平成26年版消費者白書

第2部 消費者政策の実施状況

第1章 消費者の権利の尊重と消費者の自立の支援

第1節 消費者の安全・安心の確保

2 .事故情報の分析・原因究明

( 1 ) 重大事故等の分析、原因究明

消費者庁が設置されたことにより、生命又は身体に係る消費者事故の情報を一元的に集約する体制が整備されました。集約した情報は、消費者庁が分析した上で、関係行政機関に対して提供を行っています。

さらに、消費者への注意喚起も関係行政機関と連携して行っており、2013年度は「路線バスでの転倒事故にご注意ください!」、「機械式立体駐車場での事故に御注意ください!(周知)」の2件について、消費者庁と国土交通省との連名で注意喚起しました。

また、消費生活において生命又は身体に被害を生じる事故に遭い医療機関を利用した被害者から事故の詳細情報を収集し、同種・類似事故の再発防止にいかしていく取組を着実に推進することを目的として、2010年12月より、消費者庁と国民生活センターが共同で「医療機関ネットワーク事業」を開始しました(2014年3月31日時点で、参画医療機関は24機関)。

2013年度末時点で、同ネットワーク参画医療機関から登録された生命・身体に関わる事故情報は、1万8,580件となっています。

また、収集した情報のうち、事故が多発しているもの、被害の拡大が想定されるものなどについては、更に詳細な情報を収集したり、事故の被害者に直接事故の状況等を聞き取りしたりするなどして事故内容の分析を行うとともに、収集・分析した事故情報を、注意喚起の実施に活用しています。

2013年度には、医療機関ネットワークからの情報により「ジャンプ式の折りたたみ傘及び乳幼児用のいすの事故に気をつけて!」、「高齢者の餅による窒息事故に気を付けて!」の2件の注意喚起と「ペットボトルのラベルで窒息!?の危険」、「赤ちゃんを大人用ベッドに1人で寝かせないで!」など22件のメールマガジンの配信を行いました。

( 2 ) 消費者安全調査委員会の運営

2012年10月、消費者庁に消費者安全調査委員会(以下「調査委員会」という。)が設置されました。調査委員会は、生命・身体の被害に関する消費者事故等の中から、事故等の発生・拡大の防止及び被害の軽減を図るために原因を究明する必要がある事故を選定し、調査を行います。その際、調査委員会は、調査権限を行使するなどして自ら調査を行うほか、他の行政機関等により調査が行われている場合には、その調査を評価(活用)して原因を究明します。また、必要に応じて、被害の発生・拡大防止のために講ずべき施策・措置について、内閣総理大臣や関係行政機関の長に勧告や意見具申を行うこともできます。

調査委員会は、2012年11月に開催された第2回調査委員会において、2005年11月28日に東京都で発生したガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故9)、2006年6月3日に東京都で発生したエレベーター事故10)、2009年4月8日に東京都で発生したエスカレーター事故11)、家庭用ヒートポンプ給湯機から生じる運転音・振動等により不眠等の健康上の症状が発生したとされる事案、2011年7月11日に神奈川県内の幼稚園で発生したプール事故を調査等の対象として選定しました。さらに、2013年7月に開催された第10回調査委員会において、機械式立体駐車場の事故を、2013年12月に開催された第15回調査委員会において、子どもによる医薬品の誤飲事故を同様に調査等の対象として選定し、調査等を開始しました。

これら7件の事案のうち、エスカレーター事故については、国土交通省の行った調査結果の評価を行っていましたが、2013年6月にその結果を取りまとめた評価書を決定・公表し、この評価書に示された論点について自ら調査を行っています。同様に、エレベーター事故についても、同年8月に、国土交通省の行った調査結果の評価を取りまとめて決定・公表し、その後、自ら調査を行っています。また、ガス瞬間湯沸器による一酸化炭素中毒事故については、経済産業省の行った調査等の結果の評価を行っていましたが、2014年1月にその結果を取りまとめた評価書を決定・公表し、調査委員会委員長から経済産業大臣に対して消費者安全法第33条に基づき、消費者安全の確保の見地から意見を述べて調査等を終了しました。

調査委員会は、消費者安全法第28条に基づき事故等原因調査等の申出を受け付け、調査等の端緒情報として活用しているところですが、この申出制度は2012年10月1日から運用が開始され、2013年度は57件12)の申出を受け付けました。

( 3 ) 医療分野における事故の原因究明、再発防止

医療事故に係る調査の仕組みについては、2012年2月以降、「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」において議論され、医療事故に係る調査の仕組み等に関する基本的なあり方(2013年5月29日)が取りまとめられました。この取りまとめを踏まえ、医療事故調査制度を医療法に位置付ける「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」を2014年2月に国会に提出しました。

