「震災に関連する悪質商法110番」開設期間中に寄せられた相談の傾向

平成23年9月30日

消費者庁

(独)国民生活センター

平成23年3月11日(金)に発生した東日本大震災により、被災地では消費生活センター等も被害を受けた。この震災の影響によって、消費生活相談を実施できない地域を支援するため、3月27日(日)より7月29日(金)までの120日間、国民生活センターに「震災に関連する悪質商法110番」(以下「震災関連悪質商法110番」という。)を開設した1

以下、「震災関連悪質商法110番」の開設期間の相談傾向を取りまとめるとともに、平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災時に開設した「震災関連消費生活ダイヤル2 」の相談傾向との比較を行った。

(注)「震災関連悪質商法110番」にて受け付けた相談内容は、翌営業日に国民生活センターから消費者庁へ報告されるとともに、最優先でPIO-NETにも登録・整理され、消費者庁から関係省庁へ情報提供された。

1
平成23年3月27日から7月10日は土日祝日を含めて開設。7月11日から7月29日は平日のみ開設。開設当初は、岩手県、宮城県、福島県の3県を対象地域として相談を受け付けていたが、4月11日(月)から茨城県も対象地域に加えた。
2
平成7年2月7日から3月31日までの土日祝日を含む53日間開設。

1.開設期間全体の傾向

(1)相談件数

3月27日から7月29日までの約4カ月間「震災関連悪質商法110番」で受け付けた対象地域からの相談件数3 は919件で、1日平均約7.7件の相談が寄せられた。30日ごと4 の推移を見ると、最初の1カ月は1日平均約14件の相談が寄せられ、その後徐々に減少し、4カ月目には1日平均約3件まで減少した(図1)。

<図1>30日ごとにみた相談件数

30日ごとにみた相談件数

(注) ( )内は1日の平均相談件数

3
相談の動機となる消費生活上の行為をした当事者の居住地域が、震災関連悪質商法110番の対象地域4県の相談件数。本資料では、この当事者を「相談者」とする。
4
本資料では、相談受付を終了した7月11日から7月29日の土日は除き、開設日を30日ごとに区切って集計を行った。

相談に占める各県の相談者の割合は、宮城県が最も多く、全体の約半数(49.9%)を占めた。1カ月ごとの割合の推移を見ると、宮城県からは開設期間全体を通じて4県の中で最も多く相談が寄せられていた。また、後半になるにしたがって福島県と茨城県からの相談の割合が増加し、4カ月目にはこの2県からの相談が全体の約6割(57.3%)となった(図2)。

<図2>相談件数に対する各県の相談者の割合

相談件数に対する各県の相談者の割合

① 商品別件数

商品別にみると、屋根や壁など住宅の修繕工事等の「工事・建築」が110件(12.0%)で最も多く、次に、賃貸アパートや借家等の「不動産貸借」が106件(11.5%)と続く。以下、墓、車、給湯システム等の「修理サービス」に関する相談、公的な支援制度や罹災(りさい)証明についての問合せなどの「他の行政サービス」に関する相談が多く寄せられた(図3-1)。

なお、PIO-NETに登録された2010年度全国の消費生活相談商品別割合(2011年9月27日までの登録分)と比較してみても、これらの相談が多かったことが分かる(図3-2)。

<図3-1>商品別割合(震災関連悪質商法110番) <図3-2>2010年度の商品別割合
商品別割合(震災関連悪質商法110番) 2010年度の商品別割合

1カ月ごとの上位商品別件数の推移をみると、「工事・建築」「不動産貸借」に関する相談は全開設期間にわたって多く寄せられていたことが分かる。「修理サービス」は、開設当初は「工事・建築」「不動産貸借」と並んで上位にあったが、4カ月目には件数が減少した。同様に、「火災保険」「ガソリン」も、開設当初は多く寄せられたが徐々に件数が減った。2カ月目以降は放射線測定器などの「保健衛生品その他」の相談や、出会い系サイトなどが含まれる「デジタルコンテンツ」が寄せられるようになった(表1)。

