記者会見要旨
(平成27年6月26日(金)16:40~17:15 於)消費者庁6階記者会見室)

1.発言要旨

畑村委員長
本日の調査委員会では、エスカレーターの事案の調査結果を取りまとめました。
  エスカレーターは日常的に使用する施設に設置されており、施設の利用者がハンドレールに不意に接触する可能性があります。
  調査により、エスカレーターのハンドレールに接触すると、体勢が不安定になり、場合によっては身体が持ち上がる可能性があることが分かりました。
  身体が持ち上がった場合に、場合によってはエスカレーターの側面から転落し、重大事故になる可能性もあります。
  生活に欠かせないエスカレーターがより安全なものとなるよう、関係者には「利用者が注意書きを守っていれば安全」という考えではなく、様々な状況を想定し、事故の発生をより広く確実に予防する安全対策を進めていただきたいと思います。
  今回は、調査の過程で、コンピューターシミュレーションを使いました。その際、コンピューターシミュレーションが本件事故の再現であると捉えられ、シミュレーションの結果が本件の事故のエスカレーターだけの問題だと誤解されるようなことがあるとすれば、それはエスカレーターをより安全なものにしたいと願う調査委員会の本意ではありません。
  また、原因関係者や、被災者の責任の有無を報告書で議論しているように受けとめられ、事故の再発防止に目が向けられなくなることも本意ではありません。
  このような考え方で、この報告書をまとめてきたわけですが、最後に、本件を担当して、調査・分析に携わった専門委員や熱心に審議していただいた工学部会の委員の皆様の努力に、委員長として感謝したいと思います。
  調査等の状況については、持丸委員長代理に説明していただきます。
  では、お願いします。
持丸委員長代理
5月と6月での工学部会等での議論を御報告いたします。
  部会では、エレベーター、子供による医薬品の誤飲、染毛による皮膚障害の3件の事案について審議をいたしました。
  エレベーター事案は、随分長くかかっておりますが、専門委員からの調査の状況、報告書を取りまとめるに当たっての方向性についての説明を受けて議論を進めました。
  医薬品の誤飲の事案については、事務局からチャイルドレジスタンス包装容器という子供が押し出しにくい包装容器のパネル試験の実施状況など、調査の進捗状況についての報告を受けて議論いたしました。
  それから、染毛による皮膚障害の事案については、報告書の取りまとめに向けて、再発防止策をどのようにしたらよいか、どう整理するかということについて、事務局から説明を受けて議論いたしました。
  最後に、事務局から本件のエスカレーター事案の報告書について、少し補足をいたします。
  >お願いいたします。
事務局
まず、先ほどの委員長のお話にもございましたけれども、本調査委員会の目的は、再発防止ということにございます。誰に法的責任があるのかということを目的とするものではございません。
  それから、コンピューターシミュレーションにつきましても、どこでも起こり得るハンドレールの接触というものが人体を持ち上げる可能性があるかどうかを検証するための手段として用いたものでございます。その結果として、その可能性があるということが検証されたというものでございまして、本件事故そのものを再現しようとしたものではないということを繰り返し申し上げさせていただきます。
  以上です。

2.質疑応答

毎日新聞の鳴海です。
  要旨の2ページの説明部分なのですが、建築基準法等、いわゆる制度的には特に基準を満たしていたという今回の事故の原因としてはあるけれども、一方で3ページになりますと、意見のところでは「設置環境や周辺環境を踏まえた様々な人の行動を想定し、事故の発生をより広くかつ確実に予防する適切な安全対策を講じることが必要である」と。裏返せば、今回の事故については、現行の法整備では問題ないのだけれども、もっと消費者目線で見ると、そういう側面からの事故の可能性があるわけですから、そこの対策が不十分だったということでいいのでしょうか。
畑村委員長
不十分か不十分でなかったかというと、またいろいろな問題が起こると思うから、もうちょっと言葉を変えて言うと、何かの施設をこういう基準でこれを満たしていなければいけないという基準を決めて、それを運用するというのであれば、その基準自身は適切なものだと思うし、その運用もちゃんと行われていたけれども、それで十分だったのか、もっと違うところで見なければいけないのを、本当はエスカレーターをみんなが当たり前のものと思って使うようになっているときに、施設の構造とか、そこに付随しているいろいろな器具とかそういうもの、さもなければエスカレーターの機能そのものが、今のままでみんなが使っていて大丈夫なのだろうか。事故を考えることができるのなら、本当に起こさないようにするところまで十分そういうことが考え尽くしてちゃんと設計され、作られ、運用されていたのかというと、今回の事故のようなものは、そういうこと自身が大きな意味で見て想定されていないところで、こういう事故が起こってしまった。
