平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第4章 消費者問題の動向

第3節 最近の消費者問題の傾向

●劇場型勧誘の被害は依然として深刻

近年、高齢者を中心に深刻な被害が生じているのが、複数の業者が役回りを分担し、パンフレットを送り付けたり、電話で勧誘したりして、消費者があたかも得をするように信じ込ませて実体不明の金融商品等を買わせる手口である「劇場型勧誘」であり、依然として相談が多い状況が続いています。

消費生活センター等に寄せられた「劇場型勧誘」に関する消費生活相談を見ると、2012年度以降、月によって差はあるものの、月平均で1,500件以上の相談が寄せられています(図表4-3-1)

また、2013年度における「劇場型勧誘」に関する相談を年齢別で見ると、65歳以上の高齢者の相談の割合が約8割となっているほか、性別で見ると女性の相談の割合が約7割となっています。このほか、販売購入形態別で見ると、およそ4分の3が電話勧誘によるものとなっており、高齢者や女性が電話による劇場型勧誘を受けるケースが多いことが分かります(図表4-3-2)

さらに、最近では、事業者が大手証券会社や大手メーカー等の有名企業や公的機関の名をかたるなどして身分を詐称した上で勧誘を行うといった事案が増加しています(図表4-3-3)

なお、消費生活センター等へ寄せられた「劇場型勧誘」に関する相談のうち、相談前に契約・申込みをしてしまった割合は2割台にとどまっている一方、約7割の人は契約・申込みをする前に相談しており、行政による注意喚起や報道等により手口が一般に浸透し、勧誘の信ぴょう性に疑いを持つ意識が高まっていることがうかがえます(図表4-3-4)

こうした勧誘を受けて、少しでも怪しいと思ったら、消費生活センター等や周囲の人等に相談してみることが重要です。あわせて、身近な高齢者に、口数が減る、買い物をあまりしなくなる、借金を申し込んでくる等の変化が生じていないか、周囲の人が気を配ることが重要であり、高齢者の生活に不自然な点があれば消費生活センター等へ相談するよう勧めることが被害の未然防止・拡大防止につながります。

●海外の土地・不動産・債権等への投資をうたった商品に関するトラブル

近年、実際に消費者自身が現地を確認することが難しい海外の「リゾート地」や「農地」の「使用権」、不動産や債権等を投資対象とする商品に関するトラブルが出てきています。例えば、「カンボジアの土地使用権等」の売買に関する相談は、2011年度から寄せられ始めたため、国民生活センターでは2012年5月に注意喚起を行いました。しかし、2012年度から2013年度にかけても、マンションの所有権に関するトラブルなどその内容が変化してきたものの、一定の件数が寄せられ続けており、特に高齢者からの相談が目立ちます(図表4-3-5)

また、2013年4月には、米国において行う診療報酬請求債権の購入及び回収事業から生じる利益の一部を配当することを内容とする権利の販売勧誘を行っていた第二種金融商品取引業者(MRI INTERNATIONAL, INC.)が、日本国内の顧客の出資金を実際には運用せずに、他の顧客への配当金等の支払に流用していたなどとして、登録を取り消されるといった事案が発生し、当該事案に関する相談が急増しました。

こうした実体の不明な権利等を投資対象とする商品の勧誘を受けたとしても、当該契約の内容等が分からない場合は絶対に契約をしてはなりません。また、上記のカンボジアの土地使用権利等の売買に関する勧誘で見られたような「権利を高値で買い取る」等と話を持ちかけてくる業者の話は信じないことが肝要です。

●「二次被害」に関する相談は全体として減少、一方で高齢者の相談割合は増加傾向

以前契約した商品・サービスについて、「解約してあげる」、「損を取り戻してあげる」等と説明し、これまでに遭った被害の救済を装って被害に遭った人を勧誘し、金銭を支払わせる等の手口による「二次被害」も近年高齢者に目立つ被害です(詳細は第1節)。この「二次被害」に関する相談の推移を見ると、2011年度をピークとして減少に転じていますが、2013年度には13,039件と依然として多くの相談が寄せられています(図表4-3-6)。また、その内訳を見ると高齢者の相談割合が2009年度以降増加傾向にあり、引き続き高齢者を狙った「二次被害」に関するトラブルが深刻であることが分かります。

