平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】グローバル化の進展と消費者問題

第4節 消費者行政における国際的な連携・協力

●経済協力開発機構(OECD)における連携

消費生活におけるグローバル化の進展に伴い、消費者の安全と安心の確保、消費者と事業者との間の適正な取引の確保、苦情処理や紛争解決の促進等の様々な消費者政策を進める上では、国際的な連携を確保していくことが一層重要となっています。

1969年11月、消費者政策に関する加盟国間の情報及び経験の交換、討議並びに協力の推進を目的として、経済協力開発機構(OECD)に「消費者政策委員会(CCP)」が設置されました。CCPは「国際消費者機構(CI )」34)、「経済産業諮問委員会(BIAC)」35)等とも連携し、密に相談しながら活動しています。日本はCCPの副議長国の一国であり、消費者庁を含む関係府省庁が通常年2回開催される本会合に出席し、加盟国間の幅広い消費者問題に関する各プロジェクトに参加する等、CCPの活動に積極的に加わっています。

●製品安全プロジェクトと製品安全作業部会の設置

CCPでは複数のプロジェクトが行われており、製品サプライチェーンのグローバル化等により国内外での製品安全に関する消費者被害が頻発する状況を背景に、2007年、製品に関する消費者問題についての国際連携・情報共有に焦点を当てた製品安全プロジェクトが開始しました。2010年には「消費者製品安全に関する情報共有の強化に関する報告書」が取りまとめられ、その提言を実施するため、CCPの下に製品安全作業部会が設置されました。

日本は製品安全作業部会の副議長国の一国であり、通常年2回開催される会合に継続的に出席し、現在進められている各プロジェクト(消費者教育・啓発、グローバル・リコール・ポータルサイト等)の作業・今後の検討スケジュール等についての議論や活動に積極的に加わっています。

【消費者教育・啓発】

CCP製品安全作業部会では、多くの国で直面する製品安全問題や課題について認識を高め、グローバルに対処するため、関係各国と協働で啓発活動を行っています。2014年はボタン電池、2015年は洗濯用パック型液体洗剤についてグローバルな啓発活動を行いました。

( 1 )ボタン電池

2014年6月16日から20日まで、OECDと16の国と国際機関が連携して「ボタン電池の安全性に関する国際啓発週間」として、子供がボタン電池を誤飲する危険性について啓発活動を行いました。ボタン電池は、誤飲時に食道にとどまり、放電の影響によって短時間でも潰瘍ができて穴が開いてしまうなどの重篤な症状を生じることがあり、海外ではボタン電池に関する30件以上の死亡事故が報告され、国際社会全体でボタン電池への関心を高める必要があったためです。

この一環として、我が国でも事前に消費者庁が「乳幼児のボタン電池等の誤飲事故についてのアンケート調査」を行い、危険性について情報を共有し、2014年6月に消費者庁、国民生活センターが注意喚起「乳幼児(特に1歳以下)のボタン電池の誤飲に注意!―重症化することを知らない保護者が6割も!!―」やメールマガジン「ボタン電池は誤飲すると危険です!」の配信を行いました(詳細は第3章第2節参照)。

OECDボタン電池の安全性に関する国際啓発週間についてのウェブページ
OECDボタン電池の安全性に関する国際啓発週間についてのウェブページ

国際製品安全週間ボタン電池イベント
国際製品安全週間ボタン電池イベント
ボタン電池を飲み込んだ場合、消化管の壁に損傷が起きることをハムの上にボタン電池を置くことにより示したもの(2014年6月18日)

消費者庁、国民生活センター News Release
消費者庁、国民生活センター News Release
ボタン電池の注意喚起(2014年6月18日)

( 2 )洗濯用パック型液体洗剤

2015年3月16日から23日まで、OECD、欧州委員会及び21の国が連携して「洗濯洗剤カプセル/パケットに関する国際啓発キャンペーン」を行いました。洗濯用パック型液体洗剤は、多くの国の家庭でますます使用されるようになっていますが、フィルムが水に溶けて破れやすいことから、特に小さい子供が口に入れたり握ったりして遊んでいるうちに破れ、誤飲したり目に入ったりするケースが世界各国で多く報告されているためです。洗濯用パック型液体洗剤の安全な取扱いや保管、子供を近づけないようにすることを周知することとしました。