  そうすると、基準が不十分だからなってしまったのですかという捉え方をするよりも、みんなが普通に使っていると、こんな事が起こるという認識をみんなが共有して持つところが不十分で、だから誰かが基準を作るのに「基準が不十分なのですか」と、そちらに目を狭めてしまうような考え方自身が、それこそ不十分なのではないかと考えます。
  そういう見方をすると、今回のような事故が起こったのは非常に不幸な結果として起こっているのだけれども、これを誰が悪いとか、誰かが気がついたらこれはやっていなければおかしいではないかと、そちらに議論を持っていくよりも、従来で考えていた考え方で何が不十分だったのか。私たちはこれから担当がどういうふうになるかというのはまだ細かいことが起こるかもしれないけれども、全体としてはこういうこともあり得るのだということをみんなで共有して、そしてそれを取り込んだ運用の仕方なり、設計の仕方なり、施設の作り方なり、そういうものをやっていかないといけないねと考えています。
  とても大事なことは、世の中でこういう事故が起こると、大抵事故調査というと、どうしても責任追及型になってしまって、誰がおかしい、何が悪いという話に行きがちなのだけど、本当に責任の追及をすることだけで、そういう事故を本当に再発させないように持っていけるのかといったら多分そうではないと思います。
  それで、一番初めのところで、シミュレーションをやりましたというのをやるけれども、多くの人はシミュレーションをやるというと、記録に取れていないとか、観察されていないところを補うためのものなのですねと考えがちだけれども、ここでやったシミュレーションというのはそういうことを目的としているのではなくて、これこれこういうときにはこういうことがあり得るというものを見つけないと、同じようなシナリオでまた事故が起こるのかもしれない。そういうことをなしにするのが一番大きな目標だと考えているので、それでシミュレーションをやりました。
  まだこれから質問で出てくるのかもしれないけれども、今のような考えでやっていったから、起こった事故の再現をしようとしたわけではないです。記録に取れていないところを補完しようとしたわけでもなくて、しかし、それだけ不幸な事故が起こったのだとすれば、一体その事故はどんな現象だったのか、どういうパラメータがどのようにそれに関与しているのか、そして、そのことを意識して、きちんとこれから先、取り扱うことで、同じような種類の事故が起こることを防ぐことができるだろうと考えました。
  調査にすごく時間がかかってしまったのは、途中までとにかくシミュレーションをやろうとか、そういうことはやっているけれども、先ほど言ったようなそれで本当にどんなことがあり得るのかとか、そこではどんな現象が起こるのかということを十分に把握したことになるのだろうかという議論を物すごくやったのです。それをやっているうちに、これだけでは不十分だというのが出てきて、それでまたやり直しをする。そうするときに、1個の何かの条件でそういうシミュレーションをやればいいというのではなくて、今度は一番典型的な形で現れるようなパラメータを違うものを入れて、そうするとどんな現象になっていくのだろうかというようにして、この事故についての最も基本的な知識を獲得するという考え方で進めていきました。だけれども、初めから何をどうやってどうやれば全部きっちりと分かるのだろうかというのが、確信を持てたわけではないのです。やっていくうちにここが分からない、ここはやはりこうではないかとかと議論をしながらずっとやっていって、それでようやく今回のようなものにまとまってきたのです。
  ですから、報告書を丁寧に読んでいただくと、途中経過をみんなに細かく説明していないから、分かりづらいことがあるかもしれないけれども、こういう条件のこういうことだとこうなるぞというので、人の反応時間とか、着ている物の摩擦とか、いろいろな物の形状とか、そういうものをやはり変えて、パラメータを振ってみないと分からないぞということが随分出てきたのです。ですから、それをやっていて、すごく時間がかかってしまったというのが実情です。
