平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第2章 【特集2】情報通信の発達と消費者問題 ~ネット社会に消費者はどう向き合うか~

第1節 情報通信社会の現状

( 1 )情報通信技術(ICT)関連市場の進展

●インターネット上で流通する情報量は飛躍的に増加

情報通信技術の発達と情報通信機器・サービスの急速な普及により、インターネット上で流通する情報量は飛躍的に増加しています。我が国のブロードバンド契約者15)の総ダウンロードトラヒック(ネットワーク上を移動する音声や文書、画像等のデジタルデータの情報量)を見ると、この10年間で約10倍に増えています(図表2-1-1)

●スマートフォン、タブレット型端末など様々な情報通信機器が急速に普及している

パソコン、携帯電話・PHS等の情報通信機器は、1990年代後半から2000年代前半にかけて急速に普及しました。このうち、携帯電話・PHSの世帯普及率を見ると、9割以上に上っています。特に、スマートフォンの普及が急速に進んでおり、2010年に9.7%でしたが2012年末には49.5%16)と5倍以上の普及率となっているほか、タブレット型端末も2010年末に比べて約2倍の普及率となりました。こうしたスマートフォンやタブレット型端末への移行を要因の一つとして、近年ではパソコンや固定電話の世帯普及率が減少傾向にあります。

このほか、既存の家電製品等もインターネットとの結合により「情報家電」として世帯普及率が上昇し始めています(図表2-1-2)

●若年層を中心に様々な情報通信機器の利用が進んでいる

消費者庁が2013年度に実施した「消費生活に関する意識調査」によると、現在利用している情報通信機器のうち、「パソコン」については20歳代~70歳代の全てにおいて85%以上の高い利用率となっています。また、「携帯電話・PHS」と「スマートフォン」を合わせた利用率についても20歳代~70歳代の全てにおいて80%以上と高くなっています。このうち、急速に普及が進んでいる「スマートフォン」の利用率を見ると、40歳代では43.8%、50歳代では30.5%、60歳代では15.4%と世代が上がるにつれて利用率が低くなっていますが、20歳代~30歳代では53.4%と半数以上が利用しており、20歳代~30歳代を中心にスマートフォンの利用が進んでいます。

このほか、「タブレット型端末」や「ゲーム専用端末」、「携帯音楽プレーヤー」等もスマートフォンと同様に20歳代~30歳代の利用率が高い傾向にあり、総じて若年層を中心に様々な情報通信機器の利用が進んでいることが分かります(図表2-1-3)

●インターネットの利用率は、60歳以上でおおむね拡大傾向に

総務省が実施した「平成24年通信利用動向調査」によると、インターネット利用率(年齢階層別)は、13~49歳までの年齢階層では9割を超える高い利用率であるのに対し、60歳以上の年齢階層では、他の年齢階層と比べると低い状況にあるものの、ここ5年間はおおむね増加傾向にあります(図表2-1-4)。これは、インターネット利用が高齢者にも普及したことに加え、元々インターネットを利用していた層が高齢化したことによるものと考えられます。

●インターネットを利用した取引が増加、情報通信産業は経済的に重要な位置付けに

我が国のBtoC電子商取引の市場規模は2005年の3.5兆円から2012年の9.5兆円となり、7年間で2.5倍以上に増加しています(図表2-1-5)。また、情報通信産業GDP(実質)を見ると、1995年は約3兆円でしたが、2011年には約5兆円へ増加しています。また、全産業に占める情報通信産業GDPの割合は、1995年は6.0%でしたが、2011年には10.5%となり、経済的にも重要な位置付けとなってきています(図表2-1-6)

●様々な商品・サービスがインターネット経由で取引されるように

インターネットでは様々な商品・サービスの購入・取引、デジタルコンテンツの購入や金融取引等が可能となり、実際に多くの消費者がこうした利便性の高いインターネット経由の取引を行うようになっています。

総務省が実施した「平成24年通信利用動向調査」によると、インターネットを経由して購入又は取引した商品・サービスの中で最も多かったのは「趣味関連品・雑貨」と「書籍・CD・DVD・ブルーレイディスク」の37.6%、次いで「化粧品、衣料品・アクセサリー類」と続いています(図表2-1-7)

