平成26年版消費者白書

コラム2

メニュー表示問題の教訓と課題

公益財団法人食の安全・安心財団 理事・事務局長 中村 啓一

公益財団法人食の安全・安心財団 理事・事務局長

中村 啓一

2013年10月23日、その日の朝刊には食に関係した明暗二つの記事が掲載されました。日本食がユネスコの「世界無形文化遺産」への登録が内定したとの嬉しいニュースに並んで、関西のホテルがメニュー表示と異なる食材を使った料理を提供していたと公表したことが大きく報じられていました。

これまでも、牛肉、ウナギ、米、タケノコ等、偽装といわれる表示違反がありましたが、これらの多くは、組織的、計画的で複数の事業が絡むこともあるなど大掛かりなものでした。それらに比べると今回の事案はホテルのルーズな管理をうかがわせるものでしたが、誤表示として公表されたメニュー表示の内容は様々であり、過去の食品表示偽装とは性格の違うものでした。しかし、不適切なメニュー表示の公表が、全国のホテルやデパートなど数百社に及んだことから大きな社会問題となりました。

一方、一流のホテルやデパートで問題が発生した原因として、消費者の選択に誤認を与える表示を禁止している「景品表示法」が分かりづらく、過去の違反事例や考え方が事業者に十分周知されていなかったことも指摘されました。このため、消費者庁はメニュー表示のガイドラインを作成することとし、12月19日にその案を公表しましたが、この案が関係業界を混乱させることになりました。「ガイドライン案」として公表されたQ&Aが、特殊な事例など個別の内容であったことから、広く定着しているサケ弁当やかも南蛮なども違反とされるのではないか等の類推した心配が業界に広がり、メディアもこの問題を大きく報道するなど消費者を巻き込んでの議論となりました。これは、消費者庁がガイドラインの案を作成するに当たり、関係者から意見を聴取するなど現場の事情を十分把握せずに拙速に公表したことが混乱の一因になったことは否めません。

「ガイドライン案」は、広くパブリックコメントを求めることになりました。行政のパブリックコメントは、ともすれば形式的な手続に終わり、パブリックコメントにより当初案が変更されるということはまれですが、2014年3月28日に公表された「ガイドライン成案」は、当初案から実情を反映した内容に見直されていました。消費者庁は、パブリックコメントとともに、並行して積極的に幅広い関係者から直接事情を聴くなど実態の把握に努めてきましたが、これらがガイドライン成案に反映されました。

消費者庁は、名前が示すとおり行政としてのスタンスを明確にした役所です。しかし、消費者の目線を重視するということは、それ以外の声に耳を塞ぐということではありません。むしろ、立場の違う多様な意見を広く集約することにより、現実的で実効ある消費者行政を推進するべきであり、消費者とともに事業者との敷居も低くする必要があります。

その意味で、今回のメニュー表示問題は、「ガイドライン案」公表後の意見集約に向けた消費者庁の積極的な対応とパブリックコメントがその本来の役割を果たしたことを高く評価しており、これを受けた関係業界もメニュー表示セミナーの開催や相談窓口の設置など具体的自主的な対応を進めるなど、これからの消費者行政のあるべき方向を示したものと考えています。

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