平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第3章 消費者問題の動向

第3節 最近の消費者問題の傾向

本節では、2014年度を中心として最近目立つ消費生活相談や、悪質事業者による新手の手口が見られる消費者トラブル等を紹介していきます。

中でも第1節で紹介したように、インターネットや情報に関連するトラブル、高齢者が巻き込まれる詐欺的なトラブル、その他のトラブルの大きく3つのテーマに分類して、個別の内容を見ていきます。

( 1 )インターネットや情報通信に関連するトラブル

●電気通信サービスに関する相談は更に増加

第1節でもインターネットに関連した相談が増加していることに触れましたが、ここではインターネットを利用する回線や携帯電話サービス等の電気通信サービスに関する相談の推移を見ていきます。

電気通信サービスに関する相談は年々増加傾向にあり、2014年度は「インターネット接続回線」や「携帯電話サービス」を中心に、2013年度の1.4倍となる5.8万件の相談が寄せられました(図表3-3-1)

●遠隔操作によるインターネットプロバイダ変更のトラブルが急増

第2章でも世帯当たりのインターネット通信の普及が拡大していることを見てきましたが、インターネットに接続するためには、現在、一般的に回線事業者との契約(以下「回線契約」という。)」と、インターネットに接続するためのインターネットサービスプロバイダ(以下「プロバイダ」という。)との契約の2つの契約を結ぶこととなっています。

そのプロバイダ契約について、最近「大手電話会社の関連事業者と思い、プロバイダ契約の内容(料金コース等)変更の手続を遠隔操作でしてもらったが、無関係の事業者で、プロバイダ自体が変更されていると分かった。解約を申し出たら、違約金を請求された」、「電話勧誘で考える間もなく、プロバイダ変更の契約をしてしまい、遠隔操作で作業を行った。不安になったので、解約したい」といった相談が全国の消費生活センター等に多数寄せられています71)(図表3-3-2)。2013年度は4~9月が519件、10~3月が1,079件で、2014年度に入ると4~9月は2,439件、10~3月が4,173件と急増しています。

インターネット接続については、回線契約の契約先によっては利用できるプロバイダが限定される場合もありますが、回線契約はそのままでプロバイダ契約のみを自由に変更することも可能です。また回線契約を変更するためには工事が必要となりますが、プロバイダの変更はパソコンの設定変更だけで完了します。現在、急増しているトラブルでは、プロバイダ契約のみについて他の事業者へ変更可能な消費者に対し、事業者がプロバイダ変更について電話で勧誘し、パソコン上の遠隔操作で接続切替作業をしています。

2014年度に急増したプロバイダの変更契約での遠隔操作のトラブルは、【解説】に示したように、プロバイダ契約を自由に変更可能な消費者に対して、電気通信事業者又はその代理店がプロバイダの変更について電話勧誘をすることが特徴です。その際、大手電話会社又はその関連事業者と誤解するように名乗ったり、大手電話会社の回線名を告げたりすることによって、消費者が新たな事業者との契約ではなく、現在契約している事業者とのサービス変更の手続と誤解させることもあります。

事業者は「料金が今より安くなる」等の説明をしますが、その言葉を信用して消費者が現在の利用料を確認せず、新たな契約内容をよく理解しないまま、事業者のペースに乗せられて、十分考える時間を与えらずに電話口で承諾するケースが多く見られます。

なお、プロバイダを変更した場合、その変更前の契約についても解約手続をしない限り契約が継続し、料金が二重に発生してしまったというケースや、以前のプロバイダの解約には違約金の支払が必要となるケースもあります。そのため、結果的に月々の利用料が安くなったとしても、全体的な費用を考えると安くなったといえないこともあります。

さらに、「【解説】遠隔操作によるプロバイダ変更の仕組み」に示したように、消費者は遠隔操作が行われることをよく理解しないまま、プロバイダ変更のための遠隔操作を事業者に許可すると、自分のパソコンの中の情報が外部に漏れる等、自分のパソコンのセキュリティを危険にさらす状況になることを知っておくことも重要です。

プロバイダ等の電気通信に関する契約は、特定商取引法の適用がないため、電話勧誘で契約したとしても法律上のクーリング・オフ制度はありません。事業者に対し、あいまいな返事をせず、必要がなければ、きっぱり断る必要があります。

このようなプロバイダ変更を勧誘し、遠隔操作で変更作業を行っていることに関連して、多数の苦情が寄せられている電気通信事業者2社に対し、2015年1月に総務省が勧誘方法等の改善を行うよう指導しています72)