<表1>30日ごとの上位商品別件数

3/27~4/25 4/26~5/25 5/26~6/24 6/25~7/29
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 不動産貸借 59 不動産貸借 25 工事・建築 32 工事・建築 16
2 工事・建築 48 修理サービス 16 修理サービス 17 不動産貸借 6
3 他の行政サービス 26 工事・建築 14 不動産貸借 16 四輪自動車 4
4 修理サービス 25 他の行政サービス 14 保健衛生品その他 12 商品一般 4
5 ガソリン 18 デジタルコンテンツ 13 他の行政サービス 9 相談その他 4
6 火災保険 18 四輪自動車 11 デジタルコンテンツ 8 他の行政サービス 4
7 相談その他 16 相談その他 10 相談その他 5 保健衛生品その他 4
8 四輪自動車 12 商品一般 7 火災保険 4 役務その他
サービス
4
9 給湯システム 8 保健衛生品その他 7 商品一般 4 デジタルコンテンツ
フリーローン・サラ金
ホテル・旅館
音響・映像機器
携帯電話サービス
修理サービス
 
 
3
10 役務その他
サービス
6 火災保険 6 給湯システム
携帯電話サービス
住宅ローン
新築住宅、電気
3
上位商品    工事・建築    不動産貸借    修理サービス    他の行政サービス

相談者の県別にみると、上位の商品は各県で順位の違いはあるものの、概ね相談全体と同様の傾向であった。その他の地域ごとの特徴としては、地震や津波の被害が大きかった岩手県、宮城県、福島県では、津波で車が流されたといった相談や、新たに自動車を購入した際の納品遅延の相談など「四輪自動車」に関する相談がみられた。宮城県では電気温水器が転倒したなどの「給湯システム」に関する相談も寄せられた。また、原子力発電所の事故に関連して、福島県と茨城県からは放射線測定器等の「保健衛生品その他」の相談が目立った(表2)。

<表2>県別上位商品別件数

岩手県 宮城県 福島県 茨城県
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 四輪自動車 6 不動産貸借 71 工事・建築 24 工事・建築 30
2 他の行政サービス 5 工事・建築 54 不動産貸借 24 修理サービス 11
3 デジタルコンテンツ 5 修理サービス 28 他の行政サービス 23 デジタルコンテンツ 7
4 火災保険 5 他の行政サービス 21 修理サービス 17 不動産貸借 7
5 修理サービス 5 火災保険 18 保健衛生品その他 13 保健衛生品その他 6
6 商品一般 4 相談その他 18 相談その他 11 他の行政サービス 4
7 不動産貸借 4 四輪自動車 16 役務その他
サービス
7 アクセサリー 3
8 フリーローン・サラ金 3 給湯システム 15 デジタルコンテンツ 6 商品一般 3
9 リースサービス 3 ガソリン 14 四輪自動車 6 相談その他 3
10 相談その他 3 デジタルコンテンツ 11 商品一般 6 フリーローン・サラ金
火災保険
海外パックツアー
建具、戸建住宅
航空貨物
他の飲料、
他の台所用品
電気、募金
2
上位商品    工事・建築    不動産貸借    修理サービス    他の行政サービス

②相談内容別

受け付けた相談の主な相談内容の上位5位を挙げると、契約の内容や解約手続等についての「契約・解約」に関する相談が559件で最も多い。以下、販売の手口やセールストークに問題があるという「販売方法」が221件、商品の品質や役務の内容・水準が問題という「品質・機能、役務品質」が200件、接客態度やアフターサービスなどの「接客対応」が168件、商品の価格や利用料、使用料等役務の対価に関する「価格・料金」が140件となっている。開設期間内で順位に変動はあったものの、上位5位の内容には変化なかった(複数回答項目)(表3)。

<表3>相談内容上位件数
相談内容 件数 割合
1 契約・解約 559 60.8%
2 販売方法 221 24.0%
3 品質・機能、役務品質 200 21.8%
4 接客対応 168 18.3%
5 価格・料金 140 15.2%

(2)相談者の属性(不明・無回答等は除く)

①年代別

10歳代から90歳代まで幅広い年齢の相談者から相談が寄せられた。年代別にみると、40歳代が168件(21.6%)、60歳代が153件(19.7%)、30歳代が139件(17.9%)、50歳代が135件(17.4%)の順で相談が多かった。

