平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第5章 消費者政策の展開

第3節 消費者教育の推進

消費者教育推進法が2012年8月22日に公布、同年12月13日に施行されました。

消費者教育推進法は、消費者教育を総合的・一体的に推進し、国民の消費生活の安定及び向上に寄与することを目的とし(第1条)、消費者の実践的な能力の育成や、消費者市民社会の形成に参画し、発展に寄与できる消費者の育成、消費者教育の体系的、効果的な推進などを基本理念としています(第3条)。この基本理念にのっとり、国、地方公共団体は消費者教育の施策を推進し、また、消費者団体や事業者団体は、消費者教育について自主的な活動を行うことを明確化しています。そして、学校、地域、家庭、職域などそれぞれの場において多様な主体が連携して取り組んでいくことが求められています。

●消費者教育推進の基本方針の決定

消費者教育推進法では、「消費者教育の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)」を定めることとされており(第9条)、消費者庁と文部科学省において基本方針の案を作成し、閣議決定することとされています。

基本方針の案に対して、消費者教育推進会議(詳細は後述)の第1回から第4回において意見交換が行われました。また、消費者委員会から聴取した意見や消費者等の意見を反映して最終案が取りまとめられ、2013年6月28日に閣議決定しました(図表5-3-1)

この基本方針は2013年度から2017年度までの5年間を対象としており、消費者教育の推進の意義及び基本的な方向、推進の内容、関連する他の消費者政策との連携に関する事項を定めています。

●消費者教育推進会議の設置

消費者教育推進法では、「消費者教育推進会議」を置くこととされており(第19条)、同会議の事務は、①消費者教育の総合的、体系的かつ効果的な推進に関して、委員相互の情報の交換及び調整を行うこと、②基本方針に関し、意見を述べることとなっています。同推進会議は、消費者、事業者、教育関係者及び消費者団体、事業者団体、学識経験者など20名から構成されています。

同会議は2012年度、2013年度中に計6回開催されました。2013年3月6日に開催された第1回会議から同年6月4日の第4回会議では、基本方針の閣議決定に向けた意見交換が行われました。また、基本方針の閣議決定後に行われた第5回会議では、新たに専門委員を任命し、基本方針の「別紙」に掲げた「今後検討すべき課題」を同会議に置かれた3つの小委員会(消費者市民育成小委員会、情報利用促進小委員会、地域連携推進小委員会)で検討することが決まりました(図表5-3-2)。その後、2013年12月以降に各小委員会が3回ずつ開催され、各課題の優先順位付けや課題の具体的な検討が行われ、2014年3月24日に行われた第6回会議において、各小委員会から検討状況の報告が行われました。

「今後検討すべき課題」は、2014年度も引き続き各小委員会で検討されます。また、課題の内容によっては、複数の小委員会で連携して検討が行われます。今後、半年に一回程度開催される消費者教育推進会議において検討状況が共有されるとともに、2015年2月に全ての課題について検討結果が取りまとめられる予定です。

【消費者市民育成小委員会】

消費者市民育成小委員会(座長:古谷由紀子 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会常任顧問を含む計13名で構成)では、2013年度に次の2つの課題について検討が行われました。

〈実践事例と対応させた消費者市民社会概念の研究・普及〉

消費者自らが主体的に問題を解決するのに有効な消費者教育プログラムを作成・普及させるため、これまでに全国各地域で行われた数多くの消費者教育の実践事例を、どのような観点から抽出し整理すべきか検討されました。例として整理したプログラム集では、事例抽出の観点として、①プログラムの目的、②設定されたテーマ、③学習方法を採用し、事例を抽出しています。今後も継続的に事例を収集・整理するとともに、プログラムの有効活用について検討する予定です。