さらに、高齢者の相談を商品分類別に見ると、「ファンド型投資商品」「未公開株」「公社債」等、金融商品に関するトラブルが目立っています(図表4-3-7)

●いわゆる「偽装質屋」に関するトラブルが増加

2012年度から2013年度にかけて、ヤミ金融業者が質屋営業を仮装し、担保価値の無い物品を質入れさせた上で、実質的に年金等を担保にして105)金銭の貸付を行い、高額な金利等の支払を求める事案(いわゆる「偽装質屋」)に関する相談が増加しました(図表4-3-8)

消費者金融等の貸金業における上限金利は年20.0%となっていますが、質屋営業においては質物の鑑定や保管等のコストが掛かるといった理由から、出資法上の特例により、年109.5%までの金利を設定することが可能となっており、この高金利での貸付を行うことを目的として、質屋営業を装っていたものと見られます。

こうしたいわゆる「偽装質屋」に関する相談が急増したことを受けて、消費者庁及び国民生活センターではいわゆる「偽装質屋」を利用しないよう消費者に向けて注意喚起106)を行いました(2013年6月3日)。同注意喚起の公表後は、いわゆる「偽装質屋」に関する相談は減少しています。

●「健康食品の送り付け商法」は2013年度上半期がピーク

「健康食品」に関する相談は、商品別に見た消費生活相談では従来から上位に挙がる商品の一つであり、販売購入形態別では以前は「訪問販売」、「通信販売」、「マルチ取引」等に関する相談が毎年度一定数見られました。その後、2009年度から2011年度にかけてはやや減少していましたが、2012年度、2013年度は大幅な増加に転じています(図表4-3-9)。これは、2012年度以降「電話勧誘販売」、「ネガティブ・オプション107)」が大きな割合を占めるようになったことから分かるように、「健康食品の送り付け商法」によるトラブルが急増したことによるものです。

「健康食品の送り付け商法」によるトラブルは、2012年度より急増していますが、2013年度に入っても引き続き多くの相談が寄せられ、結果的に2013年度の相談件数は2012年度の約2倍となる3万312件となりました(図表4-3-10)

これらについては、第1節でも触れたように、高齢者が大きな割合を占めており、2012年度は81.5%、2013年度は更に増えて87.5%と、ほとんどが高齢者に関するトラブルとなっています。

「以前申込みいただいた健康食品を今から送ります」などと突然電話があり、申し込んだ覚えがないと断ったのに強引に健康食品を送り付けられた等という、この商法によるトラブルでは、事業者から「申し込んだのだから払え」と高圧的に言われ、押し切られて承諾してしまうケースや暴言を吐かれるケース等も見られます。被害の相談は70歳代、80歳代が中心で、2013年度は80歳代が最も多く、80歳代の人口が比較的少ないことを考慮すれば108)、高齢者の中でも特に80歳代に深刻なトラブルが生じていることがわかります。

さらに、相談件数を月別に見ると、2012年度下半期から増加が見られるようになり、5,897件とピークを迎えた2013年5月を中心に、2013年度の上半期にかけて、約1年間相談が集中して寄せられていたことが分かります。その後は月を追うごとに減少傾向となっています(図表4-3-11)

また、相談は全国的に寄せられていますが、地域別では、増加が目立つようになった2012年度の下半期は東海地方や近畿地方、九州北部地方で件数が増えていく一方、2013年度に入ると東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県といった南関東地方で顕著になる等、時期によって被害地域にも差異が見られます。

これらのトラブルについて、多数の事業者に関する相談が消費生活センター等に寄せられていますが、その中で幾つかの事業者に対しては、消費者庁等が特定商取引法に基づき業務停止命令の措置等を行っています。

そのほか、「健康食品の送り付け商法」に関する相談の中で、代金引換配達に関する相談が特に増加していたことから、配送事業者の中では、トラブルが多発する事業者との取引を停止する等の取組が進められています。