②性別

性別でみると、男性502件(58.1%)、女性362件(41.9%)で、男性が過半数を占めた。

③職業別

職業では、給与生活者が最も多く337件(43.1%)、無職が216件(27.7%)、家事従業者が143件(18.3%)であった。自営・自由業(66件、8.5%)や学生(19件、2.4%)からの相談は、少なかった。

なお、PIO-NETに登録された平成22年度全国の消費生活相談と比較したところ、「震災関連悪質商法110番」に寄せられた相談は、年代は40歳代から60歳代が約1割多く、また、性別は男性が若干多いことがわかった。

2.主な相談内容

(1)工事・建築

「当初の見積りよりも高額な代金を請求された」など工事の料金に関する相談、「補修工事を契約した業者が、約束どおり工事を履行しない。解約はできるか」など工事の遅延に関する相談等がみられた。

中には、損害状況について不安をあおられたり、契約をせかされたりして、十分な説明を受けない状態で契約に至った、という相談もみられた。また、契約書面が渡されない、渡されても見積書のみの場合や、施工の明細が分からないもの、契約、施工後に渡されるケースもあった。

また、「震災で住宅の基礎が壊れた。施工業者とは別の業者に見てもらったら、新築工事の際の手抜き工事が原因のようだ」など、震災前の工事が原因で震災での住宅の被害が大きくなったのではないかという相談もみられた。

【事例1:屋根工事】

震災により屋根の瓦が落ちていた。震災後、業者が訪問し「屋根を直したほうがいいですよ」と110万円の屋根の葺替(ふきかえ)工事を勧められた。契約後、孫に「業者の信用性が分からないので心配だ」と説得され解約する気持ちになったが、解約できるだろうか。

(2011年3月受付 相談者:80歳代 男性 宮城県)

【事例2:新築請負住宅の工事】

震災で住宅が半壊したので、父が新築請負工事を契約した。その後業者から、見積もりを取り直したところ契約時より料金が高くなると言われた。解体工事の目途も立たないので、解約したい。

(2011年6月受付 相談者:60歳代 男性 宮城県)

(2)不動産貸借

「不動産貸借」に関しては、地震による建物の被害について「家主に修繕を求めたがなかなか対応してもらえない」というものや、逆に「家主に修繕を求められた」などの原状回復に関する相談、退去に伴う敷金や家賃の清算に関する相談が開設期間全体を通してみられた。

また、「震災関連悪質商法110番」開設当初は、借家の水漏れ等に関する相談が多くみられたが、4月ごろからは被災した住居から引っ越した相談者から、転居先の物件の契約条件等に関する相談が寄せられた。

【事例3:賃貸アパート】

震災で住んでいた賃貸マンションの部屋の壁が落ち、ドア枠もゆがんだ。管理会社が室内の様子を写真に撮っていったが、未だに修復作業をしてくれない。

(2011年5月受付 相談者:30歳代 女性 宮城県)

【事例4:賃貸アパート】

震災で全壊し、住むことができなくなった賃貸アパートを退去するのに、クリーニング料金を請求されたが、住むことのできないアパートのクリーニング料金を支払うことに納得できない。震災後は住めない状態だったのだから、自動引き落としされた家賃も返金してほしい。

(2011年7月受付 相談者:60歳代 女性 福島県)

(3)修理サービス

「震災関連悪質商法110番」開設当初は「修理に出していた車が流された」など自動車の修理サービスに関する相談が多かったが、開設期間全般では「墓の修理を依頼したら高額な料金を請求された」「訪問してきた業者に強引に屋根の修理を勧誘された」などの墓や住宅の修理サービスが目立った。

【事例5:自動車の修理】

車を修理に出していたが、工場が津波の被害に遭い預けた車が使えなくなった。修理を依頼した業者から「車は修理ができる状態ではなくもう使えない。補償はされない。代車として貸している車も返してほしい」と言われ困っている。

(2011年4月受付 相談者:20歳代 女性 宮城県)

【事例6:墓の修理】

震災で墓石が落ちて土台にヒビが入った。業者に修理の見積りを依頼したら、6万3千円だった。高いと思ったので、複数の他業者に聞いたら5千円から3万円位だという。昨日、見積りをお願いした業者から請求書と修理後の墓の写真が届いた。支払いたくない。

