平成26年版消費者白書

第1部 消費者行動・意識と消費者問題の現状

第1章 【特集1】食をめぐる消費者問題 ~食への信頼の回復と安心の確保に向けて~

第2節 食の安全・安心の確保

( 1 )冷凍食品の農薬混入事案

●アクリフーズ事案の発覚までの経緯

2013年12月29日、株式会社マルハニチロホールディングス及び同社の連結子会社である株式会社アクリフーズ(当時。以下「(株)アクリフーズ」という)では、群馬工場で生産された冷凍食品の一部から、本来含まれることのない農薬であるマラチオン8)が検出されたため、同一工場で生産している全商品を、賞味期限にかかわらず自主回収する旨の発表を行いました。

最初に、消費者から「群馬工場生産のミックスピザから、石油・機械油のような臭いがする」との異臭苦情の申出があったのは11月13日であり、その後も同様の異臭申出が複数あったことを受けて、外部検査機関を通じて臭気分析定性検査や残留農薬検査等を行いました。

残留農薬検査の結果、12月27日にピザ1検体より2,200ppmの濃度のマラチオンが検出され、商品の自主回収に至りました。

●冷凍食品に関する消費生活相談の状況

(株)アクリフーズは回収開始当時、年末年始ということもあり、自社のコールセンターに用意できた回線数が50台未満でした。一方、消費者から同社への電話が殺到し、同社に電話がつながらない状態が続くという事態となりました。

そこで消費者庁は(株)アクリフーズに対して電話回線の増設を要請するとともに、消費者の身近な相談窓口である消費生活センターと消費者ホットラインによる相談受付について周知しました。

この結果、多くの消費者から「(株)アクリフーズに電話がつながらず困っており、商品を保有している場合の対処方法を教えてほしい」といった内容の相談が、全国の消費生活センター等に寄せられ、2013年度の(株)アクリフーズの「冷凍調理食品」に関する相談は3,707件となりました。

なお、(株)アクリフーズでは、1月9日には110回線、1月11日には210回線に増設したため、これ以降、全国の消費生活センターへの相談件数は減少しています(図表1-2-1)。消費者の安全に関する情報を発信する事業者は、多くの消費者からの相談を受け付けるための体制を早期に構築することが必要となります。

(株)アクリフーズの「冷凍調理食品」に関する相談を性別・年代別に見ると、購入者は女性が約8割を占め、30歳代~60歳代までの年代が約4分の3を占めています(図表1-2-2)。また、地域別に見ると「南関東」「近畿」「東海」といった大都市を含む地域での相談件数が多くなっていますが、工場のある関東だけでなく全国各地から相談が寄せられています。

一方、(株)アクリフーズの「冷凍調理食品」のうち生命身体に関する危害情報は、961件でした。危害を訴えた人は男性38.1%、女性53.5%と、購入者と比較して性別の差が少ないことが分かります(図表1-2-3)。危害を訴えた人を年代別に見ると、未成年者が32.3%と、比較的若年層に多いこと分かります。

●消費者庁の対応

消費者庁は、(株)アクリフーズの12月29日の発表を受け、30日に消費者に向けて「(株)アクリフーズ群馬工場が製造した冷凍食品は食べずに返品を」という内容の注意喚起を行うと共に、消費者庁ウェブサイト内の「リコール情報サイト」に商品情報を掲載しました(図表1-2-4)

2014年1月5日、消費者庁は、プライベートブランド商品を含む回収対象商品のパッケージ画像入りのリストと、消費生活センター等と消費者ホットラインによる相談受付の紹介を公表しました。

1月6日、都道府県等の消費者行政担当部署に対して、(株)アクリフーズ内の消費生活センター専用電話回線の案内や同センター用に作成したお客様照会の際に使用するQ&Aの送付等の本事案に関する情報を提供するとともに、1月7日には、冷凍食品事案に関する重大事故等の健康被害の情報が寄せられた場合の消費者安全法に基づく速やかな通知を依頼しました。

1月8日、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)が、(株)アクリフーズの幹部と面会し、「消費者被害が生じ得る事案が発覚した場合は消費者へ速やかに情報提供を行うこと」「行政に対しても曜日や時間にかかわらず速やかに報告すること」「回収対象商品、特に「アクリフーズ群馬工場」の記載のないプライベートブランド商品については、消費者が該当商品であることを認識できるように情報提供を行うこと」を要請しました。

1月14日、関係府省庁の局長級で構成される消費者安全情報総括官会議を開催しました。これは、事業者による自主回収発表から約2週間が経過しても事業者への電話相談が増え続けていることと、関係行政機関等への迅速な情報提供、プライベート商品を含む消費者への情報周知に関し、関係府省庁や関係業界を含めた取組が必要と判断したことによるものです。

その後、容疑者が逮捕、起訴され、事件の概要が徐々に明らかになりつつあることから、再発防止に向けた取組等について議論するため、3月14日、消費者安全情報総括官会議を開催しました。