医療事故調査制度は、

① 医療事故が発生した医療機関が、医療事故調査・支援センターへの届出(報告)、調査の実施、調査結果の遺族への説明及び医療事故調査・支援センターへの報告を行うこと

② その上で、医療機関や遺族からの依頼に応じて、医療機関からも患者側からも中立的な立場である医療事故調査・支援センターにおいて更なる調査を行うこと

③ さらに、こうした医療事故調査結果を、医療事故調査・支援センターが整理・分析し、再発防止に係る普及啓発

を行うことを内容としています。

( 4 ) 食品等による窒息事故の再発防止

消費者庁ではこれまで、食品等に起因する窒息事故の防止に取り組んできました。

2013年度は、窒息事故について消費者に注意喚起を行い、併せて包装餅の業界団体に対し、注意表示の記載の取組について要請を行いました(「高齢者の餅による窒息事故に気を付けて!」(2013年12月18日)。

( 5 ) 消費生活用製品の事故情報の分析、原因究明

経済産業省では、使用者の誤使用等により乳幼児がベッドから転落する事故が発生している状況を踏まえ、「消費生活用製品安全法特定製品関係の運用及び解釈について」の改正を2013年4月1日に行い、乳幼児の転落を未然に防止するための注意表記を追加しました。

また、2013年4月から2014年3月末までに消費生活用製品安全法第35条に基づき政府に報告・受理された重大製品事故(約900件)について、製品事故の原因究明を行うとともに、その結果について公表し、事故情報の提供と注意喚起を行っています。その中で、製品の回収等が必要な場合は、事業者に対して市場対応を要請するとともに、特に緊急の対応が求められる場合は、消費生活用製品安全法第39条第1項(危害防止命令)に基づき、当該事業者に対して該当する製品の回収や消費者向けの注意喚起を行うなど、必要な措置を講ずるよう命じることとしています(2013年3月、TDK株式会社に対し発出した危害防止命令に基づき、同社から未回収の加湿器の回収、消費者への注意喚起の措置状況について定期的に報告を受け、確認するとともに、報告内容について同省ウェブサイトで公表しました。)。

そのほか、関係機関と連携し、製品事故の未然防止のため各種注意喚起を行っています。例えば、学校で発生する事故については、2013年6月に地方公共団体や教育機関に対して「学校で発生した製品事故に関する情報提供について」を配布し、各学校における事故の予防に役立てることができるよう周知を図りました。また、介護ベッドについては、医療・介護ベッド安全普及協議会と協力し、同年9月に関係機関に対して事故の再発防止の注意喚起文書を発出するとともに、介護ベッドの設置状況の点検を行うよう促しています。

( 6 ) 昇降機、遊戯施設における事故の原因究明、再発防止

昇降機(エレベーター、エスカレーター)や遊戯施設の安全性の確保のため、国土交通省では、「社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会」において事故原因究明のための調査を引き続き行っています。

また、2012年10月31日に発生した金沢市のエレベーターでの死亡事故13)を受けて取りまとめを行い、2013年2月に公表した「石川県内エレベーター戸開走行事故調査中間報告書」に付された意見を踏まえ、同様の事故の再発防止に向けた取組を進めています。

さらに、昇降機等の事故に対する調査体制を強化するため、調査機関の在り方も検討した結果、建築物等についての国の調査権限の創設等を内容とする「建築基準法の一部を改正する法律案」を国会に提出し、2014年5月29日に成立しました。

他方、消費者庁に設置された消費者安全調査委員会は、2009年4月8日に東京都内で発生したエスカレーター事故と2006年6月3日に東京都内で発生したエレベーター事故について国土交通省が行った調査結果の評価を実施し、2013年6月にエスカレーター、同年8月にエレベーターについての評価書を公表しました。調査委員会は、この評価書を踏まえて、引き続き、事故の原因を究明するため、自ら調査を進めています(「(2)消費者安全調査委員会の運営」参照)。

( 7 ) 製品等の利用により生じた事故等の捜査

近年、エレベーターによる死亡事故等、消費者被害に関する事故が発生しており、事故発生の原因や責任の所在捜査はもちろんのこと、事故の再発防止、被害拡大防止が求められています。

これらを背景として、都道府県警察では、製品等の利用により生じたと疑われる事故等を認知した際には、迅速に捜査を推進し、責任の所在を明らかにするよう努めるとともに、関係行政機関と共に事故現場等において情報交換を積極的に行うなど相互に協力しながら再発防止を図っています。