(2011年5月受付 相談者:60歳代 男性 宮城県)

(4)生活支援

「震災で支出が重なった。生活支援策について教えてほしい」「実家の空き家が被害を受けたが、支援金が支払われない」など、生活支援や情報を求める相談は、開設期間全体を通してみられた。また、支援を受けるための被災証明書・罹災証明書の発行に関する相談も多く、その他にも民間住宅の借上げなど住居に関する支援制度や生活資金、生活用品の支援に関する相談などが寄せられた。

【事例7:罹災証明】

実家の別棟に親子3人で居住していたところ、実家も別棟も津波で流された。実家は罹災証明が発行されたが、別棟も罹災証明はもらえるのか。

(2011年6月受付 相談者:40歳代 女性 岩手県)

【事例8:民間住宅の借上げ】

原発の避難地区から友人宅に避難しているが、民間住宅の借上げについてどうなっているのか知りたい。避難所にいないと行政からの連絡が届かず、情報がないので不安である。

(2011年6月受付 相談者:60歳代 男性 福島県)

(5)デジタルコンテンツ

内容としてはアダルト情報サイトの架空請求に関する相談が多く、出会い系サイトやパチンコ攻略情報サイトに関する相談もみられた。

震災と直接関係のない相談も多かったが、中には「震災で困っている。お兄さん、ご飯を食べさせてください」というメールから出会い系サイトに誘導されたり、「震災だから、稼ぎ時だ」という触れ込みでパチンコ攻略情報サイトのメールが送られてきたりするなど、震災に便乗した勧誘もみられた。

また、少数ではあるが「避難所生活のストレスから話し相手を求めて出会い系サイトにアクセスした」、「震災後に金銭的に苦しくなって『メールで稼げる』という出会い系サイトに登録した」など震災後の被災者の生活環境の変化が被害に結びついた例もみられた。

【事例9:出会い系サイト】

震災後、避難所で生活しており、ストレスがたまり誰かと話したいと思った。携帯電話に届いた迷惑メールにアクセスして、出会い系サイトを利用した。メール交換するためのサイト利用料や直接相手とメール交換するための費用など、合計で200万円支払ってしまった。だまされたと思うので、お金を取り戻したい。

(2011年5月受付 相談者:40歳代 男性 岩手県)

【事例10:有料ポイントを買わせるサイト】

パソコンに見知らぬ業者から「新団体から300万円の支援対象に選ばれました」というメールが届いた。自分が被災者であることをどうして知ったのか不審。本文をよく読むと、「5千円のポイント購入後、事務局まで連絡するように」という記載があった。

(2011年6月受付 相談者:30歳代 男性 福島県)

(6)火災保険

「震災関連悪質商法110番」開設当初は、火災保険や地震保険の「申請手続きの方法を教えてほしい」「どのくらい補償してもらえるか知りたい」といった問合せが多かったが、4月以降は「加入時の説明より少ない保険金を提示された」「損壊の程度が低いので地震共済が支払われない」など保険金額に関する相談が寄せられた。

【事例11:地震保険】

震災で風呂場のひび割れや玄関の亀裂などが発生し、地震保険で対応することになっている。今後の対応を知りたい。

(2011年4月受付 相談者:50歳代 女性 福島県)

【事例12:災害共済】

災害共済に加入している。震災で津波の被害に遭ったが、保険会社の判定は半壊で、保険金も加入時の説明より少ない額を提示された。全壊ではないかと思うし、金額の根拠が分からず納得できない。

(2011年4月受付 相談者:60歳代 女性 宮城県)

(7)四輪自動車

「震災関連悪質商法110番」開設当初は、「車検で預けていた車や代車が流された」「流された車のローンが残っている」などの相談が多かったが、2カ月目からは震災後に購入した中古車に関する相談が増えた。「インターネットオークションで購入した価格が高額であった」「名義変更代行サービスに申し込んだら、高額な代金を請求された」「中古自動車を購入したら、水没した車であることが分かった」など、中古車の品質に関する相談や廃車手続代行サービスに関する相談がみられた。