  でも、少なくとも、こういうやり方を一度は丁寧にやらないと、起こってしまった事故を、十分にしゃぶり尽くすというと何か言葉がおかしいかもしれないけれども、それから引き出せる知見を一番大事なものとして引き出すのは、やはりそういうやり方が必要だったのだろうと思っています。
そうすると、確認ですけれども、不十分という言葉を使うとしたら、いわゆる国土交通省なりの事故に対する想定も不十分だったし、消費者でいうと、エスカレーターに対する危険だということに対しての意識も不十分だったということで、もっと広い意味で注意を促すという報告書にしたということでいいのでしょうか。
畑村委員長
大きく言ってそうだと思います。だから、どこかが不十分だった、そういうふうにやると、すぐに、だからおまえがおかしいからという話に結びつけて不十分だったという捉え方をしないでくださいと。あなたのところがここまでいろいろなことを想定して、さもなければ、自分たちの守備範囲でここまで注意を促すとか、そこに注目して対策を打つとか、そういうことがやれていれば、こういう事故が2度起こらないで済むようになるのだけれども、そういうところまで丁寧に、この事故がどのようになっているかというのを丁寧に考えて、それから引き出せる知見を最大限に引き出すところまではいっていなかったというのが正確な言い方だろうと思います。
分かりました。ありがとうございました。
日本消費経済新聞、相川です。
  先生のおっしゃることがいつも同じなので、先生の言うことはすごくよく分かるのですが、今回のこのシミュレーションをした実験で、本当に摩擦係数がどのような場合でも持ち上がる可能性があるということをきちっと明確に出されていて、今回持ち上がって転落することがあり得るよということを明確におっしゃいました。だったら、なぜ法律であり得ることに対応しなさいときちっと義務づけて、法律でこれは任意規定だということ自体が私はちょっと驚いたのですが、現実的にすごく高層のエレベーターがいっぱいできていて、本当に落ちていること、子供たちも落ちていること、なのに何でここでガイドラインなのか分かりません。なぜ、法律でもうちょっとちゃんとあり得るものに対するようにしないのか。
  2ページに書かれている一番最後の2行が一体何を言おうとしているのか。国土交通省の認識は甘いのではないかと言っていらっしゃるようにも読めるのですけれども、何が言いたいのかを。
畑村委員長
私が答えるのが適当かどうかは分からない。
持丸委員長代理
委員長代理の持丸から、少しお答えをします。
  先ほどの直接的な答えとしては、どうすると短期的に効果が上がるかというのが、我々は意見としてメッセージに込めたということです。それについては、これから説明をいたします。
  先ほどの記者の方の質問も含めてお答えしますが、基本的に社会というのは学習をしていくものだと我々は考えています。したがって、大事なことは、繰り返さない、そして次に起きてしまうのは、いつ起きてしまうか分からないので、できるだけ迅速にそれに対応できるために、残念ながら調査には時間がかかりましたが、結果が出た段階では、やはりどこから社会にアプローチしていくことが、それを繰り返さないことになるかという考え方です。社会に対応するときに、もちろん消費者の方々に気をつけていただくというのもありますし、メーカーの方々にガイドラインなり何なりを作って、どんどん変えていっていただくというのもあるし、それに対して規制という手段ももちろんあり得ます。
  御指摘のように、今回どちらかというと業界のほうにさっさと動いてほしいという形を出したのには、エスカレーター、しかもそれが吹き抜けなどに設置されるエスカレーターというのが、私の中には非常に大きなポイントとしてございます。以前にここで出てまいりました立体駐車場、それから今、審議しておりますエレベーター、吹き抜けにあるエスカレーター、どれも似ているようなものなのですが、実は劇的に違うのは、吹き抜けにあるエスカレーターは非常に大きな商業施設とか、そういうところに設置されていて、例えばその辺のマンションであるとか、個人の家などにないということです。ということは、これは規制をするのにすごく時間をかけるよりも、むしろそういう方々のリスク意識とコンプライアンス意識に働きかけて、さっさとガイドラインを決めて動いていただくほうが効果的であろうというのが我々の考え方です。これは極めて現実的な考え方です。
  ただし、報告書を見ていただくと、それに効果がない場合は、消費者庁がウオッチをしていきますよと。そして、関係省庁にそれで効果が起きないのであれば、やはり法的な規制に向けて動いていってほしいということを申し上げています。これが一律に何でも同じようなアクションをして、法規制をすればいいということではなくて、いかに迅速に社会を変えていくかというのに対する我々の考え方、こう考えていただければいいかと思います。
