平成27年版消費者白書

第2部 消費者政策の実施の状況

第1章 消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援

第5節 消費者の被害等の救済と消費者の苦情処理・紛争解決の促進

2.裁判外紛争処理手続(ADR)を行う機関等との連携

( 1 )国民生活センター紛争解決委員会と地方公共団体及び民間ADR機関との連携

2008年の国民生活センター法の改正により、国民生活センターでは、2009年4月から、独立して職権を行う公正・中立な紛争解決委員会を設置し、消費者紛争のうち、その解決が全国的に重要である紛争(重要消費者紛争)について解決を図る裁判外紛争解決手続(以下「ADR」57)という。)を実施しています。

2014年度の紛争解決委員会への申請件数は167件あり、制度開始以来これまで実質的に手続が終了した事案(却下・取下げを除いた711件)のうち450件で和解が成立しました(2015年3月末時点)。

また、国民生活センター法第34条の規定に基づき、地方公共団体との適切な役割分担及び連携の確保を図るため、都道府県・政令指定都市の苦情処理委員会等の実施状況等に関する情報交換を行いました。

他のADR機関との連携に関しては「生命保険協会ADRとの情報交換会」(2014年5月30日)、「日本司法支援センター(法テラス)との意見交換会」(2014年9月12日)、「交通事故紛争処理センターとの意見交換会」(2014年9月17日)、「東京簡易裁判所等との意見交換会」(2014年9月24日)、「住宅リフォーム・紛争処理支援センターとの意見交換会」(2014年10月7日)、「埼玉県弁護士会との意見交換会」(2014年11月5日)、「証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)との意見交換会」(2014年12月18日)を開催し、国民生活センター法第34条の趣旨を踏まえ、情報交換を実施しました。

( 2 )消費者に関する法的トラブルの紛争解決

日本司法支援センター(法テラス)では、多重債務問題その他の消費者に関する法的トラブル等について、民事裁判等の手続において弁護士・司法書士の費用を支払う経済的に余裕がない人々を対象に、無料法律相談や、その費用を立て替える民事法律扶助による援助を行っています。

2014年度も引き続き、民事法律扶助業務の周知徹底を図るとともに、法的トラブルの紛争解決に向けた支援の提供に努めており、民事法律扶助における多重債務問題等に関し、無料法律相談、代理援助、書類作成援助を実施しています。さらに、地方事務所等の相談場所へアクセスすることが困難な方を対象に、出張・巡回法律相談を実施し、高齢者を始めとした消費者トラブルの解決のための支援の提供に努めています。

2014年度においては、多重債務問題に関する無料法律相談10万474件を始め、様々な法的トラブル等について33万3883件の無料法律相談を行いました(2015年4月12日時点速報値)。

また、多重債務問題についての弁護士・司法書士費用の立替え5万2098件を始め、様々な法的トラブル等について10万9014件の弁護士・司法書士費用の立替えを行いました(2015年4月12日時点速報値)。

( 3 )金融分野における裁判外紛争解決

金融分野における苦情・紛争解決については、業界団体により自主的な取組が進められてきましたが、利用者の信頼感・納得感が十分に得られていないなどの指摘が見られました。

これらを受けて、2009年6月に成立した金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成21年法律第58号)において、紛争解決機関の指定制を導入することにより苦情・紛争解決の中立性・公正性等を確保した、金融分野における裁判外紛争解決制度(以下「金融ADR制度」という。)が創設され、2010年4月に施行されました。同年10月より指定紛争解決機関(以下「機関」という。)が紛争解決等業務を開始し、現在、銀行・保険・証券等、業態別に8つの機関が当該業務に従事しています。

その後、金融ADR制度を、より一層、利用者利便の向上に資するものとするため開催された「金融ADR制度のフォローアップに関する有識者会議」の報告書(2013年3月公表)を踏まえて策定した「指定紛争解決機関向けの総合的な監督指針」(2013年8月)に基づき、機関に対する利用者の信頼性向上や各機関の特性を踏まえた運用の整合性確保を図るなど、同制度の適切な運営に取り組んでいます。

2014年度においては、金融トラブル連絡調整協議会(機関に加え、消費者行政機関・業界団体・弁護士会等も参加)を2回開催し、各機関の業務実施状況や利用者利便の向上に向けた取組状況等について継続的に議論を行うとともに、「金融ADR制度のフォローアップに関する有識者会議」の報告書の提言を踏まえ設置した、金融ADR連絡協議会(全ての機関によって構成)を2回開催し、機関間の連携強化を図るなど、金融ADR制度の円滑な実施を図っています。

また、金融トラブル連絡調整協議会に提示した機関の業務実施状況等に関する資料を金融庁ウェブサイトに速やかに掲載するなど、金融ADR制度の確実な浸透に向けて積極的な広報に取り組んでいます。

このほか、金融庁金融サービス利用者相談室では、機関が円滑に紛争解決等業務を遂行できるよう、2014年に同相談室に利用者から寄せられた相談の傾向等を意見交換の場において当該機関へ情報提供することを、2014年10月から11月までの間に実施しました。また、同相談室では従来、「金融機関との間の個別トラブルに関する相談等や金融行政に関する意見・要望等」への対応を主として行ってきましたが、金融サービス利用に伴うトラブルの発生の未然防止などに向けた事前相談の提供の充実を図るため、2014年5月23日、「事前相談(予防的なガイド)」窓口を開設しました。

