平成27年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集】グローバル化の進展と消費者問題

第2節 グローバル化に関連した消費者問題

前節で紹介したように、消費生活にもグローバル化の影響が現れています。商品やサービスの選択の幅が広がる等、グローバル化の進展による恩恵を享受する例が多くなっている一方、これまでなかったトラブルに見舞われる等のケースも出てきています。

( 1 )消費生活センター等に寄せられた海外に関連する消費生活相談

●商品・サービスや事業者等が海外に関連する消費生活相談

全国の消費生活センターや消費生活相談窓口(以下「消費生活センター等」という。)では、消費者からの消費生活に関する相談を受け付けており、寄せられた消費生活相談情報はPIO-NETに登録されます。

海外に関連する消費生活相談については、輸入品や外国製品、インターネット通販等の海外事業者との取引、国際クレジットカード、海外旅行、外国人の消費者トラブル等、内容が多岐にわたっています。相談内容にそれらの様々な要素の何らかが入っている「外国」関連の消費生活相談件数の年度別推移を見ると、2011年度以降はそれ以前と比べ増加傾向にあり、2014年度は2013年度に比べ減少しているものの、27,540件と多数寄せられています(図表1-2-1)。「外国」関連の消費生活相談が相談全体に占める割合は小さいものの、2005年度の1.1%から2014年度の2.9%へと増加し、この数年で見ると徐々に件数、割合とも増加しています。

●国・地域別に見た消費生活相談の推移

前述した「外国」関連の消費生活相談を、2005年度~2014年度の10年間で累積相談件数の多い20か国及び地域について、国及び地域別に見ると、最も相談件数が多いのは中国です。以下、米国、オーストラリア、カナダ、韓国と続きます。

相談の内容や商品・サービスは様々で、同じ国・地域であっても時期によって相談の中身は異なっています(図表1-2-2①~図表1-2-2④)。具体的な国・地域が分かった相談で、過去10年の合計の相談件数が多い順に、以下で見ていきます。

2005年度から10年間の累積相談件数が最多の中国は、2007年度以降最多となっており、特に2011年度以降、他国を大きく上回る状況となっています(図表1-2-2①)。2014年度は10,196件になっていますが、相談件数の多い近年の主なトラブルとしては、インターネット通販での偽ブランド品や商品未着に関するものが挙げられます。

相談件数が3番目のオーストラリアは、海外宝くじのトラブルが多かった2005年度から徐々に減少し、最近は横ばいの状況にあります。

また、香港も件数の規模は半分程度ではあるものの、オーストラリアの相談件数の推移と動きが似ており、2005年度は海外宝くじが主な相談として挙げられました。その後一旦減少したものの、2011年度以降は増加傾向にあります(図表1-2-2②)

9番目のアジア州その他8)の相談件数は、2010年度から2011年度にかけて増加していますが、これはこの時期にイラク・ディナールやアフガニスタン・アフガニといった外国通貨の換金トラブルが多かったことによるものです(詳細は本節「外国通貨の高額な両替トラブルがここ数年発生」参照)。

12番目のアフリカ9)も同様で、図表1-2-2③で示されるように2009年度から2011年度にかけて増加しています。これはスーダン・ポンドやコンゴ・フラン、リビア・ディナール等の外国通貨の換金トラブルの相談が影響しています。その他、アフリカに関連する相談でよく見られる主な事例は、難民支援のための寄付についての信用性の確認や、鉱山の採掘権への投資勧誘等です。

16番目のカンボジアの相談件数は、図表1-2-2④にあるように、2012年度をピークに2011年度から2013年度にかけて相談件数が多くなっています。これは、この時期にリゾート地や農地等、土地使用権等やマンションの所有権の売買に関する相談が急増したことによるものです。

●上位国の消費生活相談の内容

2005年度以降の10年間で相談件数が多かった、上位3国の中国、米国及びオーストラリアについて、それぞれ相談内容別に推移を見てみます。

まず、最も相談件数が多い中国では、2005年度、2006年度は「契約・解約」や「品質・機能、役務品質」に関する相談が目立っていましたが、2007年度は「安全・衛生」、「品質・機能、役務品質」に関する相談が急増しています(図表1-2-3)。これは、2008年1月の中国冷凍ギョウザ事件の影響によるものです。その後、「品質・機能、役務品質」に関する内容は一定数見られるものの、次第に「販売方法」、「契約・解約」についての相談が際立つようになってきました。特に2011年度以降は顕著になってきていますが、この理由は前述したように情報通信の発達により消費者がインターネット通販を利用する機会が増え、中国のサイト等から商品を購入しようとしたところ、偽ブランド品が届いた、又は商品が届かないといった相談が増加したことによるものです。

図表1-2-4①及び図表1-2-4②からも、インターネット通販における偽物や商品未着に関する相談のうち、外国関連の相談が増えていて、そのうち特に中国に関連するものが高い割合を占めていることが分かります。

2番目に相談件数の多い米国では、相談件数は増加傾向にあります。相談内容は、「契約・解約」や「販売方法」といった取引に関する内容が大きな割合を占める傾向は変わっていません(図表1-2-5)。中国と異なり、「安全・衛生」の割合が低いことも特徴です。