せっかく消費者庁の中にある、本当は中にあってはいけなかったのですが、独立した消費者目線の事故調査であれば、ちょっと私はどうなのだろうと思います。
持丸委員長代理
はい。御意見はよく分かりました。
日本消費者新聞の丸田です。
  今、相川さんの質問に対して、ちょっと御回答が分からなかったのですが、つまり2ページの一番最後の部分で、一番最後のパラグラフの真ん中あたりから「本件事故のようなエスカレーター側面からの転落を防止する対策が講じられていなかった」と。その背景的要因として、国交省とか特定行政庁とか、並びに施設の管理者、事業者、エスカレーター製造会社の多くがエスカレーター側面からの転落事故をエスカレーター本体や周辺部の構造に起因するものではないと判断してものと考えられますと書かれています。この判断、つまりこの関係行政機関や関係事業者の判断について、消費者安全調査委員会はどう検討されていたのですか。つまり、この点も事故発生の原因の一つであると考えられているのかどうか。
持丸委員長代理
直接的な原因というのは、いずれにしても今回のような発生については、ベルトに接触をして、場合によっては持ち上がる、若しくはその結果として吹き抜けに転落する、これが直接的な原因ですね。ただ、それに対して、先ほどの一番最初の質問にもありましたが、それを社会で防いでいくときにトータルとしてそこを見守っている方々の意識も変えていかなければいけないということです。それは、法的な手段で変えるということもありますし、しかし、こういうリスクが事実顕在化しているのですよと。そういうときに、エスカレーター本体ということだけではなくて、その周辺環境も含めて、どこで防ぐのが、防ぐという言い方はよくないですね。どこで機械安全を図るのが適切であるかということをトータルで考えましょう、こういうことを提言している。したがって、その前段階として、本案件が起きて、こういう危険が顕在化する前の段階では、やはり我々も含めてその部分に関する判断が、ここに書いてあるように「起因するものではないと判断していた」と。そのように我々は考えております。
何に起因すると考えているかと、何か持って回った言い方なのですけれども、どう考えていると受けとめたらいいのか、分かりやすく教えていただけますか。
持丸委員長代理
我々は、別に向こう側の考えをどうこう判断するということが本質的な問題ではなくて、最終的には、我々として事故の原因がどこにあって、何の対策をしたらよいかというのが基本的な我々の視点です。あなたたちがどう考えていたかというのを類推するのが我々の姿勢ではなくて。
ここに入っている2行の意味を分かりやすく教えてくれと質問しているのです。
持丸委員長代理
この最後の2行ですか。
そうです。
持丸委員長代理
事務局のほうで、何かありますか。
事務局
持って回ったと言われてしまいましたけれども、正にここに書いてあるとおりでありまして、我々が関係者からヒアリングをしたところによると、その方々は構造に寄与するものではないとお考えであると私どもとしては受けとめたということを、ある意味淡々と書いている。
  先ほどお話があるように、したがって、そういう認識も含めて、我々としてはどうするかを委員会として考えなければいけない状況であったし、それに対して今回の報告書を出したということでございます。
私の認識不足なのか、ここではっきりと確認しておきたかったのですが、要する に消費者安全委員会の場合の一つの大きな期待感というのは、災害防止策であるということは重々分かります。責任追及はしていない、しないということも分かります。その原因究明というのも一つの大きな役割で、その原因究明というのは客観的に、そして消費者の使用実態に即して、あるいはその周辺環境のことも含めてやるわけですけれども、当然ながら原因究明の過程では、事故の原因、つまり誰が責任があったのか、どんなところが問題なのかというのが当然出てくるものだと思っております。出てくるのだけれども、それは責任が明らかになるというのは、その原因究明の中では当然ながら出てくるのではないかと私も思っていまして、ただし、その責任を追及するのは委員会ではやらないと。だから、できる報告書は、先ほど不十分であるとか何とかという言葉を使わない、誤解を招くような言葉を使わないとおっしゃってはいるのですが、つまりそのことによって、本当の意味で事故の防止策、例えばどういう点が事故を防止できるのかとか、そういう原因の因果関係とか、そういうところが曖昧なのではないかと。つまり追及しないのは分かります。そして、これまでも事故の責任が明らかになったらば即裁判とか何かとか、誰が追及するのか、警察が後ろにいたりとか、そういうことによって、なかなかその原因が明らかにならなかったというのは分かりますけれども、その事故調自体は、そういうことを追及しないと、あらかじめそういう前提であるわけですから、しかしその原因究明自体は、報告書の中では分かりやすいように書いてほしいと思っていましたので、つまりそのときは明らかになったものは、ちゃんと分かるように書いてほしい。不十分であるからと言葉を変えて、誰かが責任があるような感じの言葉を避けるのではなくて、はっきり書くのが実は消費者事故調ではないかなと思っていたのです。この考えはどうでしょうか。間違っていますでしょうか。
