平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 【特集2】情報通信の発達と消費者問題 ~ネット社会に消費者はどう向き合うか~

第2節 情報通信の発達に伴う消費者意識の変化、消費者被害・トラブル等の状況

( 6 )個人情報に関する主な消費者トラブルや消費者意識

●個人情報の保護と利活用

社会が成熟するにつれて重視されるようになる権利の一つに、個人情報やプライバシーの保護があります。我が国では、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的として49)、個人情報保護法が2003年5月に成立、一部施行、2005年4月に全面施行されました。

最近ではプライバシー保護の議論の対象となる情報は拡大傾向にあります50)。一方、個人情報保護法制により行政や事業者が情報提供に過度に消極的になる萎縮の弊害も指摘され、一部にはそうした弊害に対処する動きも出始めています。例えば防災の分野では、東日本大震災で生じた課題を踏まえ、2013年6月に行われた災害対策基本法(昭和36年法律第223号)の改正において、災害発生時の避難に特に支援を要する者の名簿(避難行動要支援者名簿)の作成を市町村長に義務付け、名簿の作成に必要な個人情報の利用が可能となるよう個人情報保護条例との関係を整理するとともに、名簿の活用に関して平常時と災害発生時のそれぞれについて避難支援者に情報提供を行うための制度を設けるなどの対応がとられました51)

特にインターネットを利用したサービスでは、住所・氏名・電話番号・生年月日等の基礎情報や、商品・サービスの購入・利用履歴など利用者に関する膨大な情報を事業者が蓄積することが可能であり、事業者の有するこれらのパーソナルデータをマーケティング等に利活用することへの期待も大きく高まっています(詳細は、第1節ビッグデータの箇所参照)。また、携帯電話等のGPS機能の普及により、これを利用した位置情報サービスが発達していますが、こうした位置情報も重要なパーソナルデータの一つです。さらに、クラウドサービス52)の普及によって、消費者は膨大なパーソナルデータを事業者のサーバに預けています。

ここでは、新たな動きを見せる個人情報の保護や利活用に関する消費者の意識と、個人情報に関するトラブルの状況を見ていきます。

●個人情報に関する漏えい事案件数は減少傾向 苦情相談の内容は「不適正な取得」に関するものが全体の約4割

消費者庁調査によれば、2012年度に事業者が公表した個人情報の漏えい事案件数は319件53)であり、個人情報保護法施行後減少傾向にあります(図表2-2-49)。漏えいした情報の形態について見ると、電子媒体のみが約42%、紙媒体のみが約56%です。また、漏えいした情報に対する暗号化等の情報保護措置の有無について見ると、特段措置を講じていなかった件数が全体の約72%を占めています。これに対し、一部についてのものも含め、何らかの措置を講じていた件数は、全体の約21%にとどまっています(図表2-2-50)

一方、2012年度に地方公共団体及び国民生活センターに寄せられた個人情報に関する苦情相談件数は5,623件でした54)。そのうち、消費生活センター等が受け付けたものが5,283件で、約94%を占めており、以下、地方公共団体の個人情報保護条例所管部局等で受け付けたものが164件、国民生活センターで受け付けたものが176件となっています55)。また、認定個人情報保護団体に寄せられた苦情が613件あったほか、事業者に直接苦情が寄せられているケースも相当数あるものと考えられます。

地方公共団体及び国民生活センターに寄せられた苦情相談の内容としては、「不適正な取得」に関するものが全体の約4割を占めており、以下「同意のない提供」、「漏えい・紛失」、「目的外利用」に関するものが上位に挙がっています(図表2-2-51)

具体的な相談事例56)としては、以下のようなものがあります。

  • 不適正な取得:「身に覚えがない会社から突然電話で、アダルトサイトの未払いがあり和解のためと脅され、個人情報を伝えてしまった。」「小学生の子どもが留守番中に不審な電話を受け、尋ねられるままにクラス連絡網にある電話番号を読み上げてしまった。」
  • 同意のない提供:「大型商業施設で使うポイントがたまるカードを作ったところ、勝手に生命保険会社に個人情報を流された。」「マンション購入の勧誘電話があった。個人情報を名簿会社から購入したと言うが違法ではないのか。」「数年前に購入した未公開株の被害回復をうたう複数の業者から電話があり、流出した個人情報を削除して欲しい。」
  • 漏えい・紛失:「登録した結婚相談所のウェブサイトがハッキングされ、個人情報が漏えいしたと電話があった。非通知電話が携帯に多くかかるようになった。」「店舗で車検を依頼したところ、業者が個人情報を含む車検に関する書類を紛失した。」
  • 目的外利用:「葬儀の際、写真送付すると言われ親戚の住所や電話番号を書いた。後日、葬儀社の社員が写真を持参して親戚のところに行き互助会の勧誘を行った。」
  • 開示等:「個人情報が漏れているようだが、事業者に開示を請求しても応じてもらえない。」「受診先の病院にカルテの開示請求を行ったところ法外な手数料を請求された。」
  • 情報内容の誤り:「消費者金融で、自分の個人情報の開示を請求したら、一部間違った内容になっていた。」