〈イメージマップのバージョンアップ〉

「消費者教育の体系イメージマップ」は消費者教育の対象領域(重点領域)ごと、個々の消費者のライフステージごとに消費者教育の目標を一覧表にまとめたものであり、2013年1月に公表されました。このイメージマップは地方公共団体や学校等の実践の場で活用され始めており、その役割が重要である一方、「消費者市民社会の構築」領域と他の重点領域との関係性がわかりにくい、成人期に関してはライフステージ別だけでなく他の切り口の観点からの整理が必要ではないかなどの論点も指摘されており、それを踏まえた解説編の作成が検討されています。2014年度は、学習指導要領との関係の整理も含めた解説編の作成や、イメージマップとその他の消費生活に関する教育(安全教育、金融経済教育、食育、環境教育など)との関係性の整理を検討する予定です。

【情報利用促進小委員会】

情報利用促進小委員会(座長:大竹美登利 東京学芸大学教授を含む計12名で構成)では、2013年度に次の2つの課題について検討が行われました。

〈高齢者・障害者見守りにおける効果的な情報提供方策等〉

高齢者・障害者等の消費者教育のアプローチが困難な層に対する情報提供の在り方を検討するなかで、受け手の状態や情報環境に配慮することの重要性が確認され、口コミなど人を介した情報提供方策を引き続き検討することとしています。また、消費者教育に関心の薄い層に対してインターネット情報端末の活用や多様な主体が連携したプロジェクト型情報提供の方策などが提案され、地方公共団体で実践できるような、より具体的な提言に向けた検討を続ける予定です。

(消費者教育の実践事例)

エコチケット(環境通貨)を使った循環型エコ活動

埼玉県川口市立戸塚南小学校


埼玉県川口市立戸塚南小学校では、学校全体でエコスクールとしての活動に取り組む中、児童が牛乳パック・古紙回収等のエコ活動をすることでエコチケット(環境通貨)を手に入れることができる仕組みを構築しました。また、学期ごとに1 回エコチケットを利用して、苗やカブトムシの幼虫等を購入することができるエコマーケットを開催しています。このマーケットは、当初は教師側 の呼び掛けで開催していましたが、現在は児童主体で企画をしており、自分たちのアイディアで店や会社を作っています。

主体的に行動し、問題解決することを通じて、児童は消費者・事業者それぞれが環境保護において果たすべき役割を理解しています。

〈消費者教育ポータルサイトの掲載基準等〉

消費者教育ポータルサイトは、消費者教育を実施している方々の支援を主な目的に、消費者教育に関する様々な情報を提供する場であり、関係機関で作成された教材や実践事例に関する情報が一元的に集約されています。情報収集はある程度進んでおり、消費者教育の体系イメージマップに沿った分類に変更する等の整備も進みつつあります。情報の有効活用の観点から、掲載の基準をより明確にするとともに、消費者教育ポータルサイト掲載情報評価委員会(仮称)を設けて、利用者が掲載情報を選ぶ際のヒントとなる「お勧め」コメントを提示してはどうかなどの提案がなされました。さらに、より容易に具体的な情報を検索できるよう、情報の整理の仕方、それを受けてのウェブサイトの改修等が検討されています。

【地域連携推進小委員会】

地域連携推進小委員会(座長:吉川萬里子 公益社団法人全国消費生活相談員協会理事長を含む計11名で構成)では、2013年度に次の2つの課題について検討が行われました。

〈消費生活センターの消費者教育の拠点化の具体的方法〉

消費者教育の推進のために、消費者被害の相談・救済にとどまらない、地域の生活を支え、更には人々に身近な学習や交流の場となるような消費者教育の拠点ともなる消費生活センターの在り方を検討しました。消費生活センターの規模や機能は多種多様であるため、今後は都市規模別のセンターの実態の把握や類型化、それを踏まえた対応についていわゆる拠点化指針として検討される予定です。