以上の検討を経て、3月17日に「冷凍食品への農薬混入事案を受けた今後の対応パッケージ」(関係府省庁局長申合せ)を取りまとめました。

●関係府省庁の対応

警察庁では、被害の拡大防止のために関係行政機関との連携を図っています。

また、都道府県警察に対して、情報収集、関係行政機関との連携の必要性等について指示するとともに、こうした事件等を認知した際には、必要に応じて、関係行政機関に通報する等しています。これを受け、都道府県警察では、流通食品への毒物混入の疑いがある事案を認知した際には、迅速に捜査を推進し、責任の所在を明らかにするよう努めるとともに、関係行政機関との情報交換を積極的に行う等相互に協力しながら被害の未然防止、拡大防止に努めています。

2013年12月29日、厚生労働省は群馬県より自主回収について報告を受けたことを公表するとともに、群馬県に対して原因究明等必要な調査を行うよう指示しました。

12月30日、群馬県(保健所)が(株)アクリフーズ群馬工場に立入調査を実施しました。

厚生労働省は、株式会社マルハニチロホールディングス及び(株)アクリフーズに対し、速やかに自主回収を行うよう指導するとともに、マラチオンの毒性の見解に使用する指標を修正するよう指導しました。また、全国の地方公共団体に対し、(株)アクリフーズが作成した自主回収製品リストを情報提供し、自主回収が迅速に進むように適宜指導するよう連絡しました。さらに、報道機関を通じて消費者に回収対象商品を食べないよう注意喚起を実施しました。

また、食品安全委員会は、12月30日、株式会社マルハニチロホールディングス及び(株)アクリフーズによる毒性の見解に対する懸念を厚生労働省に伝達するとともに、マラチオンの概要(ADI (1日摂取許容量)、ARfD (急性参照用量)等)を食品安全委員会のウェブサイトに掲載しました。

12月31日、厚生労働省は(株)アクリフーズから、店頭からの撤去が終了した旨の報告を受けました。同日、食品安全委員会は、マラチオンの概要及び関係府省庁の公表資料について、約1万人の会員にメールマガジンを配信しました。農林水産省は、約1万6千人の消費者等の会員にメールマガジンを配信しました。

2014年1月6日、厚生労働省は、株式会社マルハニチロホールディングス及び(株)アクリフーズより、自主回収状況と消費者から寄せられた相談への対応状況について確認し、全国の地方公共団体に対しては、農薬(マラチオン)が検出された冷凍食品に関連する健康被害が疑われる事例として公表したものについて情報提供するよう依頼し、翌日以降随時、全国分を取りまとめた結果を公表しました。

1月9日、厚生労働省は、国際的な食品安全問題に関する情報共有ネットワーク(INFOSAN)へ情報提供しました。

1月16日、農林水産省は小売業者、卸売業者に対し、消費者への情報提供の徹底及び商品回収の協力要請に関する通知を発出しました。

4月21日、農林水産省は「食品への意図的な毒物等の混入の未然防止等に関する検討会」を開催しました。

●自主回収対象商品の分かりにくさと製造所固有記号

2013年12月29日、(株)アクリフーズは、「群馬工場で生産している全商品の自主回収」を発表し、図表入りの詳細説明として、具体的には商品の裏面に、製造者「株式会社アクリフーズ 群馬工場」と記載されている全商品と説明していました。このため、製造者欄に「アクリフーズ群馬工場」という記載のない一部のプライベートブランド商品についての消費者への周知が不十分となってしまいました。これを受け、消費者庁は、2014年1月4日、プライベートブランド商品を含む、パッケージ画像入りの回収商品一覧を公表しました。

プライベートブランド商品の場合であっても、商品回収の際は、通常、「商品名」、「JANコード9)」、「賞味期限」等の情報をセットでいち早く公表できていれば、混乱はなかったものと考えられますが、今回の事案では、「(株)アクリフーズ群馬工場」という情報が前面に出てしまったために、販売社名のみを記載し、製造者名の記載がなく、かつ、製造所名を「製造所固有記号」に代えて表示をしていたプライベートブランド商品の表示方法が分かりにくいとの指摘がなされました。

製造所固有記号については、食品表示法制定時の附帯決議でも指摘されているように、消費者への分かりやすい情報提供を行うという観点から制度的な見直しを求める声があります。一方で、パッケージに後から記号を入れるだけで済むことで、複数の自社工場を持つ製造者が同一パッケージを利用でき、また、販売者は、効率性・経済性の側面から複数の製造者に製造委託した場合でも同一のパッケージを利用できることから、表示に掛かるコストが削減できるメリットがあります。

こうした状況を踏まえ、消費者委員会食品表示部会では、食品表示法に基づく食品表示基準の議論の中で、消費者や事業者の方々等の意見を幅広く聴きながら、製造所固有記号制度の在り方を検討しています。

図表1-2-1 消費生活センター等への「アクリフーズ」の「冷凍調理食品」に関する相談は、(株)アクリフーズコールセンターの改善とともに減少

図表1-2-2 「アクリフーズ」の「冷凍調理食品」は、性別では女性・年代では30~60歳代が購入している

図表1-2-3 「アクリフーズ」の「冷凍調理食品」は、幅広い層が危害を訴えている

図表1-2-4 (株)アクリフーズ農薬混入事案の主な経緯


8)

マラチオンは、有機リン系の殺虫剤であり、中毒症状としては吐き気・おう吐、唾液分泌過多、発汗過多、下痢、腹痛、軽い縮瞳等が知られている。

9)

日本工業規格(JIS)に定められている、商品識別番号とバーコードの規格一つ。

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