畑村委員長
私から言うと、半分は誠にそのとおりだけれども、その後ろ側にある、結局何かをある範囲なり、この職掌でこれだけのところまではカバーしていなければいけないと思っている部分が違うときに、ここで仮に誰かがこういう判断をして、こういうことを決めて、それをみんなに強制するような行動をとっていたとすれば、こういう事故のここの部分は起こらなくなるのだから、この事故が防げただろうと考える、それは今、ここで普通にいう原因を追いかけていくというのとちょっと性格が違うけれども、非常に大事な部分だろうと思っています。
  それは、今回のこれに当てはめると、少し分かりにくくなるかもしれないけれども、本当の原因を見つけるときに、起こった事実だけで全部を作り上げないといけないのか。それとも何かの仮説なり、選択肢で採らなかった選択肢という別の方法を選択していれば、この事故は防げたのではないかと考えると、仮説の問題で、本当に今みんなが選択しなったら、そちらを採っていれば、事故が起こらなかったと考える、これはごく当然のことです。
  そう考えると、みんなが考えると、誰かがそれを自分の仕事なり、自分の責任範囲なりとしてやっていなかったから、それがおかしいのではないかという議論がいつも出てくるのです。今言っているような説明の仕方を、これを私の言葉ですが、「たら」「れば」「もし」と言っています。仮に本当に選択したものとは違う事柄で、これをやっていたらとか、やっていればとか、もしもこうだったら、これをやると事故が起こった後から見ると、なぜそれを考えないで、さもなければ、そういう対応をしないでいたのだろうというと、そこにそのことを考えたり、実行したりするのがその人の責務だったのではないかと私たちは考えたくなる。事実そのとおりだと思う。だけれども、そこを本当に原因だときっちり決めてやっていくのが、本当に先ほど言っているような事故の再発という方向に有効なのだろうかと考えると、考え方として半分ぐらいは有効だと思います。だけれども、それでやるので、今度もっと違う社会的な公正さというか、みんなの納得性というか、そういうもので見たときに、そのとおりにはうんと言えない部分が半分くらい残るように思うのです。
  だから、いろいろなものを調べたり、考えたりするけれども、責任追及はしませんという、それを宣言して今、やっているわけです。でも、本当に大きな事故なり、いろいろな事故が起こったときに、例えばその人が意識していたか、いないかはもう関係なしに、何かの仕事をやっているときに、どこまで考えなければいけないのかというのも責任の範囲だと考える考え方というのは当然だと思います。
  それになると、今の法律の体系の中でやっていたのか、いないのかという、普通に司法で取り上げるようなやり方の範囲の中で考えるのか、それとももうちょっと違うところで考えるのかというので、この委員会では、そういうことが再発しない方向に有効なところを追いかけようとしてやっています。
  ですから、本当に責任追及が必要なことはあると思うのですよ。それはここでやるのではなくて、もっと違うところでやってもらうしか仕方がないのではないかと思っています。
  これは今、私が委員長を引き受けてやっているときに、そんな考えをやっています。
  そちらもどうぞ。
持丸委員長代理
長々としゃべるつもりはないのですけれども、先ほど申し上げましたように、とにかく社会というのは、もちろん行政も入れば、メーカーも入れば、我々も入れば、もしかしたら消費者も入る。皆さんが、先生がおっしゃったように新しい危険に気がついて、それに対して、とにかく社会全体でそれをよくしていこうというアクションのドライブをする係が我々であると思っています。
  その中で、もし今の御質問の中にあった、この報告書の中で原因がよく分からないと。これは我々にとってすごく大事なことです。我々としては、原因として今回新しいリスクがちゃんと科学的に顕在化することが分かりましたよと。それは体が持ち上がりがちになって不安定になるし、それによって大きく外へ落ちることがある。これに対して、機械安全の観点からハザードをなくすか、あるいはリスクを低減するかということを考えたらいいでしょうというのが、一言で言えば全体の趣旨です。これが分かりにくいということであれば、そこはぜひ御質問いただければと思います。
