平成26年版消費者白書

コラム4

インターネットへの依存症問題

慶應義塾大学経済学部准教授 田中 辰雄

慶應義塾大学経済学部准教授

田中 辰雄

インターネットが生活の隅々に入り込むに伴い、依存症の問題が取り上げられることが多くなっています。ここで、依存症とは、ネット上に行きかう情報の世界に 耽溺たんできし、現実世界での生活に支障を来たすような状態のことを言います。

もともとネットへの依存は、インターネットの草創期からあった古い問題でした。ネットの接続が従量課金の時代は、接続料の過大な支払いが問題になったことがあります(いわゆる「パケ死」)。定額制の普及によってこの問題はなくなりましたが、代わって定額で何時間もネットをやり続けることができるので、依存症問題は激化したとも言えます。オンラインゲームでは「ネトゲ廃人」という言葉が示すように、現実から遊離したユーザを生み出しました。FacebookやLINEなどのSNSをやり過ぎて疲れるという話もよく聞かれます。一昨年のコンプガチャ問題はネット上のソーシャルゲームへの依存で過大な課金をすることが問題になった例です。確かに、片時もネットから離れられず、時間的・金銭的にネットに入れ上げるのは依存症的と言ってよいでしょう。

しかし、依存症問題への対策は難しいのが実情です。第一に、そもそも依存症かどうかの判断が簡単ではありません。あらゆるエンターティメントは夢中になればある程度依存症的に見えるからです。たとえばクラシック音楽好きがCDを1,000枚買い集めたとしてこれは依存症でしょうか、それとも単なる音楽マニアでしょうか。ゲームに月に10万円使う人は依存症的でしょうか。3万ならどうでしょうか。どんなにお金を使っても、その人が満足し、かつ、社会生活に悪影響がなければその人の趣味の問題で、依存症と呼ぶのは不適切です。ではどこからを依存症と呼べばよいのか、その線引きはなかなか難しいです。

第二に、そのサービス(ゲーム・SNS等)を提供すること自体は違法ではないので、業者の取締りが簡単ではありません。詐欺サイトは取り締まればよいのですが、SNSやゲームのサイトは違法ではなく、健全に楽しむ人もたくさんいるので、依存症の人が出ていてもすぐには取締れません。無理に取り締まろうとすると、産業を失速させ、依存症ではない他の人の利益を損ないかねません。コンプガチャの場合、規制は高額課金の抑制に一定の成果を上げましたが、世界に進出する勢いだった日本のソーシャルゲームの勢いを殺してしまった面があるとも言われます。

第三に消費者への啓蒙があまり有効策になりません。ネット上の詐欺サイトでは、身に覚えのないメールに反応するなという啓蒙が有効な対策でした。しかし依存症の場合、これと同じ方法を取っても効果が限られます。SNSやゲームをやり過ぎないようにというのは「健康のためたばこや飲み過ぎに注意しましょう」と同じくらい力弱い啓蒙けいもうでしかないでしょう。

こうしてインターネットへの依存症問題への対策は簡単ではありません。現状まず行うべきことは、実態把握でしょう。依存症かどうかは心理学的な指標がある程度できているので、これを使って調査することは可能です。依存症問題はとかく情緒的な議論になりやすいので、客観的な現状把握を蓄積していくことが大事でしょう。

ページ上部へ


消費者庁 携帯サイト
携帯サイトQRコード