消費者問題及び消費者政策に関する報告(2009~2011年度)

第2部 消費者政策の実施状況

第2章 各分野の消費者政策の動向

第1節 消費者の安全・安心の確保

(2) 食品の安全
● 食品安全基本法と食品安全の基本的事項

食品の安全性の確保は、人の生命・健康を維持する上で極めて重要であり、国民生活の基本となるものです。政府は、食品安全のための政策を推進していますが、食品関連事業者においても、食品供給行程の各段階において必要な措置を適切に講じ、消費者も食品の安全性の確保に関する知識と理解を深めていくことが重要です。

我が国の食生活を取り巻く環境をみると、食品流通の広域化・国際化が進展し、遺伝子組換えやクローンといった新たな技術開発も進んでいます。2001年には日本で初のBSE(牛海綿状脳症)が発生し、食の安全に対する関心が高まりました。

こうした中、2003年には、食品の安全性確保に関するあらゆる措置は、国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下で講じられるべきとの基本理念を定めた「食品安全基本法」が制定され、同法に基づき、食品の安全性確保に関する措置の実施に関する「基本的事項」が定められています108)

● 食品安全委員会によるリスク評価

食品安全基本法では、食品の安全に「絶対」はなく、リスクが存在することを前提としてそれをコントロールしていくという考え方の下で、「リスク分析109)」という新たな考え方が取り入れられました。厚生労働省や農林水産省等の「リスク管理機関」は、食品中の残留農薬や食品添加物等の規制を行っていますが、こうしたリスク管理機関から独立して、食の安全性について、科学的知見に基づいて中立公正に「リスク評価」を行う機関として、新たに内閣府に「食品安全委員会」が設けられました。食品安全委員会では、食品に含まれる可能性のあるO157等の病原菌、添加物や農薬等の危害要因を、摂取することによってどの位の確率でどの程度人の健康への悪影響が起きるかを科学的に評価しています。例えば、残留農薬や添加物については、人が一生にわたって毎日摂取し続けたとしても健康への悪影響がないと推定される量の設定等を行っています。

2011年3月31日現在、リスク管理機関からの要請や自ら行うことを決めた1,717件の事案のうち、1,158件の評価を終えています。

● 輸入食品の安全性の確保

我が国には輸入食品が大量に入ってきていますが、その安全性の確保については、厚生労働省が毎年度策定する「輸入食品監視指導計画」に基づいて行われています110)。こうした中、主要な食料輸入国や日本にとって食の安全問題に関わりの深い国際機関等を所管する在外公館において、「食の安全担当官」を設置するなど、個別事例への対応や連絡体制の強化に取り組んでいます。

● こんにゃく入りゼリーによる窒息事故問題への取組

こんにゃく入りゼリーによる窒息事故については、これまでに子どもや高齢者を中心に発生しています111)。消費者庁発足前の2008年10月、消費者安全情報総括官会議112)において、関係省庁は、こんにゃく入りゼリーによる窒息事故の再発防止策を申し合わせ、業界に対して警告表示の徹底等を要請しました。2009年4月、内閣府国民生活局(当時)から、食品安全委員会に対し、「こんにゃく入りゼリーを含む窒息事故の多い食品に関する健康影響評価」について諮問し、2010年6月、同委員会から答申がありました。また、消費者委員会は、同年7月に「こんにゃく入りゼリーによる窒息事故への対応及び食品の形状・物性面での安全性についての法整備に関する提言」を取りまとめました。

消費者庁では、2010年3月から7月にかけて、大臣政務官を長とする食品SOSプロジェクト会合を開催して対応策を検討し、同年夏以降は安全工学、医学、食品物性の専門家及び製造事業者の参画を得て、「こんにゃく入りゼリー等の物性・形状等改善に関する研究会」を開催し、同年12月に報告書を取りまとめました。同報告書に基づき、消費者庁は、事業者団体等向けに、こんにゃく入りゼリー等による窒息事故リスクの低減に係る周知徹底及び改善の要請を行っています。これを受けて、2011年12月には、製造事業者の製品改善等の取組状況(新製品の開発等の状況)を取りまとめました。また、食べ物による窒息事故防止のための注意も呼びかけています113)

