平成27年版消費者白書

消費者庁が設置されてから、2014年9月で5年が経ちました。この間、長年にわたって懸案とされてきた各種法律を相次いで制定するとともに、地方における行政の体制強化など、消費者行政において必要不可欠な基盤作りに精力的に取り組んできました。とはいえ、体制や法律の整備はそれ自体が目的ではなく、それらが円滑に機能し、消費者に必要な情報が届き、消費者トラブルが防止・解決されてこそ、その目的を達成したことになります。「安全で安心な暮らし」は、何より重要であり、消費者庁は国民一人一人の「安全で安心な暮らし」に貢献できる行政を目指します。

消費者庁では、2014年度、業務の運営全般について総点検を行い、その結果を2014年8月に「消費者行政レビュー中間取りまとめ」として公表しました。同中間取りまとめで示したように、消費者庁は、消費者にとって「身近で頼りになる存在」であるよう努力していきます。また、消費者のための制度を企画・立案する「平時対応」型の業務と、食品安全をめぐる事案等、消費者の安全・安心を守るため一刻の猶予も許されない「危機管理」型の業務を両輪で進めていきます。さらに、様々な省庁の出身者や民間の人材を活用した「混合型の組織」として、多様で柔軟な発想が形成されるという強みを活かしつつ、専門人材の育成を進めていきます。

GDPの約6割を占めている家計消費の動きは、経済にも影響を及ぼします。企業業績の改善等により雇用や所得が増加し、それが消費拡大につながり、更なる企業業績の改善につながる、という経済の好循環を実現するためにも、まず、消費者が安心して消費活動を行うことができる環境にあることが不可欠です。消費者の安全・安心が確保されなければ、消費者は、商品やサービスの購入にも慎重になるおそれがあり、消費マインドにも影響が出る可能性があるからです。

消費者の期待に応えるような商品やサービスが、信頼できる事業者から供給されれば、消費者は安心して購入することができ、満足度は高まると考えられます。消費者が、商品やサービスの選択に際して、主体的かつ合理的な意思決定ができるよう、能力を高めることが求められますが、事業者も消費者から信頼を得られるようにする必要があります。事業者が、消費者を重視した事業活動を行う、すなわち消費者志向経営を行っていくことが求められています。

「消費者政策の実施の状況」は、2012年の消費者基本法改正を受けて2013年度から作成・報告しているものであり、今回が3回目の報告です。併せて、消費者安全法の規定に基づく「消費者事故等に関する情報の集約及び分析の取りまとめ結果の報告」も行っています。第1部「消費者行動・意識と消費者問題の現状」では、昨今の消費者被害・トラブルの状況について、全国の消費生活センター等に寄せられる消費生活相談情報や意識調査等を用いて客観的に整理・分析し、また、第2部「消費者政策の実施の状況」では、消費者庁及び関係府省庁の取組状況を分野別に整理しています。

第1部においては、これまでも、その時々の主要な政策課題を「特集」として取りまとめ、分析してきました。本年は、グローバル化の進展と消費者問題について記述しました。消費者は、海外からの多くの商品等に囲まれて生活しています。また、情報化が進むなか、消費者は、海外事業者と、国境を越えた取引(越境取引)を直接行って、自ら希望する商品等を入手することもできるようになるなど、消費生活の利便性は高まっています。その反面、海外事業者のウェブサイトが日本語で表示されている場合もあることから、消費者は海外事業者との取引であることが分かりにくく、トラブルに巻き込まれるおそれがあり、注意を払っていく必要があります。

インターネットを利用した越境消費者トラブルに関して、2014年度までは消費者庁が、実証実験の一環として越境消費者センターを運営し、相談を受け付けていました。2015年度から独立行政法人国民生活センター(以下「国民生活センター」という。)が相談対応を行うこととなっています。全国の消費生活センター等との連携の強化、国民生活センターのノウハウを活用した、より効果的な消費者への啓発・注意喚起等が期待されます。

人の移動も盛んになり、訪日外国人は増加しています。また、企業活動がグローバル化し、世界各地で同様の商品が販売されており、消費者問題もグローバル化していることから、国際機関が中心となって、消費者啓発を各国で同時期に実施し、また、リコール情報を共有する等の取組が行われています。