日本経済新聞の近藤です。
  責任追及云々のお話とかはよく分かったのですけれども、意見のところで「設置環境や周辺環境を踏まえた」、こういう結論づけをした場合、ではこの場合はどうなのだ、あの場合はどうなのだということで、現行の建築基準法では問題ないと。対策してくださいよというのは、例えば事業者の良心に働きかけるようなことだと思うのですけれども、仮にそれをやらないと言った場合には、野放しにされるわけで、それは困ったねということで、例えば今回の事例で言うと、ハンドレールが通路側にむき出しに突き出すというのがあって、それに不意に接触してしまったために持ち上がって転落したと。この場合には、例えばどういう対策をしたならば事故が防げるねという事例をちょっと示していかないと、事業者側も対策の採りようがないのではないかなと思うのですけれども、その辺はどうお考えですか。
持丸委員長代理
ちゃんと意見が見えているかどうか分からないのですけれども、最後の60ページの「意見」というところを見ていただければと思いますが、できるだけ手短に話しますが、基本的には、今申し上げましたように、人がハンドレールと言われる手すりのところに不意にでも寄っかかると、それによって体が持ち上がってしまう、若しくは軽くなってアンバランスになる、それが更にいくと、そのままベルトから乗っかって外側に落ちる、こういうシナリオが起きる可能性がある。これがまさしく申し上げた一つのシナリオ、リスクですね。少し専門的に言いますと、事故の対策というのは、3つで講じるべきであると言われています。
  1つ目は、ハザードというものを、危険源を断つということです。どうしたら危険源が断たれるかというと、触れなければいいのですね。手はどうか知りませんけれども、人がお尻の辺りであるとか、そういう辺りがハンドレールに触れなければいい。これは危険源を断っているわけです。そのための対策もこの中に幾つか出ていて、例えば、侵入経路を何とかするために何とか防護柵を設けましょうとか、そういうのが出ています。
  ところが、実は対策というのは、大体副作用があることがありまして、コストと副作用はちょっと別にして、隙間ができると手が挟まる人がいます。大人じゃなくても子供が挟まるかもしれません。あるいは、それにつまずく人が出てくるかもしれません。今、我々の中では100%副作用がなくて、極めて効果的な危険源を断つという対策が簡単には思いつきませんでした。そこで、危険源を断つというところは、レコメンデーション、そういうものをぜひ設置側としては考えてくださいと。
  その次は、今度は2番目の作戦をリスクを減らすと言います。リスクというのは、発生確率に起きた重篤度を掛け算したものです。ということは、発生確率を減らすか重篤度を減らせばいいということになります。重篤度を減らす最も効果的なことは、吹き抜けの外側に落ちないようにすることです。我々としては、これであればかなり副作用なく、ほとんどのものに適応できるであろうということを考えて、コストは別ですよ。制度面の見直しの中に、エスカレーター側面からの転落防止対策というのを入れた。これは、確かに内側に落っこちたら階段のところでそれは動いているわけですから、けがをされるかもしれませんけれども、今、申し上げましたとおり、リスクを下げると。外側へ落ちたら、吹き抜けですと命を失う可能性が極めて高いのですね。それに対して、そこにある一定の性能を持った転落防止柵というのがあれば何とかなるであろうと。先ほど言ったように、それを良心に任せるということではなくて、これに関して、ぜひ業界がさっさと立ち上がって、先ほどの回答になりますけれども、自主的にガイドラインを作ってほしい。今でも、実はそれに相当するものがあるのです。それをもうちょっとしっかり見直して、そのガイドラインを作って、ガイドラインをというのは、皆さん思われるかもしれませんが、一たびこういうことが公になって、それをもうあれから2年もたつのに、そこは全然ガイドラインを守っていなくて同じ事故が起きたとなったときに、これはその企業、例えばその施工主にとって大変なリスクですね。そういうことを考えると、最初にお答えしたように、今回のように大きな施行主さんがやっているところは、我々の感じとしては早くこれに対して対応いただけるだろうと。それもあって、今回はこういうアクションを出している、そういうことでございます。

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