●アダルト情報サイトに関する相談が過去最多に

アダルト情報サイトに関する消費生活相談は、最近非常に多く寄せられていますが、2014年度は前年度を約3万件ほど上回り、過去最多の11万428件となりました73)図表3-3-3①図表3-3-3②)。この背景には、スマートフォンの普及により、パソコン以外からもサイトにアクセスする機会が増えていること等が挙げられ、第2章で示したように、さらにスマートフォンの利用が幅広い年齢層に浸透してきたことも影響していると考えられます。

2014年度のアダルト情報サイトに関する相談を性別、年齢層別で見ると、男性が約7割を占めていますが、40歳代から60歳代までがそれぞれ約12%で、10歳代でも7.9%と若年層でも見られます(図表3-3-4)。そして5年前の2009年度は、20歳未満から40歳代までの男性が中心で15%前後となっていましたが、平均年齢は36.3歳から45.4歳へと10歳近く上がっています。

女性も5年前の2009年度の26.5%から2014年度は32.3%へと高い割合を占めるようになり、30歳代、40歳代でもそれぞれ7.2%、8.8%となっています。

相談の主な内容は、「有料だという認識がないままアダルト情報サイトを見ていたところ、突然、料金の請求画面が表示された。支払わなければならないか」といったように、無料なのでサイトにアクセスしたところ請求されたというものや、「歌手の動画を見ようと、動画サイトをタップしたつもりが、表示された18歳以上かを確認する年齢確認ボタンをタップしてしまった。すると、突然、アダルト情報サイトの会員登録完了の画面が表示された」というように誤操作によるもの等で、そのうち69.4%と多くが事業者に支払う前の相談です(図表3-3-3①)。

しかし最近では、「請求されたので事業者の問合せ先に電話をしたら、支払うよう強く言われたので、焦って支払ってしまった」等の相談事例に見られるように、言われるままに支払ってしまうケースもあり、支払った相談での平均金額は、2014年度には277,121円と高額化しています(図表3-3-5)。その理由としては、スマートフォン利用のトラブルが増えていることが考えられます。

アダルト情報サイトの請求画面等には、「退会はこちら」、「誤操作の方はこちら」等というボタンが用意されていますが、これらのボタンを押すことで事業者に連絡することになってしまい、事業者から請求を強く求められるケースが見られます(図表3-3-6)。特にスマートフォンを利用している場合、簡単に電話発信やメール送信ができて、事業者につながってしまい、個人情報を把握されるおそれがあります。決して事業者に連絡しないようにすることが肝要です。

身に覚えのない請求をされても、慌てて支払ってしまうケースがありますが、支払ってしまうと、後で返金を求めようにも連絡がつかない等、お金を取り戻すことは困難です。

また、最近では、事業者に誘導され、消費者には金銭を支払うという意識がないまま、事業者がプリペイドカードを支払手段として悪用した、新たな手口が用いられるようになってきています(手口の詳細は本節「プリペイドカードを悪用する新たな手口が発生」参照)。

【解説】遠隔操作によるプロバイダ変更の仕組み

●電話での勧誘から契約までの主な流れ

電気通信事業者又はその代理店が電話によるプロバイダの変更を勧誘

【1回目の電話】(例)「A社(大手電話会社)の○○です。現在○○円お支払かと思いますが、新しいプロバイダにお申し込みいただくと、○○円となり、お安くなります。」

   消費者がプロバイダの変更に承諾すると、一旦電話が切られ、別の担当者からすぐに2回目の電話が掛かってくる。

【2回目の電話】(例)「リモートで設定しますので、パソコンの電源を入れ、インターネットを立ち上げてください。」

●プロバイダ変更契約後の遠隔操作によるプロバイダ接続手続き例

プロバイダ変更契約後の遠隔操作によるプロバイダ接続手続き例

1)消費者は、電話での事業者の指示で遠隔操作用のソフトをダウンロードする。

2)消費者が画面に表示されるIDとパスワードを事業者に伝える(これにより、事業者のパソコンから、消費者のパソコンを遠隔操作することが可能となる。)。

3)消費者のパソコン(A)のデスクトップ画面が事業者のパソコン(B)に表示され、事業者が消費者のパソコンの遠隔操作を行い、プロバイダの変更作業を行う。

プロバイダ変更契約後の遠隔操作によるプロバイダ接続手続き例2

●インターネットに関する契約の仕組み

多くの場合、インターネットをするためには、「①回線契約」及び「②プロバイダ契約」が必要である。回線契約の契約先によって、プロバイダを自由に選択できる場合と利用できるプロバイダが限定されている場合がある。回線契約を変更するためには工事が必要となるが、プロバイダの変更はパソコンの設定変更をするだけで完了する。そのため、事業者が消費者と離れていても、電話勧誘と遠隔操作によって、プロバイダの変更が可能となる。


