客観的に担保されている場合には、例えば社外取締役や監査役等が評価・点検することも含まれ得るものと考えられます。

担当:消費者制度課