平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 【特集2】情報通信の発達と消費者問題 ~ネット社会に消費者はどう向き合うか~

第2節 情報通信の発達に伴う消費者意識の変化、消費者被害・トラブル等の状況

( 5 )ソーシャル機能を活用したウェブサービスの普及とそれに伴う消費者トラブル

近年のウェブサービスの特徴として、人と人とのつながり、コミュニケーションといったいわゆるソーシャル機能を活用したサービスが発達していることが挙げられます。これを消費者という視点で考えると、従来消費者は事業者と一対一で対峙していたために、情報力等で圧倒的に勝る事業者にはかないませんでしたが、ソーシャル機能の活用により消費者はインターネットを介した口コミなど様々な手段で各自の持つ情報を全国的・世界的なレベルで共有できるようになり、またこれまで事業者が仲介することで成り立っていた各種の取引もインターネットを介して個人間で直接やりとりができるようになるなど、消費者にとっても大きなメリットのあるものとなっています。また、SNS等のソーシャルメディアは基本的に無料で提供され、広告モデルに依存していることが多いため、こうしたソーシャルメディア上の広告を活用して販売促進を行っている事業者も数多く見られます。さらに、事業者自身がソーシャルメディアの持つソーシャル機能を活用して自ら情報発信し、インターネット上から実際の店舗への来店、購入につなげようというO2O(online to offline)の取組も活発に行われています。

一方でこうしたソーシャル機能には、玉石混交で情報過多のウェブ上の情報の中から有益な情報を抽出・選択することの難しさや、インターネットを介してやりとりをしている相手の信頼性を判断することの難しさなど、消費者一人一人に人や情報を見極める力が求められ、また、間違った情報が広範囲に拡散されやすい、匿名でのやりとりが多くトラブルが生じた際に相手を追跡することが困難といった特性から思わぬ被害が生じることもあります。

以下では、SNSなど最近のソーシャル機能を活用したウェブサービスに伴う消費者トラブルについて見ていきます。

①SNSに関するトラブル

利用者がインターネット上で情報を発信し形成していくソーシャルメディアでは、利用者同士のつながりを促進する様々な仕掛けが用意され、利用者が互いの関係を視覚的に把握できるよう工夫されており、近年若年層を中心に急速に普及が進んでいます。古くは電子掲示板(BBS)やブログから、最近ではSNS、ミニブログ、ソーシャルブックマーク、ポッドキャスティング、動画共有サイト、動画配信サービス、ショッピングサイトの購入者評価欄等を含む、幅広いサービスが提供されるようになっています。

特に、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及により、普通に生活していれば出会うことがなかった消費者同士が容易に出会うことができるようになったり、匿名のままでコミュニケーションすること等が可能になり、こうしたツールは消費生活の幅を大きく広げている一方で、それに起因した消費者トラブルも増加傾向にあります。

ここでSNSに関するトラブルの状況を見ると、「SNS」に関する消費生活相談件数は増加傾向にあり、2013年度は2009年度の約2倍となっています(図表2-2-45)

2013年度の「SNS」に関する相談は、性別では女性が5割を超えており、年代では20歳代が約3割と最も大きな割合を占め、30歳代が約2割となっています。ただし、平均年齢は2009年度の28.7歳から2013年度は34.0歳と年々上昇しており、今やSNSは多くの世代に広がり、それに関連してトラブルも増えていることがうかがえます。

相談内容としては、「SNSで知り合った相手から出会い系サイトに誘導された」、「SNSの知人から、マルチ商法に勧誘された」といったSNSで知り合った相手を介した消費者トラブルや、SNSに表示された広告がきっかけとなったトラブルなどが挙げられます。

SNSに関する2013年度の上位商品・サービスを見ると、1,301件と最も相談件数が多いのが「出会い系サイト」であり、SNS上での友人申請の後、サイトへ誘導されるケースが主な相談内容になっています(図表2-2-46)

また、SNSに表示された広告がきっかけとなったトラブルも多く、SNSの広告をきっかけに副業サイトに登録し、そこからメールのやり取りをしなければならないと誘導されたケースや、健康食品等の無料サンプルを試すつもりが定期購入となっていたケース等も見られます。

