平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 消費者問題の動向

第3節 最近の消費者問題の傾向

( 2 )高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル

●高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブルは増加

高齢者に関する消費生活相談において、最近詐欺的な手口に関する相談78) が増加傾向にあります。この数年間を見ると、2009年度の1.4万件から2014年度は4.4万件となっています(図表3-3-10)。相談する時点で、事業者に既に支払ってしまったという相談は減少傾向にあり、2014年度は8.2%と1割に満たないものの、支払った相談1件当たりの平均金額は、400~500万円台と高額であり、深刻であるといえます。

ここでいう詐欺的な手口に関する相談とは、警察庁における特殊詐欺79)とは定義が異なりますが、特殊詐欺と同様の手口とみられるトラブルが消費生活センター等にも数多く寄せられるようになり、警察との一層の連携が必要です。

●劇場型勧誘は依然として高齢者に多い

複数の事業者が役回りを分担して消費者をだまそうとする「劇場型勧誘」のトラブルについての相談は依然として多く、そのうち高齢者に関する割合は高まる傾向にあります(図表3-3-11)。商品・サービス別で見ると、「ファンド型投資商品」や「公社債」等の金融商品が上位に挙げられますが、2014年度は個人情報の削除や過去の投資の被害回復を持ち掛けるという金融商品以外の内容の相談が増えてきています。

また、「劇場型勧誘」のきっかけとして、話題性のあるニュースや事件に便乗した手口も見られます。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に関連した投資トラブルについては、第1章第2節で紹介しましたが、2014年度は、ほかにiPS細胞・STAP細胞の関連事業をかたった詐欺的トラブル等がありました80)

●個人情報削除を持ち掛ける詐欺に関するトラブルが増加

公的機関等をかたり、電話で「個人情報が漏れているので、削除してあげる」などと勧誘し、お金をだまし取ろうとする詐欺的な手口が急増しています81)(図表3-3-12)。2013年度は10~3月に423件でしたが、2014年度は4~9月に1,172件、10~3月に1,472件となっています。

2014年7月には企業保管の個人情報が外部に大量に流出した事件もあり、便乗して不安をあおる勧誘や、複数の業者が役回りを分担して消費者をだまそうとする「劇場型勧誘」も見られます。

中でも高齢女性がトラブルに遭うケースが目立っています(図表3-3-13)。多くの場合、不審に感じて消費生活センター等へ相談し、お金を支払わずに済んでいますが、公的機関等又は公的機関と誤解するような名乗り方をされたことから信用してしまい、消費生活センター等への相談時には既に支払ってしまったケースでは、2014年度の1件当たりの相談の平均支払金額は約391万円と高額になっています。

公的機関を装って個人情報の削除を持ち掛け、複数の事業者を介して車椅子販売の勧誘を行う事業者について、消費者庁では、2014年9月に事業者名を公表し注意喚起を行っています82)

「個人情報を削除してあげる」などと、公的機関が電話をしてくることはなく、相手にせず、きっぱりと断ることが重要であるため、注意喚起を行いました。

●原野商法の二次被害が増加

最近、高齢者を中心に原野商法の二次被害の相談が増加しています(図表3-3-14)

相談事例としては、数十年前に購入したもののほとんど訪れたことがない土地の原野を売却したいと考えていた消費者が、「あなたの土地を買いたいという方がいます。売却しませんか」などと事業者から土地の売却話を持ち掛けられ、「売却に当たり、境界杭を打つ境界線復元工事を行わなければならない」等として工事の契約をし、費用を前払いした後、事業者と連絡が取れなくなるといったものがあります。

消費者庁では、2014年8月及び10月に、原野商法の被害者に架空工事を契約させる事業者に関する注意喚起を行っています83)

●SF商法(催眠商法)の手口に変化、平均支払額が高額に

SF商法(催眠商法)とは狭い会場に人を集め、販売員が巧みな話術で場を盛り上げながら、「ハイ、ハイ」と手を挙げさせるなどして、ほとんど無料で日用品などを配り、冷静な判断ができない高揚した雰囲気の中で、高額な商品を売り付ける商法です。これらのトラブルは高齢女性に多いものの、近年ではこの手口に関する相談件数は大きく減少しています(図表3-3-15)

