平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 【特集2】情報通信の発達と消費者問題 ~ネット社会に消費者はどう向き合うか~

第3節 安全で快適なネット社会の構築に向けた取組

( 1 )情報通信に関する消費者被害・トラブルへの対応

●電子商取引に関する法整備

インターネット通販やオンライン上でのゲームその他各種サービスの利用などのインターネット取引(電子商取引)は、従来からの店舗等での取引と異なるため、その特性に応じたルールが必要です。インターネット取引に関しては、2001年に電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律が制定され、①錯誤無効制度の特例(操作ミスにより行った意図しない契約を無効とする)、②成立時期の明確化(民法の発信主義59)と異なり、承諾の通知が到達した時点を契約成立時期とする)等の仕組みが導入されています。

そのほかにも、民法はじめ現行法の大半はインターネット等による新技術を前提としていないため、電子商取引や情報財取引等について現行法がどのように適用されるのか、解釈が必ずしも明確になっていない場合があります。こうした法的問題点に関する現行法適用の包括的な解釈指針として「電子商取引及び情報財取引等に関する準則」を経済産業省が作成しており、ほぼ毎年改訂されています。

なお、あらゆる取引分野の消費者契約に幅広く適用される消費者契約法においても、インターネット取引の普及など社会の変化に対応できるよう60)、2013年8月には消費者委員会が「『消費者契約法に関する調査作業チーム』論点整理の報告」を取りまとめたほか、消費者庁においても2014年3月より「消費者契約法の運用状況に関する検討会」を開催しています。

●インターネットによる広告・表示の規制

特定商取引法に基づく規制のほか、インターネットによる広告・表示は、他の広告・表示と同様に景品表示法により規制されますが、インターネット上での特徴的なサービスとしては、フリーミアム(基本的なサービスを無料で提供し、高度なあるいは追加的なサービスを有料で提供して収益を得るビジネスモデル)、口コミサイト(人物、企業、商品・サービス等に関する評判や噂といったいわゆる「口コミ」情報を掲載するサイト)、フラッシュマーケティング(割引クーポン等を期間限定で販売するマーケティング手法)、アフィリエイト(販売事業者のサイトへリンク広告を貼るサイトに対しクリック数等に応じた報酬が支払われる広告手法)、ドロップシッピング(電子商取引サイトの運営者が在庫を持ったり発送を行ったりせず、商品の製造元・卸元等がそれらを行うビジネスモデル)等、インターネット特有のビジネスモデルやマーケティング手法があり、これらについて景品表示法の問題点や留意事項を整理したものとして、2011年10月に消費者庁が「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を公表しています。

また、電子メールの普及に伴い2001年頃から急増しているいわゆる迷惑メールに対しては、総務省及び消費者庁において協力して対策を行っています。特定商取引法及び特電法では、①一定の例外を除き、受信者の同意を得ずに広告宣伝メールを送信することを禁止(オプトイン規制)、②受信者から広告宣伝メールの受信を拒否する旨の通知を受けた場合は、以後の送信を禁止(再送信禁止)、③広告宣伝メールを送信する際には、受信拒否の通知先など一定事項の表示を義務付け、等の規制がなされており、総務省及び消費者庁では同法に基づき違法な迷惑メール送信事業者に対し是正のための措置命令や改善指導を行っています。なお、特電法の考え方等については2011年8月に総務省及び消費者庁が「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」を改正・公表しており、特定商取引法の考え方等については2008年10月に経済産業省が「電子メール広告をすることの承諾・請求の取得等に係る『容易に認識できるよう表示していないこと』に係るガイドライン」を公表しています。

●情報通信サービス契約のトラブルへの対応

固定電話・携帯電話サービス、光回線、データ通信サービス、インターネット接続サービス等の電気通信サービスは、契約・解約時等にトラブルの多いものの一つであり、また、通信速度や人口カバーエリア等を誇張する表示をめぐってしばしば問題になっています。これらのサービスに関する消費者保護については、電気通信事業法において、事業の休廃止の事前周知、提供条件の説明、苦情等の処理等が規定されています。また、これらの法令上の規定の趣旨・内容を分かりやすく示すとともに、消費者保護の観点から電気通信事業者等が自主的に採ることが望ましいと考えられる対応を示すため、総務省が2004年に「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」を策定し、以降数次にわたり改正しています(最終改正は2014年3月)。

