平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 【特集2】情報通信の発達と消費者問題 ~ネット社会に消費者はどう向き合うか~

第1節 情報通信社会の現状

( 2 )情報通信の発達による消費社会の変化

●インターネットから実店舗での消費行動へと誘導していくO2Oの動きが活発化

インターネットの普及による我が国の電子商取引市場の拡大や、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル機器の普及を背景として、電子商取引の分野では、O2O(Online to Offline)と呼ばれるインターネット上の販売と実店舗による販売の連携・融合が注目を集め、インターネット販売中心の事業者が物流網を強化したり、数多くの品目を扱ういわゆる「ネットスーパー」を開設する一方で、実店舗中心の事業者もインターネットの活用に積極的になりつつあり、こうした動きが消費者の消費行動にも影響を与えています。

経済産業省「平成24年電子商取引に関する市場調査」によると、インターネット経由で得た情報をきっかけに、店頭に赴いた経験のある人は半数以上に上っており、インターネットから実店舗での消費行動へと誘導していくO2Oの動きが活発化しています(図表2-1-13)

●電子マネー等の普及及びインターネット上での決済手段の多様化

私たちが商品・サービスを購入・利用する際の決済手段は、情報通信技術や機器の発達とともに多様化が進んでおり、近年では、現金での支払いやクレジットカード決済に加えて、電子マネーの普及が進んでいます。

総務省「家計消費状況調査」によると、電子マネーの世帯普及率(電子マネーを持っている世帯員がいる世帯の割合)は、2008年には24.4%でしたが、2013年には43.2%まで上昇しています。また、電子マネーを利用した世帯員がいる世帯の割合も上昇傾向にあります(図表2-1-14)

また、近年ではインターネットを経由した取引が増加していますが、こうしたインターネット上での取引における決済手段も電子化・多様化が進んでいます。

総務省「平成24年通信利用動向調査」によると、インターネットで商品・サービスを購入する際に利用される決済手段としては、「クレジットカード払い(配達時を除く)」の割合が52.6%と最も多く、前年と比べてもその割合は増加しています(図表2-1-15)。また、インターネットで購入した商品・サービスの代金をコンビニエンスストアカウンターで支払うことが可能な場合もあり、約3割の人が利用しています。このほか、商品配達時の代金引換、銀行・郵便局の窓口・ATMでの支払い、インターネットバンキング・モバイルバンキングによる支払い等、様々な決済手段が用いられるようになっています。

一方、インターネット取引の普及や決済手段の電子化が、消費者被害の発生に深く関わってくるケースも出てきています。

例えば、インターネット上の店舗で商品を購入し、クレジットカードで決済したにもかかわらず商品が届かないといった事例や、出会い系サイト(サクラサイト)や、有料メール交換サイト等において、クレジットカード決済によって高額なポイント等を購入させられてしまったなどの事例が見られます。こうした悪質な事業者は、消費者からの苦情を発生させるおそれがあるなどの理由により、直接国内のクレジットカード会社の加盟店にはなれないことから、海外のクレジットカード会社と加盟店契約を結んだクレジットカード決済代行会社24)( 以下「決済代行業者」という。)を経由して行われているものが多く、その場合の契約関係も複雑化しています。

こうした決済代行業者を介している場合、カード会社による加盟店審査が不十分となり、結果として悪質な事業者が加盟店となっているケースがあるため、カード会社による加盟店審査の厳格化や加盟店による不良取引の監視等を強化していくことが重要となります。

また、最近では、クレジットの国際ブランドが付いたプリペイドカード、いわゆる「ブランドプリカ」が使われるようになっています。プリペイドカードの一種であり、未成年者やクレジットカードを持つことができない層でも簡単に入手することができるもので、あらかじめチャージされた金額の範囲内ではあるものの機能としてはクレジットカードと同様であり、さきに述べたクレジットカード決済と同様の被害が発生する可能性があります。

●ビッグデータの活用により、企業は消費者行動の把握が容易に

情報通信技術や機器の発達により、消費者によるインターネットを通じた商品の購入やサービスの利用を通じて、購入履歴や移動履歴等の莫大なデータが蓄積されるようになりました。こうしたデータは、企業にとって消費者のし好や消費行動の傾向を読み解く上で重要なデータとなり、実際に、こうしたビッグデータ25)をマーケティングや商品開発に活用して、商品機能やサービスの質的向上を図っている企業も出てきています。