●成人直後や就活中の大学生等を狙ったトラブルも

大学生等が消費者トラブルに巻き込まれることがあり、20歳になったばかりの大学生等109)をターゲットにした「投資用DVD」に関する相談が特に2013年度に入って増加しています(図表4-3-12)。「アルバイト先の先輩に誘われて飲食店に行ったら、もうかる投資用DVDがあると言われ、勧められるまま借金をして購入してしまった」等、大学生やその親から、2013年度は2012年度の2倍を超える相談が寄せられています(トラブルの典型例については図表4-3-13参照)。

また、「ウェブサイトに中途解約可能とあったので就活塾に申込みをしたが、解約も返金も不可と言われた」、「就活に有利等と同級生に誘われて、マルチ商法の会員になり健康食品が届いたが解約したい」、「友人から就活に役立つ話を聞くことができると誘われ、自己啓発セミナーの契約をしたが、クーリング・オフしたい」等、主に就職活動を控えた、又は就職活動中の学生に対する強引な勧誘トラブルも見られます。

●ビットコインに関するトラブルが発生

2014年2月25日に、いわゆるインターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の取引所である株式会社MTGOX(マウントゴックス)が、大量のビットコインの消失及び預り金残高と預金残高のそごが発覚したことから、平常の事業運営が困難であるとして取引を停止しました。そして、同月28日には同社が民事再生手続開始の申立を行い、事実上の経営破綻に陥りました110)。消費者庁は、同取引所での取引が停止された翌日(2月26日)に消費者へ向けて注意喚起を行い、その後は「ビットコイン」や同社に関する消費生活相談情報をモニタリングするなど、必要な情報収集を行いました。この事案は、テレビや新聞等のメディアでも大きく取り上げられ、消費者に「ビットコイン」を始めとするいわゆるインターネット上の仮想通貨の存在を広く知らしめることとなりました(ビットコインの詳細については、コラム9参照)。

「ビットコイン」は、各国政府や中央銀行による信用の裏付けのあるものではありません。こうしたいわゆるインターネット上の仮想通貨の利用に当たっては、その仕組みやリスクを十分に理解・納得した上で利用することが重要です。

●これから増えることが予想されるトラブル:2020年開催の東京オリンピック関連

前述した「劇場型勧誘」等による詐欺的な投資勧誘では、これまでも二酸化炭素排出権取引やiPS細胞等、ニュースで話題になるようなその時々の社会情勢に合わせたテーマが登場します。このようなものの中で、今後増加することが予想されるトラブルとして、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックに関するものが挙げられます。

2013年9月のIOC総会において、2020年のオリンピック・パラリンピックが東京で開催されることが決定されました。これを機に、2013年9月以降「将来値上がりする。オリンピック関連の社債を買わないか」、「値上がりしたら買い取る。オリンピックのチケットを買わないか」といった主に投資勧誘トラブルが増加しており111)、これらに関する消費生活相談が168件寄せられています(図表4-3-14)

消費者庁では2014年4月に、東京オリンピックの開催予定地近隣の用地買収等を行っていると装った事業者による社債募集に係る取引について、消費者への注意喚起を行っています112)

今後、東京オリンピック開催時期が近付くにつれ、このようなトラブルはますます増加することが予想されるため、十分注意が必要です。

●消費税率引上げに関する相談が増加

2014年4月からの消費税率引上げに伴い、「消費税」に関する消費生活相談が2013年度下半期から徐々に増加しています(図表4-3-15)。2012年度から2013年度の上半期にかけては、月平均約50件前後で推移していましたが、引上げ直前の2014年2月には775件、3月には2,070件寄せられ、引上げ実施以降の4月には2,313件と、更に増加しています。

商品別に見ると、「商品一般」に代表される消費税率引上げ全般に関する相談のほか、引上げ直前の3月には「賃貸アパート」や「月極駐車場」等、毎月継続的に支払いが発生するようなサービスに関する相談が寄せられていましたが、引上げ後の4月には、そのほか「外食」、「食料品一般(全般)」、「弁当」等、食品を始めとする日用品に関するものも目立ってきています(図表4-3-16)