そのほか、個人情報の流出や退会手続等のSNS利用自体のトラブル、SNS上での嫌がらせ、なりすまし、架空請求等のデジタルコンテンツ、「オンラインゲーム」等があります。「相談その他(全般)」は、主にSNSをきっかけに知り合った知人とのトラブルが事例として挙げられます。以上のように、SNSに関連する最近の消費者トラブルは多種多様となっています。

②出会い系サイトや婚活サイトに関するトラブル

さきに述べたソーシャルメディアには含まれないものの、インターネット上で個人間の新たな結び付きを可能とするネットサービスとして、出会い系サイト、婚活サイトがあります。

SNSで知り合った相手との消費者トラブルについて触れましたが、最近では婚活サイトなどで知り合った相手から、将来のための財産形成や資産運用を口実に、投資用マンションなどを購入してしまったといったトラブルも起きており45)、2013年度に入り増加が目立っています(図表2-2-47)。いわゆるデート商法の一種ですが、SNSや婚活サイト等、インターネットがそのきっかけになっています。

性別で見ると、2013年度の相談では、女性が男性の約2倍で、女性の中で年代別で見ると30歳代が7割を占めています。

これまでのデート商法といえば、異性の販売員が名簿などを基にアポイントを取り、デートのような状況を演出、恋愛感情を利用し、アクセサリーや投資用ソフトなどを購入させるケース等が見られていましたが、SNS等をきっかけとするこの種のトラブルでは、勧誘者が本来のマンション勧誘の目的を隠して婚活サイト等に入り込み、対象者の年齢や、勤務先、収入、資産状況などを事前に十分把握した上でアプローチし、デート商法のような手法で勧誘を行っています。このような悪質商法に巻き込まれた場合、商品がマンションといった高額商品であるため経済的負担も大きく、更に金銭面のみならず、手口に気付いた後の精神的なダメージも大きくなります。

また、出会い系サイトの中には、サイト業者に雇われたサクラが異性、タレント、社長、弁護士、占い師などのキャラクターになりすまして、消費者の様々な気持ちを利用し、サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、その度に支払いを続けさせる手口(サクラサイト商法)が多く見られます。

③各種仲介サービスに関する問題

SNSや出会い系サイト、婚活サイトは、あくまで個人間の出会い、結び付きが目的となっていますが、消費者同士が「商取引」を気軽に行うことを目的としたいわゆる「仲介サービス」も多数存在しています。

具体的には、個人が自己の所有物を別の個人に販売するオークションサイト、個人が製作した商品(手芸品、デジタルコンテンツ等)を販売するサイト、個人がサービス(いわゆる在宅ワーク、家事代行等)を提供するために申し出るサイト等があります。さらに、小規模な事業者や個人が、ビジネスプロジェクトやアイデアをインターネット上で提示し、それに対し、不特定多数の投資家から出資を募る仕組みである「クラウドファンディング」も欧米を中心に盛んになっており46)、一般消費者も気軽に出資できるようになってきています。

双方がルールを守って適切に取引を行っていれば非常に便利なサービスですが、サービスの仕組みや利用ルールが明確に定まっていない等、特に黎明期に多いサービスを提供する事業者側の問題や、その利用ルールの隙を縫って悪質事業者が介入してくるケース等により、消費者トラブルが発生することがあります。

例えば、1990年代後半に登場したインターネットオークションでは、当初は代金を振り込んだにもかかわらず商品が届かないといった詐欺的行為が横行していましたが、事業者側の是正の取組による効果もあり、消費生活相談件数は20歳代、30歳代を中心に減少傾向にあります(図表2-2-48)。しかし、最近ではスマートフォンの普及により、無料のフリマ(フリーマーケット)アプリが登場し、スマートフォンで商品を撮影して出品できる手軽さから人気が出ている一方で、そのアプリの利用に関係した消費生活相談も寄せられており、個人間の取引という性格上、トラブルになった際に返金等が困難になる場合もありますので47)、仕組みをよく理解した上で慎重に利用する必要があります。