【事例13:自動車ローン】

4年前に5年間のローンを組んで買った軽自動車が津波で流されて無くなった。約30万円の残金は支払わなければならないのか。

(2011年4月受付 相談者:40歳代 女性 岩手県)

【事例14:中古自動車】

震災で車が流されたので中古自動車を購入した。不具合があったので修理に出したら、水没した車であることが分かった。修理店は運転中に自動車が止まってしまう可能性があるので乗らないほうがよいという。自動車を返品し全額返してほしいが、販売店は購入時に水没したことを伝えたといって返金に応じない。

(2011年6月受付 相談者:20歳代 男性 宮城県)

(8)放射能

「震災関連悪質商法110番」開設当初は、放射能を除去するとうたった水や健康食品、浄水器に関する相談が多くみられた。2カ月目以降は、放射線測定器の相談が寄せられるようになり、「ガイガーカウンターを購入したが正しく計測できない。返品返金してもらいたい」「インターネットで放射線測定器を注文し代金を振り込んだが商品が来ない」などといった相談が多く寄せられた。

【事例15:放射能を体外に排出する水】

小さい子どもがいるので放射性物質から身を守る方法をネットで探し、放射性物質を吸着して6時間で体外に出すとうたわれている水を申し込み、代金を振り込んだ。業者が薬事法違反で逮捕されたが返金されるか。商品はまだ届いていない。

(2011年4月受付 相談者:30歳代 女性 福島県)

【事例16:放射線測定器】

インターネットで放射線測定器を注文し代金を振り込んだが「不良品なので出荷できない。返金する」とメールが来た。その後、入金されず連絡もない。対処方法はあるか。

(2011年6月受付 相談者:20歳代 男性 宮城県)

(9)ガソリン

「震災関連悪質商法110番」開設当初は、「ガソリンの価格が高い、便乗値上げではないか」などの相談が多くみられたが、2カ月目以降、ガソリンに関する相談は寄せられなくなった。

【事例17:ガソリン】

近隣のガソリンスタンドは品不足に便乗して高価格でガソリンを販売している。店頭に価格が表示されておらず実際に給油するまで価格が分からない。

(2011年3月受付 相談者:50歳代 女性 福島県)

【事例18:ガソリン】

居住地域内でガソリンの値段を200円で販売している業者がいる。今までは155円から160円で販売されていた。便乗値上げだと思うが、問題ではないか。

(2011年4月受付 契約者:30歳代 男性 福島県)

3.阪神・淡路大震災時の「震災関連消費生活ダイヤル」との比較

国民生活センターでは平成7年の阪神・淡路大震災発生直後にも「震災関連消費生活ダイヤル」(以下「消費生活ダイヤル」という。)を設置し、消費者から震災関連の相談を受け付けた(表5、表6参照)。「震災関連悪質商法110番」と「消費生活ダイヤル」は開設期間、相談受付の対象地域等が異なることから単純に比較することはできないが、相談の傾向を比較すると以下のような特徴があった。

(1)広範囲から相談が寄せられた

「消費生活ダイヤル」では兵庫県からの相談が全相談の75.5%と大半を占め、次いで大阪府が10.1%であり、相談者の居住地は兵庫県に集中していた。

一方、東日本大震災は東北地方の太平洋側を中心に東日本の広域で地震や津波の被害があったことに加え、原子力発電所の事故が発生したこともあり、「震災関連悪質商法110番」では、相談受付対象地域の被災地4県から広く相談が寄せられた(宮城県が約49.9%、福島県が約27.5%、茨城県が約14.5%、岩手県が約8.1%)。また、地域の被災状況によって相談内容にも地域的な特徴がみられた。

(2)津波や原発事故(放射能)に関する相談が寄せられた

「震災関連悪質商法110番」には、津波や原発事故(放射能)に関するものなど、「消費生活ダイヤル」にはみられなかった相談が寄せられた。

津波の被害を受けての相談としては、「津波で住宅が大規模半壊したが再建のためのローンが組めない」「アパートが床上浸水したが不動産業者が補修してくれない」「ローンを組んで買った軽自動車が津波で流された。残金は支払わなければならないのか」「津波で家が流されたので民間のアパートを借りたいが家賃補助の制度がないか」など、悪質商法だけでなく、生活に関連する様々な相談が寄せられた。

