平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】グローバル化の進展と消費者問題

第2節 グローバル化に関連した消費者問題

( 3 )金融商品や投資等の利殖に関連するトラブル

●利殖についての海外との関わりが増えるにつれ、トラブルも増加

消費生活センター等へ寄せられる相談のうち、内容の何らかの部分で海外が関わるもので、なおかつ「利殖商法」に関するものは、2010年度以降大きく増加し、2011年度から2013年度までは2,000件台で推移しています。2014年度は減少したものの、1,200件を超えています。トラブルの内容は、時期により異なりますが、金融商品等の取引においても、グローバル化が進んでいることの表れを示しており、トラブルもそれに伴って増えているといえます。特に、インターネット上の取引は、ウェブサイトが日本語になっているため、消費者はあたかも国内の事業者と取引をしているように、相手が海外事業者と意識しないものの、実際にトラブルとなると被害回復が難しいケースが増えています。

以下、2014年度に目立っている、又はこの数年間に起きた、主な金融商品や投資等、利殖に関するトラブルについて、具体的なケースを紹介していきます。

●為替相場の動きを二者択一で予想する「バイナリーオプション」取引トラブルが急増

「インターネット上の広告を見て興味を持ち、海外事業者とバイナリーオプション取引を開始したが、出金を求めても応じてもらえない」といった相談が2014年度に入り、数多く寄せられました。月別に見ると2014年6月は59件、7月は228件、8月は343件と急増しています11)(図表1-2-15)

オプションとは、ある商品(原資産)を、あらかじめ定められた期間内にあらかじめ定められた価格で「買い付ける」又は「売り付ける」権利をいい、オプション取引とはそのオプションを「買う」又は「売る」取引を指します。

バイナリーオプション取引とは、投資対象(原資産)が投資期間終了時(権利行使期限)に予想価格(権利行使価格)を上回った(又は下回った)場合に一定額の金銭(ペイアウト)を受け取ることができる取引をいいます。

バイナリーオプション取引には、ドル円、ユーロ円などの「通貨」を原資産とする取引のほかに、日経平均、TOPIXなどの「株価指数」やニューヨーク原油(WTI 原油)先物などの「商品」を原資産とする取引がありますが、最近では「通貨」を原資産とする取引が主流となっています。

原資産を「通貨」とする国内事業者であれば、金融商品取引業の登録がされていて、自主ルール12)も存在しますが、海外事業者は無登録のケースがほとんどで、最近のトラブルは海外事業者との取引で起きています。海外無登録事業者との取引では、為替相場等が上がるか下がるかを二者択一で予想し、予想が当たれば投資額のおおよそ1.8倍程度を受け取り、外れれば投資した全額を失うという当たり外れの大きな取引であり、簡単で賭博性も高く、魅力的な取引に感じられ、短期間に繰り返し取引できるため、気付かないうちに損失が大きくなることもあります(【解説】海外無登録事業者とのバイナリーオプション取引のイメージと相談事例参照)。

消費生活センター等に寄せられた例を見ると、取引のきっかけはインターネットの無料掲示板やブログ、アフィリエイト13)広告などが多く、サイト上にはこの取引が短時間で簡単に儲かるものであるかのように説明されており、海外無登録事業者のホームページのリンクが張られているため、説明をうのみにした消費者が安易に取引を始めてしまうケースが目立っています。

最近の投資関連トラブルは、主に高齢者が巻き込まれることが多い状況にありますが、このバイナリーオプション取引のトラブルは、インターネットがきっかけとなるケースが多いため、20歳代、30歳代等の学生や給与生活者等、若い世代が中心であることが大きな特徴です。

●自動売買ソフト等を購入後の海外事業者を通じたFX取引をめぐるトラブルが増加

ほかに、2014年度は海外の事業者を通じて行う、外国為替証拠金取引(以下「FX取引」14)という。)に関するトラブルが増加しています15)

2009年度には34件でしたが、2014年度は116件と増加しています(図表1-2-16)。契約当事者は男性が多く、年代では20~40歳代が中心です。

また、支払った平均金額が高額であるのが特徴で、2014年度は平均約375万円となっています。

海外事業者を通じたこのトラブルでは、消費者は始めから海外事業者と取引するわけではなく、インターネットのサイトや電子メールの広告をきっかけとして、国内の事業者に資料請求を行った後に、電話による勧誘を受けるケースが多く見られます(図表1-2-17)

FX取引は、一定程度の専門知識が要求される上、リスクの高い取引ですが、このトラブルでは、広告や国内事業者からの勧誘を受ける際、自動売買ソフト等によりシステムが自動的に取引することで「絶対に儲かる」、「月15%ずつ増えていく」、「勝率100%」等、将来の利益についてあたかも確実であるかのような断定的な説明が行われているケースが目立っています。