また、2014年3月17日、ベビーシッターを名乗る男性の自宅から男児が遺体で発見されるという、大変痛ましい事件が発生しました。男児を預けた母親がインターネット上のベビーシッター仲介サイトを利用していたこと、そのサイトにおいて容疑者が偽名登録をしていたこと等から、仲介サイトの仕組みが問題視されました。共働き家庭やいわゆるシングルマザーの増加、核家族化が進む中、自宅で子どもを預けることができるベビーシッターは必要とされる存在であり、特に個人契約のベビーシッターは安価に依頼できることから、今後もこうした仲介サイトのニーズは高いものと考えられます。事業者や個人シッターの側で消費者保護に留意してサービスを提供することが求められるほか、利用する消費者の側でも、ベビーシッターとの事前の面会や身分証明書の確認、ベビーシッターの連絡先や保育場所の確認、登録証の有無や保険加入有無の確認等を行うことが重要です。

さらに、昨今では、仲介サービスのようなサービスを活用しなくても、ある程度のスキルがあれば個人が気軽にウェブサイトを構築し、新たに商品・サービスをインターネット経由で提供することが可能な時代です。消費者トラブルとは、一般的には消費者と事業者の間のトラブルを指しますが、こうした個人間の取引の拡大により、消費者と事業者の垣根が曖昧になっていくことで、消費者トラブルの性質も変化していく可能性があります。商品・サービスを提供する側は相応の責任を持ち、また提供を受ける側はトラブルに遭わないよう慎重に判断することが、今後一層必要になるものと考えられます。

④各種口コミ・評価サイト等の情報操作に関する問題

近年、電化製品、飲食店、化粧品など様々な商品・サービス分野において、口コミ・評価をまとめたサイトが消費者に人気です。また、通販サイトのユーザー評価の投稿欄や、さきに述べたSNS等のソーシャルメディアを通じて、消費者が商品・サービスの評価について各自で情報発信することが可能となっています。

他の消費者による口コミ・評価は、消費者が商品・サービスを選択する上で有用な情報源の一つとなっていますが、一方で誤情報や故意にゆがめられた評価を流通させることも比較的容易であり、中には事業者によってステルスマーケティング48)に利用される例も見られます。

2012年1月には、口コミサイト(グルメサイト)「食べログ」を対象とした口コミ代行業者が複数存在することが発覚し、それを受けて消費者庁では同年5月に「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の一部改定を行いました。

こうした情報操作は消費者の自主的・合理的な選択を阻害するものであり、事業者がこのような不適切な広告手法に頼らないよう、その遵法意識が問われるとともに、消費者の側でも、口コミ・評価が妥当なものかを見極める力が求められるようになっています。

図表2-2-45 2013 年度の「SNS」に関する相談は2009年度の2 倍に

図表2-2-46 2013 年度の「SNS」に関する相談は多種多様

図表2-2-47 「婚活サイト等のマンション勧誘」に関するトラブルが最近見られる

図表2-2-48 「インターネットオークション」に関する相談は20歳代、30歳代を中心に減少傾向


45)

国民生活センター「婚活サイトなどで知り合った相手から勧誘される投資用マンション販売に注意‼―ハンコを押す相手は信ジラレマスカ?―」(2014年1月23日公表)。

46)

平成25年版情報通信白書(総務省)第1部第2章第2節。

47)

フリマアプリでは、代金のやり取りは個人間ではなく運営会社を通して行われ、商品が買い手に到着した後に出品者に運営会社から代金が支払われるシステムになっていることが多いとされるが、トラブルが発生しても、運営会社の規約に規定がなければ解決は個人間の話し合いに委ねられ、返金等が困難になる場合もある。

48)

特定の商品の宣伝であることを、消費者に隠して行うマーケティングの手法。口コミサイト等を通じて行われるが、事業者が自ら又は第三者に委託して掲載した「口コミ」が、実際のもの又は競合事業者のものより著しく優良又は有利であると消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上問題となる。

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