( 4 )民間賃貸住宅に関する裁判外紛争解決

2010年1月の社会資本整備審議会住宅宅地分科会民間賃貸住宅部会の「最終とりまとめ」において、紛争が発生した場合の円滑な解決のための方策として、ADRの活用を促進する必要があるとの意見がありました。

それを受けて、2010年度から、司法書士、行政書士等の専門家による賃貸借関係紛争に関する電話相談・面接相談、各団体における相談体制の整備を行っています。

2014年度は、相談事業を弁護士会等19事業者において実施し、計4,278件の相談があり、また、研修事業は、7都道府県で計8回開催し、743名の参加を得ました。

( 5 )新築住宅等に関する紛争解決

住宅性能評価を受けた住宅及び住宅瑕疵担保責任保険を付した新築住宅に関する消費者と事業者との間に生じた紛争について、全国の弁護士会において、あっせん、調停、仲裁の体制を整備しており、2014年度は全国で164件の紛争について申請を受け、迅速かつ適正な解決を図りました。

また、住宅性能評価を受けた住宅、住宅瑕疵担保責任保険に加入した住宅、リフォーム工事に関して、全国の弁護士会において、弁護士と建築士による対面相談を受けることができる専門家相談制度を実施しました。さらに、住まいるダイヤル(公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター)において、住宅に関する消費者からの相談、助言、苦情の処理を行って消費者の利益の保護を図っています。

リフォーム支援制度を紹介したガイドブックや住まいるダイヤルが作成する各種パンフレット等で、住まいるダイヤルについて消費者に周知するとともに、住宅瑕疵担保責任保険を付した新築住宅の所有者に対して、紛争処理等活用可能な制度について紹介する資料を送付しました(2014年度には、2013年4月から2014年3月までに保険証券が発行された住宅を対象として、約30万部を送付)。

( 6 )消費生活センター等への相談支援機能の強化

国民生活センターでは、全国の消費生活センター等からの商品やサービスなど消費生活全般に関する相談や問合せ等に対応する「経由相談」を実施し、相談解決の支援を行っています。

各地の消費生活センター等への相談支援機能を強化するため、2012年度に専門チームを本格導入し、2014年度には、専門家からのヒアリング、事業者団体等の意見交換会等を多数行い、専門性の強化を図りました。

また、消費生活センター等のバックアップとして、土日祝日に窓口を開設していない消費生活センター等を支援するため、消費者ホットラインを通じて、「土日祝日相談」を行うとともに、平日には、話し中のために電話がつながらない場合に対応する「平日バックアップ相談」を運営しています。

さらに、地方の消費生活センター等が昼休みを設けることの多い平日の11時から13時までの時間帯に、消費者から電話で直接相談を受け付ける「お昼の消費生活相談」を行っています。

2014年度には、土日祝日相談が7,553件、平日バックアップ相談が2,982件、お昼の消費生活相談が2,934件(2015年3月31日時点)寄せられました。

そのほか、相談支援機能の一環として、関東・甲信越ブロックの消費生活センターと共催で「高齢者110番」(2014年度)を実施しました。

また、キャッシュレスでの支払手段が次々に登場し、クレジットカードやプリペイドカードに代表される電子マネー等を利用する場面が多くなってきている中、新しいタイプの消費者トラブルが寄せられるようになってきたことから「キャッシュレスでの買い物トラブル110番」を実施しました。

さらに、本110番の実施と合わせて、相談処理の参考となるように、新しい決済手段の用語等を解説した資料を各地の消費生活センター等に配信しました。

( 7 )警備業務に関する苦情の解決

警備業法第20条(苦情の解決)は、警備業者が、常にその行う警備業務について、依頼者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないこととし、警備業者の自己規律を通じて警備業務の実施の適正を図るため、2004年5月の法改正で新設されました。

警備業務に関する苦情については、適正な契約の締結に関するもののほか、依頼者の申出に対する警備業者の対応に関するものが多いことから、依頼者等からの苦情に適切に対処して、警備業務の実施の適正を確保していくためには、契約の内容を依頼者に対して明確にすることに加えて、依頼者からの苦情の迅速かつ円滑な解決を図るために、その責任を明確化し、依頼者の保護を図ることによって、警備業者自らが依頼者等の信頼や安心感の醸成に努めることが不可欠です。

警察庁では、警備業務に関する苦情の解決業務が円滑に行われるよう、都道府県公安委員会により報告徴収・立入検査の監督権限によって、苦情の適切な解決が行われているかどうかを確認しています。また、認定個人情報保護団体である一般社団法人全国警備業協会との連携により、関係警備業者による個人情報の取扱いについての苦情の解決業務の円滑化を推進しています。


57)

Alternative Dispute Resolutionの略。消費者トラブルが生じた場合、紛争解決の方法として裁判があるが、一般的には時間と費用が掛かる。このため、厳格な裁判によらずに当事者の合意に基づいて迅速かつ簡便に紛争解決する方法としてADRがある。

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