原発事故や放射能に関する相談は、開設期間中75件の相談が寄せられた。「震災関連悪質商法110番」に寄せられる全体の相談件数は徐々に減少傾向にあったが、放射能に関連する相談は開設期間全体を通して寄せられた。相談内容としては、体内被ばくに効くとうたった健康食品に関連した相談や、放射能の除去等をうたった浄水器などの商品や広告、除去効果の根拠を問う相談が見られた。また、原発周辺からの避難に伴い、「不動産貸借」など住まいに関する相談や、その他、行政の対応、食品の安全性や健康に関する相談などが寄せられた。

中でも、インターネット通販で購入した放射線測定器に関しては、「放射線測定器がうまく作動せず相手に返品を求めているが応じない」など品質や対応に問題があるという相談や、「代金を振り込んだが商品が来ない。返金すると通知が来たが、入金されず連絡もない」など商品が届かないという多くの相談が寄せられた。

<図4> 30日ごとの放射能に関する相談件数と震災関連悪質商法110番の相談全体に占める割合

相談件数に対する各県の相談者の割合

<表4>放射能に関連する相談の上位商品(3/27~7/29)

商品・役務名 件数
1 保健衛生品その他 20
2 他の行政サービス 8
3 他の台所用品
 
不動産貸借
5
4
5 他の健康食品 4
6 他の飲料
 
電気
役務その他サービス
3
7
8
9 ミネラルウォーター
 
生活設計
相談その他
2
10
11

(3)通信環境や社会環境等の変化による相談傾向の違いがみられた

平成7年には、携帯電話やインターネットが現在ほど普及していないなど、現在と通信環境が異なることや、近年多く寄せられている消費者相談の違いなど、社会環境の変化による相談傾向の違いもみられた。

具体的には、阪神・淡路大震災の際はほとんどみられなかった出会い系サイト等の「デジタルコンテンツ」に関する相談や、「インターネット通販」に関する相談が東日本大震災では多く寄せられた。「デジタルコンテンツ」では、近年多く寄せられているアダルト情報サイトや出会い系サイトに関して震災に便乗して勧誘したり、被災者の心の隙につけ入る内容が「震災関連悪質商法110番」に多く見受けられた。また、「インターネット通販」では、特に放射線測定器に関する相談が多く、「初期不良があるので返品したい。販売会社から返答がない」「商品が届かず、支払った代金を返金してほしいが業者と連絡がとれない」などの相談が寄せられた。

また、平成22年度以降に相談件数が増加している「貴金属などの訪問買い取りサービス」についても、「震災で貴金属が足りなくなり集めている」「被災者を助けるために時計を売ってくれ」などと、震災に便乗して相談者の自宅に業者が来訪してきたという相談が多く寄せられた。

他にも、「消費生活ダイヤル」ではほとんどみられなかった相談として、給湯器に関する相談が挙げられる。相談の内容は「震災で給湯器のタンクが倒れた」などが多く、中には「ボルトのサイズがカタログと違う」などと設置の際の取付け方法に問題があるのではないかと疑われる事例もみられた。

【事例19:貴金属の訪問買取り】

訪問してきた業者に「震災で大量の携帯電話機が流失し、プラチナや金などの貴金属が必要になっている」と説明され、貴金属などを買い取りたいと言われた。指輪などを出したところ、約2000円で買い取られ、言われるままに個人情報を伝えてしまった。新聞で同種のトラブルの記事を読んだ。個人情報を借金などに悪用されないか心配。

(2011年6月受付 相談者:50歳代 女性 茨城県)

【事例20:電気温水器】

震災で電気温水器が倒壊した。取付け時のボルトのサイズ間違えと振れ止め金具を取り付けていなかったことが起因であり賠償を希望する。メーカー仕様書には外壁に、ふれ止め金具で機器を固定するよう記載されているが、我が家には取り付けられていなかった。工事費等込みで60万円というが、施工業者のミスなのに納得いかない。

(2011年6月受付 相談者:40歳代 男性 宮城県)

