【概要】平成25年版消費者白書

コラム

13のコラム欄を設け、話題性のある事項を掘り下げて記述しています。

高齢者の消費者被害 – 悪質商法被害を生み出す心理的メカニズム –

神戸学院大学人文学部
教授 秋山 学

振り込め詐欺や未公開株・外国での投資商品の斡旋といった詐欺的儲け話による被害は止まるところを知りません。詐欺的商法に対する広報活動はテレビや新聞だけでなく、高齢者大学での寸劇など幅広く行われているにも関わらず、被害は増えています。私たちが周囲の状況を認識・推測する際に出てくる「くせ(バイアス)」を悪質業者が悪用するためです。高齢者のバイアスにつけ込むように工夫を凝らした悪質商法の仕掛けにはまる心理的プロセスを図に示しています。

身内の危機や、銀行口座の使用停止の知らせは不安や脅威を高めます。未公開株などの入手といった予期せぬ報酬は嬉しさ・喜びをもたらします。予期せぬ感情の高まり(喚起)に加え、時間的余裕を与えず即座に支払いや売買契約、通帳・カードの引き渡しなどの要求を悪質業者は繰り出します。感情が高ぶり、時間的に切迫する状況では私たちは直感に頼る思考に陥りがちです。直感は速く優れた判断を生み出します。しかし、簡便な思考スタイルでもあるので、落とし穴もあります。感情が高まり、時間的に切迫した状況では、目の前にある解決策に飛びつく、悪質な勧誘の背景・周辺情報に注意を払わないなど、素早く、近視眼的な決定を下す傾向があります。加えて、悪質業者に改めて確認の電話をするなど、誤った思い込みを正当化しやすくなります(確証バイアス)。誤った思い込みに沿うよう状況認識を再構成する場合もあります。最近の研究によると、高齢になると他者を誠実だと思い込む傾向もあるようです。勧誘のリアリティを高めるために、悪質業者は警察官を騙るなど権威も悪用します。観客の興味や興奮を引き出す芝居の演出のように、悪質業者は熟慮にもとづく思考が働くことを妨げる仕掛けに工夫を凝らしています。高齢者につけ込むように悪質商法のシナリオが構成されていることが、高齢者の被害を増大させていると考えられます。誘う、頼むという行動は、近隣とのつきあいや家庭における日常的な営みです。悪質業者が巧みなのは、高齢者の喜怒哀楽といった感情の働きを悪用し、勧誘内容を熟慮することを妨害することにより、支払いへのためらいを感じさせない点にあります。

悪徳商法に騙される心理的プロセス

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