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岡村消費者庁長官記者会見要旨(平成30年8月15日(水))

日時:平成30年8月15日(水)16:00~16:14  於:中央合同庁舎第4号館6階消費者庁記者会見室

1.発言要旨

本日は魚のヒスタミン食中毒、自然毒について発言させていただきます。
8月も半ばとなりました。引き続き気温が高い日が続いております。これからも家庭での食中毒予防対策の徹底が必要です。
今回は、これから秋にかけて旬を迎えるサンマを始め、サバなどの赤身の魚が原因食品となりやすい、「ヒスタミン食中毒」に関する注意点をご紹介いたします。
魚を食べた後、顔が赤くなったり、じんましんが出たりした経験はありますでしょうか。普段食べている魚で、突然こうしたアレルギーのような症状が短時間で起きた場合には、「ヒスタミン食中毒」の可能性があります。
このヒスタミン食中毒は、個人の体質によるアレルギーではなく、アレルギー様の食中毒であるという理解が必要です。
学校給食施設を原因とする大規模なヒスタミン食中毒が毎年報告されていますが、一方で、比較的症状は軽く、短時間で回復するのが特徴の一つです。
そのため、家庭内で起きたとしても報告がなされない場合が多いと推定され、実際に報告されている数字以上に食中毒は発生していると考えられます。
サンマやサバなどの赤身の魚に多く含まれる「ヒスチジン」というアミノ酸は、細菌の酵素の働きでヒスタミンという物質になります。このため、魚を常温で放置する等、不適切な管理を行うと細菌が増殖し、大量のヒスタミンが作られ、ヒスタミン食中毒の原因となります。
また、ヒスタミンを生成する細菌は、元々魚に付着していること、ヒスタミンは加熱しても分解しないことから、ヒスタミンの食中毒予防については「つけない」「増やさない」「やっつける」の三原則のうち、「増やさない」が対策として最も重要となります。
詳細については、本日、ページを追加いたしました消費者庁ウェブサイトの「食品安全に関する総合情報サイト」をご参考にしていただけると有り難く思います。また、この掲載と併せて、ツイッターにてヒスタミン食中毒の注意喚起を配信しております。
補足となりますが、魚や貝はヒスタミンだけではなく、自然毒にも注意が必要です。よく知られているフグだけでなく、多くの魚介類はヒトへの「毒」を持っており、時に重体や後遺症となったり、死亡したりする場合もあります。種類の分からない魚介類は絶対に食べないようにしてください。
また、普段よく知っている貝でも、時期によっては貝毒の発生により採取が制限されている場合があります。麻痺性貝毒や下痢性貝毒は、採取海域を検査して、その結果に基づいて出荷を制限することもあります。
このため、潮干狩り等で貝を採る場合には、採取が認められている時期と場所で採ることが必要です。
記者の皆様におかれましては、魚介類の取扱いには注意が必要であることについて、消費者の皆様への情報発信にご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。
私からは以上です。

2.質疑応答

ニッポン消費者新聞の丸田です。
ヒスタミン食中毒についてお聞きします。このヒスタミンの含有基準というものはあるものでしょうか。WHOの場合は何かその推奨基準などがあった気がしまして、ヒスタミンがどれぐらい入っているものは駄目だとか、そういうのはあるのかどうか、また、消費者はどう注意したら良いのでしょうか。

ヒスタミン産生菌は元々魚に付着していて、その量が漁獲場所や個体によって違いがあると考えられています。そして、分解されてヒスタミンとなるヒスチジンの含有量も魚の種類によって様々で、一概に何度で何分までなら常温に放置しておいても問題ないという数字を出すことは、その時の食べた人の体調にもよりますし、非常に難しい状況にあります。
成人よりも子供の方が影響を受けやすいのではないかとの報告もございますが、大量にヒスタミンを摂取すれば誰でも発症する可能性はあるということでございます。
家庭でできる対策としては、できる限り速やかにエラや内臓を取り除いて冷却することや、早めに食べ切るといった対策を徹底していただきたいと思っております。

消費者安全課

先ほど長官から申し上げたとおり、食品にどれだけ入っていれば必ず発症するという数値は特にないのですけれども、食品の含有量としてコーデックスというところで国際基準というものは存在します。
そこでは各食品に対して基準が定められているところではありますが、日本国内として基準値は定められている状況ではないというのが現状でございます。

共同通信の新為と申します。
秋にかけてヒスタミン中毒が知られていますということですけれども、これは時期的な問題で、そのヒスタミンやヒスチジンが増えるという意味合いなのか、いわゆるサンマなどの旬な食材に多く含まれていて、その消費量が増えるからという、そういう理解でよろしいでしょうか。

後者でございます。
消費者庁は、消費者が気を付けるべき食中毒予防のための対策やポイントについて、リステリア菌やウエルシュ菌などについて、これまでも定期的に情報発信してきたところでございます。
今回、ヒスタミンを取り上げたのは、気温が高い時期が続き、ヒスタミン産生菌が増殖するリスクが高いため、また、サンマやサバが秋に旬を迎え、消費が多くなるといったことから、より一層の注意が必要であると考えて、今回の注意喚起に至りました。
併せて、魚介類が持つ毒について、消費者の方々に改めて知っていただきたい情報と考えて、紹介しております。
ただ、ヒスタミン食中毒自体の報告数が多くないので、これまでの食中毒の報告数から明確な季節性を読み取ることは難しい状況にあります。
先ほど申し上げたように、リスクが高くなると考えたことから、より一層の注意が必要であるということで発表をさせていただいた次第です。

読売新聞の加藤といいます。
予防法のところで、エラや内臓をできる限り早く外してくださいというのがあると思うのですけれど、これは何か理由があるものですか。ここに産生菌が多いということなのでしょうか。
消費者安全課

おっしゃるとおりです。内臓やエラなどにヒスタミン産生菌が付着していることが多いという報告がありますので、できる限り取り除いて、増やさないという対策が必要になってくると思っております。

ニッポン消費者新聞の丸田です。
貝類の自然毒についてですが、時期と場所が定められている所で採るものについては、毒が弱いと考えて良いのでしょうか。それとも、全く関係のないことなのでしょうか。

食品として流通するものについては、きちんとした検査が行われております。潮干狩りにつきましても、自治体として検査を行って禁止している時もあるという理解でございます。

消費者安全課

ここに示したようなホタテや、アサリ、ムラサキガイは、貝毒が発生しやすいことから、海域の調査や、実際に海水を採ったり、貝から検出したりと検査を徹底して、貝毒がきちんと基準値以下であるということを確かめた上で出荷をされているような状況です。
一方で、潮干狩り等で、認められていない場所で採取してしまい、発症するというパターンもこれまでに報告されておりますので、そういった場合がないよう、きちんと確認した上で採取していただくということが必要と考えております。