また、警察庁では、都道府県警察に対して、製品等の利用により生じた事故等の情報収集や関係行政機関との協力の必要性等について指示しているほか、こうした事故等を認知した際には、関係行政機関に通知するなどしています。

なお、製品等の利用により生じた事故について、2013年度中に警察庁が関係行政機関に対して通知した件数は38件であり、2012年度に比べて20件減少しています。

( 8 ) 商品テスト等による調査、分析、事故原因究明

国民生活センターでは、全国の消費生活センター等で受け付けた商品に関する苦情相談の解決のために商品テストを行うとともに、商品群として問題があると考えられる場合は、被害の未然防止・拡大防止のために商品テストを実施し、広く情報提供しています。

商品テストの実施に当たっては、外部テスト機関や事業者、専門家の技術・知見の活用を図っています。また、地方公共団体からの相談解決のためのテスト依頼については、原則として全件に対応していることから、調査・分析機能の強化を図るため、テスト担当職員を積極的に研修等に派遣するとともに、定型的なテストや専門的なテストは積極的に外部試験機関等に依頼し、テスト手法の改善・効率化を図っています。

なお、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月7日閣議決定)を踏まえ、2011年5月17日に締結した独立行政法人製品評価技術基盤機構(以下「NITE」という。)及び国民生活センターとの協定に基づき、定期的に意見交換、情報提供を行うため実務者会議を開催して相互の協力関係を強化しています(2013年度は12回開催)。具体的には、試験、事故調査及び広報の担当者間でテレビ会議等により情報共有を密に行い、国民への効果的な情報提供を図るとともに、2012年度からは、国民生活センターの商品テスト事業に必要な分析の依頼をNITEが受けて行うなど、緊密に連携を図っています。

さらに、重大消費者事故に係る商品テストを国民生活センターで実施する場合は、消費者庁に事前に連絡を行っているほか、生命・身体事案の情報提供については双方の役割分担や連携に関する文書を取り交わしています。また、消費者安全調査委員会の設置後は、同委員会の事務局である事故調査室も加えて意見交換・情報提供を定期的に実施し、調査案件の委託分析・実験、さらに、知見の協力に関する文書を取り交わしています。

NITEでは、事故原因究明の機能強化を図るため、2009年度以降、随時、製品事故原因究明に関する試験施設等の整備及び増強を行っています。

2012年4月にはNITEの一部組織を改組し、燃焼技術センターを設置しました。また、事故原因究明の取組については、リスク評価手法に基づく調査事案の優先度付けにより、調査の効率化の徹底を引き続き実施しています。

( 9 ) 製品火災・事故等に係る未然防止

近年の火災の出火原因は極めて多様化しており、その中で自動車、電気用品やストーブなど、国民の日常生活に身近な製品が発火源となる火災が発生していることから、消防庁では、消費者の安全・安心の確保を図るため、製品火災の未然防止に向けた取組を強化しています。特に、製品火災情報については、消防機関の特性をいかして火災情報を網羅的に収集する体制を確立し、発火源となった製品の種類ごとに火災件数を集計して、製造事業者名と製品名などを四半期ごとに公表することにより、国民への注意喚起を迅速かつ効率的に行っています。

この調査結果については、全国の消防機関に通知するとともに、収集した火災情報を消費者庁、経済産業省及び国土交通省と共有し、連携して製品火災対策を推進しています。また、製品火災対策の強化を図ることを目的として、2012年6月27日に改正消防法(昭和23年法律第186号)が成立し、2013年4月1日より、消防機関は火災の原因である疑いがある製品の製造事業者又は輸入事業者に対して、資料提出等を命じることができるようになりました。さらに、製品火災対策の一環として、2011年度より、製品火災に関する情報及び火災調査結果に関して消防機関とNITEとの連携強化を図っています。


9)

2005年11月、東京都港区の共同住宅で、当時大学生の男性が、ガス瞬間湯沸器から発生した一酸化炭素による中毒で死亡した事故。

10)

2006年6月、東京都港区の共同住宅で、当時高校生の男子生徒が、エレベーターから降りようとしたところ、扉が開いたままの状態でエレベーターが上昇し、乗降口の上枠とかごの床部分の間に挟まれて死亡した事故。

11)

2009年4月、東京都港区の商業施設で、下りエスカレーターの手すりから男性会社員が階下に転落して死亡した事故。

12)

詳細は資料編を参照。http://www.caa.go.jp/csic/action/index3.html

13)

2012年10月、石川県金沢市の宿泊施設で、女性従業員がエレベーターに乗り込もうとしたところ、扉が開いたままの状態でエレベーターが上昇し、乗降口の上枠とかごの床部分の間に挟まれて死亡した事故。

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