3番目に相談件数の多いオーストラリアでは、この10年間では前述のとおり海外宝くじに関する相談が多かった2005年度、2006年度以降は相談件数は減少しており、相談内容として高い割合を占めるのは、米国同様、「契約・解約」及び「販売方法」の取引です(図表1-2-6)。その中でも「販売方法」が「契約・解約」を上回っています。また、「表示・広告」の割合が、中国や米国と比べ高いこともオーストラリアの特徴です。

以上のように、2005年度から2014年度にかけて相談件数の上位3位国のみしかここでは取り上げていませんが、国により、また、時期により相談の規模や内容は異なることが確認できます。さらに、その国から輸入された製品の不具合や食品等に関する不安といったものから、その国の事業者との取引においてトラブルに巻き込まれるといった、様々な要素がここで取り上げた相談件数には含まれていることが分かります。

●輸入に関する相談は取引についてのものが増加

前述の海外に関連する相談や各国に関連する相談は、海外事業者との取引、ある国を舞台とした債権や通貨のトラブル等も含まれますが、ここでは輸入品やサービスに限定して、相談内容の推移を見ていきます。

輸入に関する相談は「輸入した輸入車が故障続きなので、解約したい」等の「契約・解約」、「品質・機能、役務品質」に関わる内容が2005年度以降上位で推移していましたが、2013年度からは「品質・機能、役務品質」は減少しています(図表1-2-7)。「品質・機能、役務品質」に関する内容は、2007年度に最も多くなっていますが、これは中国冷凍ギョウザ事件の影響によるものです。また、2007年度の「安全・衛生」についても急増していますが、この増加要因は同様です。

一方、最近は「販売方法」等の取引についての内容の増加が目立っています。「契約・解約」に関する相談は、2012年度以降、他の相談内容を大きく引き離すように、件数が増加しています。これらは、先に述べたように「インターネット通販で注文した海外ブランド品が届かない」というような、海外の詐欺サイトで商品を購入しようとしたことによるトラブルの増加によるものです。

輸入品の安全性や品質に関する消費者からの相談は、最近では少なくなっており、これは以前と比べ、事業者側の努力により、より安全な品質の良い商品が手元に届いていることを意味しているともいえます。ただし、消費生活におけるグローバル化の浸透で、そもそも国内事業者の商品について輸入品かどうかの判別が、消費者にはつきにくい状況を反映しているのかもしれません。

●原産国表示に関する消費生活相談

「原産国表示」に関する消費生活相談は、2005年度以降の10年間では2005年度及び2006年度が約300件であったところ、2007年度は急増し、2009年度以降は2013年度を除き、500~600件台で推移しています(図表1-2-8)

商品は、食料品が圧倒的で、最近では「野菜・海草」や「調理食品」、「魚介類」、「肉類」、「穀類」が多くなっています。以上の5種類の商品について、2005年度以降の10年間の相談件数の推移を表すと、常に「野菜・海草」が多く、また、「調理食品」や「魚介類」とともに2007年度は突出しています。これはこの時期に、わかめやうなぎの蒲焼の産地偽装事件、中国冷凍ギョウザ事件が発生したことが影響しているためです(図表1-2-9)

また、2013年度も例年に比べ、相談件数はやや増加していますが、これは大手ホテルチェーンやレストラン、百貨店等においてメニュー表示と異なる食材が使われていた事例が次々と明らかになったことが影響していると考えられます。

原産国表示に関する主な相談事例は、「食料品を購入しようとしたが、原産国の記載がなかった」等、どこの国で作られたものか不安であるといった内容や、「国産と言われたが、表示は外国産だった」等となっています。

●海外旅行や現地でのトラブルについての消費生活相談

前節で長期的な出国日本人の増加を見たところですが、海外へ出掛ける機会の増加に比例するようにそれにまつわるトラブルも増加しています。

例えば、旅行代理業を通じた海外パックツアーに関する消費生活相談はこの数年減少傾向にあり、海外手配旅行についての相談は横ばいですが、いずれも最近ではインターネットで申し込んだものの割合は増加しています(図表1-2-10①)。主な相談は、旅行のキャンセルに関わるものや、現地に行ったら事前の説明よりもホテルの質が悪い等などが寄せられています。

また、消費者が直接申し込んだ場合の、航空機や船、バスに乗る等の旅客運送サービスにおける「外国」関連の消費生活相談もインターネットで申し込むケースの件数が増えており、主な相談は、予約手配時のトラブルに関するものです(図表1-2-10②)。ホテル等の宿泊施設で「外国」関連の消費生活相談は増加傾向にあり、最近では「インターネットで海外のホテルを予約したものの、キャンセル手続をしたのに代金がクレジットカードで引き落とされた」等のカード決済に関するトラブルが目立っています。

ほかに、海外旅行先で「タイムシェア」という不動産所有権付きのリゾート会員権のトラブルに巻き込まれるというケースも最近増えています10) (図表1-2-11)。2013年度に171件と急増し、2014年度も172件と、同程度となっています。