(備考)国民生活センター公表資料(2014年9月18日)より一部引用。

●プリペイドカードを悪用する新たな手口が発生

近年、商品等の売買に係る決済サービスは多様化しており、消費者は多様な支払手段の中から、支払方法を選択できるようになってきています。現金を用いないクレジットカードや、プリペイドカードに代表される電子マネー等、“キャッシュレス決済”は、現金を持ち歩かずにカードやスマートフォンで買い物ができる手軽さから、身近な決済手段として、消費者の利用機会が拡大しています。

一方で、悪質商法に利用されたり、複雑な仕組みを理解しないまま支払ってしまったことによるトラブルや、決済手段への不安等、新しいタイプの消費者トラブルについて消費生活相談が寄せられています74)

最近、全国の消費生活センター等に寄せられた相談の中で、新たに見られるようになってきているのは、プリペイドカードの残高を不正に取得しようとする「詐欺業者」とのトラブルです。

主な相談事例を見ると、「事業者に料金を請求され、その支払手段としてサーバ型プリペイドカードの購入を指示され、要求されるままにカードに記載された番号等を伝えてしまった。だまされたと思うので返してほしい」といったものです。

これは、もともと事業者にアダルト情報サイトの利用料等、何らかの支払を求められた際、その手段として事業者にコンビニエンスストア等でプリペイドカードの購入を指示され、購入後そのカード番号を言われるままに伝えてしまい、結果としてプリペイドカードの価値を事業者に全て譲渡したことと同じになる、新手の手口です(図表3-3-7①図表3-3-7②)。

新しい「サーバ型」プリペイドカードを使った手口で、カード番号を伝えたことにより金銭を支払ってしまったことと同様の事態になることを、日頃プリペイドカードを使い慣れていない消費者自身が理解しにくく、そのため被害に気付くのが遅れる状況にあります。

国民生活センターに寄せられた相談件数75)について推移を見ていくと、2014年4月には1件でしたが、2015年3月には24件となっています(図表3-3-8)。プリペイドカードは様々なところで広く販売されていることから、今後、トラブルが拡大していくおそれがあります。

このトラブルの主な仕組みは、図表3-3-7②のようなものです。

他に、手元に現金がない消費者が「自身のクレジットカードを使ってプリペイドカードの一つである電子ギフト券を購入するよう指示された」というものもあります(図表3-3-7③)。その場合は、消費者はインターネット上で、クレジットカード決済により電子ギフト券の購入手続を行い、事業者に対して電子ギフト券をメールで送ります。これは、電子ギフト券を送ることによって、事業者へその電子ギフト券の価値を譲渡したのと同じことになります。

事業者は、金融機関の口座を持っておらず、また審査が通らずクレジットカード会社やプリペイドカード会社の加盟店になれない等、詐欺業者である可能性が高いと考えられます。プリペイドカードを取得しようとする背景として、消費者からの入手が簡単であること、悪用しても所在地や連絡先が特定されにくいことのほか、インターネット上においてプリペイドカードを高い換金率で買い取る事業者が存在していることが考えられます。

トラブル発生後に連絡が取れなくなることが多いため、事業者と直接交渉して返金を求めることは困難となります。

事業者がプリペイドカードや電子ギフト券を購入するよう指示する場合、その事業者は詐欺業者である可能性があります。詐欺業者は消費者からプリペイドカードに記載されている番号等を聞くなどして価値を取得した後、すぐに使ってしまいます。そのため、消費者がプリペイドカードの価値をだまし取られたことに気付いた時には、価値が残っていないことがほとんどで、被害回復が大変困難です。

事業者から指示されてプリペイドカードを購入したり、そのカード番号等を伝えたりすることは、プリペイドカード自体を事業者に譲渡してしまうのと同じことであると、消費者も知っておくことが大切です。

【解説】プリペイドカードとは

プリペイドカードとは、事前にバリュー(価値)をチャージ(購入)することで、商品やサービスの支払として利用できるものです。カードを持つための審査はないため誰でも簡単に持てる無記名のカードが多く、第三者にギフトとして渡すものもあります。

プリペイドカードには大きく分けて2つの種類があります。1つは、プリペイドカードの価値が券面に記載されているものや、カードに埋め込まれた磁気、ICチップに直接記録されているもの(商品券や磁気カード、ICカードなど)、2つ目は、プリペイドカードの価値がカード自体ではなくプリペイドカード発行会社の管理するサーバに記録される、いわゆる「サーバ型」と呼ばれるものです。