(4)その他の特徴

①「消費生活ダイヤル」「震災関連悪質商法110番」のいずれも住宅に関する相談が多い

「消費生活ダイヤル」では住宅に関する相談は全体の50.7%であったが、「震災関連悪質商法110番」でも「工事・建築」「不動産貸借」「修理サービス」などの相談の中で、住宅に関する相談がかなりの割合を占めた。

②「震災関連悪質商法110番」では修理や工事以外についても問題のある勧誘が多くみられた

「消費生活ダイヤル」では、修理における高額な料金請求など、修理や工事に関する悪質商法の事例が見られたが、それ以外の商品・サービスでは悪質商法に関する相談はほとんど寄せられなかった。

一方、「震災関連悪質商法110番」では修理や工事以外の悪質商法の事例も見受けられた。例えば、震災後に品不足になった食品やガソリン、被災地での葬儀の代金など、震災に便乗して高額な料金を要求する事例や、「地震などの被害に見舞われたのはエネルギーが落ちているためなので、水晶パワーで運気をアップさせる」など、震災で弱っている消費者の心理につけこんで勧誘を行う事例もみられた。

【事例21:水晶のしつこい訪問販売】

水晶のしつこい訪問販売がある。地震などの被害に見舞われたのはエネルギーが落ちているためなので、水晶パワーで運気をアップさせるというセールストークで、断っても再三訪問してくる。水晶を断ったら、2万円以上のお札を勧められた。

(2011年5月受付 相談者:30歳代 男性 福島県)

<表5> 「消費生活ダイヤル」上位商品相談件数

商品 前期
2/7~2/24
中期
2/25~3/14
後期
3/15~3/31
相談総件数 271
(100.0%)
219
(100.0%)
74
(100.0%)
564
(100.0%)
住宅関連 138
(50.9%)
112
(51.1%)
36
(48.6%)
286
(50.7%)
賃貸マンション・
アパート・借家・借地
73
(26.9%)
71
(32.4%)
22
(29.7%)
166
(29.4%)
戸建住宅
(修理・解体含む)
53
(19.6%)
31
(14.2%)
11
(14.9%)
95
(16.8%)
土地・造成 7
(2.6%)
8
(3.7%)
2
(2.7%)
17
(3.0%)
仮設住宅 4
(1.5%)
1
(0.5%)
1
(1.4%)
6
(1.1%)
分譲マンション 1
(0.4%)
1
(0.5%)
0
(0.0%)
2
(0.4%)
罹災証明・義援金・
行政等サービス
44
(16.2%)
23
(10.5%)
10
(13.5%)
77
(13.7%)
融資・貸し付け 13
(4.8%)
31
(14.2%)
6
(8.1%)
50
(8.9%)
保険 8
(3.0%)
7
(3.2%)
2
(2.7%)
17
(3.0%)
家電製品 4
(1.5%)
5
(12.3%)
4
(5.4%)
13
(2.3%)

<表6>「消費生活ダイヤル」相談者の居住地域

(関西地区)487人 (関東地区)37人
(中国地方) 12人
(中部地方) 11人
(九州地方)  6人
(四国地方)  6人
(北陸地方)  4人
(東北地方)  1人
兵庫県 426人
大阪府   57人
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参考資料

「震災に関連する悪質商法110番」-開設後4カ月目のまとめ-

1カ月、2カ月、3カ月の取りまとめに引き続き、主に開設後4カ月(6月25日~7月29日)の傾向を以下にまとめた。

○相談件数

10日ごと5 にみた相談件数の推移は図1のとおり。開設以降、相談件数は徐々に減少し、4カ月目から相談終了までの期間は1日平均3~4件であった。

<図1>10日ごとにみた相談件数の推移

10日ごとにみた相談件数の推移

(注) ( )内は1日の平均相談件数

5
相談受付を終了した7月11日から7月29日の土日は除き、開設日を10日ごとに区切って集計を行った。

4カ月目は件数が多い順に、宮城県が35件(36.5%)、福島県が29件(約30.2%)、茨城県が26件(約27.1%)、岩手県が6件(約6.3%)で、福島県と茨城県からの相談の合計が全体の約6割となった(図2-2)。宮城県からの相談が約半数を占めた開設期間全体の県別割合(図2-1)と比較すると、茨城県からの相談の割合が多く、宮城県からの割合が少ない。