このほか、2013年10月に開設した消費者庁の便乗値上げ情報・相談窓口では、2013年10月から2014年4月の間に消費者等からの情報・相談が計3,476件寄せられています(詳細は第5章第1節参照)。

図表4-3-1 「劇場型勧誘」に関する相談は金融商品を中心として依然として多い

図表4-3-2 高齢者や女性が電話による「劇場型勧誘」を受けるケースが多い

図表4-3-3 身分を詐称した上で行われる「劇場型勧誘」が増加している

図表4-3-4 約7 割の人は、「劇場型勧誘」を受けて契約・申込みをする前に相談している

図表4-3-5 「カンボジアの土地使用権等」に関する相談が依然として寄せられている

図表4-3-6 「二次被害」に関する相談は2011 年度をピークに減少に転じたが、高齢者の相談は依然深刻

図表4-3-7 「ファンド型投資商品」等の金融商品による「二次被害」のトラブルが目立つ

図表4-3-8 2012年度から2013 年度にかけて「偽装質屋」に関する相談件数が急増

図表4-3-9 「健康食品」に関する相談は、「送り付け商法」によって大幅に増加

図表4-3-10 2013 年度の「健康食品の送り付け商法」に関する相談は、高齢者を中心に前年度の2 倍に

図表4-3-11 「健康食品の送り付け商法」に関する相談は2013 年度上半期にピークを迎えている

図表4-3-12 大学生等の「投資用DVD」に関する相談が2013 年度は急増

図表4-3-13 大学生等の「投資用DVD」に関するトラブルの典型例

図表4-3-14 「オリンピック開催」に関するトラブル増加が今後予想される

図表4-3-15 消費税に関する相談は消費税引上げ前後に急増

図表4-3-16 消費税率引上げ前後では相談が寄せられる件数が多い商品・サービスが異なる


105)

貸金業法(昭和58年法律第32号)第20条の2により、貸金業を営む者が、年金等の公的給付から弁済を受けることを目的として、口座振替を求める行為は禁止されている。

106)

国民生活センター「いわゆる「偽装質屋」からは絶対に借り入れしないで!-「質草は何でもいい」「年金口座から自動引落し」などのうたい文句に注意-」(2013年6月3日公表)。

107)

この数年の「ネガティブ・オプション」(送り付け商法)の傾向を見ると、例えば2009年度は「単行本」、2010年度は「かに」の送り付けが顕著になる等、時期によりトラブルの多い商品には流行が見られる。

108)

総務省「人口推計」(2013年10月1日時点)によれば、70歳代の人口が約1,390万人であるのに対し、80歳代の人口は約769万人である。

109)

未成年者による契約は原則として法定代理人(通常は親権者)の同意が必要であり、同意を得ないで行った契約は民法第5条の規定により取り消すことができる。このため、未成年者契約の取消が行えなくなる20歳の誕生日以降を狙って悪質事業者が勧誘するケースがある。

110)

しかし、同申立ての原因となったビットコインの消失や預金残高の不足等の過去の事実関係の調査には多くの時間を要することが見込まれ、事業再開の見込みも立たないことなどから、2014年4月16日に、東京地方裁判所は同申立ての棄却を決定し、同月24日には取引所を運営する事業者の破産手続開始が決定された。同破産手続開始を受けて、消費者庁は改めて消費者に注意を促す観点から、同月28日にあらためて同庁ウェブサイトにおいてビットコインを始めとするいわゆるインターネット上の仮想通貨の利用に関する注意喚起を行った。

111)

国民生活センター「東京オリンピックに関連した詐欺的トラブルにご注意ください!」(2013年10月30日公表)、「東京オリンピックに関連した詐欺的トラブルにご注意ください!(No.2)-オリンピック用の建物・土地に関する架空の儲け話-」(2014年2月14日公表)。

112)

消費者庁「2020年東京オリンピックの開催予定地近隣の用地買収等を行っていると装い社債を募集する「株式会社エーライン」に関する注意喚起」(2014年4月18日公表)。

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