タイムシェアとは、主にリゾート施設の不動産を所有し、永代使用権を取得する、不動産所有権付きリゾートクラブ会員権のことをいいます。一般的には、リゾート施設の1部屋の51、又は52分の1の所有権と、その部屋を年に1週間使用する権利を取得します。

このタイムシェアの勧誘を行う説明会は国内外で開催されていますが、特に海外滞在中に、ホテル内や路上、ショッピングセンター等で事業者が消費者に「説明を聞くだけで商品券がもらえる」と声を掛け、説明会への参加を促すケースが多く見られます。

主なトラブルの内容は、海外旅行中に突然声を掛けられて現地のホテル等で勧誘され、十分な知識を持たないまま、その場の雰囲気や担当者のセールストークにより、気分が高揚して契約したものの、リゾート会員権の購入代金のみならず、毎月高額な管理費がかかるため、解約したいが売却するしかない等、契約に関するものです。また、海外でこうした契約をした場合、日本の法令が適用されない可能性が高く、そのことも問題を難しくしています。

●輸入品の生命・身体に関する相談

輸入品について、身体に危害が及んだといった消費生活相談も寄せられています。年度別に見ると、2007年度及び2008年度を除き、おおむね年間200~300件台で推移しています(図表1-2-12)。2014年度は196件で、この数年のうちでは、最も少なくなっています。

また、輸入品の相談に占める危害情報の相談割合は、2005年度は6.4%で、中国冷凍ギョウザ事件の影響により、最近10年間で最も相談が多かった2007年度でも11.0%でしたが、2014年度は3.6%となっています。

最近見られる主な商品や内容は、流通量の増加に伴う輸入自転車に関するもので、自転車で走行中に部品が破損したはずみで転倒し、けがをしたというものです。他には、化粧品や健康食品が身体に合わなかったというものも見られます。

なお、消費生活センター等の相談情報からは把握できませんが、グローバル化の進展に伴い、海外からの商品が日本に輸入されて身体に危害が及ぶというだけではなく、日本の製造者の製品が海外に輸出され、それが海外の消費者の事故につながるというケースも起きています。

図表1-2-1 外国に関連する消費生活相談件数

図表1-2-2① 輸入品等や事業者が海外のものである等の相談(相談上位5か国:中国・米国・オーストラリア・カナダ・韓国)

図表1-2-2② 輸入品等や事業者が海外のものである等の相談(6-10位:香港・ドイツ・英国・アジア州その他・イタリア)

図表1-2-2③ 輸入品等や事業者が海外のものである等の相談(11-15位:フランス・アフリカ・シンガポール・台湾・フィリピン)

図表1-2-2④ 輸入品等や事業者が海外のものである等の相談(16-20位:カンボジア・タイ・スイス・ブラジル・オランダ)

図表1-2-3 中国に関連する相談の内容

図表1-2-4① インターネット通販のうち偽物に関する相談件数

図表1-2-4② インターネット通販のうち商品未着に関する相談件数

図表1-2-5 米国に関連する相談の内容

図表1-2-6 オーストラリアに関連する相談の内容

図表1-2-7 輸入に関する相談の内容

図表1-2-8 原産国表示に関する相談件数

図表1-2-9 食品についての原産国表示に関する相談件数

図表1-2-10① 海外旅行に関連する相談件数(旅行代理業を通じたもの)

図表1-2-10② 海外旅行に関連する相談件数(消費者が直接申し込んだもの)

図表1-2-11 「タイムシェア」に関する相談件数

図表1-2-12 輸入品・サービスの相談件数及び危害情報


8)

アフガニスタン、アラブ首長国連邦、イエメン、イスラエル、イラク、イラン、オマーン、カタール、キプロス、クウェート、サウジアラビア、シリア、スリランカ、北朝鮮、ネパール、バーレーン、バングラデシュ、パキスタン、パレスチナ、東ティモール、ブータン、ブルネイ、ベトナム、モルディヴ、モンゴル、ヨルダン、ラオス、レバノン。PIO-NET上、以上の国については、個別の国ごとに分類できない。

9)

アルジェリア、アンゴラ、ウガンダ、エジプト、エチオピア、エリトリア、ガーナ、カーボヴェルデ、ガボン、カメルーン、ガンビア、ギニア、キニアビサウ、ケニア、コートジボワール、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、サントメ・プリンシペ、ザンビア、シエラレオネ、ジブチ、ジンバブエ、スーダン、スワジランド、セーシェル、赤道ギニア、セネガル、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、チュニジア、トーゴ、ナイジェリア、ナミビア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、ボツワナ、マダガスカル、マラウイ、マリ、南アフリカ、南スーダン、モザンビーク、モーリシャス、モーリタニア、モロッコ、リビア、リベリア、ルワンダ、レソト。PIO-NET上、以上の国については、個別の国ごとに分類できない。

10)

国民生活センター「年に1回、憧れの海外リゾートライフ?海外不動産所有権付きリゾート会員権「タイムシェア」の契約は慎重に!」(2013年12月5日公表)

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