平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第5章 消費者政策の展開

第2節 高齢者・障害者の見守り

●高齢者・障害者に関する相談は増加

第4章でも高齢者の消費者トラブルについて述べましたが、消費生活センター等への相談件数の推移を具体的に見ていくと、2008年度以降年々増加傾向にあり、特に2013年度は前年度の21万4,317件を5万件以上上回る26万6,976件の相談が寄せられました(図表5-2-1)

また、相談者が契約者本人かどうかに分けてみると、本人の割合が2004年度は66.1%でしたが、2013年度には74.6%となっており、最近では自ら相談するという行動が増加しています。これは、深刻化する高齢者の消費者トラブルに対して、様々な機関が消費者に対して情報提供、注意喚起を行ってきたことにより、消費者にも認知されてきた結果、トラブルに遭った際、自身で早めに消費生活センター等へ相談するという行為につながっているものとも考えられます(詳細は、図表4-1-18、4-1-19参照)。

さらに、2013年度の相談をそのトラブルの当事者本人が相談しているかどうかについて、年代別に見ていくと、未成年者、高齢者では他の世代と異なり、本人の割合が小さくなっています(図表5-2-2)。成人の中では、30歳代から60歳代までは本人からの相談が約9割とほとんどが本人からの相談となっていますが、70歳以上になると、年代が上がるにつれ本人の割合が小さくなっていきます。

消費生活センター等が相談を受ける中で、トラブルの当事者が身体障害、知的障害、精神障害や、認知症高齢者等の判断力不十分者であると判断した「障害者等」についての相談件数の推移を見ていくと、2008年度以降、年々増加傾向にあり、2013年度は2万1,542件の相談が寄せられています(図表5-2-3)

未成年者、高齢者と同様、「障害者等」も本人が消費生活センター等へ相談する割合が小さく、2013年度は33.1%にとどまっています。

また、「障害者等」の2013年度の相談について販売購入形態別に見ると、第4章で見た消費生活相談全体や高齢者、65歳未満の構成比とも異なり、「訪問販売」の割合が大きいという特徴があります(図表5-2-4)

そこで、「訪問販売」の件数が多い商品を見ると、「新聞」が最も多く、「修理サービス」、「屋根工事」と続きます。相談全体では「訪問販売」が減少している中、「障害者等」では従来型の「訪問販売」でトラブルの多い商品・サービスが見られ、対面で強引な勧誘を受けるケースが多いことがうかがえます。

高齢者に関する相談で、本人以外から消費生活センター等へ相談が寄せられ、かつ、相談者が団体のケースは全体では僅かな割合ではありますが、2004年度の1.4%から2013年度は2.3%となっており、徐々に増加傾向にあります。これは、単身高齢者が増加したことも影響していると考えられ、福祉事業者や行政等、家族以外の見守りも少しずつ広がってきていることがうかがえます。

しかし、他の世代等に比べ、消費生活センター等への本人相談の割合が小さいといった特徴があることから、高齢者や「障害者等」の消費者トラブルに際しては、本人だけではなく、周囲が気付いて被害に対応する必要があります。トラブルの未然防止や拡大防止には、見守り体制の強化が不可欠です。

●高齢者の悪質電話対策のモデル事業の実施

第4章第1節でも見たように、高齢者の消費者トラブルにおいて、近年「電話勧誘販売」の相談件数が増加傾向にあります。そこで、消費者庁では、高齢消費者を悪質な電話勧誘から守るための新しい被害防止対策として、①高齢者に定期的に電話を架けて問合せや注意喚起(「電話見守り」)をする、②「通話録音装置」を設置し通話を録音するなどして被害の抑止を図る、③「自動着信拒否装置」を設置して悪質商法等に用いられた電話番号からの着信を自動で拒否するという3つの対策を採り上げて地方公共団体向けに手引を作成し、全国の同様の取組の改善・高度化を促して、被害の防止を図っています。

① 高齢消費者の二次被害防止モデル事業の実施

消費者庁では、地方公共団体と連携して、電話をきっかけとした消費者トラブル抑止を図る「高齢消費者の二次被害防止モデル事業」を2013年9月末から2014年2月末までの約5か月間実施しました。

同モデル事業では、岩手県、千葉県、大分県の市町村(5地域)を対象とし、①高齢者522世帯に定期的に電話を架けて問合せや注意喚起を行うことを内容とする電話による見守りを行うとともに、②そのうち、協力いただける238世帯に定期的な電話見守りに加えて通話録音装置を設置し、不審な電話の録音データが取れた場合は、訪問してそのデータのみ回収し、高齢消費者の相談・あっせん対応や事業者の手口公表・行政処分等への活用を図りました(図表5-2-5、5-2-6)

通話録音装置には、録音すると事前に警告メッセージを流す機能の有無、録音の開始の自動と手動の別などの違いがあります。事前警告機能があると、悪質な電話そのものが約10分の1に減少し、事後のアンケート調査では約96%の利用者が安心できたと回答するなど、悪質な電話自体を防止する効果が見られました(図表5-2-7)