しかしながら、近年、スマートフォン等を中心として、電気通信サービスの料金体系や契約条件の複雑化により消費者がこれらを正確に理解することが困難になっており、また、事業者と消費者の間のトラブルも依然として減らない状況にあります。こうした状況を背景として、2013年9月に総務省では「スマートフォン安心安全強化戦略」を取りまとめ、その中で消費者からの苦情・相談に対する課題解決と相談減少のための具体的方策を「CS適正化イニシアティブ」として取りまとめました。

一方、事業者側でも、料金体系やサービス内容などが複雑化・多様化し分かりにくくなっている電気通信サービスについて、個々の消費者が適切なサービスを選択できるよう、電気通信事業者団体4団体61)により構成される電気通信サービス向上推進協議会が、(1)広告表示について、2004年に「電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドライン」を、(2)勧誘・契約解除の適正化について、2012年に「電気通信事業者の営業活動に関する自主基準」を制定し、その後遵守の徹底や継続的な見直しを図っています。

また、事業者と消費者の間のトラブルに関する苦情・相談が高止まりしていることを受け、消費者委員会より2012年12月に「電気通信事業者の販売勧誘方法の改善に関する提言」がなされたほか、国民生活センターからも2014年3月に総務省に対し要望がなされています。この中では、電気通信事業法が電話勧誘販売や訪問販売等に関する消費者保護規定を置いている特定商取引法の適用除外となっており、契約時の書面交付義務やクーリング・オフ規定など、特定商取引法により他の商品・サービスの取引に適用されている消費者保護規定と同レベルの消費者保護規定の導入等の必要な措置についての検討が要望されています。

これらも踏まえ、総務省では、2014年2月に「ICTサービス安心・安全研究会」を開催し、「消費者保護ルールの見直し・充実に関するWG」において、利用者が安心・安全に電気通信サービスを利用するために必要な消費者保護ルールの見直し・充実について制度的な検討を行っています。

●インターネット通販のトラブルへの対応

インターネット通販は、一般に事業者の顔が見えない非対面の取引、多くの場合遠隔地取引であり、また、商品を手に取って確かめることができないという特性があります。このため、商品未着や返品に関するトラブルが多く、また事業者と連絡が取りづらい、あるいは全く取れなくなる場合もあります。インターネット通販を含む通信販売は特定商取引法によって、①広告の表示(原則として事業者の氏名(名称)、住所、電話番号などを表示しなければなりません。)、②誇大広告などの禁止、③未承諾者に対する電子メール広告の提供の禁止、④前払い式通信販売の承諾などの通知、⑤契約解除に伴う債務不履行の禁止、⑥顧客の意に反して申込みをさせようとする行為の禁止といった行為が規制されており、違反した事業者は行政処分及び罰則の対象となります。一方、訪問販売や電話勧誘販売と異なり、自らサイトにアクセスして商品を購入するインターネット通販にはクーリング・オフは適用されません。

第1節で見たようにインターネット通販を含む電子商取引の市場規模は近年大きく拡大している一方、第2節で見たように、特に2013年度は越境取引において消費者トラブルが大幅に増加するなど、インターネット通販における消費者トラブルが増加しています。こうしたトラブルに対し、消費者庁等では、特定商取引法の執行により悪質な事業者に対する処分を行っているほか、通信販売業者に対して不適切な広告の改善を促しています。また、違法な電子メール広告等に関する情報をインターネット・サービス・プロバイダや金融庁等に提供することにより、ウェブサイトの削除や口座凍結等を促しています。