●消費者は事業者への個人情報の提供において個人情報の漏えいや目的外利用を不安視している

消費者庁が行った「消費者意識基本調査」によると、約9割の消費者は自分の個人情報を事業者に提供することについて、個人情報の「漏えい」や「目的外利用」を不安視しています。一方で、過半数の消費者において、個人情報の提供により「サポートが受けられる」「経済的なメリットが得られる」といった肯定的な考えも見られます(図表2-2-52)

●ビッグデータの認知度は男性約3割、女性約1割にとどまる ビッグデータを知らない人ほどその利活用に否定的

近年、ビッグデータの利活用への期待が大きく高まっています(詳細は、第1節ビッグデータの箇所参照)。一方、消費者庁が行った「消費生活に関する意識調査」によると、消費者のビッグデータに関する認知度は、男性は約3割、女性は約1割にとどまっています(図表2-2-53)。また、適切な個人情報保護措置が講じられることを前提としたビッグデータの利活用について尋ねると、ビッグデータ自体を「知っている」、「ある程度知っている」と回答した人のうち約7割は利活用に肯定的ですが、ビッグデータ自体を「あまり知らない」、「知らない」と回答した人のうち約7割は利活用に否定的であり、ビッグデータを「知らない」人ほど利活用に不安を感じていることがうかがえます(図表2-2-54)

以上のことから、ビッグデータの利活用等に関し、消費者は不安視する傾向が強く、個人情報を含むビッグデータについて、適切な個人情報保護措置の検討とともに、消費者へその仕組みを周知・啓発することにより、不安を軽減し、また、ビッグデータの利活用によって得られる効果・便益を周知していくことが重要と考えられます。

また、事業者側には、法の遵守に加え、日々の業務において個人情報に対する暗号化等の保護措置を確実に行うことが求められます。

図表2-2-49 事業者が公表した個人情報の漏えい事案件数は減少傾向

図表2-2-50 漏えいした情報に対する暗号化等の情報保護措置を特段講じていなかった事案が約72 %を占める

図表2-2-51 苦情相談の内容は「不適正な取得」に関するものが全体の約4 割

図表2-2-52 消費者は事業者への個人情報の提供において、個人情報の漏えいや目的外利用を不安視している

図表2-2-53 ビッグデータの認知度は男性約3 割、女性約1 割にとどまる 図表2-2-54 ビッグデータの認知度によって、利活用への賛否は大きく異なる※利活用の際に「適切な個人情報保護措置が講じられること」を前提としている


49)

個人情報保護法第1条「この法律は、高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」。

50)

平成25年版情報通信白書(総務省)第1部第3章第1節。

51)

災害対策基本法第49条の10から第49条の13。

52)

従来は自分のパソコン等にダウンロード・インストールして利用していたようなソフトウェアやデータ等を、利用者がインターネットを通じてサーバにアクセスすることで必要に応じて利用できるサービス。写真や音楽等のファイルを保管するストレージサービスなどがある。

53)

「漏えい」のほか、「滅失」、「毀損」の事案を含む。また、各主務大臣において把握し、消費者庁に報告された事案に限る。

54)

消費者庁「平成24年度個人情報の保護に関する法律 施行状況の概要」。

55)

「消費生活センター等」とはPIO-NET端末の設置された消費生活センター等を指す。また、「消費生活センター等」受付分及び「国民生活センター」受付分は、2013年5月31日までに受付機関決裁済となったもの。「地方公共団体の個人情報保護条例所管部局等で受け付けたもの」は、同年6月28日までの国民生活センター受領分。

56)

PIO-NETに登録された2013年度の消費生活相談情報(2014年4月30日までの登録分)。

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