また、事前警告機能がなく、自動録音する装置でのみ、10件の録音データを取得できました。事業目的によって、事前警告機能の有無や、自動録音機能を選択する必要があることが分かりました。

今後、各地の取組で、悪質な電話勧誘の通話録音データを取得できた際には、PIO-NETの相談情報の中に録音データがあることを入力し、相談・あっせん、手口の公表、法執行等への活用を図ります。

また、事業効果を調べるため、2014年2月、消費者庁のモデル事業対象者にアンケート調査を実施(522人中421人が回答、回答率80.7%)したところ、電話見守りは約8割、通話録音装置は約7割が継続を希望すると回答し、高い満足度がうかがえました(コラム12参照)。

②自動着信拒否装置の設置

また、地方消費者行政活性化基金の先駆的プログラム「悪質事業者による消費者被害の防止の強化」により、電話による見守りや通話録音装置の設置だけでなく、自動着信拒否装置の設置など、地方公共団体が主体的に行う施策を8地域で支援しました(図表5-2-8)

自動着信拒否装置は、民間事業者が提供するサービスで、悪質商法等の犯行に使用された電話番号がデータベース化され、装置が自動判別して着信の通知を変えることで、利用者個人が知らない迷惑電話番号も含め、着信を拒否することができます。

登録されていない電話番号は、着信を拒否したい場合と許可したい場合に、自分で設定が可能です。各地の警察から提供される電話番号や、他の利用者から通報された迷惑・犯行電話番号を基に、情報が毎日更新され、新しい番号から架かってくる迷惑電話を拒否できることが期待されます。

③「高齢消費者の悪質電話勧誘からの被害防止対策の導入の手引」の作成

「高齢消費者の悪質電話勧誘からの被害防止対策の導入の手引」は、消費者庁のモデル事業の5地域、先駆的プログラムに取り組んだ8地域の事例に加え、別途実施されている先進7事例の合計20事例を調査し、分析・検証して取りまとめました(図表5-2-9)

消費者庁では、全国で実施される①「電話見守り」、②「通話録音装置の導入」、③「自動着信拒否装置の導入」の取組について改善・高度化を促し、高齢者の消費者被害の防止を図るため、地方公共団体に手引を配布し、普及を図っています。

●地域の見守り活動の促進

そのほか、地域の見守り活動を更に促進していくこととなる消費者安全法の改正が2014年6月6日に成立しました。

同法では、地方公共団体による消費者安全の確保のための「地域協議会」の設置、地域で活動する「消費生活協力団体」、「消費生活協力員」を育成・確保する等、地域の見守りネットワークの構築を更に進めていくこととしています。

また、地域の見守り活動を一層促進していくため、消費者庁としても、地域協議会による見守り活動を実施する際の参考に資するよう、ガイドラインを示すとともに、先進事例等の情報提供の実施を行うこととしています。また、現場において、地域協議会と他の見守り活動等との有機的な連携を促進するため、関係府省庁や関係機関に対して、連携の強化の働きかけを行うなどの取組を実施することとしており、これらにより、見守りの現場での活動が円滑に行われるよう支援していく予定です。

●見守りネットワーク連絡協議会の取組等

障害者団体のほか、高齢者団体・行政機関等を構成員とする「高齢消費者・障害消費者見守りネットワーク連絡協議会」が2007年から開催され、高齢者及び障害者の消費者トラブルの防止に向けて、消費者トラブルの情報共有や各会合での申合せの取りまとめを通じ、悪質商法の新たな手口や対処の方法などの情報提供等を行う仕組みの構築を図っています。

そのほか、消費者庁では「障害者の消費者トラブル見守りガイドブック」(2007年作成・公表)で、障害者の周囲の方の取るべき行動等について紹介しているほか、国民生活センターでは高齢者・障害者に係るトラブル事例について、本人のみならず周囲の人々に悪質商法の手口等をメールマガジンやウェブページでお知らせする「見守り新鮮情報」の発行や、「消費者問題出前講座」の実施により見守り支援を行っています。

図表5-2-1 「高齢者」に関する相談は増加傾向

図表5-2-2 高齢者・未成年者の被害は本人以外から相談が寄せられる傾向

図表5-2-3 「障害者等」に関する相談は増加傾向

図表5-2-4 2013 年度の「障害者等」の相談は「訪問販売」が「店舗購入」とともに大きい

図表5-2-5 「高齢消費者の二次被害防止モデル事業」の対象世帯数と実績件数

図表5-2-6 「電話見守り」と通話録音装置のイメージ

図表5-2-7 通話録音装置に事前警告機能があると、不審な電話の件数の減少に大きく寄与

図表5-2-8 自動着信拒否装置のイメージ

※クリックで拡大画像表示

図表5-2-9 手引で紹介している事例

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