〈コーディネーターの仕組み・人材確保・育成等の方策〉

基本方針では、コーディネーターについて、消費者教育を担う多様な関係者をつなぐために、間に立って調整をする役割を担う者であり、消費者市民社会形成の推進役としての重要な役割を果すものとしています。まずはコーディネーターの機能・役割について検討し、消費者教育担当の職員、コーディネーター、サポーターの三段階に分けて整理することが現実的であると提言されました。その上で、それぞれの役割、育成の方策をより具体的に検討していくこととしています。

(消費生活センターの消費者教育の拠点化例)

神戸消費者教育センター


神戸市生活情報センターでは、センター内に悪質商法や製品事故情報、消費者教育の教材などを集めた「神戸消費者教育センター」を2012年7月23日にオープンしました。テーマごとの多様な展示のほか、大型モニターや電子看板で最新の消費生活情報を映像で観ることができ、消費者が実践的な学習の場として利用することが可能です。見学者の案内や、ミニ講座も開催しています。例えば、子どもコーナーでは、すごろく等で遊びながら学ぶことができるほか、夏休み等に子ども向けの実験講座を実施しています。

家庭の安全・安心コーナー 子どもコーナー

家庭の安全・安心コーナー

子どもコーナー

●地方公共団体の取組

消費者教育推進法において、消費者教育推進計画を策定すること、及び、消費者教育推進地域協議会を設置することが地方公共団体の努力義務として規定されています。2013年度に、9都府県、1政令指定都市で同計画が策定されました。また、同協議会は、14都府県、2政令指定都市で設置されました(図表5-3-3)

●2013年度先駆的プログラムの実績

消費者の安全・安心の確保に向け、消費者問題に関する先駆的なテーマを国から提案し、問題意識を共有した上で、地方公共団体の自主性・独自性を確保しつつ、地方の現場において実証実験等を実施し、その成果を全国的に波及・展開することを目的に「先駆的プログラム」が実施されています。2013年度の先駆的プログラムのテーマの一つとして「体系立った消費者教育の展開」があり、そこでは金融分野を中心としたイメージマップの有用性の検証を目的として、7つの地方公共団体で事業が行われました(図表5-3-4)

(先駆的プログラムによる事業)

熊本県長洲町、玉東町


熊本県長洲町、玉東町では、消費者教育NPO法人お金の学校くまもとと連携し、各種事業を行いました。両町共通で行われた事業として、「人生いろいろやりくりゲーム(以下、「ゲーム」という。)」を通した金銭管理教育があります。長洲町では2小学校4~5年生の児童とその保護者、玉東町では2小学校5~6年生の児童とその保護者が参加しました。


このゲームでは、参加者がロールプレイ方式で役割を演じることで、自分以外の立場でものを考える訓練をするとともに、自分と他人の金銭感覚の違いに気づくこと、家族の一員として家計を管理することに責任をもつ態度を養うことを目的としており、ある家族に予期せぬ出費が発生した場合に、どのように家計をやりくりして対応するかを話し合い、結果を所定のシートに記入して発表します。また、ゲームによって、金銭管理に関してどのような点で児童・保護者の意識の変容があったのかを明らかにするために、ゲームの直前・直後、及び3か月後に同じ設問によるアンケートを実施し、結果を綿密に分析・評価しています。


アンケート結果の分析によると、総じて、児童・保護者では、お金について家族等と話をすることやお金の管理の重要性について、意識が高まっており、児童の方がゲーム直前・直後の意識の変化が大きくなっています。特に児童において「先生とお金について話をすること」を重要だと考えるとの回答がゲーム直後のアンケートによって増えており、このゲームのような取組を学校教育の中で充実させていくことで、教師が金銭管理教育を進めやすくなり、児童の金銭管理感覚を養う上で有効であると考えられます。

図表5-3-1 消費者教育の推進に関する基本的な方針

図表5-3-2 小委員会の役割と各委員会が今後検討すべき課題

図表5-3-3 「消費者教育推進計画等策定状況」及び「消費者教育推進地域協議会設置状況」

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図表5-3-4 2013年度 先駆的プログラム(体系立った消費者教育の展開)の実績

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