平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集1】食をめぐる消費者問題 ~食への信頼の回復と安心の確保に向けて~

第2節 食の安全・安心の確保

( 2 )食品中の放射性物質への対応

●食品中の放射性物質

2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、環境中に放射性物質が放出され、消費者の食品に対する不安が高まりました。このため、同年3月17日厚生労働省は、食品の安全性を確保するための緊急時の対応として、当時の原子力安全委員会が定めていた「原子力施設等の防災対策について」における飲食物の摂取制限に関する指標を準用し、食品衛生法に基づく食品中の放射性物質の暫定規制値を定めました。

その後、食品安全基本法の定める手続の下、食品安全委員会における食品健康影響評価を始め、関係府省庁における検討を経て、食品衛生法に基づく食品中の放射性物質(放射性セシウム)の基準値が定められ、2012年4月1日から施行されています。現在も引き続き、地方公共団体により食品の検査が続けられており、基準値を超える食品が地域的な広がりをもって見付かった場合には、その品目の出荷が止められています。

しかしながら、今も福島県を始めとする被災地産の食品の購入をためらう風潮は残っています。

このため、消費者庁では、消費者が不正確な情報や思い込みに惑わされることなく、自ら安全な食品の選択が可能となるように支援するため、関係府省庁、地方公共団体、国民生活センターが連携し、①消費者サイドでの放射性物質検査体制の整備、②消費者への分かりやすい情報提供、③消費者とのリスクコミュニケーション(意見交換会等)の積極的な開催等、食品中の放射性物質に関する消費者理解の増進に取組んできました。

●消費者サイドでの放射性物質検査体制の整備

放射性物質による食品の汚染に対し、政府は、食品の出荷・摂取制限の設定とともに、流通する食品の検査体制を整備しました。また、消費者庁では、住民が自宅の庭等で育てた自家消費作物等の食品を持ち込んで検査できるようにするため、国民生活センターと共同で、2011年度より希望する地方公共団体に放射性物質検査機器を貸し出しています。あわせて、検査結果の信頼性を担保するため、検査を担当する地方公共団体の職員等を対象とした研修会も随時開催しています。

なお、配備した検査機器による検査結果は、各地方公共団体が公表しており、消費者庁のウェブサイト10)からも確認できるようにしています。

●消費者への分かりやすい情報提供

消費者庁では、消費者に分かりやすく正確な情報を提供するため、2011年度以降、食品・水道水に含まれる放射性物質の検査結果や、出荷・摂取制限の設定状況等を取りまとめて、ウェブサイトで公開しています。また、放射線や放射性物質の基礎から、食品中の放射性物質の基準値や検査結果等について分かりやすく説明する冊子「食品と放射能Q&A」(2011年5月30日初版発行、2013年9月2日時点第8版)や、リーフレット「食べ物と放射性物質のはなし」等を作成、配布するとともに、ウェブサイトでも公開しています。そのほか、政府インターネットテレビに食品中の放射性物質の現状についてまとめた動画を作成、掲載しています11)

食品と放射能Q&A   食べものと放射性物質のはなし( 3 部作)1 食べものと放射性物質のはなし( 3 部作)2 食べものと放射性物質のはなし( 3 部作)3

食品と放射能Q&A

 

食べものと放射性物質のはなし( 3 部作)

●消費者とのリスクコミュニケーション(意見交換会等)の積極的な取組

2013年度までに消費者庁では、関係府省庁、地方公共団体、消費者団体等との連携による開催や、地方公共団体・消費者団体等が開催する講演会等への協力(講師派遣・講師紹介・後援等)を合わせて、消費者とのリスクコミュニケーション(意見交換会等)を319回(2011年度45回、2012年度175回、2013年度99回)実施しています。

また、2013年度は、地域に根ざした情報提供の機会を設けることを目的とし、消費生活相談員、保健師、栄養士、保育士、学校給食関係者、JA職員等を対象に、正確な情報提供ができる専門家(コミュニケーター)の養成研修を全国66か所で開催し、受講者は約3,400名(2014年3月31日時点)に達しました。研修受講後に、コミュニケーターによるミニ集会等を始めとした情報発信を促すため、コミュニケーターへの情報提供を目的としたウェブサイトの開設、食品中の放射性物質の現状をまとめた視聴覚教材(DVD)・リーフレットを作成、提供を行いました。


消費者とのリスクコミュニケーション(意見交換会等)の積極的な取組1 消費者とのリスクコミュニケーション(意見交換会等)の積極的な取組2

●地方消費者行政活性化基金の活用

被災4県(岩手、宮城、福島、茨城の各県)において、地域の実情に応じて食品等の放射性物質検査の体制整備、食の安全性等に関する消費生活相談対応等に取り組めるよう、2012年度より東日本大震災復興特別会計による「地方消費者行政活性化基金」の上積みを行っています。さらに、この基金を活用し、国が先駆的な政策テーマの1つとして「福島第一原子力発電所の事故による食品の風評被害の防止」を示し、地方公共団体が行う事業を支援しています。

●東北未来がんばっぺ大使の任命

2013年9月に、生産者による食品の安全性確保や復興を目指した取組等を消費者に広く知っていただくために、消費者庁は女優の秋吉久美子さんを「東北未来がんばっぺ大使」に任命し、被災地の生産者の訪問等の活動を行っています。活動内容については、ウェブサイトやリーフレットで広く紹介しています(コラム3参照)。

●放射性物質に関する消費者の意識の変化

消費者庁では、2013年2月、同年8月及び2014年2月に、被災地域及び被災地産品の主要仕向け先の都市圏の消費者約5,000人を対象として、インターネットを通じた消費者意識の実態調査を行いました。

食品がどこで生産されたかを気にする理由で最も多いのは、 「品質(味)が異なるから」で29.5%でした。「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」は、2014年2月には、それ以前の2回の調査時より減少し21.0%でした(図表1-2-5)

「放射性物質の含まれていない食品を買いたいから」と回答した人に対して、「食品を買うことをためらう産地」について聞いたところ、「福島県」と回答した人は15.3%、「被災地を中心とした東北(岩手県、宮城県、福島県)」と回答した人は11.5%と、2013年2月の第1回調査以降、いずれもためらう人の割合が低下しています(図表1-2-6)

これらの結果から、少しずつではあるものの、消費者の理解が進んでいることがうかがえます。消費者庁では、関係府省庁とも連携し、今回の調査結果も踏まえつつ、今後とも、消費者に対して食品中の放射性物質に関する正確な情報提供を行い、消費者理解の増進に努めていきます。

●放射性物質検査結果

放射性物質検査結果12)によると、農畜産物に含まれる放射性セシウムの濃度水準は年々減少しており、2013年度の農産物については「野菜」、「果実」等を始め、多くの品目で基準値を超過したものは検出されませんでした。また、「水産物」、「きのこ・山菜類」は、302件、194件が基準値を超過しましたが、検査を実施したもののうち、1.5%、2.6%程度にとどまっており、超過割合も減少しています(図表1-2-7)

図表1-2-5 食品がどこで生産されたか気にする理由として、産地によって品質(味)が異なるからと回答した人が最も多い

図表1-2-6 福島産など東日本産の購入をためらう人は減少傾向

図表1-2-7 食品中の放射性物質の検査結果


10)

http://www.caa.go.jp/jisin/kensakiki.html

11)

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg8196.html

12)

原子力災害対策本部が定めた「検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方」を踏まえ、厚生労働省が示した「地方自治体の検査計画」に基づき、各都道府県等で実施されている。

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