平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第4章 消費者政策の展開

第2節 消費者政策の主な展開

( 2 )不当表示の防止のための対策

●食品表示等問題を踏まえた対応─法改正に至るまで─

食品包装や外食メニューにおける表示と異なる食材を使用した問題について、2013年度は、特にホテル・レストラン等においてメニュー表示と異なる料理を提供していた問題が相次いで発覚し96)、いわゆる「食品偽装」や「食品表示等問題」等として、食に対する消費者の安心を揺るがす社会問題となりました。

食品表示に関する一連の問題は、景品表示法が禁止する優良誤認の表示(商品又はサービスの品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良であると示す表示)に当たるものとして問題となり得るものでした。

そこで、消費者庁は、「景品表示法の不当な表示の考え方及びメニュー表示等の食品表示に係るこれまでの違反事例」を取りまとめるとともに、2013年11月にホテル・旅館等の関係団体に対して、傘下の事業者にこれらを周知すること等を要請しました。

このほか、政府一丸となって今後の取組について協議するため、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)の下に「食品表示等問題関係府省庁等会議」を設置しました。2013年12月に開催した同会議(第2回)では、問題の所在や基本課題、対策パッケージをまとめた「食品表示等の適正化について」(食品表示等適正化対策)を取りまとめています(図表4-2-4)

また、消費者庁は、メニュー・料理等の食品表示に関する景品表示法の考え方を整理し、事業者の適正な表示についての予見可能性を高めること等を目的として、2014年3月28日に「メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法の考え方について」(ガイドライン)97)を作成し、その後、関係団体等への周知を図りました。

●景品表示法の2度にわたる改正

一連の表示問題を受けて、政府は、前述のような取組に加えて、食品表示等の適正化に向けた体制の強化や、違反行為を事前に抑制するため、2014年度に2度にわたって景品表示法の改正を行いました。

ア  景品表示法等の改正(2014年6月改正)

前述の「食品表示等問題関係府省庁等会議」の第2回会議(2013年12月9日)において取りまとめた食品表示等適正化対策を踏まえ、事業者のコンプライアンス体制の確立や国・都道府県の執行体制の強化のため、不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律が2014年6月13日に公布されました。この法律は、地域における連携体制等を整備するため、景品表示法の改正のみならず、消費者安全法改正98)と併せた形で成立し、景品表示法改正部分については、一部を除き同年12月1日に施行されました(図表4-2-5)

① 事業者のコンプライアンス体制の確立

2014年12月1日に施行された改正景品表示法では、事業者が不当な表示等の発生を防止するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならないことが、法律上義務付けられました(第7条第1項)。これは、食品表示等問題が発生した背景として、事業者のコンプライアンス意識が欠如していたことや事業者内部の表示に関する管理責任体制が不明確であったことなどの指摘を踏まえたものです。

法律の施行に当たっては、事業者が講ずべき必要な措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めるとしていること(第7条第2項)を受け、2014年11月14日に「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」を策定しました(図表4-2-6)

今後は、事業者がこの指針を参考に、当該事業者の規模等に応じて、必要かつ適切な範囲で表示等管理担当者の設置等、必要な措置を講じていくことになります。

②  行政の監視指導体制の強化─権限の委任等─

これまで、国の執行体制について、消費者庁が中心となって景品表示法の法執行を行ってきました99)が、2014年6月改正では、多数の事業者に対する監視指導体制を強化することを目的として、さらに、緊急かつ重点的に不当表示等に対処する必要がある等の事情があるため、景品表示法の措置命令や勧告を効果的に行う上で必要と認められる場合には、消費者庁長官から、事業者の事業を所管する大臣等に消費者庁長官の調査権限を委任できるようにしました(景品表示法第12条第3項)。

また、都道府県の執行体制について、各都道府県知事は、従来、景品表示法の規定に基づき、不当表示等を行った事業者に対して指示100)を行うことができ、そのための立入検査等の調査権限を有していましたが、消費者庁長官のような措置命令権限がありませんでした。

2014年6月改正により、都道府県知事には、消費者庁長官同様に、新たに措置命令権限と、合理的根拠提出要求権限(事業者に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる権限。資料の提出がない場合は不当表示とみなされる。)が付与されました(景品表示法第12条第11項、不当景品類及び不当表示防止法第十二条の規定による権限の委任等に関する政令第10条第1項)。

イ  景品表示法への課徴金制度の導入(2014年11月改正)

2014年6月改正では、法律の施行後1年以内に、課徴金制度の導入について検討し、必要な措置を講ずべきことが規定され、国会の附帯決議でも速やかに法案を提出することが求められました。