この一環として、我が国でも、2015年3月に消費者庁、国民生活センターが注意喚起「洗濯用パック型液体洗剤に気を付けて!―特に3歳以下の乳幼児に事故が集中しています―」やメールマガジン「洗濯用パック型液体洗剤に気をつけて!」の配信を行いました(詳細は第3章第2節参照)。

OECD洗濯洗剤カプセル/パケットに関する国際啓発キャンペーンポスター
OECD洗濯洗剤カプセル/パケットに関する国際啓発キャンペーンポスター

消費者庁、国民生活センター News Release洗濯用パック型液体洗剤の注意喚起(2015年3 月18日)
消費者庁、国民生活センター News Release
洗濯用パック型液体洗剤の注意喚起(2015年3月18日)

【OECD グローバル・リコール・ポータルサイト】

CCP製品安全作業部会では、製品がグローバルに取引される現状に対応し、国際的な製品安全の情報共有のためにグローバル・リコール・ポータルサイトを構築しました。2012年10月から、米国、オーストラリア、カナダ、EUが参加し、英語とフランス語で運用を開始しました。我が国も、2015年1月から参加し、我が国におけるリコール情報を提供しています。個々の詳細情報は、日本語を含めた多くの言語に機械翻訳して見ることが可能です(URL:http://globalrecalls.oecd.org/)。

OECD グローバル・リコール・ポータルサイト ウェブページ
OECD グローバル・リコール・ポータルサイト ウェブページ

●日中韓消費者政策協議会の開催

2014年7月3、4日に、消費者庁は発足以来初めて国際会議(第6回日中韓消費者政策協議会)を主催しました。本協議会は、日本、中国及び韓国の消費者政策担当者が一堂に会し、各国の消費者政策や国境を越える消費者問題等について、情報共有や意見交換することを目的として発足した局長級会合です。2004年9月にソウルで第1回会合が開催されたことを皮切りに、2年ごとに各国持ち回りで開催されています。

今回の協議会は、政府間会合と国際シンポジウムの2つのパートに分けて開催しました。以下、政府間会合及び国際シンポジウムの概略を紹介します。

【政府間での会合】

政府間会合においては、「議題1:消費者政策の状況報告」、「議題2:高齢者の消費者被害」及び「議題3:越境取引に関する消費者相談における日中韓3か国の連携強化」という3つの議題を取り上げました。各議題について、各国が自国の状況を報告し、続いて質疑応答、意見交換、討議を行いました。

議題1では、各国が過去2年間の消費者政策の状況報告を行いました。日本は、過去2年間の成果として、食品表示法の公布、集団的消費者被害回復制度の創設等を紹介しました。中国からは消費者権益保護法の改正等について、韓国からは消費者に総合的な情報提供を行う「Smart Consumer」というサイト創設(2012年開始)等について紹介されました。

議題2では、高齢者の消費者被害は、各国ともに懸案事項となっていることが報告され、互いの政策対応に高い関心が寄せられました。例えば、消費者庁が地方公共団体と連携して、電話をきっかけとした消費者トラブル抑止を図る「高齢消費者の二次被害防止モデル事業」について報告したところ、中国・韓国から多くの質問が投げ掛けられました。同モデル事業は、①高齢者世帯に対して、電話による見守りをするとともに、②そのうち、協力いただいた世帯の電話に通話録音装置を設置するというものです。通話を録音することを、着信時に警告する機能がある通話録音装置では、悪質な電話そのものが約10分の1に減少するなど、悪質な電話自体を防止する効果が見られました。この取組には強い関心が寄せられ、通話録音装置の設置費用や設置主体の在り方まで議論が及びました。

議題3については、3か国が、越境取引における消費者相談対応のネットワーク作りに向けて継続して議論するため、各国において適切な担当者を指名することに合意しました。

【消費者政策国際シンポジウム】

第6回日中韓消費者政策協議会に共催する形で、政府間会合に引き続き、「集団的消費者被害回復制度における消費者団体の役割」とのテーマで、国際シンポジウムを開催しました。3か国から、弁護士、政府高官、消費者連盟会長と多彩な顔ぶれのパネリストを招聘し、コーディネーター・基調講演者及び会場の聴衆者も巻き込んで、活発な議論が交わされ、大盛況のうちに終了しました。