また、デジタルコンテンツの中で最も多かったのは、「地図情報提供サービス」が21.2%、次いで「ニュース、天気予報」の20.4%、「音楽(※デジタル配信されるもの)」が20.3%と続いており、消費者がインターネットを経由して様々な分野の商品・サービス等の取引を行っていることが分かります(図表2-1-8)

さらには、一般用医薬品のインターネット販売が解禁される予定となっている17)ほか、不動産取引における重要事項説明に際しての対面原則についても見直しが検討されることとなっている18)など、これまで対面販売が原則となっていた分野でも、インターネットを経由した販売方法の導入やその検討が進んでいます。

●従来型の携帯電話からスマートフォンへの移行を背景として、スマートフォン等市場やモバイルコマース市場の規模が拡大している

従来型の携帯電話(フィーチャーフォン)からスマートフォンへの移行を背景として、2012年のフィーチャーフォン市場規模は4,793億円となり、前年比で約2.7割減となった一方、スマートフォン等市場規模は約4.6倍の3,717億円となりました(図表2-1-9)

スマートフォン等市場の中でも、特にゲーム・ソーシャルゲーム等市場規模の拡大が進んでおり、2012年は前年比約5.4倍の2,607億円となっています(図表2-1-10)

このほか、モバイルコマース市場規模は、1兆4,997億円となり、前年比約1.3倍となりました。パソコンと同等の表現力を持ち、携帯電話と同様に時と場所を選ばずに簡単に利用できるスマートフォンの増加により、ユーザー層、利用機会ともに拡大しています(図表2-1-11)

●新たなサービスの普及

インターネット利用が一般に普及し始めた当初は、多くの人にとってはウェブブラウザによるウェブサイト閲覧と電子メールのやりとりが大半でしたが、その後の技術進歩等により、現在ではインターネットを通じて多種多様なサービスが提供されるようになっています。中でも近年成長が著しい分野としては、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のような人と人とのコミュニケーションを前提としたサービスや、個人の属性・ウェブ閲覧履歴・購買履歴・位置情報などのパーソナルデータ19)を活用したきめ細かなサービスがあります。また、こうしたサービスは以前のようなパソコンでの利用のみを前提としたものではなく、携帯電話・スマートフォンにも対応しているのも最近の特徴の一つです。これらのサービスの充実により個々の利用者はより効率的、即時的に充実感のあるインターネットの利用が出来ますが、一方でSNSを通じた対人関係でのトラブルやパーソナルデータの意図せざる利用・漏えいなどによる弊害も生じるようになっています。特に、消費者としてのインターネット利用に焦点を当てた場合、こうした新たなウェブサービスにより消費者トラブルに巻き込まれるケースも増えています。

「SNS」とは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(Social Networking Service(Site))の略で、インターネット上で友人を紹介しあい、個人間の交流を支援するサービス(サイト)のことをいい、「Facebook」や「mixi」などを始めとして多くのサービスが存在します。SNSの会員は自身のプロフィール、日記、知人・友人関係等を、ネット全体、会員全体、特定のグループ、コミュニティ等を選択の上公開できるほか、SNS上での知人・友人等の日記、投稿等を閲覧したり、コメントしたり、メッセージを送ったりすることもできるなど、様々なスタイルにより利用者間相互のコミュニケーションを促進する仕組みが導入されているのも大きな特徴です20)

このほか、近年ではスマートフォンの普及により、地図を用いたアプリケーションや乗換・歩行案内のアプリケーションが広く浸透するとともに、GPSの位置情報や地図を用いた位置情報サービスが多数普及しています。また、従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供する「クラウドサービス」21)などこれまで無かった新たなサービスが出てきています。