最近新たに登場した「サーバ型」のプリペイドカードの場合、物理的なカードが発行されるとは限らず、紙に記載された番号等をインターネット上で入力して使用できるものがあります。これら「サーバ型」プリペイドカードは、コンビニエンスストアや量販店等、様々なところで広く販売されています。さらに、国際ブランドのロゴがついていて、より多くのお店で利用できるプリペイドカードもあります。

「サーバ型」プリペイドカードの特徴として、カードそのものがなくても、番号だけで利用することができるため、利便性が増しています。前払した金額までしか使用できないことから使い切りで、匿名性もありインターネット上でクレジットカード決済をしたくない消費者には適しています。また、自分で購入して使用するだけでなく、贈り物と指定して、その相手のメールアドレスに簡単に送ることができる電子ギフト券も見られます。

便利な面がある一方、普及し始めて未だ日が浅いため、消費者にその使い方が周知されていない点も見られ、本文に紹介したように悪用される例も出てきています。

プリペイドカードの類型

(備考)国民生活センター「国民生活」(2013年12月号)より一部引用。

●SNSをきっかけにトラブルに巻き込まれることが増加

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が何らか関連している消費生活相談は増加傾向にあり、2014年度はその増え方も大きくなっています76)(図表3-3-9)

また、相談件数を年齢層別に見ると、2009年度から2014年度にかけては20歳代以下は2.1倍となったのに対し、40~60歳代は6.2倍となっており、インターネット利用によるSNSの普及で、幅広い年齢層に拡大していることがうかがえます。

主な相談内容は、「SNSで知り合った相手から出会い系サイトへ誘導された」、「SNSに表示された広告をきっかけに無料で試した健康食品が、知らないうちに定期購入になっていた」、「SNS上で友達と思っていたら、なりすましていた別人だった」等で、多種多様なものとなっています。SNS上で知り合った相手のプロフィール情報が本物である保証もなく、書き込み内容等全てをうのみにしないことが重要です。

また、消費者は、自分が見ている広告が誰にでも表示されていると思いがちですが、SNSの広告は、そこに登録した消費者自身の個人情報等が反映されて、一部の人に対してのみ表示されている場合があります。こうした広告は「ターゲティング広告」77)と呼ばれ、消費者にとって、通常の広告よりもSNSに表示される広告の文言の方が印象深いこともあると考えられます。

なお、SNSの広告は短期間だけ表示される場合があり、トラブル発生後に消費者が再度広告を確認しようとしても、広告の表示が終了しているケースや、広告から購入までの経過を再現することが難しいことがあり、そういった場合トラブルの救済が困難となります。

消費者は、SNS上の広告のみでなく、広告からリンクされた先の通販サイト等の内容も確認することが重要です。

図表3-3-1 電気通信サービスに関する相談件数

図表3-3-2 「遠隔操作によるインターネットプロバイダ変更トラブル」に関する相談件数

図表3-3-3-1 アダルト情報サイトに関する相談件数(全体)

図表3-3-3-2 アダルト情報サイトに関する相談件数(スマートフォンを利用したもの)

図表3-3-4 アダルト情報サイトに関する相談(2014年度)

図表3-3-5 アダルト情報サイトに関する相談における支払済件数とその金額

図表3-3-6 スマートフォンに表示される請求画面(イメージ例)

図表3-3-7-1 プリペイドカードの販売イメージ

図表3-3-7-2 プリペイドカードを悪用した手口の仕組み

図表3-3-7-3 電子ギフト券の送付イメージ

図表3-3-8 プリペイドカードを悪用した手口に関する相談件数

図表3-3-9 プリペイドカードを悪用した手口に関する相談件数


71)

国民生活センター「相談激増!遠隔操作によるプロバイダ変更勧誘トラブルにご注意」(2014年9月18日公表)

72)

総務省「遠隔操作によるプロバイダ変更等に係る不適切な勧誘方法等に関する指導」(2015年1月28日)

73)

国民生活センター「アダルトサイトの相談が年間で10万件を突破!」(2015年4月23日公表)

74)

国民生活センター「プリペイドカードの購入を指示する詐欺業者にご注意‼―「購入したカードに記載された番号を教えて」は危ない!―」(2015年3月26日公表)

国民生活センター「カード、電子マネー…等で支払ってトラブルになっていませんか?―キャッシュレス決済を悪用する業者にご用心!―」(2014年11月18日公表)

75)

現状では全国の相談件数の規模を把握できにくいため、国民生活センター受付相談件数を紹介している。

76)

国民生活センター「SNSの思わぬ落とし穴にご注意!―消費者トラブルのきっかけは、SNSの広告や知人から?―」(2014年4月24日公表)

77)

SNSだけでなく、インターネットサイトの画面に表示されることもある。

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