海外の事業者との取引には、事業者の実態に不明な点が多く、信用性の確認が難しいこともあります。また、連絡が取りにくいケースや、日本語対応の問合せ窓口がないこともあります。

書面が英文などで書かれている場合には、取引内容や取引条件を理解することが難しく、出金トラブルになるケースも多く、トラブルになった際の解決が困難です。取引を検討する際には、こうした面でのリスクを十分理解する必要があります。

なお、海外の事業者であっても、日本の顧客との間でFX取引を業として行う場合には、金融商品取引業の登録を受けることが求められているため、無登録の事業者との契約は行わないことも重要です。金融商品取引業の登録を受けているかどうかは、金融庁のウェブサイトなどで確認できます。

【解説】海外無登録事業者とのバイナリーオプション取引のイメージと相談事例

投資関係のブログで、バイナリーオプションの書き込みを見た。短期間で利益が出るようだったので、業者のサイトに自分の口座を作り、クレジット決済で8万円を入金した。その後5~6回取引をし、プレゼントで付いたポイントと合わせると口座残高が約10万円となった。しかし、その業者が無登録事業者であるという情報をネットで見つけ不信感を抱き、最初に入金した8万円の引き出しを業者に申し込んだが、お金が戻ってこないまま、連絡が取れなくなった。

(大学生男性)

(備考)国民生活センター「子どもサポート情報」第82号(2014年12月17日公表)

●海外無登録事業者におけるバイナリーオプション取引のイメージ

(ア) 投資時点

為替レートが判定時刻に投資時点より上がるか下がるかを予想する。

(イ) 判定時刻

予想が当たった場合、投資した金額に一定の倍率を掛けた金額(ペイアウト)が得られる。予想が外れれば、投資した金額が全て損失になる。

【ケース(1)】 為替レートが投資時点より上がった場合

投資時点より「上がる」と予想していた場合はペイアウトが得られるが、「下がる」と予想していた場合には投資した金額が全て損失になる。

【ケース(2)】 為替レートが投資時点より下がった場合

投資時点より「下がる」と予想していた場合はペイアウトが得られるが、「上がる」と予想していた場合には投資した金額が全て損失になる。

(備考) 国民生活センター公表資料(2014年9月4日)

(為替レート)

●海外関連のオンラインカジノ事業への投資トラブルも目立つ

ほかに海外に関わる投資については、海外のオンラインカジノ事業のトラブル等が挙げられます。消費者庁で2013年12月にインターネットを用いたオンラインゲーム事業の紹介者を募集する事業者に関する注意喚起16)を行っていますが、海外のオンラインカジノ事業への投資に関するトラブルの相談が2014年度に目立ってきています。

相談事例は、「海外のオンラインカジノの会員になると儲かると勧められ、その場で登録料を払って入会したが、解約して返金してほしい」、「アフィリエイトで海外のオンラインカジノゲームを紹介し、紹介した人が入会したり、ゲームをするとマージンがもらえる、と説明を受け、会員登録の手続をしたが、不審でやめたい」というケースが見られます。

●外国通貨の高額な両替トラブルがここ数年発生

先に見た国別の消費生活相談の推移でも紹介しましたが、この数年、換金性に乏しい外国通貨を日本円で購入するトラブルも多発しています。

2009年度以降、時期により同様の手口で別の国の通貨にシフトしていくという動きが見られます(図表1-2-18①、図表1-2-18②)。これまで、イラク・ディナールやスーダン・ポンド、アフガニスタン・アフガニ等、様々な国の通貨が取引の対象になっています。

消費者庁は2014年7月にシリア・ポンド等の通貨の両替を行う事業者について、事業者名を公表して注意喚起17)を行っています。この事業者は、同時期のシリア・ポンドの外国為替相場における為替レートが700円前後であったのに対し、15万円と約200倍で消費者に両替の勧誘を行っていました。ほかに、フリヴニャ(ウクライナの通貨)についても両替を行っていたことが分かっています。

最近では外国通貨のトラブルについての相談は減少傾向にありますが、今後も新たな通貨で同様の手口が発生する可能性もあり、注意が必要です。「必ず値が上がる」など、将来、消費者が受け取る金額について約束をするような投資の勧誘には応じないようにすべきです。

●海外不動産や海外宝くじも

前述した国・地域別の消費生活相談のうち、カンボジアに関わる相談の推移でも触れていますが、2012年度をピークに、カンボジアの土地使用権やマンション所有権等についてのトラブルも消費生活センター等に多くの相談が寄せられました18)(図表1-2-19)

現地を訪ねて確認することが難しい土地やマンション等の不動産への投資を勧誘され、土地の写真を見せられて信用してしまうケースもあります。勧誘文句としては、「家賃収入によって、老後は年金でも物価の安い国で、悠々自適に過ごせる」、「投資対象の国の貧困をビジネスで解決する」、「転売することで資産が何倍にもなる」等、様々なものがあります。