第2章「消費者を取り巻く社会経済情勢と消費者行動・意識」では、家計消費や消費者の生活に身近な物価や公共料金の動向、高齢化や情報化の現状について述べているほか、消費者庁が実施した「消費者意識基本調査」を基に、消費者の行動や意識の状況等について述べています。情報化はますます進行し、消費生活にも影響を及ぼしています。また、今後も高齢単身世帯の割合は高くなっていくことが見込まれており、高齢者が消費者トラブルに巻き込まれたときに、家族や周囲の目が届かない可能性が高まります。消費者の意識をみると、表示や説明を十分確認する、又は商品やサービスについて問題があれば事業者に申立てを行うなど、消費者として積極的な行動をとることを心掛けている消費者が増加しつつあります。また、消費者被害・トラブルを経験したとしている消費者の割合が前年と比べて増加しているなど、消費者トラブルに対する認識が高まっていることがうかがえます。

第3章「消費者問題の動向」では、全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談情報に基づき、2014年度における消費者被害・トラブルの概要を示し、最近の特徴的な消費者被害・トラブルの状況について記述しています。2014年度の消費生活相談の件数は前年度を上回っています。スマートフォンの利用が中高年層を含め幅広い年齢層に広がり、また、インターネットの利用も広がっていることに伴い、情報通信に関わるトラブルが増加していること、また、高齢者の相談が増加傾向にあること等によると考えられます。

消費生活相談窓口や消費生活センター数の増加など、相談を受け付ける体制が整備されてきていること、また消費者トラブルに対する消費者の認識が高まり、早目に相談を行うようになってきていること等も消費生活相談件数の高まりに寄与していると考えられます。

高齢者の消費者トラブルは人口の伸びを上回って増加しています。高齢者の消費生活相談の中では、最近、詐欺的な手口についての相談が増加傾向にあります。また、認知症等の高齢者は、本人が消費者トラブルに巻き込まれていることを気付きにくいことから、周囲の見守りの強化が引き続き課題となっています。2014年6月に改正された消費者安全法では、地域社会における高齢者等の見守りネットワークを更に整備していくこととしています。

また、日常生活の中で普及している様々な製品により、子供の消費者事故が発生しています。重篤な症状に陥る危険がある場合が多く、消費者庁では、「子どもを事故から守る!プロジェクト」を進めるなど、保護者への注意喚起を行っていきます。同時に、より安全な構造の商品開発も求められます。

第4章「消費者政策の展開」では、本年3月に閣議決定された「消費者基本計画」、2014年に2度にわたって改正された景品表示法の動向、及び食品表示基準の策定等、2014年度を中心として、最近の消費者行政の主要な取組について整理しました。また、地域における消費者行政の進捗についても、事例等を交えて分かりやすく記述しています。情報化が進む中で、消費者はどこに住んでいても消費者取引を行うことができるようになっています。それは、どこでも消費者被害・トラブルに巻き込まれる可能性があるということです。

2015年3月時点で、全ての地方自治体に消費生活相談窓口が設置されました。消費者庁では、消費者が、どこに住んでいても、質の高い相談・救済を受けられるよう、地方の相談体制強化を図っていきます。また、消費生活相談を利用しやすいよう、消費者ホットラインを3桁化する(「188番」)こととしています。消費者行政の推進には、消費者を始め、事業者、関係行政機関、地方公共団体など幅広い主体との連携・協力が不可欠です。そのためにもコミュニケーションが重要であり、消費者庁は、特に情報発信に当たっては、受け手の立場に立ち、便利で分かりやすい内容を提供するよう心掛けます。

第2部では、2014年度の消費者政策の実施の状況について、前消費者基本計画に規定された項目に沿って消費者庁及び関係府省庁が分担執筆しており、消費者行政の分野ごとの取組が詳細に分かるようになっています。なお、本報告は消費者基本計画の実施状況の検証・評価(フォローアップ)としての機能も兼ねています。

本報告では、事例紹介等コラムを掲載し、様々な角度から消費者問題・消費者政策への理解を深められるよう工夫しています。また、第2部の後に、消費者事故等の状況、消費者庁が行った法執行・行政処分・各種情報提供等について記載しています。

〈「子どもを事故から守る!プロジェクト」のシンボルキャラクター アブナイカモ〉

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