シンポジウムのテーマは、3か国の法整備の現状等を踏まえ、3か国にとって旬のテーマといえるもので、活発なパネルディスカッションが行われました。日本では、2013年12月、消費者団体による集団的な消費者被害回復制度を導入するための新しい法律が成立したところです。中国においても、2014年3月の消費者権益保護法改正により、集団的消費者被害に対し、消費者協会等が公益訴訟を提起できる権利が定められました。韓国では、既に消費者団体による集団調停が実施されています。

特に、日本としては、今後、新しい制度の施行に向けて注目が集まりつつある中で、日中韓の比較ができ、自国の制度の特徴(訴訟手続が二段階制であることや、対象を消費者被害の救済に限定し、さらに、被害回復の必要性と事業者の予測可能性のバランスを考慮して対象となる消費者被害の範囲を決定していることなど)を再認識できたので、大変有意義な機会であったといえます。

消費者庁は発足5年目にして、国際会議を初めて主催したことを通じて、諸外国と連携を図っていくことが我が国の消費者政策の推進・強化に資することを再認識したところです。この協議会による中国・韓国との政策対話を通じての関係強化だけでなく、アジア諸国との政策対話の枠組みを構築することも重要であり、今まで以上に、諸外国との連携強化に向けての取組が求められます。

3 か国の参加者による記念撮影
3か国の参加者による記念撮影

政府間での会合
政府間での会合

消費者政策国際シンポジウムにおけるパネルディスカッション
消費者政策国際シンポジウムにおけるパネルディスカッション

●ベトナム消費者保護行政への協力

消費者庁は、2014年9月から、独立行政法人国際協力機構(以下「JICA」という。)が実施する対ベトナム技術協力「消費者保護行政強化プロジェクト」(以下「本プロジェクト」という。)への協力を開始しました。本プロジェクトは、ベトナム消費者保護行政機関の執行力強化等を目的とした3年間の技術協力プロジェクトです。消費者庁は、国民生活センターとともに、協力官庁として、ODA(政府開発援助)に関わることになりました。

ベトナムの消費者保護担当職員が、本プロジェクトを通じて学んだことを、今後ベトナムの消費者保護行政において、生かしていくことが大いに期待されます。

本プロジェクトの実施を通じて、ベトナム消費者保護行政機関の民主的で公正な法執行が強化され、ベトナム消費者市場の健全な発展が促されることによって、ベトナムの消費者の利益のみならず、ベトナムに進出している日本企業の活動にも資するものと考えられます。

日本は、2009年から2011年までの間、ベトナムに対する消費者保護分野の基本法制定の法整備支援を行いました。その結果、ベトナムでは、消費者保護を直接うたった初めての法律である消費者権利保護法が、2011年7月1日に施行されました。これにより、消費者保護のために必要な行政活動を行う法的枠組みとメカニズムは、整備されました。しかしながら、法施行後3年を経ても、消費者保護担当職員の人員不足や法執行についての経験不足により、消費者行政が十分機能していませんでした。そのような状況下で、ベトナム政府から日本政府に対し、消費者保護のための執行力強化と消費者保護の推進への技術協力が要請されたことから、JICAは、消費者庁及び国民生活センターの協力を得て本プロジェクトを立ち上げました。

日本は、ベトナムに対して、法律作りの支援だけでなく、成立した法律を使いこなすことのできる人材の養成をも目指した支援を行っています。

具体的に、本プロジェクトの活動の柱は2つあります。①専門家(長期・短期)のベトナム派遣及び②ベトナムで消費者保護行政に関わる人材の日本での研修実施(以下「本邦研修」という。)です。

①ベトナムへの専門家派遣

本プロジェクト開始時からベトナムに長期専門家(国民生活センター職員)を派遣しました。2014年12月には消費者庁職員を短期専門家として派遣し、日本の消費者製品安全の取組を紹介したり、ベトナム商業工業省競争庁(以下「ベトナム競争庁」という。)との意見交換を実施しました。消費者庁及び国民生活センターは、引き続き短期専門家の派遣を予定しています。

②日本での研修

2015年1月には、ベトナム競争庁職員10名を受け入れ、日本において研修(以下「1月本邦研修」という。)を実施しました。さらに、2015年3月には、ベトナム競争庁職員だけでなく、県の人民委員会に属する商工局の職員も含めた10名を受け入れ、本邦研修を実施しました(以下「3月本邦研修」という。)。