これを受けて、第187回臨時国会に課徴金制度を導入するための景品表示法の改正法案が提出され、2014年11月19日に成立し、同月27日に公布されました。

2014年11月改正では、景品表示法に課徴金制度を導入するとともに、被害回復を促進する観点から、自主返金による課徴金の減額等の措置を講じています。

これまでは、不当表示を行った事業者に対しては、行政がその表示をやめさせる等の措置を命ずる「措置命令」をその都度出して対応してきました。しかし、この場合、事業者側に不当な表示で得た不当な利得が残ったままであり、消費者がその被害を事後的に回復することは実質的に難しい状況となっていました。

一方、課徴金制度は、例えば違反行為を防止し、規制の実効性を確保するため、行政庁が違反者に金銭的な不利益を課す制度として、これまで私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(「独占禁止法」)、金融商品取引法(「金商法」)、公認会計士法に導入されています。

景品表示法に課徴金制度を導入することにより、事業者が不当表示を行う動機を失わせ、不当表示という違反行為が事前に抑止されることが期待されます。

① 課徴金制度導入までの検討経緯

景品表示法への課徴金制度の導入については、消費者庁が設置される前の2008年に国会に法案が提出されたことがありました。当時の景品表示法は独占禁止法の特別法で、現在と異なり、競争法の一部に位置付けられていました。2009年に消費者庁に景品表示法が移管される際、景品表示法は消費者法体系に属するものとしてその目的が改正され、また、景品表示法への課徴金制度の導入については、被害者救済制度の総合的な検討を実施する際に合わせて検討することとされ、移管後も引き続き課徴金制度の導入の検討が進められました。

2013年12月に、前述の「食品表示等適正化対策」で、景品表示法違反事案に対する課徴金等の新たな措置の検討を行うとされたことを受け、同月に内閣総理大臣は消費者委員会に対し、課徴金制度等の在り方について諮問を行いました。

諮問を受け、消費者委員会は、調査・検討、審議を進め、2014年4月1日に中間整理を公表し、また事業者からのヒアリング等も踏まえ、同年6月10日に「景品表示法上の不当表示規制の実効性を確保するための課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置の在り方について(答申)」を取りまとめました。

また、前述の景品表示法の改正(2014年6月6日)に当たり、国会の附帯決議において、課徴金の導入について速やかに検討することに加え、事業者の経済活動を萎縮することがないよう配慮するとともに消費者の被害回復という観点も含めて検討することとされました。

国会の附帯決議を踏まえ、消費者庁が検討した結果、以下のとおり消費者の被害回復を促進する観点から、事業者が自主返金を行った場合には課徴金の額の減額等の措置も併せて講じることになりました(図表4-2-7)

② 課徴金対象行為

課徴金が課される対象となる行為は、食品に限らずあらゆる商品やサービスについて、実際より著しく優良であると示すこと(優良誤認表示)、又は有利であると誤認される表示を行うこと(有利誤認表示)です。

また、課徴金納付命令との関係においてもいわゆる不実証広告規制を導入し、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、当該表示を行った事業者に対し、一定の期間内に、表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求め、それがない場合には当該表示が不当表示と推定されて課徴金の対象となることとしました。

③ 課徴金額の算定方法

課徴金の金額は、不当表示をした対象商品・サービスの売上額に3%を乗じた金額です(なお、課徴金を賦課しない場合として、主観的要素や規模基準を設けています。図表4-2-7)。

④ 減額等の措置

違反行為について自主申告をした事業者に対し、課徴金額の2分の1を減額するほか、消費者の被害回復を促進する観点から、事業者が所定の手続に沿って消費者に対して自主返金を行った場合は、国が返金相当額を課徴金から減額する又はその納付を命じないこととしています。

図表4-2-4 食品表示等の適正化対策の概要

図表4-2-5 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)改正(2014年6 月公布)

図表4-2-6 事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針の概要

図表4-2-7 不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(概要)


96)

2013年10月22日に株式会社阪急阪神ホテルズがメニュー表示と異なった食材を使用して料理を提供していたことを発表(例:メニュー表記では「芝海老とイカの炒め物」としていたところを実際には安価な「バナメイエビ」を使用。)。その後、全国各地のホテル、百貨店、レストラン等でも同様にメニュー表記と実際に提供していた食材が異なっていたことが発覚した一連の問題。

97)

http://www.caa.go.jp/representation/syokuhyou/index.html

98)

消費者安全法改正については、第3節参照。

99)

具体的には、従来、景品表示法では、内閣総理大臣が景品表示法の規定に基づく権限を消費者庁長官に委任した上で、消費者庁長官が公正取引委員会に同法の規定に基づく調査権限を委任するという仕組みがとられてきた。

100)

景品表示法の2014年6月改正以前に、同法で都道府県知事に与えられていた権限は以下のとおり。

  • 違反行為に対して、行為の取りやめ、訂正広告などを指示すること。
  • 違反者が指示に従わない場合は、消費者庁長官に措置を求めることができること。
  • 違反の疑いのある事業者に報告命令及び立入検査等を行うことができること。

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