一方、最近では販売方法に変化が見られるようになっています。従来、商店の空き店舗や繁華街の貸室、集会場等で、1週間程度と短期間で販売会を開催するケースが多く見られていましたが、最近では販売会の開催期間が数か月以上と長期間になり、販売員が消費者に個別に声を掛けて信頼関係を作り、最終的に高額な商品を次々に勧めていくケースが目立っています。消費者本人や周囲が気付いたときには、次々と契約していたり、支払が困難になるほどの量の商品を購入していたりする例があります。

SF商法に占める「次々販売」84)又は「過量販売」85)の割合は、2005年度の5.7%から2014年度は16.3%と増加しています。また、SF商法の相談を消費生活センター等への相談時に既に支払っている場合で見ると、その平均金額は、2005年度の約14万円から2014年度は約51万円へと高額化しています。

コラム6

「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」
「高齢者の消費者トラブル未然防止」キャンペーン

2012年度から、内閣府政府広報室、消費者庁、警察庁、金融庁が連携して、「高齢者に対する振り込め詐欺などの被害の未然防止」啓発キャンペーンを実施してきました。

2014年度は、「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」を掲げて、日頃から家族でこまめな連絡をとることが被害を未然に防ぐポイントであるとともに、家族以外の周囲の方々へも目配り・気付きを促し、社会全体で高齢者を見守るよう働き掛けました。

また、政府広報オンライン「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」のウェブサイトでは、高齢者を狙った詐欺の手口を紹介するとともに、警察庁や一部の県警で紹介している詐欺電話の実際の音声を掲載しているウェブサイトのURLをまとめて紹介しました。

高齢者を狙った悪質な手口を消費者に実際に聞いてもらい、被害を防ぐことを目的としています。

政府広報オンライン「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」のウェブサイト

2014年9月10日に“お年寄りの原宿”東京都豊島区巣鴨でイベントを開催し、2013年度に引き続き俳優松平健さん扮する「未然奉行」の他、今回は家族の代表として子役タレントの鈴木福くん・夢ちゃん兄妹にも出演いただき、少しでも怪しいと思ったらすぐ家族に相談するよう呼び掛けを行いました。このイベントを皮切りに、テレビCM、新聞折込広告、ラジオ、ポスター、ウェブサイトやSNSの他、診療所や病院でのデジタルサイネージ(電子看板)及び介護職向けサイト等、幅広い媒体を活用してキャンペーンを展開しました。

なお、政府広報オンラインでは、キャンペーンの詳細を確認できるほか、ポスターやオリジナルハガキ、パンフレット等をダウンロードすることができます。

「未然奉行」

政府広報オンライン「家族みんなで防ごう!高齢者詐欺!」
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/korei_syohisya/index.html
※ 記事等の転載・引用については、「政府広報オンライン」の「当サイトをご利用になる方へ」を御参照ください。

コラム7

「通話録音装置による高齢消費者の被害防止 ―富山市消費生活センター―

富山県内の特殊詐欺被害額は、2012年に急増し過去最悪の被害額となり、2013年前半においても、前年を上回るペースで推移していました。そこで、富山県の人口の約40%弱を占める富山市民の安全で安心な暮らしや大切な財産を守る観点から、国と地方のコラボレーションによる先駆的プログラムの1つである『悪質事業者による消費者被害の防止の強化』への取組に参加し、2013年12月から当事業を実施しました。

全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)のデータによると、特殊詐欺や悪質商法等では、業者が作った顧客リスト(被害に遭った人達の名簿)が出回り、一度被害に遭った高齢者が再び狙われ、「二次被害」に遭うケースが多いと考えられることから、過去に被害に遭ったことのある高齢者の被害防止対策を最優先に検討することとなりました。