また、最近では、第2節で見たように、特に中国など海外事業者とのインターネット通販のトラブルも数多く見られ、中には不正表示や発注・発送の行き違いといったものにとどまらず、発送するものが模倣品である場合や最初から商品を発送するつもりがない、事業者自体が存在しないといった詐欺のケースも多くなっています。こうしたトラブルに対し、消費者庁では2011年11月より消費者庁越境消費者センター(CCJ)においてこうしたトラブルに関する相談を受け付け、相談内容に応じて警察への相談を通じた金融機関への口座凍結依頼やクレジットカード会社へのチャージバック62)依頼等をアドバイスしているほか、「悪質な海外ウェブサイト」を消費者庁ウェブサイトで定期的に公表しており、また、国民生活センター等からも注意喚起63)を行っています。また、警察庁においても、海外の偽サイト等(実在する企業のサイトを模したサイトや、インターネットショッピングに係る詐欺や偽ブランド品販売を目的とするサイト)に関する情報をウイルス対策ソフト事業者等に提供することにより、利用者が偽サイトをパソコン等で閲覧しようとすると画面に警告表示等を行う対策を始めています。

●オンラインゲーム・SNS等でのトラブルへの対応

スマートフォン等を利用したオンラインゲームやSNSに関するトラブルも最近若年層を中心に増加しているものの一つです。オンラインゲームに関しては、2012年にいわゆる「コンプガチャ64)」が社会問題となり、同年5月に消費者庁は、これが景品表示法で禁止されている「カード合わせ」に当たるとの考え方を公表しましたが65)、これに限らず未成年者の高額課金に関する相談など、オンラインゲームをめぐるトラブルは依然として多く見られ、消費者庁や国民生活センターからは主に未成年者の利用を念頭に注意喚起を行っています66)。また、事業者側でも、オンラインゲームに関する各種ガイドラインを策定、公表する等67)によりサービス内容の健全化に取り組んでいます。

SNSに関しては、SNSを通じて知り合った人に勧誘された出会い系サイト、マルチ商法に関するトラブルや、SNSの広告がきっかけの商品購入に関するトラブルなどが多く見られ、国民生活センターにおいて消費者に対し注意喚起68)を行っています。

なお、SNSの適切な使い方の普及やトラブルの未然防止のためには未成年者に対する消費者教育が重要であり、地方公共団体等において行われています(詳細(2)参照)。


59)

民法(明治29年法律第89号)第526条第1項。なお当該条項については、「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」(2013年2月法制審議会民法(債権関係)部会決定)において、削除するとの方向が示されている。

60)

例えば、一般に、広告など、客観的に見て特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接影響を与えているとは考えられない場合は、消費者契約法上の「勧誘」に当たらないと解されるが、特定消費者を対象とする「ターゲティング広告」等の手法について「勧誘」に当たると解すべき場合があるとの指摘がされている。

61)

(一社)電気通信事業者協会、(一社)テレコムサービス協会、(一社)日本インターネットプロバイダー協会、(一社)日本ケーブルテレビ連盟。

62)

不正利用等の理由によりカード会員が決済に同意しない場合に、クレジットカード会社が加盟店に対し支払いを拒否すること。

63)

国民生活センター「『インターネット通販の前払いによるトラブル』が急増!―個人名義の銀行口座への前払いはしない―」(2013年12月19日公表)等。

64)

オンラインゲーム内で、「ガチャ」と呼ばれる有料のくじで得られる特定のアイテムを数種類そろえる(コンプリートする)仕組み。未成年者を中心に、コンプリートまでに利用者の予想を超える高額課金が発生してトラブルになるケースが多発し、社会問題となった。

65)

懸賞による景品類の提供は、原則として、景品類の最高額や総額によって制限されているが、例外として、「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供」は、景品類の最高額や総額にかかわらず、提供自体が禁止されている(懸賞景品制限 告示第5項)。この方法が「カード合わせ」「絵合わせ」等と呼ばれるもの。

66)

消費者庁「消費者が実行すべきポイント~「ソーシャルゲーム」、「口コミ(サイト)」、「サクラサイト」について~」(2013年4月3日公表)、国民生活センター「増え続ける子どものオンラインゲームのトラブル―家族でゲームの遊び方を話し合うとともに、クレジットカード管理の徹底を!―」(2013年12月12日公表)等。

67)

一般社団法人ソーシャルゲーム協会「コンプリートガチャ等に関するガイドライン」「ゲーム内表示等に関するガイドライン」、一般社団法人日本オンラインゲーム協会「オンラインゲーム安心安全宣言」等。

68)

国民生活センター「SNSの思わぬ落とし穴にご注意!―消費者トラブルのきっかけは、SNSの広告や知人から?―」(2014年4月24日公表)等。

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