また、海外宝くじやダイレクトメールが送られてきたというトラブルに関する相談は、年間千の単位で寄せられています19)。2011年度の10,209件から最近は減少傾向にありますが、2014年度は1,788件となっています(図表1-2-20)。海外宝くじは様々な国・地域から送られてきており、その時期も異なりますが、前述のオーストラリアや香港に関わる相談のところでも紹介しています。

●オリンピック・パラリンピック開催に向けた投資話も

2013年9月に、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催が決まったことを機に、オリンピック・パラリンピックがらみの投資話のトラブルが発生し、消費生活センター等にも相談が寄せられており20)、消費者庁では2014年4月にこのトラブルに関する事業者についての注意喚起21)を行っています(図表1-2-21)

こうしたトラブルでの消費者への勧誘を紹介すると、まず、この勧誘の中心となる事業者は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催予定地近隣の用地買収等を行っている旨を記載したパンフレット等の勧誘資料を消費者宅に送付します。そこでは、自ら不動産事業を営んでいるように装い、1口10万円の社債の募集を行っています。勧誘資料の送付時期と前後して、実在の有名企業をかたる別の事業者から電話があり、社債の購入権を譲ってほしいと申し入れます。消費者がこの業者からの申入れを承諾すると、後日、消費者宅に警察官を名乗る者から電話があり、「申入れ業者の社員を逮捕した。あなたにも責任があるから財産を差し押さえる。詳しくは弁護士と話をするように」などと言われます。そして、弁護士を名乗る者は、消費者に対し、差押えを回避するために指定した金額を支払うよう指示する、という、不動産業者、有名企業、警察官、弁護士と、何人もの登場人物が出てくる、典型的な劇場型勧誘の手口です。

図表1-2-15 海外事業者とのバイナリーオプション取引に関する相談件数

図表1-2-16 海外事業者とのFX取引に関する相談件数

図表1-2-17 自動売買ソフト等を購入後の海外FX取引をめぐるトラブル

図表1-2-18① 外国通貨取引に関する相談件数(2009~2012年度)

図表1-2-18② 外国通貨取引に関する相談件数(2013~2014年度)

図表1-2-19 「カンボジア土地使用権等」に関する相談件数

図表1-2-20 海外宝くじ・ダイレクトメールに関する相談件数

図表1-2-21 オリンピック・パラリンピック開催に関する相談件数


11)

国民生活センター「海外業者とのバイナリーオプション取引にご注意ください!-無登録業者との契約は行わないで!!-」(2014年9月4日公表)

12)

短時間のHIGH/LOWの禁止、最低取引期間(時間)を当面2時間以上とすること、顧客の投資できない価格帯を設けることの禁止など。

13)

アフィリエイトとは、消費者が自分のホームページやブログなどで、提携先の広告主(企業など)の製品、サービスなどの宣伝を書いて、サイトへのリンクを張っておき、閲覧者がそこから広告主のサイトへ移行して、実際に商品の購入などにつながった場合、売上の一部が自分の収入(利益)になるというものである。

14)

FXとはForeign Exchangeの略。この取引は、証拠金(保証金)と呼ばれる取引の担保金を事業者に預け、ドルやユーロなど外国通貨の価格を参照し、取引開始時に買い付け(又は売り付け)をした価格と反対売買(転売や買戻し)時の価格の差額を損益として清算し、差額のみによって決済(差金決済)をするもので、金融デリバティブ取引の一つである。

15)

国民生活センター「儲かってるのに出金できない⁉海外FX取引をめぐるトラブルにご注意―自動売買ソフト等を購入させ、海外FX取引に誘う手口―」(2014年6月19日公表)

16)

消費者庁「インターネットを用いたオンラインゲーム事業の紹介者を募集する「株式会社ELICC JAPAN」に関する注意喚起」(2013年12月26日公表)

17)

消費者庁「約200倍のレートで外国通貨の両替取引を行う「株式会社ノルディア」に関する注意喚起」(2014年7月31日公表)

18)

国民生活センター「今度は“カンボジアの土地使用権”! 依然続く劇場型勧誘-「リゾート地」「農地」の投資話にご用心-」(2012年5月24日公表)

19)

国民生活センター「「賞金が当たった」という詐欺的なDMに注意!-全国の消費生活センターに寄せられたDMの分析をふまえて-」(2012年3月15日公表)

20)

国民生活センター「東京オリンピックに関連した詐欺的トラブルにご注意ください!」(2013年10月30日公表)、「東京オリンピックに関連した詐欺的トラブルにご注意ください!(No.2)-オリンピック用の建物・土地に関する架空の儲け話-」(2014年2月14日公表)

21)

消費者庁「2020年東京オリンピックの開催予定地近隣の用地買収等を行っていると装い社債を募集する「株式会社エーライン」に関する注意喚起」(2014年4月18日公表)

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