●インターネットの広告利用

消費者がインターネットをより日常的に利用するようになるにつれて、インターネット広告の市場規模も大きくなっています。以前は、不特定多数に広告する「マス広告」が主流でしたが、近年では、消費者の興味を引くことで広告をより多く見てもらい、その後の消費行動につなげるために、ICTを活用して特定の対象に狙いを定めて広告する「行動ターゲティング広告」などターゲティング広告の手法が発達しています(図表2-1-12)。「行動ターゲティング広告」とは、蓄積されたインターネット上の行動履歴(ウェブサイトの閲覧履歴や電子商取引サイト上での購買履歴等)から利用者の興味・し好を分析して利用者を小集団(クラスター)に分類し、クラスターごとに広告を出し分けるサービスです22)

ターゲティング広告の発達は、広告効果や利便性について評価される一方、自らの検索履歴や閲覧履歴等の目的外使用などプライバシーやセキュリティ上の懸念・不安を指摘する声も上がっています。

図表2-1-1 情報通信の発達によりインターネット上で流通する情報量は飛躍的に増加

図表2-1-2 情報通信機器の普及が急速に進んでいる

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図表2-1-3 情報通信機器の利用度は若者を中心に高くなっている

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図表2-1-4 インターネットの利用率は、60歳以上の層でおおむね拡大傾向にある

図表2-1-5 電子商取引の市場規模は7 年で2.5倍以上に

図表2-1-6 GDPに占める情報通信産業の割合は増加傾向

図表2-1-7 様々な商品・サービスがインターネット経由で取引されるようになってきている(商品・サービス)

図表2-1-8 様々な商品・サービスがインターネット経由で取引されるようになってきている(デジタルコンテンツ)

図表2-1-9 スマートフォンへの移行を背景として、スマートフォン等市場やモバイルコマース市場規模が拡大

図表2-1-10 スマートフォン等向けのモバイルコンテンツ市場規模は、1 年で4.6倍に

図表2-1-11 モバイルコマース市場規模は、3 年で1.5倍以上に

図表2-1-12 代表的なターゲティング広告の例


15)

FTTH(Fiber To The Homeの略。光ファイバケーブル。)、DSL(Digital Subscriber Lineの略。デジタル加入者回線。電話用のメタリックケーブルにモデム等を設置することにより、高速のデジタルデータ伝送を可能とする方式の総称。)、CATV(ケーブルテレビ。)、FWA(Fixed Wireless Accessの略。加入者系無線アクセスシステム。P-P(対向)方式、P-MP(1対多)方式があり、それぞれ最大百数十Mbps、10Mbpsの通信が実現可能。)の契約者。

16)

内閣府「消費動向調査」(2014年3月)によれば、2014年3月末時点のスマートフォンの世帯(2人以上世帯)普及率は54.7%。

17)

一般用医薬品のインターネット販売に関する最高裁判決等を踏まえ、薬事法及び薬剤師法の一部を改正する法律(平成25年法律第103号)が2013年12月13日に公布され、2014年6月12日が施行期日となっている。

18)

「IT利活用の裾野拡大のための規制制度改革集中アクションプラン」(2013年12月20日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)において、不動産取引の契約に際して宅地建物取引主任者が行う重要事項説明等について「国土交通省は、インターネット等を利用した、対面以外の方法による重要事項説明について、具体的な手法や課題への対応策に関する検討に着手し、平成26年6月に中間とりまとめを行い、平成26年中に結論を得て、必要な方策を講じる。また、契約に際して交付する書面の電磁的方法による交付の可能性についても検討を行い、平成26年中に結論を得る。」とされている。

19)

「パーソナルデータ」は、「個人の行動・状態等に関するデータ」(パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針の概要)などとされており、個人情報保護法における「個人情報」より広い範囲を含み得る概念。

20)

平成25年版情報通信白書(総務省)(用語解説)。

21)

平成25年版情報通信白書(総務省)(用語解説)によると、インターネット等のブロードバンド回線を経由して、データセンタに蓄積されたコンピュータ資源を役務(サービス)として、第三者(利用者)に対して遠隔地から提供するもの。なお、利用者は役務として提供されるコンピュータ資源がいずれの場所に存在しているか認知できない場合がある。

22)

総務省「利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会」第二次提言。

23)

総務省 情報通信政策研究所「行動ターゲティング広告の経済効果と利用者保護に関する調査研究 報告書」(2010年3月)。

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