<図2-1>相談者の県別割合(3/27~7/29) <図2-2>相談者の県別割合(6/25~7/29)
相談者の県別割合(3/27~6/26) 相談者の県別割合(5/27~6/26)

① 商品別件数

商品別にみると、4カ月目は「工事・建築」に関する相談が16件(16.7%)と最も多く、次に不動産貸借の相談が6件(6.3%)と続いた。また、「四輪自動車」、放射線測定器などの「保健衛生品その他」、廃車代行サービスなどの「役務その他サービス」などに関する相談もみられた。そのほか、避難生活の長期化を受けて「ホテル・旅館」に関する相談がみられた(図3-2)。

<図3-1>商品別割合(3/27~7/29) <図3-2>商品別割合(6/25~7/29)
商品別割合(3/27~6/26) 商品別割合(5/27~6/26)

10日ごとに相談の多かった商品をみると、4カ月目は相談件数が全体的に少ないが、他の時期と同じく、「工事・建築」が多くみられた(表1)。

<表1>10日ごとの上位商品別件数(3/27~7/29)

3月27日~4月5日 4月6日~4月15日 4月16日~4月25日
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 不動産貸借 22 不動産貸借 17 工事・建築 23
2 ガソリン 18 修理サービス 11 不動産貸借 20
3 工事・建築 17 工事・建築 8 他の行政サービス 11
4 他の行政サービス 13 火災保険 6 火災保険 7
5 修理サービス 9 相談その他 5 修理サービス 5
4月26日~5月5日 5月6日~5月15日 5月16日~5月25日
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 不動産貸借 10 四輪自動車 8 不動産貸借 10
2 修理サービス 7 工事・建築 7 修理サービス 6
3 デジタルコンテンツ 6 不動産貸借 5 他の行政サービス 6
4 相談その他 5 相談その他 4 デジタルコンテンツ 5
5 他の行政サービス 5 インターネット
接続回線
3 工事・建築 4
5 修理サービス 3
5 他の行政サービス 3
5 保健衛生品その他 3
5月26日~6月4日 6月5日~6月14日 6月15日~6月24日
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 工事・建築 9 工事・建築 12 工事・建築 11
2 修理サービス 8 修理サービス 7 不動産貸借 8
3 不動産貸借 5 他の行政サービス 4 保健衛生品その他 4
4 保健衛生品その他 4 保健衛生品その他 4 他の行政サービス 3
5 デジタルコンテンツ 3 デジタルコンテンツ 3 デジタルコンテンツ 2
5 商品一般 3 不動産貸借 3 モバイルデータ通信 2
5 携帯電話サービス 2
5 修理サービス 2
5 新築建売住宅 2
6月25日~7月4日 7月5日~7月14日 7月15日~7月29日
商品・役務名 件数 商品・役務名 件数 商品・役務名 件数
1 工事・建築 6 工事・建築 6 工事・建築 4
2 音響・映像機器 2 不動産貸借 3 修理サービス 2
3 携帯電話サービス 2 フリーローン・サラ金 2 相談その他 2
4 四輪自動車 2 ホテル・旅館 2 不動産貸借 2
5 商品一般 2 *以下、件数が1件のため
省略した
役務その他サービス 2
5 他の行政サービス 2
5 保険衛生品その他 2

②相談内容別(複数回答項目)

4カ月目に受け付けた主な相談内容の上位5位は「契約・解約」が62件、「接客対応」が31件、「販売方法」が27件、「品質・機能・役務品質」が26件、「価格・料金」が7件の順で多く、開設期間全体(表2-1)と比較すると「接客対応」の割合が高くなった(表2-2)。

<表2-1>相談内容上位件数(3/27~7/29)
相談内容 件数 割合
1 契約・解約 559 60.8%
2 販売方法 221 24.0%
3 品質・機能、役務品質 200 21.8%
4 接客対応 168 18.3%
5 価格・料金 140 15.2%
<表2-2>相談内容上位件数(6/25~7/29)
相談内容 件数 割合
1 契約・解約 62 64.6%
2 接客対応 31 32.3%
3 販売方法 27 28.1%
4 品質・機能、役務品質 26 27.1%
5 価格・料金 7 7.3%

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