実施内容としては、定期的な電話による見守りや、自動着信拒否機器の設置等、他事業との比較を行った結果、「着信前に、警告メッセージのアナウンス機能のある通話録音装置の設置」が高齢者にとって手軽で使いやすいのではないかと判断し、「通話録音装置の設置」により、特殊詐欺や悪質な電話勧誘等による被害の未然防止を図ることとしました。

「通話録音装置」は、市内在住の設置を希望する65歳以上の高齢者を対象に無償で貸与することとし、過去に被害に遭った人、一人暮らし世帯や高齢者夫婦の世帯のほか、日中は高齢者のみとなる世帯も対象としました。

【警察や地域包括支援センターとの連携】

この取組においては、過去に特殊詐欺被害に遭った高齢者世帯に対する働き掛けが不可欠であるとの考えの下、富山市と富山県警とで「消費者被害の防止連絡協議会」を設け、課題等について協議を行い、富山市が作成したチラシ等を、県警が近年の特殊詐欺被害者に対し個別訪問や郵送等を行うことにより周知しました。

事業実施中に、所轄の警察署へ通報・相談があった被害未遂のケースでは、直ちにこの事業を紹介し、消費生活センターへ連絡された例もありました。

地域包括支援センターとも連携し、特に当装置の設置が必要と思われる利用者に対して、積極的な周知を依頼したほか、申請者宅への設置時に立会いが必要と考えられる場合は、立会いへの協力を求めました。

このほか、この事業を周知するための案内チラシを作成したほか、出前講座での説明や、テレビ・ラジオ・新聞等での報道により、広く市民に周知しました。

その結果、2013年度末までに125台の通話録音装置を設置することができました。

【アンケート結果】

この事業の効果を把握するため、2014年9~10月に、装置を継続して利用している人121人に対してアンケートを行った結果、100人から回答があり、

①装置設置後、不審電話の回数がなくなった、又は減ったという人が90%

②装置設置後、安心できた、又は少し安心できたという人が95%

との結果になりました。

【利用者アンケートの結果】

アンケートからは、通話録音装置の設置が特殊詐欺被害や悪質商法等の被害の未然防止や安全・安心な市民生活に有効である、と判断することができました。

【現在の取組等】

この結果を受け、富山市では、2013年度に引き続き2014年度には54台の「通話録音装置」を無償貸与することとし、2015年1月に市民から申込みを受け付けたところ、市民の関心も高く1日半で予定台数を超える問合せがありました。また、2015年度においても100台を無償貸与することにするなど、当事業を継続的に実施しています。

当該事業のほか、複雑・多様化する消費生活相談や、急増する特殊詐欺被害に対応するため、2014年8月に消費生活センターを市役所庁舎から富山駅前の商業施設に移転し、それまで平日のみとしていた窓口相談や電話相談を、年末年始を除く毎日対応できるよう体制を整備しました。また、8時30分から17時15分までであった相談受付時間を10時から18時30分までに変更することで、帰宅後又は帰宅途中にも相談できるよう利便性の向上を図り、併せて消費生活相談員1名を増員しました。

なお、移転した2014年8月から2015年2月までの相談件数は、2013年度の同時期と比較して約6%の増加となっており、また、これまで相談を受け付けていなかった土・日曜日、祝日の相談件数は全体の約20%、17時以降の相談は全体の約11%を占めていることから、相談受付日や時間を変更した効果が表れているものと考えられます。

コラム8

金融商品と高齢者に特化した弁護士と連携した面談による相談対応―名古屋市消費生活センター―

最近の金融商品に関する相談件数は、商品別に見ると上位にあり、1件あたりの相談の平均金額も他の商品・サービスと比較し、高額となっています。

名古屋市消費生活センターでは、2010年度から2011年度までにかけて、高齢者を中心に、従来から相談の多かった電話勧誘による未公開株のほか、新たに鉱山資源の採掘権や水資源への投資等のファンド型投資商品や怪しい社債など詐欺的な投資商法等の金融商品に関する相談が増加傾向にありました。

そこで、同センターでは、2012年10月から、愛知県弁護士会投資被害弁護団の協力の下、「金融商品等特別相談窓口」を開設し、消費生活相談員による相談と併せて、弁護士による無料の面談相談を実施しています。