1月本邦研修では、消費者庁だけでなく、他省庁、国民生活センターの職員、消費者委員会委員長、学識経験者による講義を実施し、さらに企業施設見学などを取り混ぜ、バラエティに富んだ研修を実施しました。1月本邦研修の主たるテーマは、①日本の消費者保護関連法の内容・執行状況、②日本における製品安全への取組状況、③食品表示制度、④相談業務、⑤企業における消費者保護の取組状況です。

3月本邦研修では、①商品テスト、②地方自治体への財政支援、③政策立案のための調査を主たるテーマとして実施しました。

1月及び3月の本邦研修はともに、研修員からの具体的な質問も多く、ベトナムの消費者保護担当職員の、日本の消費者保護行政に対する関心の高さがうかがわれました。

日本での研修風景
日本での研修風景

国会議事堂前での記念撮影
国会議事堂前での記念撮影

コラム3

米国FTCとの日米個人情報保護法制等をテーマとした協議

米国の連邦取引委員会(Federal Trade Commission)は、国の消費者政策を統括する行政機関であり、商業活動における不公正及び詐欺的取引を取り締まり、消費者を保護しています。1914年に設立されたFTCは、消費者保護に関する規則の制定、消費者及び企業への啓発等を担当する消費者保護局(Bureau of ConsumerProtection)、反トラスト法に違反すると考えられる企業活動に対して、法の執行により自由市場の競争を保護する競争局(Bureau of Competition)及び、経済分析、反トラストや消費者保護の調査支援を行う経済局(Bureau of Economics)の3つの局から成り立っています。

FTC及び消費者庁とは、消費者保護を担当する点で共通の課題を有しており、近年、企業のグローバル化に伴い、国境を越えた消費者問題が生じ、他国の規制当局との協力が必要となってきていることから、これまで、国際会議等での協力やヒアリング調査等を通して、コミュニケーションを取ってきました。

2015年3月には、米国国務省主催の交流プログラムであるインターナショナル・リーダーシップ・プログラム(International Visitor Leadership Program)が、「データ及び情報プライバシー(Data and Information Privacy)」というテーマで行われ、消費者庁から担当者が国内の他省庁職員及び韓国の担当者とともに、FTCを始めとする関係機関を訪問し情報交換を行いました。

同プログラムでは、米国におけるプライバシー法制や子供のプライバシー保護等、プライバシーに関連するテーマの他、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やビッグデータといった、高度情報処理社会における最近のテーマについて消費者保護の観点から議論がなされました。また、プライバシーだけではなく、Do NotCall制度(電話勧誘拒否登録制度)36)や消費者教育、消費者の苦情対応等の消費者問題についても議論されました。

プライバシーについてのセッションでは、プライバシー保護がFTCにとって重要な施策であることの説明があった上で、米国においては、日本と異なり、包括的な個人情報保護法はなく、個別法を医療、信用、子供等の分野について設けていること、プライバシー侵害事案についてはFTC法を根拠に執行していること等の説明がなされました。

消費者教育に関しては、FTCで立てた施策等が全ての消費者に行き渡るようにするため、様々なコンテンツを作成していることが紹介されました。例えば、消費者にとって分かりやすい言葉に直した資料、移民等英語を読めない消費者のために多言語に訳した資料等の作成がされています。また、学校の先生が生徒に消費者教育をする際に使えるようなコンテンツの作成、さらには、Pass it on(仮訳:伝えよう)という、高齢者が詐欺被害に遭わないための対策を自ら知人等他の消費者に伝えられるよう、コンパクトな資料を作成し提供する取組がなされています。

消費者庁は、今後もFTCを始めとする他国の機関と連携を取り合い、消費者問題に取り組んでまいります。

Federal Trade Commission


34)

1960年に創設された非営利、非政府系の消費者団体の国際連絡組織。

35)

1962年3月に設立されたOECDの公式の諮問機関。先進各国が直面する重要な経済・社会問題について、民間経済界の意見を取りまとめ、OECD及び加盟国政府に対して提言を行っている。

36)

「電話勧誘拒否登録制度」とは:電話勧誘を望まない消費者が電話番号を運用機関のリストに登録すると、電話勧誘業者は、そのリストに登録されている電話番号に電話して勧誘してはならない、という制度を指す。

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