● ユッケによる集団食中毒問題への取組

2011年4月、焼肉店で提供されたユッケによる集団食中毒事件が発生しました。腸管出血性大腸菌が検出され、男児らが死亡し、多数の重症者が出て、生食用の肉に対する消費者の関心が一気に高まりました。従来、生食用の肉については、罰則を伴う強制力のある規制がありませんでしたが、この事故をきっかけに、2011年10月より、厚生労働省は、食品安全委員会による食品健康影響評価の結果114)を踏まえ、食品衛生法に基づく規格基準を定め、消費者庁は、同法に基づく表示基準を定めています。

新たな規格基準では、生食用食肉の加工・調理は、専用の設備を備えた衛生的な場所で専用の器具を用いて行うことや、肉の表面を加熱、殺菌すること等が定められました。また、表示基準では、店舗の見やすいところに、子ども、高齢者など抵抗力の弱い人は食肉の生食を控えるよう表示すること等を定めています115)

また、生の牛肝臓(レバー)の内部に腸管出血性大腸菌が存在することが確認されている中で、現時点では、生の牛レバーを安全に食べるための有効な予防対策がないことから、厚生労働省では、2012年7月以降、生食用としての販売・提供を禁止しました。

● 食品と放射能問題への取組

原子力発電所事故に伴い、食品と放射能に関して消費者の関心が高まりました。「食品と放射能Q&A」の作成により消費者向けの分かりやすい情報提供を行っているほか、各種のリスクコミュニケーションを実施するとともに、消費者の安全・安心をより一層確保するための消費者サイドでの放射性物質検査体制の整備を行っています116)


108)

2012年6月29日、2004年に閣議決定した基本的事項を改訂する閣議決定を行った。改訂の内容は、食品事故に係る緊急時の対応として、緊急対策本部は消費者担当大臣が設置すること、東日本大震災を踏まえた食品と放射性物質に係るリスクコミュニケーションの積極的な推進を始めとして消費者庁がリスクコミュニケーションの事務の調整を行うこと等となっている。

109)

リスク分析とは、①食品中に含まれる特定の物質等が人の健康に及ぼす影響を科学的に評価する「リスク評価」と、②リスク評価の結果に基づいて国民の食生活等の状況を考慮して基準の設定や規制等の対応を行う「リスク管理」、③これらの情報を共有して、消費者、事業者、行政機関等が情報・意見交換する「リスクコミュニケーション」の3要素からなる手法のこと。

110)

2010年度には、輸入届出件数2,001,020件中、行政検査、登録検査機関検査、輸出国公的検査機関検査の合計で247,047件の検査が行われ(重複を除く)、1,376件の違反が確認されている(届出件数に対する割合は0.1%)。

111)

2009年9月の消費者庁発足以前に22件の死亡事故が確認されている。これ以降、こんにゃく入りゼリーによる消費者事故等は確認されていない。

112)

生命・身体に係る消費者被害の発生・拡大を防止するため、関係省庁に、各省庁内の消費者被害に関する情報を集約する「消費者安全情報総括官」を置き、緊急時はもちろんのこと、平時も含めて情報共有を図るための仕組み。

113)

その後、2012年6月6日に、同年5月末現在の製造事業者等の製品改善等の取組状況を取りまとめ、同年6月27日に、改めて食べ物による窒息事故に関する消費者への注意喚起を行っている。

114)

2011年7月8日に、厚生労働大臣より、食品安全委員会委員長に対して食品健康影響評価を要請し、同年8月25日に、厚生労働大臣に対して答申がなされたもの。

115)

厚生労働省が2011年度に行った調査(2012年1月27日公表)では、規格基準に適合していた施設はわずか27施設(生食用食肉を扱う全445施設のうち6.1%)だった。厚生労働省は、都道府県に対し、①規格基準に適合していなかった施設に対しては生食用食肉を提供しないよう監視・指導を徹底すること、②悪質な事案や健康被害をもたらす事犯については、その悪質性、広域性等を総合的に勘案し、警察関係行政機関等との連携や告発等、厳正な措置を講じること等について要請を行った。また、規格基準に従わない一部の事業者については、警察により書類送検されている。

116)

詳細は第2部第2章第6節参照。

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