金融商品等特別相談の相談件数は、2013年度は983件で、そのうち230件は弁護士による面談相談です。2014年度は916件で、そのうち180件が弁護士による面接相談です。

具体的には、「ファンド型投資商品」や「公社債」等の相談が多くなっています。また、最近では、高齢者を中心に、劇場型投資詐欺や、以前投資した未公開株などの損失を回復すると言って新たな契約を持ち掛ける二次被害に関する相談も急増しています。

また、高齢者は、金融商品以外でも悪質業者の強引な訪問販売や電話による勧誘に狙われやすく、同センターでも高齢者の悪質商法による被害に関する相談が多く寄せられています。

そこで、2015年4月からは、2011年から年2~5日間限定で実施していた「高齢者悪質商法110番」と「金融商品等特別相談窓口」を統合し、「金融商品・高齢者悪質商法110番」として通年実施することにより、高齢者を狙う悪質商法の様々な相談に対応できる体制を強化しています。

相談窓口ではまず消費生活相談員が電話等で内容を丁寧に聞き取ります。その後、早急に弁護士へつないだ方がよいと思われる相談者には、事前に予約を取った上で、弁護士による面接相談を受ける体制をとっています。そして、金融トラブルに精通した弁護士が1時間程度対応するため、迅速に対応できます。

弁護士相談は、平日午後1時30分~4時の間、同センターへ弁護士が出向く形で、実施しています。このため、センターの電話相談の後に改めて自ら弁護士事務所へはなかなか行きづらい高齢者にとって、気軽に利用しやすくなっています。

また、弁護士相談には、消費生活相談員が同席するため、高齢者などで一人では相談できない方も安心して相談を受けることができます。実際に相談を受けた方からは、「相談員が同席してくれて心強かった」、「相談員が法律用語を分かりやすく説明してくれてよかった」などといった声が寄せられています。

図表3-3-10 詐欺的な手口に関する高齢者についての相談件数と支払済相談の平均支払額

図表3-3-11 劇場型勧誘に関する相談件数と高齢者割合

図表3-3-12 「個人情報の削除を持ち掛ける詐欺」に関する相談件数

図表3-3-13 「個人情報の削除を持ちかける詐欺」に関する年齢層別相談件数(2014年度)

図表3-3-14 原野商法の二次被害に関する相談件数

図表3-3-15 SF商法(催眠商法)に関する相談件数と支払済相談の平均支払額


78)

「詐欺的な手口」とは、事業者側の「だます」という意思を心証として消費者や消費生活センター等が強く持った場合に選択する「詐欺」や「架空請求」、「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」の項目が入力された相談。

79)

被害者に電話を掛けるなどして対面することなく信頼させ、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(現金等を脅し取る恐喝も含む。)の総称であり、その代表的なものが振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺及び還付金等詐欺)である。2014年の特殊詐欺認知件数は約1万3000件、被害総額は約565.5億円。

80)

国民生活センター「iPS細胞・STAP細胞の関連事業をかたった詐欺的トラブルにご注意!―話題性のある出来事に便乗して、高齢者を狙う悪質な手口―」(2014年9月11日公表)

81)

国民生活センター「個人情報が漏れているので削除してあげる⁈公的機関をかたって個人情報の削除を持ちかける詐欺にご注意!」(2014年7月30日公表)

82)

消費者庁「公的機関を装って個人情報の削除を持ち掛け車椅子の購入契約をさせる「成寿園株式会社」に関する注意喚起」(2014年9月30日公表)

83)

消費者庁「消費者が所有する原野に係る仲介取引を偽って境界線復元工事等を契約させる「株式会社日高不動産」に関する注意喚起」(2014年8月29日公表)、「消費者が所有する原野に係る仲介取引を偽って境界線復元工事等を契約させる「株式会社フジ不動産」に関する注意喚起(原野商法の被害者に架空工事を契約させる事業者に関する注意喚起(第2報))(2014年10月10日公表)

84)

定義については、図表3-1-21参照。

85)

定義については、図表3-1-21参照。

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