一方で、消費者個人に関する大量の情報が蓄積・利活用されることによる、プライバシー等の面における不安も生じています。

●震災とICTの活用等

2011年3月11日の東日本大震災の発生は、ICT利用を促進する大きなきっかけとなりました。まず、地震発生直後から電話回線を通じた通話が著しく制限される中、インターネットを通じた情報流通は比較的機能し、また、流通した情報は広く共有され集合知として活用されるとともに、協調行動の一助となりました。

具体的には、ポータルサイト事業者により、地震や津波、避難所やライフライン、電力需給、原子力発電所、募金、被災者支援等の情報をまとめた特設ウェブサイトや、安否情報を検索・登録・閲覧するためのツールが開設され、効果的な情報収集・提供が行われたり、電気通信事業者により災害用伝言サービスが提供され、被災者支援に活用されました。また、業態の異なる事業者間の自主的な取組・連携により、テレビを受信できない被災地や海外在住者への災害情報提供を目的として、動画サイト運営事業者が各テレビ局の地震関連報道番組をインターネット上で同時に放送したり、電子商取引のウェブサイト運営事業者が地方公共団体とも連携しながら、被災地の支援物資のニーズとユーザーの支援申出とのマッチングを実施したりするなど、震災を契機として従来にはなかった新しいサービスが登場しました。

このほか、行政機関や電力会社等が保有する情報を2次利用しやすい形式(JPEGやPDFではなくCSV等の形式)で公表するよう、関係府省庁から要請26)した結果、電力会社が保有する電力需給情報や計画停電情報等がCSV形式で公表され、一部先行していたサービスと合わせ、多様な新しいサービスが登場しました。さらに、行政機関によるTwitter等のソーシャルメディアを利用した情報発信が活発化しました27)

他方、東日本大震災発生直後のこうしたICTを活用した情報流通の場面では、高齢者を始めとした「ICTリテラシー」(ICT機器を使いこなす力)が劣る人への情報伝達の遅延が見られたほか、避難所におけるインターネット環境の整備等に関する地域間格差が発生するなどの課題も指摘されました。また、「Twitter」や「Facebook」といったソーシャルメディアが、情報の伝達に大きな影響を与え、即時性と事実を伝えるメディアに成長していることが実証された一方で、こうしたメディアを経由して得られた断片的な情報から判断した一部の消費者の行動により、首都圏のスーパーマーケットや小売店で米や水等の買占めが発生するなどの問題も発生しました。

このように、東日本大震災では、インターネットを利用した安否確認や情報収集が効果的に行われた一方で、消費行動ではインターネットを活用したソーシャルメディア等が買占めや風評被害の温床になった場面も見受けられるなど、災害時のインターネット、ソーシャルメディアの利用の在り方が問われました。私たち消費者には、特に災害時のような社会が混乱状態にある場面では、様々な媒体から情報を取得し、その情報を正しく使いこなす「情報リテラシー」が求められます。

図表2-1-13 半数以上がインターネット経由で得た情報をきっかけに店頭に赴いた経験あり

図表2-1-14 電子マネーの保有世帯の割合は約4割

図表2-1-15 インターネットで購入する際の決済方法は「クレジットカード払い」が52.6%と最も多い


24)

決済代行業者は、アクワイアラー(加盟店契約会社)と加盟店契約を結んで、クレジットカード加盟店となり、 商品等の販売事業者にクレジットカードの利用を可能にしている。

25)

平成25年版情報通信白書(総務省)によると、ビッグデータの概要は以下のとおり。
 ・ ビッグデータの定義は依然として曖昧であるが、我が国でも様々な場面で言及され、実際の活用事例も紹介されるようになってきている。
 ・ ビッグデータの特徴について説明すると、データの利用者やそれを支援する者それぞれにおける観点からその捉え方は異なっているが、共通する特徴を拾い上げると、多量性、多種性、リアルタイム性等が挙げられる。
 ・ ビッグデータと一口に言っても、それを構成するデータは出所が多様であるため様々な種類に及んでいる。その内訳を見ると、POS(Point of Sales:販売時点)データや企業内で管理する顧客データといった構造化データもビッグデータに含まれるが、最近、注目を集めているのは、構造化されていない多種・多量なデータ(非構造化データ)がICTの進展に伴い、急激に増加し、かつ、分析可能となっている点にある。

26)

経済産業省から電力会社等の民間企業へ、総務省から行政機関へ要請を実施した。

27)

2011年3月13日から首相官邸Twitterが開始された。

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